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JAL初の試み、777退役機に搭乗して米LAへお別れフライト! 前例のない航路はどう生まれた?

2023年5月16日 実施

JALがボーイング 777-200ER退役機の国際フェリーフライト特別搭乗ツアーを催行

 JALとジャルパックは5月16日、ボーイング 777-200ER型機(登録記号:JA701J)退役機のフェリー(輸送)フライトに乗客を乗せるツアーを催行した。目的地はロサンゼルス。売却する退役機の国際フェリーに搭乗できるツアーというのはJAL史上初(本邦初)の試みという。

 JA701Jの退役が決まった際、社内の「フェリーにお客さまを乗せられたらおもしろいのでは」との声をきっかけに、777運航乗務部 副操縦士の会田雄吾氏と山下順平氏、スケジューラーの永瀬智規氏と長野誠也氏が企画を立ち上げ、そこに運航管理者の安立里菜氏と大野暉宙氏が合流。少人数で始めたアイディアが最終的に社内50名規模のプロジェクトになったという。

 ツアーは、5月16日20時羽田発のJL8132便としてロサンゼルスへ向かうもの。通常の日本発ロサンゼルス行きと異なる航路を取り、機体に縁のあるナパバレーやサンフランシスコ上空などを経て、JA701Jの最終的な行き先でもあるビクタービルをローパス(低空飛行)してロサンゼルス空港へと入る、このツアーだけのオリジナル航路となっている。

 また機内では、本ツアーに限り操縦士・運航管理者ではなく添乗員として搭乗した会田氏らが、コクピットからフライトの実況解説を担当。管制とのやり取りや滑走路などについて、タキシング中や離陸といった状況ごとにリアルタイムの説明を加えるという演出が用意されていた。

 ロサンゼルス到着後にはサンタモニカ、ビバリーヒルズ、ハリウッドといった市内を巡るほか、翌日にはビクタービル空港とモハベ空港など、現地の定番スポットを抑えた観光プランもセットになっている。宿泊は滑走路ビューもある「ヒルトン・ロサンゼルス・エアポート」。

 4日間で大人1名(1室2名利用)の旅行代金は、往復ビジネスクラス利用の窓側席で79万2000円、往復エコノミークラスの窓側席で59万7200円。6日間のコースも設定しており、こちらを選ぶと4日目に別料金のオプショナルツアー(ディズニーランドパーク1日、アナハイム野球観戦など)を選択できた。なお、今回の参加者は47名。

 JALは今後もこうした退役機を使った企画を検討しているとのことだ。

ロサンゼルスへのチャーター便JL8132
搭乗前には式典を実施した。右から、日本航空株式会社 777運航乗務部 副操縦士 山下順平氏、副操縦士 会田雄吾氏、顧客データ戦略室 大野暉宙氏、オペレーションコントロール部 安立里菜氏
羽田航空機整備センター機体点検整備部 課長 和田雅洋氏もトークセッションに参加
羽田空港213番スポットでツアー参加者を待つJA701J
JALでのラストフライトがチャーターという特別な便になった
ツアーのために用意したロゴを添付している。写真はL1ドア
L2ドア
R1ドア
左のエンジンカウルに関係者の寄せ書きが。このあとツアー参加者も寄せ書きに参加した
参加者を乗せたバスがスポットに到着。くしくもバスも「777」だが、狙って手配したわけではないという偶然
搭乗までの間、外観の撮影や寄せ書きへの参加などが行なえた
20年間の感謝が綴られるエンジンカウル
搭乗前に記念撮影も
いよいよ機内へ
機内はビジネスクラス、エコノミークラスともロゴを使ったヘッドレストカバーを取り付け
搭乗記念品と搭乗証明書
地上から見送られて離陸へ

運航乗務部4人のアイディアから生まれた前例のないツアー

 ツアー参加者の搭乗前には前述の企画者4名が取材に応じ、プロジェクト誕生から実施当日までの経緯などを説明した。

 会田氏によると、2022年の夏前に777-200ER型機の退役が決まってから、「これまで777を愛してくださった皆さまに恩返しの機会がないか」と運航乗務部で考えていたところ、業務企画職の若手社員から「売却機のフェリーにお客さまを乗せられたら」と発案があり、それをきっかけに有志が集まってプロジェクトがスタート。1年ほどかけて実施にこぎ着けたという。

 とはいえ、売却機のフェリーフライトと乗客を乗せる有償フライトでは通関手続きなどの勝手が異なり、会田氏は「そもそもフェリーに乗客を乗せられるのか」という確認から取りかかる必要があったと説明する。

 ツアーの最終的な日取りが確定したのは3月末~4月頭だそうで、売却契約が成立して、引き渡し前の整備作業の日程などを勘案して決まったそうだ。1年前の時点ではコロナ禍で集客に不安を残す状況だったと言うが、結果的にはマスクルールの変更や水際制限の撤廃など追い風の吹くなかでの催行となった。

 今回のオリジナル航路は会田氏と山下氏が訓練などで縁のある土地を経由するプランになっており、通常の航路とは大きく異なる。搭載する燃料を含むフライトプランは新たに作成する必要があり、その点でも運航管理者の2人が早期に合流したのは大きなポイントになったとのこと。

 その安立氏は遊覧フライトという特性上、どのタイミングでどのくらい高度を下げると地上が見やすくなるかなどに配慮したほか、ビクタービルをローパスしてロサンゼルスへ向かうのは、日本発の定期便と逆側からのアプローチになるため、社内や現地管制と連携してプランを練ったという。一方、大野氏は、今回の機材(JA701J)では性能上飛べない空域があり、それを踏まえてどう経路を組むかというのが難しかったという。

 というのは、JA701Jはもともと短距離~中距離の国際線として運用していたため、北極点と地軸を補正するソフトウェアが導入されておらず、トラブルが発生したときの緊急着陸先として極域に近いアンカレッジ空港などを選択できないという制限がある。

 ちなみに今回のフライトではダイバート先としてミッドウェーとホノルルが選ばれているとのことで、通常よりも南を経由しつつ、かつ北米大陸に近づいてからは西海岸を北からロサンゼルスに向かうため、「本当にこの航路は成立するのか」という点を慎重に何度も検討したそうだ。