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タイ国政府観光庁と日本政府観光局、相互往来の発展に向け連携を強化する趣意書締結。「世界とアジアの観光をリードしたい」

2023年1月18日 締結

タイ国政府観光庁と日本政府観光局は、相互連携を強化する趣意書に合意

 タイ国政府観光庁(TAT)と日本政府観光局(JNTO)は1月18日、日タイ間の相互往来の発展に向けた連携を強化する趣意書(LOI)の締結を行なった。

 同日、都内ホテルの会場では、タイ国政府観光庁 総裁のユッタサック・スパソーン氏と日本政府観光局 理事長の清野智氏、双方による調印式が執り行なわれ、その立会人として駐日タイ王国特命全権大使 シントン・ラーピセートパン氏と観光庁 国際観光部長 星野光明氏が臨席した。

 また旅行業界を代表し、日本旅行業協会(JATA)理事長 志村格氏が来賓として参加。そのほか観光庁 東アジア市場推進室長の寺井陽子氏、JNTOからは理事 蜷川彰氏と海外プロモーション部長 笈田雅樹氏、そしてTATからは東アジア局長 チューウィット・シリウェーチャクン氏と東京事務所、大阪事務所、福岡事務所の各所長ら、計12名の関係者が出席した。

駐日タイ王国特命全権大使 シントン・ラーピセートパン氏「観光とは、日本とタイを繋ぐ橋のようなもの」

 まず式の冒頭、駐日タイ王国特命全権大使 シントン・ラーピセートパン氏がタイ政府を代表し、「双方の観光促進に向けた趣意書調印式に参加できたことを大変喜ばしく思う」と挨拶。

 2022年、日本とタイが近代国家として日タイ修好135周年を祝賀したことは記憶に新しく、「両国は政治、経済、社会、文化、そして観光など、あらゆる分野で交流を発展させ、現在、包括的・戦略的パートナーシップにある。新型コロナウイルスの感染拡大から約3年間にわたり、日本やタイはもちろん世界中が甚大な影響を受け、人々の自由な往来が困難となった。そのなかでも両国のこうした努力が止むことはなかった」と、日タイ間の絆を改めて振り返った。

 また、世界中で新型コロナのワクチン接種が進み、感染対策もより効率的となり、日本やタイにおいても渡航制限や水際対策が段階的に緩和されてきた情勢から、今回の趣意書は「両国の協力関係をより強固なものにし、相互の国益に寄与するもの。主要な収入源となっている観光業界の回復を支え、活性化させるための重要な枠組みとなるだろう」と同氏。

2019年には日本から180万人の旅行者がタイを訪れ、またタイからも130万人の旅行者が訪れた「大変バランスのとれたマーケット」という(JATA 志村氏)

 本日付けで合意された趣意書調印の背景には、インバウンドとアウトバウンドの側面から2つの目標が掲げられている。1点は、2019年の渡航者数を見るとタイと日本はASEANのなかでも“ツーウェイツーリズム”の関係が成り立っているように、アフターコロナにおいてもこのバランスを維持できるように努めること。

 2点目は、ツーウェイツーリズムを推奨するために、日本の地方空港を活性化できるような相互プロモーション(例えばチャーターなど)の機会を増やすことを検討すること。本締結はこれらを考慮した共同プロジェクトの立ち上げを後押しするものだとした。

 観光庁 国際観光部長 星野光明氏は、大きな打撃を与えた新型コロナが引き続き目の前にあるとしながらも「世界の潮流はコロナといかに共存していくかという方向に舵を切っている。安全・安心を確保したうえで、コロナ前の経済水準にどうやって戻していくか」と提起。日本も2022年10月から水際措置を緩和し、本格的な観光が再開。海外からの観光客も徐々に増えつつある。

 また同年11月には、「JNTOがバンコクにおいて『日泰観光セミナー』を開催し、岸田総理からタイの皆さまに向けて日本観光の魅力を大々的に宣伝・紹介させていただいた。このように我々日本とタイとの協力関係は非常に重要なものである」との認識を述べた。

観光庁 国際観光部長 星野光明氏「今年は兎年。コロナ前の回復にとどまらず、大きな飛躍の年になるように」と祈念

 また星野氏は、本LOIが同セミナーに前後して取りまとめられた「日タイ戦略的経済連携5か年計画」の協力の1つにも位置付けられるとし、「ほかの国に比べて遅れていたアジアの観光回復を後押しするとともに、日本とタイで世界の観光をリードしていくうえでも非常に重要になってくる」と期待を示した。

 さらに2023年、日本は新たに「観光再始動事業」を開始するが「大自然の魅力を生かした特別な体験を準備して、多くの日本来訪をお待ちしたい」とアピール。

JATA 理事長 志村格氏「タイに向けた観光促進策を積極的にとりたい」

 来賓のJATA 理事長 志村格氏は「日本からのアウトバウンドを推進する立場として、日本とタイの相互交流が早期に復活することを大いに期待する。JATAとしても多くの日本人にタイを訪問してもらえるよう、タイ国政府観光庁と連携を密にとり、食やアクティビティ、自然などを強力に発信していきたい」と意気込んだ。

 志村氏によると、タイへ訪問する日本人の目的としてまずタイの食事、それから古代遺跡、そして自然のビーチリゾートが上位を占めており、「日本の旅行会社にとっては非常に分かりやすく、アピールポイントが明確」という。

 またタイはホテルや企業向けのコンベンション施設も充実しており、「減少した航空便が回復すれば需要も回復する」と志村氏。日本人の訪タイが不調なのは、「円安や物価・燃油高などの足かせもあるが、“感染したらどうしよう”“人からどう見られるか”という日本人ならではの周囲への配慮によるところは否定できない」としつつも、「海外旅行の根強い欲求は確実にあるので、消費者のマインドを今回のようなイベントを通じて改善していきたい」とした。

立会人が見守るなか、両国の代表により調印された
日タイ間の相互往来の発展に向けた連携を強化する趣意書を締結

 趣意書に調印を終えたTAT 総裁のユッタサック・スパソーン氏は、次のようにコメント。「これまで北海道、秋田県、栃木県、和歌山県、仙台市など、日本各地の自治体や観光推進機構と相互観光交流の促進を目的とした協力関係を築いてきた。(省略)私たちは両国間の成長する旅行需要のもと、航空便の拡充を目指す協力を惜しまない。タイ国政府観光庁では2023年、海外からの訪タイ旅客数2000万人を目標にかかげている。そのうち日本からは約100万人(対2019年比は約60%)をお迎えしたい」という。

TAT 総裁のユッタサック・スパソーン氏

 また今後、日タイ間で観光促進に向けた多様な情報やノウハウを共有していくためのキーワードとして同氏は“5つのF”を挙げ、食(Food)、映像(Film)、ファブリックやデザイン(Fashion)、国技のムエタイ(Fighting)、そしてお祭りやイベント(Festival)によって世界にタイの魅力を発信するという。「これらの“ソフトパワー”こそが新たな旅行意欲を創出し、両国が世界をリードしていける分野」と語った。

JNTO 理事長の清野智氏

 続いてJNTO 理事長の清野智氏は「タイではいち早く、2021年11月から外国人観光客の本格的な受け入れが再開されている。一方日本では、2022年10月から個人観光が再開された。12月のタイからの訪日旅行者数は、コロナ前(2019年同月比)の50%程度で、順調に回復している。そして今後もさらに伸びていくものと確信している」という。

 タイ人が好む日本の雪や花、温泉などはもちろん、まだ知られざる魅力を発信しつつ「東京から大阪、京都といった、いわゆるゴールデンルート以外の地域にも興味関心を持っていただくために、中央航空路線を強化することも非常に重要」で、タイの航空会社や日本の地方空港との連携が課題であるとした。

記念品を交換し合う両国の代表
調印式には総勢12名の関係者・来賓が出席した