旅レポ
歴史が彩る地中海の島国・キプロスを巡る(その1)
カタール航空に乗ってドーハ経由でキプロスへ
2018年1月19日 00:00
地中海の東端、中東に近い位置に浮かぶ島国、キプロス共和国。2017年はパフォスがEU(欧州連合)が選定する「欧州文化首都」に選ばれ、観光地としての注目が高まっている。1月に開かれた欧州文化首都「Pafos2017」オープニングセレモニーの取材ツアー(関連記事「キプロス共和国・パフォスで欧州文化首都『Pafos2017』オープニングセレモニー開催」)に参加した折に、同国の観光地を巡ったので、その様子をお伝えしたい。
キプロス共和国があるキプロス島は、さまざまな歴史的変遷を経ており、文化的に興味深い島だ。詳しくは適宜記したいが、1960年にキプロス島全体がキプロスとしてイギリスから独立した(イギリス連邦には加盟している)ものの、その土地の一部はいまもイギリスの主権を認められており、軍事施設などが置かれている。
また、これは広く知られているが、現在のキプロス島の北部地域はトルコ共和国を後ろ盾とする北キプロス・トルコ共和国が実効支配しており、事実上2つの国に分断された状態になっている。とはいえ、そのボーダー部(デリケートな問題なので国境という表現は避ける)は、国際連合がグリーンライン(緩衝地帯)を設定し、軍事的な行動があるわけではない。それどころか、ボーダー間の人の往来は活発で緊張感もなく、旅行者もボーダーを越えられる。
キプロス島全体の面積は9251km2だが、上記のような事情により三重県より少し大きい程度の約5300km2が、1度のパスポートチェックで巡れる地域となっている。鉄道はなく、基本的にはクルマでの移動になるが、東端と西端の長さは200kmもなく、都市間の移動はラク。数日の滞在で島全体を対象に旅程に組み込んでいけるだろう。
ちなみに、欧州からは同国をリゾート地として訪れる観光客が多いそうだ。あちこち見てまわる観光スタイルから、地中海を眺めながらノンビリと過ごすスタイルまで、いろいろな楽しみ方をできる国といえる。
カタール航空を使ってドーハ経由でキプロス東部のラルナカ空港へ
島国であるキプロスへは一般的に飛行機で渡航することになる。西部のパフォス国際空港(Paphos International Airport)、東部のラルナカ国際空港(Larnaca International Airport)の2つの空港があり、後者の方がより規模が大きい。主に中東や欧州から乗り入れており、日本からの直行便はないため、どこかの第三国を経由して渡航する必要がある。
この訪問では、カタール航空を利用し、ドーハのハマド国際空港(Hamad International Airport)で乗り継いでラルナカ空港へ向かった。ラルナカ空港には日本からの直行便があるロンドン、パリ、ミュンヘン、アムステルダム、ブリュッセル、マドリード、ローマ、ワルシャワ、モスクワ、ドバイ、アブダビ、ドーハといった都市のほか、ハイシーズンにはコペンハーゲンやヘルシンキ、チューリッヒからアクセスできるので、日本からアクセスする場合でもワンストップで行ける選択肢が多い。
ちなみに、キプロスはEU(欧州連合)に加盟し、ユーロ圏にも入っているが、シェンゲン圏には入っていないので、どこで乗り継いでも国際線~国際線の乗り継ぎという扱いになる。
今回利用したカタール航空は、羽田空港、成田空港からドーハのハマド空港との直行便を運航している。2017年12月時点の運航スケジュールは下記のとおりで、いずれも往路は日本を夜に出発して早朝にドーハ着、復路はドーハを朝出発して夜に日本着のスケジュールとなっている。
カタール航空の日本~ドーハ便(2017年12月時点)
QR807便:成田(22時20分)発~ドーハ(翌04時45分)着
QR806便:ドーハ(03時05分)発~成田(19時00分)着
QR813便:羽田(23時50分)発~ドーハ(翌06時05分)着
QR812便:ドーハ(07時00分)発~羽田(22時30分)着
ドーハに限らず中東の国の空港は、国際線~国際線の乗り継ぎ需要を重視する傾向にあることが知られている。この運航スケジュールも、日本で日中を過ごしたあとで空港へ向かい出発、ドーハには早朝着なので日中の多様な便へ乗り継げる。帰りは現地滞在最終日を1日満喫したあと、夕方から夜にかけての便で出発してドーハに到着すれば日本行きの便に乗り継げるということになる。
なお、発着時刻は上記と異なるが、訪問時は下記の便で往復している。日本では日中に日常生活を過ごしたあとで空港へ行き、キプロスでは最終日に観光地巡りをしたあとで空港に向かっている。また、ドーハでの乗り継ぎ時間は往復とも2~3時間と、短すぎず長すぎず、多少スケジュールがずれても焦る必要もない絶妙な時間だった。
また、今回は往復ともに成田空港を利用しているものの、日本路線が東京圏へのダブルデイリー体制であることは便の選択肢を広げており、その点でもカタール航空でのドーハ経由アクセスは便利な選択肢だと思う。
QR807便:成田(22時20分)発~ドーハ(翌04時30分)着
QR265便:ドーハ(07時15分)発~ラルナカ(10時25分)着
QR270便:ラルナカ(20時45分)発~ドーハ(翌01時10分)着
QR806便:ドーハ(03時20分)発~成田(19時00分)着
機材は成田~ドーハ便ではボーイング 777型機を使用。運航日によって777-300ER型機と-200LR型機を使い分けている。一方の羽田路線については、2017年6月からエアバス A350-900型機、その前はボーイング 787-8型機で運航と、最新鋭機を使用している。同社はこのような最新鋭機の導入にも積極的で、エアバス A350型機とボーイング 787型機の両方を運用しているうえに、総2階建て機のエアバス A380-800型機も運航。さらに、エアバス A350-1000型機についてはローンチカスタマーにもなっている。
さて、そのカタール航空は、成田空港で第2旅客ターミナルを使用している。成田~ドーハは往路が12時間以上、復路は9時間以上という長いフライトとなるが、エコノミークラスの設備の充実がそれを助けてくれた印象だ。
渡航時に利用したのはボーイング 777-200LR型機で、ビジネスクラスは42席、エコノミークラスは217席の計259席仕様。エコノミークラスに搭乗している。エコノミークラスの座席は3-3-3の9アブレストで、シートピッチは33インチ(84cm弱)。国際線のエコノミークラスとしてはやや広めの感覚を受け、特に12時間以上と長く、夜発~朝着のフライトとなる往路は、いかにしっかり寝られるかを重視していたので、その点ではのんびりと寝て行くことができた。
また、エコノミークラスにもアメニティキットを用意している。キットにはアイマスク、靴下、耳栓、靴下が入っており、まさに「ごゆっくりお休みください」と言わんばかりの内容。これもうれしい。
一方で、3席につき2個のユニバーサルACコンセントを備えているのも便利だし、機内エンタテイメントシステムは日本語コンテンツも多いので楽しめる。エコノミークラスながらいろいろな過ごし方をできる設備を充実させているのは、長いフライトではよりありがたみを感じる部分だ。
機内食は、往路では和食を選んだが、前菜のほかに、ソバ、メインの魚のグリル+白いご飯と、なかなかのボリューム。味はしっかりしており、食べ応えがある。ちょっとしたことだが、白いご飯に青のりを振りかけてあるのもこだわりを感じる。
さらに、デザートも和食と洋食で異なるものにしているのがとてもうれしく、和食メニューの場合は、スポンジに小豆のムースを乗せたもので、和風の味付けの料理を楽しんだあとにピッタリだ。
ちなみに往路の食事は2回。2回目は朝食というにはちょっと早い時間となるが、着陸の少し前に提供される。甘めのオムレツ、ヨーグルト、フルーツと、甘党の記者には最高の朝食で、降機後の活力を与えてくれる(今回は乗り継ぎがあるので、降りてすぐに観光モードになるわけではないのだが)。
乗り継ぎ地であるハマド国際空港は、CIQ施設や免税店などが集まる中央エリアからA~Cの3方向にコンコースが伸び、Cコンコースの先がさらにDとEの2つに分岐する作り。フロアマップは、同空港のWebサイトから確認できる。
構造が非常に分かりやすく、ショップが特定のエリアに集中していることから買い物もしやすい。すべてのコンコースへ中央の広場のような場所から分岐しているので、まずはそこを目指し、案内板を見てA~Eのコンコースへ向かえばOKなので、迷うことはないだろう。最も離れた場所にあるD、Eコンコースへは、空港内をモノレールが走っているのもユニークだ。
さらに、空港内は無料Wi-Fiが整備されているほか、「HIA(Hamad International Airport) Qatar」というスマホアプリも便利だった。このアプリで空港内のマップを確認できるほか、指定された搭乗口までのナビゲートも可能。自分が乗る飛行機の搭乗口が分からない場合や、調べるのが面倒な場合は、搭乗券のバーコードをカメラで読み取らせることで、便名と搭乗口を自動的に調べてナビゲートを開始する機能もあるので、同空港を訪れる際にはとりあえず入れておくことをお勧めしたい。
目的地であるキプロスのラルナカ国際空港へは、ここからエアバス A321型機に乗って移動した。紛争地帯上空を避けるためか、ヨルダンとイスラエルの南側を迂回してシナイ半島上空を通過するルートをとり(日によってはイラクとシリアの北側へ迂回することもあるようだ)、4時間ほどのフライトとなった。
エアバス A321型機は単通路で3-3の6アブレストとなるが、全席にシートモニターとUSB電源ポートを備えており、機内食も出る。パン、ウインナー、ポテト、少しスパイシーなソースがかかったキッシュ、フルーツ、ヨーグルトと、朝食時間帯の機内食ながら十分なボリュームだった。
そして、先述のとおりキプロス最大といってよい玄関口であるラルナカ国際空港。こちらは滑走路もコンコースも1本のみのコンパクトな空港だが、整然としており、機能的な空港という印象を受けた。
出国時の免税店も多彩で、カフェやレストランでのんびりすることもでき、余裕をもって行っても空き時間ができすぎて困ることはないだろう。動線がシンプルで距離が短いので、わりとギリギリまで思い思いの過ごし方をできる。