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NEXCO東日本、渋滞予報士が年末年始の渋滞予測を説明。1月2日は渋滞の特異日

AI渋滞予知の精度が渋滞予報士とほぼ同様に

2018年12月21日 実施

NEXCO東日本は定例記者会見を開き、AI渋滞予知や年末年始の渋滞予測などについて説明した

 NEXCO東日本(東日本高速道路)は12月21日、東京・霞が関の本社で「平成30年度第7回定例記者会見」を開いた。

 会見には代表取締役社長の小畠徹氏、取締役兼常務執行役員 管理事業本部長の遠藤元一氏、取締役兼常務執行役員 事業開発本部長の萩原隆一氏が出席し、NTTドコモと実証実験を行なっている「AI渋滞予知」のリニューアルなどについて説明した。

AI渋滞予知が「渋滞予報士とほぼ同様の予測結果」に

東日本高速道路株式会社 代表取締役社長 小畠徹氏

 NEXCO東日本では2017年12月からNTTドコモと共同でAI渋滞予知を行ない、Webサイト「ドラぷら」で配信してきた。これをリニューアルし、30分ごとのアクアライン通過の所要時間と交通需要を12月22日から提供する。小畠徹氏は「世界で初めて、当日の人口分布を用い、交通需要という交通工学的な指標を予測し、そこから所要時間を予測するという技術を開発した。これにより、全体の精度はさらに向上したと考えている」と述べた。

 この新たな技術を用いることにより、渋滞があると予測した時間帯の予測所要時間と実績の誤差を低減させている。具体的には、誤差が30分以上の割合はこれまでのAI渋滞予知では3.7%だったが、アップデートしたAI渋滞予知では0.8%だったという。また20分以上の誤差は15%から6.7%へ、10分以上の誤差についても40%から27%に軽減したとのこと。

 さらにNEXCO東日本では、数か月先の渋滞予測を可能とする技術をベンチャー企業であるグリッドと開発したと発表した。こちらは渋滞発生に大きく影響しそうな過去の要因データをAIに学習させ、将来のある日時、場所における渋滞発生の有無を予想させるというもの。今回の開発は関越自動車道(E17)を対象に、2004年から2018年までの渋滞データやカレンダーパターンを学習させている。その結果、「渋滞予報士とほぼ同様の予測結果」になったという。

 小畠氏は「当初は渋滞予報士の補助的な活用になると思うが、今後精度がさらに上がり、十分と判断されれば、渋滞予報士が行なってきた過去渋滞実績の重ね合わせ作業は必要なくなる。また、予測の補正作業も軽減される。予報士業務のおおむね半分がAIに置き換えられ、効率化が図られると考えている」と述べた。一方、人間の判断が必要な部分もあることから「渋滞予測業務すべてをAIに置き換えるのは難しいのではないか」との見解を示した。

 そのほか、外環道(東京外かく環状道路)の関越~東名間において、大泉JCT(ジャンクション)より南側に向かって本線トンネルのシールドマシンを2019年1月26日に発進することも発表された。当日はシールドマシンの発進式を予定している。

 NEXCO東日本の営業概要については、11月の通行台数は対前年比で103.3%、料金収入は対前年比103.9%となった。SA(サービスエリア)/PA(パーキングエリア)の売上高は約131億2100万円で、対前年比108.3%となった。

 今冬の道路交通確保に向けた取り組みとしては、大雪の3日前から高速道路への影響見込みなどの情報を提供することが発表された。これは「大雪特別警報」や「大雪に対する国土交通省緊急発表」が行なわれるような大雪が予想される際、おおむね3日前から大雪による高速道路の通行止め予測情報などを提供するというもの。

 また、ウェザーニュースと連携し、ほかの高速道路会社と共同で新たな情報提供サイト「雪の高速道路影響予測」が設けられる。なお、この情報はiOSおよびAndroid向けに提供されている「ウェザーニュースタッチ」アプリでも参照できる。

毎年1月2日は上下線両方向で渋滞が多くなる特異日

 NEXCO東日本 関東支社 交通技術課所属で、5代目渋滞予報士の外山(とやま)敬祐氏は、年末年始期間の渋滞予測と渋滞回避のポイントについて説明した。この年末年始の渋滞回数については「昨年並みになる見込み」とする。そして年末の下り方面の渋滞について「分散傾向となるため、ゴールデンウィークやお盆ほどの渋滞にはならないと見ている」と話し、渋滞のピークは「1月2日になる見込み」だとした。

東日本高速道路株式会社 関東支社 交通技術課所属/渋滞予報士 外山(とやま)敬祐氏

 この1月2日は、上下線の両方向で渋滞が多く発生する日で、「毎年1月2日は上下線両方向で渋滞が多くなる特異日で注意が必要な1日」と述べる。下り方面は初売りや初詣などの移動が活発になることで多くの渋滞が発生、上り方面はUターンラッシュがピークになることから渋滞になるという。

 また、この年末年始の特徴として、曜日配列が同じだった2013年の実績から、上り方面は長引く可能性があるという。多くの企業が仕事始めとする1月4日が金曜であるため、その日を休みにして翌週月曜の7日から出勤する人が増え、その結果1月5日まで渋滞が残るという予測だ。外山氏は「渋滞の長期化に注意してほしい」と呼びかけた。

渋滞回数は2017年並み。年末は分散傾向で交通集中による渋滞は少なそうだ
1月2日は下りと上りの両方で渋滞が発生すると予測
上り方面は5日まで渋滞が残る可能性があり、6日の利用がお勧めとした
リニューアルするアクアラインのAI渋滞予知では、30分ごとの所要時間が提供される

 アクアラインにおけるAI渋滞予知について、外山氏からも説明があった。外山氏はラーメン屋を例に、「来客がピークを過ぎても、座席数よりも多くのお客さんがやってきている状態では、出て行くお客さんに対して、新しくやってくるお客さんの方が多くなってくる時間帯となり、需要のピークを越えても座席数に来客が落ち着くまでは行列が伸びる。従って、行列のピークよりも需要のピークが手前にくる」と説明する。これを交通需要と渋滞に置き換えれば、交通需要のピークよりもあとに渋滞のピークがくることになる。

ラーメン屋の行列を例に、交通需要と渋滞の関係を説明した
所要時間のピークよりも後ろの時間に利用することで、交通需要のピークが高まることを避けられる

 これを踏まえ、外山氏は「AI渋滞予知を参考に、ピーク時間よりもあとの時間での分散利用に協力してほしい」と話す。AI渋滞予知によって示された所要時間のピーク(もっとも通過に時間がかかるタイミング)よりも前に交通需要はピークを迎えているため、ピーク時間よりも前のタイミングで通過しようとすると、交通需要のピークがより高まることになるためだ。しかし、あとの時間であれば、すでに交通需要はピークアウトしているため、通過時間が延びる可能性は低い。こうしたことも参考に、ドラぷらでのAI渋滞予知をチェックしてほしい。