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翻訳内容を音声にして出力してくれる「ポケトーク同時通訳」今冬提供。「音声付きは理解に3倍の差」と松田社長

2022年10月12日 実施

ポケトークがPC用のAI通訳ソフト「ポケトーク同時通訳」を発表

 ポケトークは10月12日、リアルタイムに翻訳できるPC用ソフト「ポケトーク同時通訳」を発表した。現在リリースされている「ポケトーク字幕」を進化させたもので、相手が話した言語を即座に字幕表示させる機能に加え、翻訳した内容を音声でも出力してくれる。リリース時期については現在開発中とのことで、今冬に提供を開始するとしている。

ポケトーク株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 松田憲幸氏

 発表会では、ポケトークの代表取締役社長 兼 CEOで、ソースネクストの代表取締役会長 兼 CEOでもある松田憲幸氏が「ポケトーク同時通訳」と事業戦略について説明した。

 ポケトークは松田氏が「言葉の壁をなくす」というコンセプトのもと、2001年から事業を開始し、5年前には小型の通訳端末「ポケトーク」をリリース。その後はニューモデルを投入しつつ、リモート会議で使えるPC用ソフト「ポケトーク字幕」を2022年1月に発売している。2月には事業に注力するためにソースネクストから会社分割し、ブランド名を冠する「ポケトーク株式会社」を設立。4月にはiOSとAndroid端末向けの「ポケトーク アプリ」もリリースし、現在は専用端末、モバイルアプリ、PC用ソフトの3種類をラインアップしていることを説明した。

ポケトークの現在のラインアップ

 順調に売り上げを伸ばしてきたポケトークだが、2020年から蔓延し始めた新型コロナウイルス感染症に対する水際対策の影響で訪日外国人は激減し、出国する日本人も大幅に減少するなど、取り巻く環境は悪化した。

 しかし、直近に撤廃された入国者数の上限、水際対策の緩和、外国人旅行者の個人旅行の解禁など環境は好転し、空港には各国から観光客が訪れ始めたことを紹介。これらにより今後は観光産業が盛り上がっていくと同社は見ており、観光業支援として事業者に対し、ポケトークを11月30日まで無償で貸与するキャンペーンを行なうことを説明した。

 松田氏はさまざまな準備に時間をとられている事業者が多くいるとし、「このキャンペーンによって、少しでも観光産業の支援ができればと思っています」と話した。

観光産業を支援するとして、11月末まで最大3000 台のポケトークを無償貸与する

 同社はアメリカでも事業展開しており、現在の状況についても説明した。こちらでも順調に売り上げは伸長しており、2022年3月期は前年と比べて3.4倍と好調に推移している。コロナ禍においても医療現場、学校などの教育現場、運転免許センター、運輸業などにおいて需要は旺盛で、学校などは1000台単位の大ロットで導入する事例も数多くあるという。背景には英語を母国語としない移民が多く、それに加えて労働力も不足している現状から多くのニーズがあると説明した。

アメリカにおける売り上げの推移
移民を多く受け入れているアメリカでは、病院や警察、学校などでポケトークを導入している
製造業においても労働人口が圧倒的に不足している
アメリカでは今後も移民の比率と数が多くなっていくと予想されている

 日本における労働人口の減少も喫緊の課題であり、外国人労働者を受け入れたいが躊躇している企業も多く、理由として言葉の壁が非常に大きいことも紹介した。従来までは訪日観光における言葉の壁を解消するためのソリューションとして提供してきたが、加えて労働現場における円滑なコミュニケーションをグローバルで展開し、世界情勢が不安定のなか、人道支援にも力を入れていくと話した。そのような考えもあり、今回はポケトーク同時通訳をリリースすることを決定。外国人とのコミュニケーションを時間や高いコストをかけずに行ない、ビジネスチャンスの損失を防ぐ有力なソリューションになるとアピールした。

日本の労働人口の推移
企業において言葉の壁があることが採用できない理由の1位になっている
コミュニケーションの齟齬がビジネスの損失につながる
通訳・翻訳のコストが高いと回答する経営者が多い
ウクライナの避難民に対して、ポケトークを寄贈することで人道支援を行なっている

 デモンストレーションでは、英語を使う男性とPCを通じて簡単な会話を行なった。ポケトーク同時通訳はポケトーク字幕と同じように常駐するソフトで、音声入力を検知したら即座に分析して字幕を画面に表示する。それに加え、新機能である音声でも出力してくれる。字幕が表示されたあと、少し遅れて合成された日本語で翻訳内容を話しかけてくる仕組みだ。

 松田氏は日本語で聞いて理解できるというのが非常に大きく、「映画やドラマの字幕はかなり省略して出さないと人間の頭がついていかない問題があります。これが音声もあると、個人差はあるが3倍ほど理解力に差が出てくる」とし、新しい機能がさらなる円滑なコミュニケーションにつながると話した。想定している使用場面については、オンライン会議のほか、商談などの対面に外国人の話者がいるようなシーンでも使えると説明した。

デモンストレーションの様子。外国人男性が英語で話すと字幕が表示され、翻訳した内容を日本語の音声として出力する
ポケトーク同時通訳の特徴としては、オンラインだけでなく、対面でも使えるとしている
ポケトーク字幕とポケトーク同時通訳を比較した表

 松田氏はアメリカに移り住んで10年になるが、いろいろ見てきたなかでグローバルスタンダードな英語を母国語とするアドバンテージは非常に大きいと感じたそうだ。このままではアメリカと日本の差はどんどん広がってしまうとし、その差をなくすためにも今後も“言葉の壁をなくす”というコンセプトを掲げ、サービスを展開していきたいと話した。