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キプロス大使館、2023年観光PR。愛と美のビーナスが生まれた“地中海の避暑地”で山岳リゾートや伝統ワイン巡りを

2023年6月30日 実施

キプロス共和国大使館が日本人に向けて最新の観光情報をプレゼン

 キプロス共和国大使館は6月30日、都内で業界向け観光プレゼンテーションを実施した。

 キプロス共和国特命全権大使のハリス・モリチス氏が日本に赴任して最初の6か月間を過ごし、大使が“私にとって第2の家”として愛用する「ホテル雅叙園東京」が会場となり、当日は旅行会社やメディア、JATAなどが参加。

 はじめに大使は、「世界がパンデミックを経験し、ロシアのウクライナ侵攻やエネルギー危機、インフレなどの問題があるなか、観光産業の方向性を考えることが課題である」とし、日本ではまだなじみのないキプロスを「日本の皆さまに知ってもらい、観光の目的地として選んでいただくためにはどうすればいいか。今回交わされる意見を本国や観光省にも伝え、次のステップに進んでいきたい」と述べた。

キプロス共和国特命全権大使 ハリス・モリチス氏

キプロスってどんな国?

 キプロス共和国は地中海の東に位置する島国。面積は9251m2で、日本でいう四国の半分くらいの大きさ。アジア、アフリカ、ヨーロッパの3大陸に囲また古代ギリシャ神話の舞台であり、1万1000年以上の歴史を有する。

 人口はおよそ90万人で、主な言語はギリシャ語とトルコ語、これ以外に英語が広く使われている。2004年にEU加盟国となり、通貨はユーロ。

 また現在、キプロス入国に際して新型コロナ感染防止による制限はない。3か月以内の観光や商用などの短期滞在であればビザは必要なく、パスポートのみで訪れることができる。

キプロス共和国の基本情報

 地中海のリゾートというイメージが一般的だが、キプロス共和国大使館の志村暁子氏によれば「標高2000m級のトロードス山岳地帯もあり、その地下水により育まれた自然や食物が豊富。自然散策路も整備され、春夏には蘭の花、秋冬にかけては木陰に野生のシクラメンも群生している。年間をとおして最高気温25~32℃と暑いキプロスだが、夏の山岳エリアは涼しく、緑も美しい“地中海の避暑地”」であるという。

キプロス共和国大使館 志村暁子氏
海だけではなく山岳リゾート地としても人気

 キプロス国内に空港は東西に2か所。東部の町にある「ラルナカ国際空港」もしくは西部の街にある「パフォス国際空港」が玄関口となる。日本からの直行便はなく、ドバイ経由(エミレーツ航空)やドーハ経由(カタール航空)を利用することになる。そのほかパリやローマなどの周遊とセットでアクセスするもの可能だ。

空港がある東部の町ラルナカ

 首都は、ニコシアという人口約20万人ほどの内陸の街。同国の公用語であるギリシャ語で「レフコシア(Lefkosia)」とも呼ばれる。ヴェネツィア共和国統治時代の16世紀に大きな城塞が築かれた土地で、その内側である旧市街には今も古い建物が多く残る。これを利用したレストランやショップが軒を連ねる「レドラ通り」は、地元民や観光客で賑わっている。

 また、ひと足のばすとビザンチン様式で建てられた「聖ジョン教会」や隣接する博物館や美術館などのスポットも点在する。

空港がある東部の町ラルナカ
キプロスの首都ニコシア

 南にはリマソールというキプロス第2の街がある。ギリシャ語では「レメソス(Lemesos)」。貿易港がある港湾都市で、人口は首都ニコシアに次いで多い。海沿いにはオーシャンビューのホテルや新鮮な魚介類を使ったシーフードレストランが立ち並ぶ。

 また、ここリマソールには古代都市遺跡の「クーリオン」をはじめとする歴史的価値の高い遺跡も多く、部分的に修復しながら今も気軽に足を運べる野外コンサート劇場として現役で使われている。さまざまな統治の歴史や宗教的背景を色濃く残す「聖アントニオス教会」や「コプルル・モスク」などのスポットも見どころだ。

クーリオン古代遺跡の円形劇場
13世紀十字軍の要塞「コロッシ城」

 なかでもリマソールはキプロスワインの生産地としても有名。十字軍の支配下にあった12~15世紀、キプロスワインが騎士団に好まれ盛んに製造されるようになったことからヨーロッパ各地へと広まった。

 キプロス14の村ではその畑で収穫されたブドウから造るワインを「コマンダリア」と呼び、古来からの製法を現在も受け継いでいる。コマンダリアは世界で初めて登録された原産地呼称統制ワイン(AOC)でもある。

村で収穫されたブドウを天日に干し、糖度を高めてから搾り発酵させ、数年~数十年かけて熟成させるという古代のワイン製法を踏襲した「コマンダリア」

 また大使のふるさとでもある島西部の街パフォスは、ギリシャ神話に登場する愛と美の女神「アフロディーテ」誕生伝説の地。

 パフォスにはモザイクが有名な「エオンの館」などギリシャ時代の遺跡がたくさん残っており、街全体がユネスコの世界文化遺産に登録されている。2017年には欧州文化首都にも選ばれ話題となった。

アフロディーテ神話が誕生したパフォス郊外の海岸

 このほかキプロスには、同じく世界文化遺産の「トロードス地方壁画教会群」(山岳地帯に点在する10の教会)と「ヒロキティア」(ラルナカ郊外に位置する新石器時代の集落跡)が知られている。

キプロスには3つの世界遺産がある

これからのキプロス観光について

 地中海の要衝として古代から人が行き来し、外国からの訪問者をゲストとして迎えることが日常であったキプロス。本国の観光省では「キプロス観光国家戦略2030」を発足し、今後、観光立国としての再興を目指す方針を掲げている。

キプロスが取り組む観光資源の品質向上

 その一例として志村氏が紹介したのが、キプロスの観光資源をテーマごとに「ラベル」付けし、ブランド化するという取り組み。例えば「レストラン」に貼られたラベルは、ただ漠然とした地中海料理ではなく、肉や魚、野菜、果物といった地元食材を素朴に活かした伝統料理を提供する国公認の店であることを示す。

レストラン、ジャンル別のラベルにより観光資源をブランド化
大使が一番好きだと話すキプロス伝統の肉料理「アフェリア」(赤ワインとコリアンダーで漬けた豚肉グリル)など

 このほかブレックファースト、ホテル、ワイン、自然アクティビティ、伝統工芸、クリスマスビレッジなど、ラベルを作ることでキプロスを知らない人にも分かりやすく伝え、“目的のある旅”や“ニッチな旅”を促すという。

 近年では、ホテルも続々とリニューアルや新規開業が進められており、ラベルによるブランド化と同時に品質のアップグレードや環境整備に力を入れている。これについて志村氏は「ただバケーションを過ごしたり、お土産を買ったりするのではなく、食体験や地元の人との交流を通じて、キプロスならではの魅力に触れてほしい」と説明した。

 ハリス・モリチス氏は最後に、キプロスを表わす5つの単語として「歴史」「平穏」「文化」「海」「空」を挙げ、「とても小さい国ですが、訪れれば必ず何かを得られるおもてなしの国」とアピール。

 また国の代表ではなく1人のキプロス人として語ると前置きし、「日本人はとても注意深く、礼儀正しく、穏やか。一方キプロス人は思ったことを深く考えずにストレートに表現する性格」。違いはあれど「酔っぱらうとその場がぐちゃぐちゃになる。でもお酒を飲まなければすごく真面目なところが共通点」だと、親しみを込めて語ってくれた。