ニュース

ANA、日本初導入の輸送機ボーイング 777F型機公開。輸送管理者のシートを4席装備

2019年6月13日 公開

日本のエアライン発の導入となるボーイング 777F型機

 ANA(全日本空輸)は6月13日、7月から新たに投入する貨物専用機「ボーイング 777F型機」を報道向けに公開した。

 同機は2018年3月にANAHD(ANAホールディングス)が導入を発表したもので、日本のエアラインとしては初導入となる機体。計2機の導入が決定しており、傘下のANA Cargoが運用を行なう。ANA Cargoではボーイング 767型機の貨物専用機(767F型機)を計12機運用しているが、今回の導入により計14機体制となる。

 初便は7月2日の成田~上海線。以降、同路線で火曜~土曜(上海発は水曜~日曜)の週5日運航。8月25日までは往路のみ関空経由、以降は直行便となる。10月末の冬期スケジュールからはシカゴ線にも投入される予定となっている。

ANAのボーイング 777F型機
ANAのボーイング 777F型機運航スケジュール(2019年7月2日~8月25日)

NH8569/8409: 成田(22時30分)発~関空(01時05分)発~上海(02時30分)着、火・水・木・金・土曜運航
NH8404便: 上海(05時00分)発~成田(08時50分)着、水・木・金・土・日曜運航

ANAのボーイング 777F型機運航スケジュール(2019年8月26日~)

NH8403: 成田(22時30分)発~上海(01時05分)着、火・水・木・金・土曜運航
NH8404便: 上海(03時30分)発~成田(07時20分)着、水・木・金・土・日曜運航

 実機公開前に行なわれた事業説明では、ANA Cargo 取締役 杉口広氏が登壇。777F型機について「777-200LRをベースに777-300ERの翼とエンジンを持ったフレイター(貨物専用)」「世界ではルフトハンザやFedExが160機程度運航している、最新鋭の機体」と紹介。さらに機体性能として「中型機(767F型機)の倍の102トンの搭載重量」「貨物室の高さが747Fと同等」「パレットが27枚と中型機の約1.2倍」「大きな20フィートパレットも搭載可能」といった積載能力に加え、「航続距離が中型機の約1.5倍」「燃費効率が747-400F型機より30%ほどよい」「客室設備がある」などのメリットを紹介した。

 777F型機の導入については、アジア~北米間の輸送量が今後20年程度の間、平均で年約4.6%成長が見込まれるとした予測を紹介。「777F型機を導入することでしっかりとその成長に乗っていきたいと考えている」とコメントした。また、「従来は中型機(767F型機)と旅客機で日本からアジア、中国にネットワークを築いてサービスをしていた」が、「フレイターがないことでなかなか取り扱うことができなかった商品やモノの流れがあった」と振り返り、777F型機を導入することで「(成田や羽田の)ボトルネックを解消し、今後は2020年に向けてさらに広がるANAの翼のなかでしっかりと位置付けていきたいと考えている」と、展望を述べた。

株式会社ANA Cargo 取締役 杉口広氏
会場に飾られていたモデルプレーン
ボーイング 777F型機を導入
搭載重量は767F型機の約2倍
メインデッキには約27枚のパレットが搭載可能
20フィートの大型パレットも搭載可能
アメリカ東部までノンストップで就航可能
輸送管理者用シートを用意
多彩な輸送ニーズに対応
アジア~北米間の貨物輸送は年間約4.6%の成長を見込む
777F型機により首都圏ハブを強化
フレイターと旅客機のコンビネーションでネットワークを強化
愛称はブルージェイ(日本名:アオカケス)

国内エアライン初導入となる大型貨物専用機

 767F型機と比べると機体サイズが大きいのはもちろん、約2倍もの搭載重量、約1.5倍の航続距離などを実現している点が大きな違い。積載能力の点でも767F型機では搭載できなかった「PGAパレット」(606×244×299cm、最大21トン)にも対応し、航空機用エンジンや半導体製造装置なども搭載可能となっている。

ANA ボーイング 777F型機スペック

全長: 63.7m
全高: 18.6m
全幅: 64.8m
実用航続距離(最大搭載時): 9070km
搭載重量: 10万2010kg
エンジン: GE GE90-110B1
座席: 4名

ANA ボーイング 767F型機スペック

全長: 54.9m
全高: 15.9m
全幅: 47.6m
実用航続距離(最大搭載時): 6056km
搭載重量: 5万1660kg
エンジン: GE CF6-80C2
座席: なし

 客室設備が設けられているのも特徴で、競走馬の輸送時に輸送管理者(厩務員)が同乗するといったことが可能になっている。ギャレーやラバトリー(トイレ)も用意されており、ビジネスクラス並みの機能を持つシートと相まって、ガマンを強いられることなく快適に随行できそうだ。

 また、機体の愛称は社内公募で「BLUE JAY(ブルージェイ)」となった。主に北米に生息する青い翼を持つ鳥「アオカケス」がその由来。左サイドのメインデッキドア横にロゴが描かれる、

外観
貨物機だけにほぼ窓がなくスッキリ
初号機の登録記号はJA771F
メインデッキドア後方に大きくロゴが入る
尾翼まわり
L1ドア
メインデッキドアは左側面のみ
ロアデッキドアは前方と後方の2か所にある
エンジンはGE GE90-110B1
ランディングギア
ノーズギア。タイヤはブリヂストン製
メインギア
こちらのタイヤはミシュラン製
メインデッキを前方から
こちらは後方から
フロアにはローラーなどが並ぶ
メインデッキドア。横372×縦305cmと大きい
フロアは入ってきたパレットなどを移動するため複雑な構造になっている
メインデッキドア解放時
カーゴシステムのコントローラ
メインデッキドアのコントロールパネル
壁面に搭載時の注意書き
フライトデッキと通話するためのマイク&スピーカーが随所に
天井には煙感知器が設置されている
コクピット
輸送管理者が4名まで搭乗できる
ビジネスクラスシート並みのリクライニングが可能
電源はシート後部に用意
2名分のジャンプシートもある
酸素ボンベなど。後方はストレージ
ラバトリー
ギャレーもある