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居住性重視で安定人気の軽キャン~ミドルクラスの最新キャンピングカーを徹底チェック。トレーラーのガス問題を解決するアイディアも

「東京キャンピングカーショー2023」レポ

2023年7月1日~2日 開催

東京ビッグサイトで開催された東京キャンピングカーショー。今年は過去最大となる展示車数となった

 東京キャンピングカーショー実行委員会は、「東京キャンピングカーショー2023」を東京ビッグサイトで7月1日~2日に開催した。

 東京キャンピングカーショーは毎年2月に幕張メッセで開催されるジャパンキャンピングカーショーから始まるキャンピングカーショーの全国行脚の一環としての位置づけではあるが、毎回、来場者が多い東京ビッグサイトでの開催とあり、今回は過去最大となる90社、200台以上の出展となった。

日本RV協会に聞く最近のキャンピングカー事情

日本RV協会広報の佐野明里氏に近年のキャンピングカー事情を伺った

 毎年、販売および登録台数を増やしているキャンピングカー。日本RV協会の調査によると2022年は8742台のキャンピングカーが新たに生産されたという。10年前は4536台だったので約2倍の伸びである。また、キャンピングカーの累積保有台数は約14万5000台となっている。

 このような台数の増加は単にブームというだけでなく、日本のキャンピングカー業界がユーザーのニーズに合わせて、軽自動車クラスから装備が充実したハイエンドモデルまで、さまざまなタイプの車両をリリースしてきたことが大きな原動力になっている。

 また、最近は「バンライフ」と呼ばれる趣味と車中泊を組み合わせたクルマ遊びを楽しむ人が増えているので、寝泊まりできるクルマではあるが、キャンピングカーとは違ったテイストを持つ車両も登場して人気となっている。それに近年増えている女性キャンパーはテント泊より安全性の高い車中泊、オートキャンプを選ぶ傾向もあるなど、キャンピングカーを取り巻く環境はますます人気が高まっていくと予想されている。

国内のキャンピングカー生産台数の推移。10年前と比べると約2倍となっている
キャンピングカーの累積保有台数は14万5000台。オートキャンプや車中泊を楽しむ人が増えたことで手頃な価格のキャンピングカーが発売されたこともその要因
キャンピングカーの利用法。旅行が多いのは当然だが、その内容を細かく見ると「ペットと一緒に出かけるため」にキャンピングカーを購入する人も多い。また、災害時の避難場所としても考えている人もいる
キャンピングカーの旅をサポートするため、日本RV協会が全国に展開しているのが「RVパーク」という車中泊施設。こちらはキャンピングカーだけでなく、普通のクルマでの車中泊ユーザーも利用可能。トラベル Watchでも施設の利用レポートを掲載している

装備充実で根強い人気の軽キャンパー&ミドルクラスキャンパー

 さて、それでは東京キャンピングカーショー会場の紹介をしていこう。まずは人気の高い軽自動車ベースの軽キャンパーや、日産NV200、トヨタライトエース系などをベースにした車両だ。

 居住性を重視するキャンピングカーゆえにベース車は大型化する傾向ではあるが、日本の駐車場事情や道路事情を考慮すると軽キャンパーや小型バンサイズが扱いやすい。

 また、ソロや2名程度での旅が主体であれば居住空間は十分に広く、それどころか4名以上で就寝することを想定した大型バンベースのキャンピングカーより、ベッドを含めた家具類のサイズがコンパクトに収まるので、テーブルを展開した際の足元スペースを広く取れているモデルもある。

 キャンピングカーは車内で過ごす時間が長いので、装備の充実と同じくらい居住性のよさは重要。それだけに長い時間利用するテーブルスペースの居心地のよさはクルマの印象に大きく影響するので、少人数での使用が前提であれば大型バンより居住性がよいと感じることもあるそうだ。

カーショップ スリーセブンの「N-CAN」。就寝定員は2名。走行充電器、外部充電器(コード付き)は標準装備。近頃は軽キャンパーでもDCクーラーの装着が定番となっている
就寝定員は2名だがソロでの利用も多いそう。ルーフには断熱加工がされている
DCクーラーはオプションだがほとんどの人が装着するという。2000Wポータブルバッテリーでは3~4時間ほど動かすことができる
K WORKSのエクスクルーシブ ミニバード。ダイハツアトレーがベース。ターボエンジン、4WDも選べる。ハイクオリティな家具や1800×1050mmサイズのフラットベッドを装備。引き出し式のキャンプテーブルもセットできる
電子レンジを標準装備している。エアコンはオプションで右スライドドア部に付く
ルートシックスのコンフィ。ベースはダイハツアトレー。リン酸鉄リチウムイオンバッテリー、12Vクーラー、FFヒーター、1500Wインバーター、ソーラーパネル、ソーラー&走行充電など標準装備
クーラーや電気装備類は家具にインストールされている。収納スペースも多く取られている。ベッド長は1800mm。天井やドア、リアハッチなどは断熱処理が施されている
こちらもルートシックス製。スズキエブリィがベースのウォームスライトというモデル。装備をシンプルにしたバンライフ仕様となっている。エクステエリアはジムニー風の社外フェイスキットなどでドレスアップしている。サイドオーニングはオプションだがこれは付けたい装備
ちょっとした洗い物、手洗い、歯磨きなどもあるので、車中泊仕様では小型でもシンクはあった方がよい。ベッドの長さは1800mmとなっている
毎回、軽キャンパーを出展していたオートワンが展示していたのが、マツダのボンゴバン(OEM車)ベースの普通車キャンピングカーの「給電ACE」を展示。スペースのない軽キャンパー作りで得たノウハウを取り入れた多機能仕様となっている。オプションで100Aサブバッテリー、2000Wインバーター。100Wソーラーパネル、バッテリーチャージャーなど用意される
就寝定員は2名なので室内は広く使える。家具類はDIYで好みの色に塗ることを前提とした未塗装仕上げ。塗装しての納車ももちろん可能だ
こちらも給電ACE。電子レンジや小型のシンクを装備
シート下に広めの収納スペースがある。背もたれは取り外すとベッドのパーツの一部となる。ベッドへの展開も容易だという
カーショップ スリーセブンが展示していたアレグロ。日産NV200GXがベースで8ナンバー登録になる。ポップアップルーフはオプション品。就寝スペースとしてだけでなく荷物を置く場所としても使える
DCエアコン、2000Whポータブルバッテリー、外部電源入力コードが標準装備。テーブル下スペースは余裕があるので座る位置によっては足を前に投げ出せる
ホワイトハウスが展示していた新型ステップワゴンベースのDECK ONE。ポップアップルーフやソーラーパネルを装備
室内は6名乗車のシートレイアウトから4名就寝可能なベッドモードに変更できる
引き出し式のテーブルを装備するので、泊まるだけでなくアウトドアでの調理や食事も楽しめる
デリカD:5ベースのD:5クルーズ。スライド機能付きREVOセカンドシート、着脱式テーブル、遮光カーテン、リチウムイオンサブバッテリーシステム、1500Wインバーターなど標準装備。ポップアップルーフはオプション
最新のミニバンは先進の運転支援装備も搭載しているので長距離移動が楽。この性能はハイエースなど商用車ベースのキャンピングカーにはないので、運転が楽なクルマを希望するならミニバンベースのキャンピングカーを選ぶとよいだろう
後席は左右の壁に沿ってセットでき、真ん中にテーブルが着くレイアウトが可能。この仕様では後席が車体に対して縦向きになるので、座った体制から窮屈にならずに寝転がることもできる
レクビィ製のホビクル オーバーランダー。ハイエース ロングバンS-GLがベース。乗車定員は5名、就寝定員は3名
デニム調の生地を使ったインテエリアが特徴。バンライフ向けなので作りはあえてシンプルにしている。2列目のシートの足元にテーブルが付き、前席の背もたれを前倒し、クッションをあわせることで後ろ向きの座席を作り出している
リアのベッドは高さが変更できるので、趣味の道具を積むのも容易。フロアには小ぶりな家具があるが、これも簡単に取り外して降ろすことができるので荷室の使い勝手はよい
スティランティス・ジャパンのフィアットプロフェッショナルブランドから正規輸入されているフィアット デュカトをベースにしたキャンピングカーも増えている。これはナッツRV製のFORTUNA。バンコンタイプだが全高が高いので室内でまっすぐ立って移動することができる
FORTUNAの車内。前席は標準で回転シート
なんとベッドは電動で昇降できるタイプ。使用しないときは天井側へ上げている
キャンピングカーランド製のウラル。ハイエースの後方を切断してシェルを載せたキャブコンタイプだが、もとのボディを切っていることから車体の剛性を確保するため、シェルには鋼鉄製のベースフレームが入っている。これにより改造申請も通っていて安心して走行できるという
ウラルのシェル部解説資料。かなりしっかりとフレームが入る。また、フレームを入れるための厚みを利用して断熱材も通常のシェルより多くはいるようにしている。また、ドアもヒンジを含めてクルマ用を使っているので長年開け閉めしてもトラブルがないという
キャブコンなので室内も広い。後方のベッド下にはこれだけに荷物入れがあるので長期の旅行も余裕だ

キャンピングトレーラーの人気も高い

 装備のよいキャンピングカーでも、バンベースのバンコンタイプでは室内高の関係で大人が車内をまっすぐ立って歩くことはできないので、そこに不満を持つ人もいる。そうなるとトラックなどの荷台部分に居室用を積んだキャブコンタイプのキャンピングカーを選ぶことになるのだが、そこまでいくと視野に入ってくるのがキャンピングトレーラー。

 こちらは動力を持たないので引っ張るクルマが別途必要だが、逆に考えれば好きなクルマを選んで、それをクルマ旅にも使えるのは旅をもっと楽しいものにするものだと言える。

快適なクルマ旅を求めていくとたどり着くのがキャンピングトレーラー。トレーラーを駐めるのに向いているRVパークの数が増えたことも手伝って安定した人気があるそうだ

 キャンピングトレーラーのほとんどが輸入車だが、販売されるのは日本の道や免許制度にあったサイズなので運転はさほど難しくないそうで、購入者の多くが買ってから運転を練習するが、牽引といっても大型トレーラーのように引いているものが極端長いわけではないので、交差点やカーブを曲がるときはコツさえ掴めば想像しているより扱いやすいという。

 ただ、バックは難しいというが、実はキャンピングトレーラーは舗装された平地であれば大人1人で押せるものなので、実際の利用でもだいたいのところまでクルマで動かしたら、あとはヒッチメンバーから外して手押しで駐車スペースに収めるという。ちなみにキャンピングトレーラーの前と後には押し引きするための取っ手が付いているのだ。

普通免許で運転できるのと、引っ張るクルマを本来の趣味で選べるところが人気。最近ではジープのラングラーなどで引くスタイルが増えているという
トレーラーには手で押し引きするための取っ手が付いている。最後の位置決めなどは押して行なうことも多いという

 さて、そんなキャンピングトレーラーは言うなれば独立した部屋なので、室内には居住スペースのほか、トイレ、シャワー、キッチンがある。また、キャンプ場やRVパークではトレーラー部を残してクルマのみで出かけることができるので旅先での機動性がよく、特に連泊するときはクルマが自由に使えるメリットは大きい。そんなことから九州や北海道など広いエリアをまわる旅をする人にキャンピングトレーラーは人気だという。

トレーラーの内部。快適に過ごせる広さと装備がある
小型のトレーラーでもしっかりとトイレスペースが取れる。オートキャンプ場もRVパークも混んでいるときはトイレも混むので自前であるのはとても便利だ

 しかし、そんなキャンピングトレーラーに1つの問題が起きていた。キャンピングトレーラーは調理器具や暖房の燃料としてプロパンガスを使うが、最近、プロパンガスの販売法に関わる法律が変わり、ガス業者がキャンピングトレーラー向けにプロパンガスを販売しなくなっている。それに遠距離のクルマ旅で利用度が高いカーフェリーもプロパンガスを積んだ車両の乗船が禁止されているので「ガスの使用」という面でとても困る状態になっているそうだ。

 そこでキャンピングトレーラーを扱うインディアナ RVでは全国どこでも容易に入手できるカセットガスを使用するガス供給システムを開発した。また、同時に灯油式のFFファンヒーターも装備するなど、燃料を変えることでトレーラーの使い勝手のよさを損なうことなく時代に対応させている。

売ってくれない、カーフェリーに乗れないという状況になっているプロパンガスに変わって入手が容易なカセットガスと灯油を使うFFヒーターを装備するよう、インディアナRVが扱うトレーラーは進化しているという

用品、部品メーカーブースもおもしろい

 東京キャンピングカーショーにはキャンピングカーメーカーだけでなく用品、部品メーカーも出展していたので記事の後半はそれらを紹介していこう。

 まずは最近、アウトドアフィールドで装着したクルマをよく見かけるのがルーフテントだ。これはクルマのルーフに装着したキャリアの上に装着する折りたたみ式のテントで大人2名が就寝できるサイズが一般的だ。

 このルーフテントはクルマの屋根に付けっぱなしにするケースが多いので耐候性や耐久性が高いことがポイント。また、展開したときに壁となるテント生地やネット生地の部分も擦れや折れ、引っ張りに強く、さらにテント生地は防水性も高くなければいけないので、探していくと結局人気ブランドの製品へ落ち着くというパターンになるそうだ。

最近、アウトドアフィールドで見かけることが増えたのがルーフテント

 ここで紹介するジェームスバロウドはポルトガルのメーカーで、ルーフテントでは世界トップ品質のものという。価格は写真のモデルで約50万円と安くはないが長く使えるし、人気ブランド品なので不要になった際でもいい値段で売れる傾向だという。

 ルーフテントはキャンプ以外にも、花火見物などまわりに人が多い状況でも開放感を感じられる特等席として使えるなど、遊びにいく機会が多い人には便利なものなので、キャンピングカーではなく、こちらを選ぶというのもよいと思う。

ジェームスバロウドのルーフテントに使用するテント地は防水性が高いので雨天の使用も問題ないという
厚手のマットが標準装備なので、就寝には掛け布団やシュラフのみ用意すればよい
テント地ながら密閉性が高いので換気用にソーラーファンを装備している
サイドオーニングを組み合わせたスタイル。オーニングの下をリビングとして使う
ヨコハマタイヤもブース出展。新発売したキャンピングカー用タイヤ「BluEarthキャンパー」をはじめとしたキャンピングカー向けタイヤを展示
車重のあるキャンピングカーにあった耐荷重性に優れた性能を持つのがBluEarthキャンパー。カムロード用サイズは欧州のキャンピングカー用タイヤ規格を取っている。転がり抵抗も低いので低燃費化に貢献する
こちらはSUV向けオールテレーンタイヤのジオランダー。キャンピングカーは未舗装路に入ることもあるので、そういった際にも頼りになるタイヤ。ルックスもよいのでドレスアップ目的で選ばれることも多い
サスペンションでおなじみのKYBが初のブース出展。展示していたのが油圧制御を使ったアクティブサスペンションシステム。前後方向、横方向などあらゆる方向の車体の揺れに対して、それを収めて傾きを抑えるものだ
バンやトラックがベースのキャンピングカーでは、乗り心地を含めてサスペンションのグレードアップが求められているので、KYBの参入は大いに期待したい
KYBはミキサー車の製造も手掛けていてシェアはナンバー1という。そんな特装車の製作技術を活かしてキャンピングカー自体の製造も行なう計画があるという
最後に紹介するのはキャンピングカー向けのバッテリーシステム。製作するのは九州の佐賀にあるキョーワという特装車製造メーカー。活魚輸送車の製造では国内トップシェアという。水族館の水槽システムなども手掛けている実力派のもの作り企業だ
東芝製の高品質リチウムイオンバッテリーを使った安全性が高く、高効率なキャンピングカー向けサブバッテリーシステム。大きな特徴としては高速道路のSAなどにある200V普通充電器で充電できること。これまでの走行充電とあわせると居室スペース用のサブバッテリーがより有効に使えるようになる
使用する東芝製リチウムイオンバッテリーの解説。バッテリーの杭のようなものを突き刺して、シェルを痛めても発火しないという安全性の高さがあるそうだ