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東京キャンピングカーショー2022で見た、キャンピングカー最新のニーズとは

2022年7月23日~24日開催

キャンピングカーを利用する旅はアウトドア趣味ではなく「インドア志向の旅」という。それゆえに快適性が年々高まっているのだ

 7月23日から24日に渡り、東京都江東区にある東京ビッグサイトにて、日本RV協会(JRVA)主催の「東京キャンピングカーショー2022」が開催された。

 今回は東京ビッグサイト東館エリアに新設された東7・8ホールを使用し、50社以上のキャンピングカーメーカー、販売店が出展。大型のフルコンバージョンタイプから軽キャンパーまで多くのキャンピングカーが展示された。

 ここ数年、キャンピングカーの人気は高い水準を維持していて、JRVAによると日本国内のキャンピングカー保有台数は約12万7400台とのこと。また、2020年の生産台数は7435台と発表された。キャンピングカーは内装の架装などを1台ずつ手作りで行なうため、1台の製作に日数がかかる。それだけに、年間7000台は「かなり」売れていると言ってよいだろう。こうした状況ゆえに多くのモデルでは注文から納車まで1年前後を待つことになるそうだ。

東京ビッグサイト 東7・8ホールで開催された「東京キャンピングカーショー2022」。新型コロナウイルス感染者数が増えてきているなかの開催だったが多くの来場者が訪れたことからキャンピングカーへの注目度の高さが伺える
人気アニメの劇場版作品「映画 ゆるキャン△」も特設コーナーを展開。TVアニメ版のラッピング仕様軽キャンパーの展示とグッズ物販が行なわれていた
運転席部分はアウトドアグッズをイメージする民族柄のラッピング。右側には主要キャラクターの各務原なでしこを用いたデザイン
左面は主要キャラクターの志摩リンをあしらった
背面はTVアニメ2期の主要キャラクターを並べている

 日本でのキャンピングカー事情は、トヨタのハイエースを筆頭に商用バンの内装を改造したバンコンバージョン(バンコン)タイプの人気は安定しているが、1人、もしくは2人での旅行に適した軽キャンパーやミドルサイズのバンベースのバンコンの人気も年々高まってきた。

 そして2022年だがショーに展示されているキャンピングカーを見る限りでは昨年と大きな違いないように見えた。そこで今回は主催のJRVAのブースへ行き、2022年のトレンドなど伺ってみることにした。

JRVA理事 高橋氏「キャンピングカーユーザーはインドア派が多い」

一般社団法人日本RV協会(JRVA)ブース
一般社団法人日本RV協会 理事・副会長 振興部会担当の高橋宣行氏。高橋氏はくるま度クラブ株式会社 代表取締役社長も務めている

 対応していただいたのはJRVA 理事・副会長 振興部会担当の高橋宣行氏。高橋氏によるとキャンピングカーは以前から旅行好きな人が利用していたが、新型コロナウイルス感染症の流行から「密になることを避けられる旅行のスタイル」として注目されるようになったという。また、海外旅行に行くことが難しくなっていることもキャンピングカーを使った国内旅行の活発化につながっていると考えているそうだ。

 こうした流れからユーザーが増えているキャンピングカー。この状況は同じくコロナ禍で人気を伸ばしたキャンプなどのアウトドアレジャーと同一のものだと思うところだが、高橋氏からは意外な言葉が聞けた。高橋氏いわく「キャンピングカーを利用するレジャーのことをアウトドアレジャーと結びつけることが多いですが、実はそうではないことが多いのです。キャンピングカーユーザーにはインドア派が多いと言ってもいいでしょう」と言う。

 続けて「キャンプ地でのたき火やバーベキューや楽しいものなので、アウトドアレジャーが好きであればそれを目的に出かける方もいらっしゃいますが、キャンピングカーユーザーはそういったことが目的でないことが多いです。目的地や宿泊地に自由度のある旅行がしたいという考えはキャンプ好きな方と同じでしょうが、そこに“快適な部屋を持ち込みたい、“自宅のようにくつろげる空間を外でも楽しみたい”と考えるのです。そのためにキャンピングカーを購入しているのです」という。

 また、キャンピングカーを選ぶ人にはペットを飼っている人が多いのも特徴という。ペットと一緒に宿泊できる施設は増えているが、やはり限られた存在でもある。するとほかに行ってみたいところがあってもそこを目的地に選べない。旅慣れてくるほどこれには不自由さを感じるようだ。

 JRVAではキャンピングカーでの旅行をサポートするため車中泊専用スペースである「RVパーク」を日本全国に広めている。高橋氏によるとRVパークは観光用の宿泊施設がない地域にも観光客を呼べるものなので、地域の活性化につながるものとのこと。実際、高橋氏は全国の自治体に出向いてRVパークの新設に尽力しているというだけに、今後、キャンピングカーを利用する(車中泊)旅行がより便利になっていくのだろう。

JRVAではキャンピングカーを使った楽しみを広げるだけでなくマナーの啓蒙も行なう。また、近年、発災時の避難場所としてキャンピングカーの利用を考える人も多いと言うのこと。JRVAのWebサイトではさまざまな情報を発信している

 JRVAの高橋氏に話にもあったように、旅先での快適な部屋という視点で選ぶのがキャンピングカー購入時の代表的パターンのようだ。そういった視点で東京キャンピングカーショーの会場を見回すとニーズに合う車両がとても多いことに気がつく。そこで以下は快適というワードから目に付いたキャンピングカーを何台か紹介していこう。

室内の快適さで見る展示車両

 まずはトヨタのハイエースのベースとしたキャンピングカー。ハイエースキャンパーは主流なので本当に多くの魅力的なモデルが作られているが、そのなからオーエムシーが出展していた「ナロー銀河」というモデルを紹介しよう。

 ベースはハイエースバン GLパッケージ 標準ボディ・ハイルーフ特設車で、エンジンはガソリンとディーゼルが選べる。装備などなど詳しい情報はオーエムシーさんのWebサイトを参照してもらうとして、このモデルには2つの特徴があった。その点は画像で紹介するが快適そうと言うだけでなく「車中泊とはまた違う、独特の旅情が味わえそう」という雰囲気が感じられた作りだった。

株式会社オーエムシーが出展していた「ナロー銀河」。標準ボディがベース。ワイドボディベースの「銀河」もラインアップする
寝台列車をイメージした2段ベッドを採用。長さは1850mmで幅は650~700mm。上段を外すとソファになるが展開したままでも部屋として十分機能する。テーブル部もベッドになるので3名就寝可能
シンクや冷蔵庫も完備。オプションで車載用クーラーや家庭用エアコンも設置できる
室内スペースを広く取るのが基本のキャンピングカーだが、銀河はあえて2ルームとして後方に簡易トイレを置くスペースを設けた。トイレまでが遠かったり、冬の朝など外に出たくないときに車内で用が足せるメリットは大きい。特に女性に好評という
快適な部屋を旅先に持参するというテーマであるなら装備は充実していた方がよい。そういった視点で豪華な仕様のハイエースキャンパーは多いが、大柄なハイエースと言えども室内高は大人が立って移動できるほどはない。そこでポップアップルーフ。これなら室内をまっすぐ立って移動できる。画像は株式会社ケイワークスのオーロラ エクスクルーシブ
オーロラ エクスクルーシブのインテリア。この車両にはソーラーパネル+リチウムイオンバッテリーのオフグリッドシステムで稼働するエアコンも標準装備。部屋として十分快適
ポップアップルーフ。天井が高いのは居心地のよさに大きく影響する
家庭用エアコンを搭載するモデルも増えている。家庭用エアコンには大きな室外機がセットだが、ハイエースでは片側のドアに穴をあけてそこに室外機を埋めこむ手法を取る。使用しないときはふたができる。電源は100Vなので電源付きサイトで使用する
株式会社タコスのハイエース3B(サンビー)というモデル。国産家庭用エアコン(6畳用)が標準装備
ハイエース3Bのインテリア。これはリビングモード

 ハイエースより小さくて軽自動車より大きいといういわゆる「ちょうどよさ」から人気のあるトヨタのタウンエース&ライトエース、それに日産のNV200。これらをベースにしたキャンピングカーも多数出展されていたが、今年の傾向として4ナンバーではなく8ナンバー登録にする仕様が増えていた。

 これらミドルサイズのワンボックスカーは軽キャンパーからの乗り換えも多いという。動力性能的に余裕が出るので移動時の快適性は確かに向上する。しかし、車内スペースの両サイドに棚やシンクを設けるとベッドスペースはそれほど広く取れないので、就寝時の環境は軽キャンパーとあまり変わらないこともあるという。そこで後席スペースを宿泊に適した作りに変更。

 写真はStage21が出展していた「リゾートデュオ ルクシオプロ」で、こちらは水道設備や棚をテール開口部側へ設置。これにより車室内幅をベッドスペースとして有効に使用でき、キャンピングカー8ナンバー登録の要件を満たせるようなった。また、8ナンバー登録になることでキャンピングカーでも4名乗車が可能になるので、普段使いでの不便さが解消。さらに車検などの面で小型貨物4ナンバー車よりユーザーのメリットも増えるのだ。

株式会社Stage21のコンパクトキャンピングカー「リゾートデュオ ルクシオプロ」。初日に用意していたパンフレットがなくなるくらい注目度があったようだ
「リゾートデュオ ルクシオプロ」の居室スペース。横幅を目一杯ベッドスペースとして使えるので大人2名で寝ても寝返りが打てるという
テール開口部側に棚を設ける。水道設備や冷蔵庫、簡易クーラーなど装備。後方から水道設備にアクセスできるので車外でシャワーなど使える
こちらは株式会社フロット・モービルの「シュピーレン」。このモデルも小型貨物4ナンバー展開だったが、ユーザーメリットの多い8ナンバー登録化したモデルを追加
室内の様子。小型貨物4ナンバー仕様も使い勝手に定評があるが車検は毎年。キャンピングカー登録は2年ごとという利点がある。設備が増える分4ナンバー仕様より30~40万円ほど価格が高くなる。水道設備のほか冷蔵庫も大型になり、高速道路ドライブで便利なクルーズコントロールも装備する
天井に室内空気の入れ換えようにファンを設ける。これがあるだけでも快適性が向上するという

 人気の軽キャンパーでは最近フルモデルチェンジを受けたダイハツのアトレーとハイゼットトラックの出展が増えていた。最新のアトレー、ハイゼットにはダイハツの予防安全技術である「スマートアシスト」が採用されているので安全面や走行安定性も高くトラックを含めて2ペダル車がCVTとなっているので走行フィーリングがなめらか。また、アトレーではターボエンジン搭載車もあるので軽キャンパーの多くが苦手としていた高速道路ドライブも余裕でこなすことができるようになっている。軽キャンパーユーザーは増加傾向と言うが、アトレーとハイゼットの登場によりクルマ選びのは場も広まったのでより活性化してくるだろう。

株式会社メティオの「ラクネル・リリィ」は便利さや品質のよさだけでなく、軽キャンパーならではのカワイらしさも考えた作りが特徴のモデル。ハイゼット・カーゴがベース。アトレーベースは「ラクネル・バンツアー アトレーVer.がある
ラクネル・リリィのインテリア。ベッドスペースはフロアにアルミフレームを組んで作っていて、ベッドとフロアの間は収納スペースになっている
サブバッテリーを搭載しているので車内で電気製品が使用できる。走行時に充電することも可能だ
株式会社三島ダイハツ キャンピングカー事業部のオリジナル軽キャンパーシリーズ「クオッカ ワナビー」ハイゼットトラックがベース
新型になってスマートアシストが装備され、ミッションもCVTになったことで、従来の軽トラとはまるで違う快適さとなった。キャビンの作りは前のモデルとほぼ一緒だがサイドに乗りお利用の折りたたみステップが設定された
クオッカ ワナビーはさまざまな家具レイアウトが可能。木製家具は富士ヒノキ。山小屋のような雰囲気
大阪マリナ'RVが展示していた「キャビン2ミニ ベース(イベント特別仕様車)」。ベースはアトレーRS。イベント限定装備を特価で提供するモデルだった。ターボエンジン搭載車なので高速道路ドライブも余裕でこなす
壁面に棚を設けてポータブル電源や調理器具をセット。スペースを有効に使っている
スライドドアの窓からも換気ができるようにしたオプションも設定。網戸も付いているので換気をしつつ虫の侵入を防げる
インドア派のキャンピングカーとは違いこちらはアウトドア派のアイテム、ルーフテント。株式会社コイズミ カルコア事業部が出展していたポルトガル生まれのルーフテント「ジェームス・バロウド」ジムニーシエラにセットした展示だったがイメージはピッタリ
メッシュ仕様にすると目線の高さもあって独特の開放感が得られる。テントのフライシートのようなカバーをすることで雨でも使用できる。ルーフテントは走行中や使用しないときは閉じてセットできる
このジムニーはキャンプ仕様になっていた。テールゲートを開けると調理セットが現われる。オーバーランドジャパンでこの車両をレンタルできる
ここからは会場で見かけた興味を引くアイテムを紹介。まずはハイエースキャンパーでも紹介したケイワークの「TRAIL WORKS 520 トイホーラー・ガレージ」牽引免許が必要なトレーラーとなり内装はガレージ仕様。展示はSSバイクを積んだバイクガレージとなっていた
内寸は3940×2000(全長×全幅mm)で、外寸法の高さは2630mm。奥には水まわりのギャレーとカセットコンロもある。後方のゲートは上から開くがダンパーが効いているのでゆっくり開くことができる。先端が路面につくときもゆっくりなので安全。締めるときも片手でラクに持ち上がる
キャンピング仕様にもできる。トレーラーの壁には断熱材や断熱処理が施されているので快適性も高い
日本のバッテリーメーカーであるオンリースタイルが出品していた車載向けリチウムイオンバッテリー。大きな特徴はバッテリーをオリジナルのスチールケースで覆っていること。これはもしもの事故の際にバッテリーケースが破損しないための対策。リチウムイオンバッテリーはある種の危険性もあるのでこれは目からウロコの仕様
オンリースタイルのバッテリーは密度を抑えているのも特徴。バッテリー性能的に言えば高密度の方が評価される傾向だが、高密度だとなにかあったときの危険性も高いのであえて低めにしているという
3750w/300AHの大容量版も発売予定。ぶつけたり落としたりと衝撃を加えることを避けたいリチウムイオンバッテリーだけにスチールケース入り、密度を抑えた仕様は安心できる
ルーフテントでも紹介したコイズミのポータブル電子レンジ。100V仕様だがあえて出力を抑えた設定なので車載の電源に負荷をかけにくいのが特徴。温め過ぎることがないのでコンビニ弁当やおむすびの温めに向いているという
トヨタ ハイエースに標準装備されているエアコンを外部電源(100V)で使用できるようにするシステムの提案を行なっていた。あるベンチャーからの出展で販売予定などはまだなく、市場の評価を聞くための出展という
ベースの車体に追加されるコントロールユニット
床下には外部電源でエアコンを動かすための装置が追加。配管類は車載エアコンと接続されるので仕様はシンプル。ボディ加工なども不要
純正エアコンは室内の温度センサーだけでなく日照センサーなどからも情報を取って温度設定をしているし、風の吹き出し口の数、形状なども車内スペースにあわせた作りなのでこれを使えるとキャンピングカーの空調に大きな革命が起こるはず