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ANA、“BLUE JAY(アオカケス)”こと「ボーイング 777F」就航。旅客便とのコンビネーションで多様な貨物需要に対応

エアバス A380「FLYING HONU(空飛ぶウミガメ)」と並んで滑走路へ

2019年7月2日 就航

ANAは初導入となる貨物機ボーイング 777F型機を就航した

 ANA(全日本空輸)は7月2日、初導入となる大型貨物機「ボーイング 777F」型機を就航した。「BLUE JAY(ブルー・ジェイ、アオカケス)」の愛称が付けられた機体で、ANAグループの貨物事業会社であるANA Cargoが運航する。

 ANA Cargoはこれまでボーイング 767F型機を12機運用してきたが、北米を結ぶ路線には旅客便の貨物室、いわゆるベリーを利用した輸送が中心で、場合によっては大型機のチャーターなどを行なってきた。

 ボーイング 777F型機の導入により、重量は767Fの2倍となる102トンまで、高さは約3倍の3mに対応し、米東部へのノンストップ運航を自社で実現できるようになる。今後、中長期的に需要が見込まれるアジア・中国と北米を結ぶ路線で、航空機エンジンや半導体製造装置、リチウムバッテリ、医薬品など、これまで扱えなかった多様なニーズに応え、太平洋路線での大量輸送を図る。

 ANA Cargoでは、同機を2機導入する予定。すでに初号機導入に合わせて、大型の半導体製造装置や医療機器などの衝撃リスクに配慮した輸送サービス「PRIO SENSITIVE」や、SUVサイズまでの完成車に対応する自動車輸送サービス「PRIO VEHICLE」などの新サービスを展開している。

 このボーイング 777F型機はまず、成田国際空港~関空(関西国際空港)~上海・浦東国際空港を結ぶ路線で運航。8月25日までこの路線で運航し、8月26日からは成田~上海・浦東線で運航する。そして、10月27日からは、いよいよ太平洋路線となる成田~シカゴ線での運航を開始する。

ANA ボーイング 777F型機の運航ダイヤ(2019年7月2日~8月25日)

NH8569便: 成田(21時35分)発~関空(23時05分)着、火・水・木・金・土曜運航
NH8409便: 関空(01時05分)発~浦東(02時30分)着、水・木・金・土・日曜運航
NH8404便: 浦東(05時00分)発~成田(08時50分)着、水・木・金・土・日曜運航

ANA ボーイング 777F型機の運航ダイヤ(2019年8月26日~10月26日)

NH8403便: 成田(22時30分)発~浦東(翌01時05分)着、火・水・木・金・土曜運航
NH8404便: 浦東(03時30分)発~成田(07時20分)着、水・木・金・土・日曜運航

ボーイング 777F型機
手前が777F、奥が767F
777Fの機体前方
777Fの機体後部。愛称の「BLUE JAY」とアオカケスをモチーフにしたロゴマークが描かれる
機体後方から
エンジンはGE Aviationの「GE90-110B1」
後部貨物室ドアを開けた状態。後部貨物室へはハイリフトローダー(写真左)を用いて荷物を積み込む
全日本空輸株式会社 執行役員 成田空港支店長 石田洋平氏

 初便の就航を記念して成田空港で行なわれたセレモニーでは、ANA 執行役員 成田空港支店長の石田洋平氏があいさつ。「ANAの貨物事業にとって念願の自社大型フレイター(貨物機)」と切り出し、「成田は年間220万トンの貨物を取り扱い、輸出入貿易額も25兆円を超える日本最大の貨物基地、貿易拠点。成田空港ををハブとして大型フレイターを拡大することで、成田空港における貨物取扱量の増加、本邦貨物産業にも発展にも寄与したい」との意欲を示す。

 また、愛称のBLUE JAYについては「北米に生息する美しい青い羽根を持ち、賢く勤勉な鳥。777F導入にあたり、Blue Jayのようになにごともにも勤勉に取り組みたいとの思いを込めている」と紹介。「成田からは一足早くFLYING HONUの愛称を持つエアバス A380がホノルル路線に就航した。私はA380のウミガメと、777Fの青い鳥が、お客さまのさまざまなニーズにお応えし、末永く活躍することを確信している」と話した。

東京税関 成田航空貨物出張所 出張所長 須藤明夫氏

 続いて、来賓を代表して、東京税関 成田航空貨物出張所 出張所長の須藤明夫氏がマイクの前に立ち、日中貿易摩擦や英国のEU(欧州連合)離脱など国家間問題が山積する難しい情勢下に大型新機材を導入したことについて「税関としても非常に明るい話題」とコメント。「愛称がBLUE JAYということで、ANAの航空機の青ラインの色を表現したように思えるとともに、非常に親しみやすいネーミングだと感じている。大型機の導入により、今まで以上に取り扱える貨物の種類、量が格段に増えると聞いている」と活躍への期待を述べた。

 一方、税関側では、ラグビーワールドカップや天皇陛下即位の礼、2020年の東京オリンピック・パラリンピックと続くなかで、「テロ対策に手を抜くわけにはいかない」とし、「ANA Cargoをはじめ、関係団体の皆さまのご協力いただきながら、航空貨物テロ防止に努めたい」と強調。

 そして、「特に国際貨物分野においては、この初便就航をきっかけとして、ANAおよびANA Cargoの航空貨物市場でのさらなる成長と、日本の国際物流を支える一企業としてもますますの発展、活躍。さらには、成田空港全体の国際貨物取扱量増大にも大きく寄与することを祈念したい」とあいさつを締めた。

初荷をアンベール
中央から右に順に、全日本空輸株式会社 執行役員 成田空港支店長 石田洋平氏、株式会社ANA Cargo 取締役 中井尚氏、東京税関 成田航空貨物出張所 出張所長 須藤明夫氏、成田国際空港株式会社 取締役 営業部門長 田邉誠氏。中央から左に順に、株式会社ANA Cargo 常務取締役 渡邉圭二氏、国土交通省 東京航空局 成田空港事務所 次長 原野京太郎氏、成田国際空港株式会社 代表取締役 副社長 椎名明彦氏、国際空港上屋株式会社 代表取締役社長 岡本榮一氏

 その後は、初便への初荷の積み込みがスタート。初便は日本発が98トンで、うち成田空港からは72トンを搭載。リチウム電池や顕微鏡、精密機械、スマートフォンやPC用の電子部品、工作機械、自動車部品、化学用品などを搭載しているという。

 一方、上海発は95トンで、日本向けが50トンで残りはアメリカ向け貨物とのこと。つまり成田空港をハブとして、中国からアメリカへ向けた貨物ということになる。ANA Cargoでは、大型の荷物などさまざまな商材に対応することで今後成長が予測されるアジア・中国のアメリカ向け貨物の獲得に力を入れてゆく。

 また、北米路線においては、ボーイング 777F導入後も旅客便のベリーによる輸送は継続。それだけの需要は見込んでおり、旅客便と貨物便の両方を運航をする“コンビネーションキャリア”の強みを活かして、それぞれのスペースをうまく組み合わせていきたいとしている。

 そして21時35分にプッシュバックをスタートし、34L滑走路へ。この日、初めてエアバス A380型機での運航となったホノルル行きのNH182便(成田21時30分発)の前に並び、21時58分に成田空港を離陸。関空へと向かった。

アンベールされた初荷。トーイングトラクターを使って後部貨物室へ運搬
ハイリフトローダーで初荷を積み込む
記念の幕が掛けられたパレット以外にもさまざまな貨物を積み込んでいく
積載を完了し、後部貨物室のドアを閉じる
プッシュバックのためのトーバー、トーイングトラクターを取り付け
定刻どおり21時35分にプッシュバック
34L滑走路に向けて地上走行。エアバス A380型機「FLYING HONU」が並び、アオカケスとウミガメのコラボが実現
21時58分に離陸