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日本旅行業協会、日露相互交流拡大の取り組みやインドネシア「新しい10のバリ」視察などを報告
12月の定例会見
2018年12月3日 21:29
- 2018年11月27日 開催
JATA(日本旅行業協会)は11月27日、東京・霞が関の本部で定例会見を開き、ロシアとの観光交流を倍増させることを目標とする「日露相互交流拡大ワーキンググループ」の設置、「日中第三国市場協力フォーラム」での提案、「インドネシア『10の新しいバリ』プロジェクト」の視察結果などを報告した。
ロシアとの観光交流について、JATA 理事・事務局長の越智良典氏からは、「観光による人的交流が外交の一翼を担うという側面もあり、観光庁からJATAへの協力依頼が増加傾向にある」と説明。2018年下期に行なわれた、海外ミッションおよび二国間交流案件について詳細に報告を行なった。
「日露相互交流拡大ワーキンググループ」を設置、5年後の観光交流を2倍に
JATA 海外旅行推進部長 權田昌一氏から10月21日~24日までロシアのモスクワで行なわれた「自民党観光立国調査会(林幹雄会長)訪露随行」について報告。これは4月27日から行なわれた「日露経済・観光交流ミッション」の場で決定した、観光についてのフォローアップミッションが実施されたもの。JATAからは副会長の菊間潤吾氏らが参加し、観光についての相互交流について協議した。
また、この取り組みのなかで官民協働による組織「日露相互交流拡大ワーキンググループ」の設置が決定し、JATA、JNTO(日本政府観光局)、観光庁からそれぞれメンバーが参加。11月22日には第1回の拡大ワーキングを開催し、「2023年日露相互交流40万人時代へ(インバウンド20万人、アウトバンド20万人)」を取り組み目標に決定した。
アウトバウンドを担当するJATAでは、菊間副会長がヘッドとなり、タスクフォースを作成。具体的な実施計画としては、欧州ロシア、イルクーツク、極東など方面ごとに目標設定を行ない、特に極東へ注力していくことを計画している。
日中合同で第三国からの観光客誘致を目指し、観光商品の開発について提案
続いて理事・事務局長の越智良典氏から10月25日~26日に中国の北京で行なわれた「安倍総理訪中と日中第三国市場協力フォーラム」について報告。JATAからは、副会長の堀坂明弘氏と理事長の志村格氏が参加した。
5月に東京で行なわれた安倍・李克強首脳会談で日中合同の第三国へのインフラ整備事業について協議する「官民合同委員会」の設置を決定。10月25日~26日の安倍総理の訪中に合わせて、日中の経済界による合同フォーラムが実施された。中国の「一帯一路」政策への協力を意味する取り組みで、日中の経済人が各500名、合計1000名でのフォーラム実施となった。
このフォーラムの分科会「交通・運輸」に観光も追加され、JATAの堀坂副会長が登壇。国連が掲げる17のSDGs(持続可能な開発の目標)において観光が大きな役割を果たすことや、日中韓が共同で実施している「ビジット・イースト・アジアキャンペーン」の具体化により日中への第三国からの観光客誘致が行なえることを解説。シルクロード地帯への共同での送客の仕組み作りや、テーマ型列車などの鉄道による観光商品の開発について提案が行なわれた。
インドネシアの新しいリゾートを発掘する「新しい10のバリ」への提案を実施
さらに10月29日~11月2日にはインドネシアで「インドネシア官民観光ミッション」が実施され、JATAからは越智理事・事務局長が参加。帰国後、11月20日に観光庁にて「インドネシア・ミッション帰国報告会」を実施した。
現在インドネシアでは、政府の政策として“地方創生”の柱の一つとして観光業を推進。バリに変わるリゾート「10 NEW BALI(新しい10のバリ)」を各地で開発している。今回は、このプロジェクトに対して旅行会社からマーケティングの観点でアドバイスを行うことを目的に視察・提案を実施した。「新しい10のバリ」として開発が進められている10か所のうち、JATAが特に注目したのは「ブリトゥン島」と「レスン岬」の2か所。
ブリトゥン島にはジャカルタから飛行機で1時間の距離の「タンジュン・クラヤン空港」があり、シンガポールからも定期便が週4本就航している。これまで国際級ホテルの少なさがネックだったが、2019年春にシェラトンブランドがオープンするなどホテルの建設が進行中。
美しいビーチのほか、2019年春にはジオパークにも認定される予定で、難破船の積荷が展示された博物館や、インスタ映えする湖もあるなど観光資源も多い。ビーチを利用する家族や、ゴルフや釣りを目的とした週末ビジネス客をターゲットに想定できる。まずはジャカルタやシンガポールの駐在家族向けの週末リゾートとしてツアーを販売し、ホテルやレストランの整備が進んだ段階でロングステイ商品を企画することを提案した。
また、「レスン岬」はジャカルタからクルマで4時間ほどかかる距離にある。現在は悪路のためアクセスが困難だが、高速道路を建設中。2019年10月にこれが開通するとジャカルタから2時間弱に短縮される予定で、劇的に変化が予想されるとのこと。
「一角サイ」を保護している世界遺産の「ウジュンクロン国立公園」や、火山を間近に見られる「クラカタウ火山」まで1時間など観光資源や民族文化の豊かな場所であり、高速道路の開通後はシニアの滞在型ツアーにも向く場所に変わるだろうと評価した。FAMツアーの実施も提案しているという。越智氏は「インドネシアは開発に積極的で、ホテルやゴルフ場の開発スピードも早いため、非常にパワーを感じた」と印象を語った。
西日本、北海道とも「ふっこう割」が好調、終了間近
9月2日~6日にイスラエルで実施された「イスラエルミッション」については、2019年秋に双方向のチャーター事業を実現させるべく調整中。セキュリティコストとの兼ね合いもありチャーター機の実現には難しさがあるが、年内にはスケジュールがまとまる予定だ。イスラエル側からは定期便の希望もあるが、初便までは時間がかかるだろうとの見通しを語った。
また、10月26日~29日に中国の蘇州で行なわれた「日中韓観光大臣会合」にJATAから32名が参加し、会長の田川博己氏が講演したほか、堀坂副会長がパネル参加。日本の現地法人の海外旅行取り扱い解禁を要望した。
このほか、11月8日~10日に三重県で行なわれた「第8回日越定期観光会議」にJATAから志村理事長が参加したほか、12月5日~7日に福井県あわら市で行なわれる「第33回日韓観光振興協議会」の実施も予定通り実施とのこと。
2019年1月10日~13日にインドのデリーやグワハティで行なわれる「第3回 日印観光定期協議」には田川会長が参加予定で、FAMツアーの実施も準備が進められている。
このほか、「ふっこう割」利用状況などについてもコメント。「平成30年7月豪雨観光支援事業費補助金」を利用した西日本が対象の「13府県ふっこう周遊割」では、旅行会社へ割り当てられていた40万人泊のうち、すでに30万人泊を超え、終了間近。特に、被害が大きく1泊6000円の補助が適用された岡山県・広島県・愛媛県については大きな効果が出たという。
また、北海道胆振東部地震による風評被害の払拭と観光需要の回復のため実施されている「北海道ふっこう割」については、申請を行なった旅行会社が190社、36億円分の申請が行なわれ、8~9割が販売済み。オフシーズンを迎える北海道へ、観光の勢いをつける効果があったと評価した。