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大阪湾岸道路西伸部の海上長大橋建設に向けた技術的試験を公開。基礎設計に必要な高精度地盤データ取得
2020年5月28日 14:36
- 2020年5月28日 実施
国土交通省 近畿地方整備局は5月28日、同神戸港湾事務所、同浪速国道事務所、阪神高速道路が整備を進める大阪湾岸道路 西伸部の海上長大橋の杭の鉛直載荷試験の現地の様子をWebで公開した。
神戸市の六甲アイランド北~ポートアイランド~駒栄を結ぶ大阪湾岸道路西伸部は、2018年12月22日に着工。延長14.5km、片側3車線(6車線)の自動車専用道を整備するもの。渋滞が頻発する阪神高速3号など神戸市中心部を回避して同地域を東西に通過できる道路により、関西湾岸圏の効率的な物流ルートの構築や、神戸市中心部の渋滞緩和などを図る。
この道路の建設にあたっては、2016年の事業化後、これまでに有識者らによる技術検討委員会が行なわれており、2019年12月には最適な橋梁形式が発表されている(関連記事「六甲アイランド/ポートアイランドに架かる大阪湾岸道 西伸部の橋梁は、主塔/径間数の異なる2形式の斜張橋に」参照)。
六甲アイランド~ポートアイランド間の新港・灘浜航路に架かる橋梁については、4本主塔/5径間の連続斜張橋を選定。世界最大級の支間長約650mのものとなる。ポートアイランド~駒栄(和田岬)間の神戸西航路に架かる橋梁は、ポートアイランド寄りに1主塔を配置する斜張橋を採用。非対称のデザインが特徴となる。
今回公開されたのは、この海上長大橋の技術検討の一環として行なわれる、国内最大規模の杭の鉛直載荷試験で、試験のなかでも最も大規模かつ、重要なデータを得るために行なわれる静的載荷試験となる。
建設される橋梁においては技術検討委員会で基礎形式として「鋼管矢板基礎」が選定されている。これは、複数の鋼管を継ぎ手によって接続して井筒を作り、基礎を形成するものとなる。東京ゲートブリッジなどでも使われている国内最大級となる直径1500mm(1.5m)の鋼管杭を用いることが計画されており、実際にその直径1.5mの鋼管杭を用いて試験が行なわれる。
載荷試験は鋼管杭に打撃を与える衝撃載荷試験、より高速に打撃を与える急速載荷試験、杭に荷重をかける静的載荷試験の3種類を同一の地盤で実施し、基礎設計を確実に行なえるよう、地盤の強さなどの精度の高いデータを取得することを目的に行なうものとなる。衝撃載荷試験はすでに3月から4月にかけて行なわれ、5月28日に静的載荷試験を実施。6月中旬に急速載荷試験を実施する計画となっている。
各載荷試験は、大阪湾岸道路西伸部 六甲アイランド~ポートアイランド間の新港・灘浜航路部の2P主塔(六甲アイランド側から2番目)を設置する位置で実施。ここに26×15mの海上ステージを設け、実際に海面下約55mまで打設された長さ約60m、直径1.5mの鋼管杭に対して行なう。
5月28日の静的載荷試験は、事前の土質調査から想定された強度を基に、3万kN(キロニュートン)の荷重を1本の試験杭にゆっくりとかけていくもの。3万kNはアフリカ象およそ500頭分が載るイメージになるという。1kN荷重に対応した油圧ジャッキ4基を試験対象となる杭の頭部に設置。その反力を反力杭4本に支えられた反力桁が均等に受け、杭を沈下させていく。順調に進めば、本試験は5月28日中に終了する予定という。
建設する海上長大橋の鋼管矢板基礎では海面下約55m付近まで鋼管を打ち込んで橋を支えることになるが、建設が予定されている場所の地盤は、事前の土質ボーリング調査により粘度と砂が5層になった不均質な地盤であることが判明しており、静的載荷試験による地盤データの取得が非常に重要なものとなっている。
国交相 近畿地方整備局 神戸港湾事務所では「主塔位置が確定したこのタイミングで、実際の位置で鉛直載荷試験を行ない、精度の高い地盤データを取得し、世界最大規模の海上長大橋の確実な設計を実施していきたい」との意欲を示している。
また、ポートアイランド~駒栄(和田岬)間の神戸西航路に架かる橋梁の主塔など、そのほかの主塔位置での載荷試験については、今回行なわれる新港・灘浜航路の2P主塔位置での静的載荷試験と急速載荷試験の結果を得たうえで、それぞれの相関を確認し、どのような試験をほかの位置で実施するかを検討していくとしている。
(写真/画像/映像提供:国土交通省)