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日本政府観光局、水際の規制大幅緩和でプロモーションを積極展開。訪日客の取り込み強化

2022年10月26日 実施

日本政府観光局 理事 中山理映子氏

 JNTO(日本政府観光局)は10月26日、都内でメディアブリーフィングを開催した。

 JNTO理事の中山理映子氏は、10月11日から政府が入国者数の上限を撤廃、観光目的の個人旅行を解禁し、ビザ免除措置を再開するなど、入国制限を大幅に緩和したことに触れ「本格的にインバウンドが開始した」と喜びを示した。解禁から1か月経過していないため訪日客数のデータはまだないが、「所感としては手応えを感じている」という。

 JNTOでは9月22日、岸田文雄総理大臣が訪問中のニューヨークでの記者会見で入国規制の緩和を発表したことを受け、9月23日からSNSでメッセージを発信するとともに30か国以上のメディアにJNTO理事長のメッセージをつけたプレスリリースを発信。ビジット・ジャパン・トラベルマート(VJTM)で来日中の訪日旅行取扱旅行会社18か国・50名超にも情報を即座に提供した。JNTOによれば全市場からポジティブな反応があったほか、MICEなどでも訪日の動きが活発化しているという。

 今後はコロナ禍で実施を制限していた日本への招聘事業や旅行会社・航空会社との共同広告を積極的に展開していく考え。イベントや商談会にも引き続き参加し、訪日旅行の喚起に向けた広告も展開する。

日本政府観光局 海外プロモーション部担当部長 冨岡秀樹氏

 海外プロモーション部担当部長の冨岡秀樹氏によれば、招聘事業については2023年3月にかけて、25市場でメディアや旅行会社、インフルエンサーなどを招聘する。すでに10月上旬に開催されたジャパン・ラグジュアリー・ショーケースに伴う視察旅行で、16市場から旅行会社約40名を招聘。11本のツアーを実施し、ラグジュアリー旅行市場向けの素材を紹介したという。11月からはメディアやインフルエンサーの招聘を本格的に再開する予定だ。

 旅行会社や航空会社との共同広告については、2023年3月までに24市場に向けてそれぞれ展開。これまでは訪日旅行の興味・関心・想起の維持と向上を目的にしたプロモーションが中心だったが、今回の規制緩和を受け、販売促進のためのプロモーションに舵を切り、予約サイトへの誘導を目指す。例えばシンガポールでは航空会社、旅行会社、自治体などと共同で「OKAERI」キャンペーンを実施中という。

 イベントや商談会については、来年3月までにBtoB向けに10市場、BtoC向けに16市場でイベントや商談会に参加する予定。訪日旅行喚起に向けた広告では、全重点・準重点市場での活動を継続。欧米豪向けには日本の旅行先としての認知促進、アジア向けには訪日回数2回から5回程度のライトリピーター向けの再訪日促進をめざし、市場特性に合わせてターゲットを変えて展開する。

旅行消費額5兆円超に向け、高付加価値旅行とアドベンチャートラベルに引き続き注力

 訪日客については、岸田文雄総理大臣が10月3日の所信表明演説において、訪日外国人旅行消費額年間5兆円超の目標を掲げたところ。中山氏は観光庁と協力して実現に向けた取り組みを進めるとしたうえで、「JNTOがやるべきことは立ち上がりを早くプロモーションを仕掛けること。もともとコロナ前から訪日客の消費単価は伸び悩んでいたので、1人頭でどう落としてもらうのか、コロナ前より重点を置いていきたい」と意欲を示した。

 そのための方策として、JNTOが2023年度の重点施策として掲げる「高付加価値旅行」や「アドベンチャーツーリズム」を強化し、消費単価の高い旅行者を呼び込む方針だ。例えば長期滞在者しやすい欧米豪や、スキーなどアクティビティを利用する旅行者をターゲットとして考えているという。

日本政府観光局 市場横断プロモーション部次長 門脇啓太氏

 会見では、市場横断プロモーション部次長の門脇啓太氏が2つの重点施策について改めて説明。高付加価値旅行については1回の旅行で100万円以上の着地消費をする層をターゲットに設定する。具体的には海外旅行の再開が早く、消費力の高い富裕層に加え、ハネムーナーや記念旅行など、消費額が高くなりがちな旅行者をターゲットとして想定しているという。

 門脇氏は富裕層について、贅沢で快適な滞在を好む「クラシック・ラグジュアリー」に加え、近年はミレニアル層や若者を中心に興味関心のある部分に投資し、体験や「本物」に価値を見出す「モダン・ラグジュアリー」が拡大していることを説明。

 特に知的好奇心が旺盛な旅行者は「体験を通じて地域の文化や自然の維持発展、持続可能な観光化に寄与する。オーバーツーリズムの防止という観点でもよい」と意義を説明した。今後は年度内をめどに国内関係者のネットワーク化と専用Webサイトのさらなる充実を目指すほか、ラグジュアリー市場向けの商談会にも積極的に参加する考え。海外での情報発信も強化する。

 アドベンチャートラベルについては、国際組織・ATTA(Adventure Travel Trade Association)が主催する「アドベンチャー・トラベル・ワールド・サミット」が2023年に北海道でリアルイベントとして開催されることを改めて説明。今後はオンラインでの広告展開や、アドベンチャートラベルの最大市場である米国での商談会の参加などにより、情報発信を展開していく方針だ。