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JR西日本「うめきた(大阪)地下駅」2023年春開業。スマホと連動した道案内、世界初フルスクリーンホームドア初公開

デジタル可変案内サイン「One to One」「Mass」

2023年春 開業予定

世界初のフルスクリーンホームドア。頭上にある帯状のディスプレイとホームドアに組み込まれたディスプレイ。この2つで列車のあらゆる情報が利用客に提供される

 JR西日本(西日本旅客鉄道)は、2023年春に開業予定の「うめきた(大阪)地下駅」に設置するデジタル可変案内サイン「One to One」と「Mass」、そして世界初となるフルスクリーンホームドアを報道陣に初公開した。

 デジタル可変案内サイン「One to One」は、スマホに行き先を登録することで、駅に設置された案内サインに自分専用の進行方向を表示させる新しい案内サインだ。

事前に自分のスマホで「ルクア大阪」と行き先を設定して案内サインに近づくと「ルクア大阪」の方向が表示される

 使い方は、あらかじめ自身の持つスマホに目的地(タクシー乗り場やトイレなど)を入力し設定する。その際、スマホには自分専用のマークが表示される。設置された案内サインに近づくと、自分専用のマークと進行方向が案内サインに表示される。表示に従って歩き進むと、次に現れる案内サインにもまた自分専用のマークと進行方向が連続的に表示され、迷うことなく自分の行きたい場所へたどり着くことができる。

 このデジタル可変案内サイン「One to One」が実用化されることで、駅員を探して場所を尋ねる手間などを減らし、利用者の利便性向上と駅員のより効率的な業務遂行に寄与するという。

今回は見やすいようタブレット端末を使用。実際はスマホを使い利用者が自分で目的地を設定する
案内サインに近づいていくと目的地「ルクア大阪」の方向が表示される
最初はブランク(JRロゴのところ)になっている案内サイン。事前に設定済みのスマホを持った利用者が近づくと目的地の方向が表示される
複数の利用者の行き先も表示可能。その場合は目的地表記の背景部分の「柄」が自分の目印となる。利用者が多い場合は画面をスクロールすると表示される

 また、同じくデジタル可変案内サインである「Mass」は、これまでの固定表示による「出口」や「番線」などの案内を常に変化させることでより多くの案内情報を表示させる案内サインだ。これにより行き先案内だけでなく、列車の遅延情報などをリアルタイムに提供することが可能になる。こちらの案内サインは「One to One」のようなそれぞれの利用客に合わせた案内表示ではなく、より多くの利用客が必要とする情報を常に可変させながら案内表示していく。

駅でよく見かけるホームの番線案内や駅の出口案内。これも可変サインでは一定間隔であらゆる情報に切り替わる
表示する情報量は必要最低限にし、一定間隔で切り替えて表示することにより、情報量の多さで文字が小さく目立ちにくくなることを避けている

 そして、このデジタル可変案内サイン「Mass」とホームドアを組み合わせたのが、世界初のフルスクリーンホームドアだ。これはホームドアそのものをリデザインし、ホームと線路を完全にホームドアで遮蔽。従来のホームドアよりも安全性を高め、さらにはデジタル可変案内サインと組み合わせることで、より分かりやすく多くの情報を利用者に提供するというもの。

開口部はさまざまな車両タイプに対応。頭上にある帯状のディスプレイには車両乗降口の案内。そして大型のディスプレイはそれ自体がドアになっていて可動する。ドアの開閉動力を頭上に持っていくことでホームドア自体を薄くしホームの圧迫感をなくす工夫がされている

 これにより、利用者はより細かな列車情報、例えば列車名や時間、車両乗降口の号車番号などをひと目で確認することができるという。しかも、このフルスクリーンホームドアはサイネージ部分も列車に合わせて可動するため、車両前後にしか乗降口がない2枚ドアの車両から3枚ドアの車両まで、あらゆる列車のタイプに対応可能。新しい駅ではまず、1つの番線に設置される予定になっている。

 また安全面への配慮として、利用者のホームドアとの接触や挟まれ、列車とホームドア間での閉じ込め等を、人間の目視だけではなくドア可動モーターの負荷を検知する機能、および2Dセンサーと3Dセンサーを利用して検知。利用客の安全性も確保している。

ドア開閉のモーターには負荷を検知する機能や各種センサーが設置されている
開閉中にドアに触れたり、開閉の障害になるものがあるとドアの動きは止まる
万が一列車とホームドアのあいだに閉じ込められた場合、なかにある非常ボタンを押すことで手動でドアを開けることも可能

 JR西日本は「うめきた(大阪)地下駅」を「JR西日本技術ビジョン」の具体化に挑戦する駅として位置付け、実現に向けて取り組んできた。さらには同駅をイノベーションの実験場「JR WEST LABO」の中心とする旨がすでに発表されている。

 JR西日本 イノベーション本部の小森一氏は「新しい駅(未来の駅)とはこういうものだという姿を世の中に示し、使える技術(実現した新しい技術)があれば、既存の駅にどんどん展開していきたいと考えている。我々は、うめきた(大阪)地下駅を未来に向けた実験場として開発を進めてきた。これからも最新の技術を試す場としていきたい」と抱負を語った。

質問に答えるJR西日本 イノベーション本部うめきたPT 小森一氏