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JAL、国内外空港スタッフ5200人の頂点を決める「2017年空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」実施
2018年4月2日 20:15
- 2018年3月2日 実施
JAL(日本航空)は3月2日、同社の空港職員の技術や対応力を競う、「2017年度 空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」をJAL 第1テクニカルセンターにて実施した。このコンテストは、当初、2018年1月22日に予選、23日に本選が行なわれる予定だったもの。1月22日に予選は実施されたが、翌23日は関東で記録的大雪が降るなど全国的に荒天で、現場での対応が優先され延期に。3月2日に改めて実施された。
2017年度として実施されたこのコンテストは、今回で6回目。空港オペレーション教育訓練部が主催し、国内59空港、海外39空港が参加。JALの国内外に約5200名所属するグランドスタッフの頂点を目指した。1月22日に実施された予選には国内49名、海外10名の合計59名が参加し、国内9名、海外4名が本選に進出した。
本選の会場となった第1テクニカルセンターには、審査員をはじめ、予選に参加した出場者や、本選に残った各空港の応援団など多数が参加。熱気ある会場で審査が行なわれ、JAL社内の全国ネットでもライブ配信された。
本選参加者の13名が登場、社外からも審査員が参加
司会者から紹介され、拍手のなかを本選参加者の13名が登場。このコンテストが、JALフィロソフィやJALブランドを体現できる安全とサービスのプロフェッショナルを選出するためのものであることが紹介され、執行役員 空港本部長の阿部孝博氏からあいさつが行なわれた。
阿部氏は、本来の本選予定日が大雪であったことに触れ、「本選が延期になったことで2回来ていただいた方がほとんどだと思いますが、どんな状況でもよいサービスをすることが我々の役目。2017年度、空港では50年に1回の旅客システムの大刷新もあったが、こちらも皆さんのがんばりのおかげで前進していることに感謝したい。このコンテストも今回で6回目を迎え、いろいろな趣向を凝らしているので、リラックスして皆さんのベストをつくしてほしい」と参加者にコメント。社外・社内の審査役に感謝を述べた。
本選の審査員として、社外からは星野リゾート オペレーション統括本部長の渡部賢氏、アメリカン航空会社 アジア・太平洋地区担当空港統括支店長のJ. Russ Fortson氏が参加。
JAL社内からは代表取締役副社長執行役員 藤田直志氏、専務執行役員 コーポレートブランド推進部担当 大川順子氏、執行役員 人材本部長 小田卓也氏、執行役員 客室本部長 安部映里氏、執行役員 空港本部長 阿部孝博氏、オペレーション・コントロールセンター 企画部部長 今井義文氏が参加(肩書きは当時のもの)。さらに、2016年度優勝者である2名、海外空港部門優勝者の金建東(Kim Keon-Dong)氏と国内空港部門優勝者の宮岡玲奈氏が審査に参加した。
海外空港部門 本選出場者
国内空港部門 本選出場者
日本語、英語の搭乗時刻案内アナウンスで「海外空港部門アナウンス審査」を実施
審査内容はアナウンス審査と接客審査で行なわれ、それぞれ海外部門、国内部門で実施。発表順はクジで決められた。まずはじめに海外部門が開始され、司会者の紹介に続いて空港、氏名をコメント。日本語、英語の順番に搭乗時刻案内のアナウンスを実施する。制限時間は3分間が目安。
トップバッターはデリー空港のANJU SINGHさん。審査員が審査用紙に記入する時間を取り、続いてヘルシンキ空港のTANJA MARIA KUJALAさん、ロサンゼルス空港のSAITO JUNKOさん、釜山空港の金民基さんと各自が見事なアナウンスを披露した。
どのアナウンスも日本語、英語で見事に案内され、海外の空港で、これだけしっかりした日本語のアナウンスが聞ければ安心できるだろう。海外部門のアナウンス審査のあとは、司会者から参加者にインタビューを行なうなど明るい雰囲気で審査が進んだ。
イレギュラー時のアナウンスを日本語、英語で行なう「国内空港部門アナウンス審査」を実施
続く国内空港部門では、「イレギュラー時にお客さまに心から伝わるアナウンス」を披露。「搭乗開始直前に出発地雷雨のため、搭乗時間が遅れる」というシチュエーションを伝え、5分で自ら内容を考えたアナウンスを披露。日本語、英語の順番に3分間で発表した。
トップバッターは那覇空港の平良あゆみさん。続いて羽田空港の永見愛里さん、福岡空港の荒木愛さん、大分空港の伊美絢乃さん、羽田空港の小阪由佳里さん、関西空港の長谷川千紗さん、福岡空港の壬生恵香さん、羽田空港の朝比奈瑞歩さん、伊丹空港の髙村真由さんと9名が続いた。
各自がこの場で考えたアナウンスはどれも見事。搭乗時間の遅れに対するおわびの気持ちが伝わりながら、遅れの原因や訂正後の搭乗開始時刻などが分かりやすいアナウンスが、美声で披露されていく。審査時は、司会者から各人のキャッチフレーズが紹介され、スライドには家族や応援団からの写真入りメッセージが表示されて出場者を後押し。審査の合間を使ってインタビューも挟みつつ、充実したアナウンス審査が行なわれた。
コミュニケーション能力を問われる「海外空港部門ロールプレイ審査」
昼食を挟んで午後は接客審査が行なわれ、カウンターチェックイン審査が実施された。5組の乗客に対応し、持ち時間は8分間。8分で全員の乗客の対応が終わらなくても失格にはならないが、8分経過時点で終了となる。参加者は全員別室に待機し、1人ずつ順番になると会場に戻り、審査を実施していく。参加者にはどんな乗客がチェックインに来るか事前に分からず、その場で対応を行なう。
まず海外空港部門から開始され、アナウンス審査と同じくデリー空港のANJU SINGHさんからスタート。各参加者とも、英語をベースに日本語も交えながら座席指定、スーツケースの預け入れ、とチェックイン作業に対応していく。状況に合わせてカウンター越しではなくきちんと外側まで出て対応するなど各人とも対応は見事だ。
最初にカウンターにチェックインに来た1組目は、若い女性の団体客3名。観光を楽しんで帰国するところのようだ。通常のチェックインに加え、巡った観光地について、軽い会話のなかで楽しい雰囲気を盛り上げながら、搭乗口の詳しい案内などを自然に伝えていく。2組目は2人組の若い男性ビジネスマン。お勧めのお土産物に答えたり、ラウンジの案内を行なったりするなど、乗客のニーズに合わせてそれぞれ対応が違うのが分かる。冗談も交えながら明るく対応するなど会場からも笑いが起こっていた。続いて3人目はつえを突く男性で、前方の非常口座席を希望。4人目は高齢女性……と続く。3人目の対応までで終了する参加者が多かったが、ヘルシンキ空港のTANJA MARIA KUJALAさんが4人目まで対応できていた。
高い対応力が求められる「国内空港部門ロールプレイ審査」
国内空港部門もアナウンス審査と同じ、くじで決まった順番で進んでいく。5組の客に対応し、持ち時間は8分間なのは海外空港部門と同じだが、チェックインに来る乗客が変更される。
1組目は、英語を話す外国人観光客。座席は通路側を希望する。2組目は視聴覚障がいを持つ男性。簡単な手話や、カウンターにある筆談ボード、メモ用紙などをフル活用してコミュニケーションを行ない、搭乗口を案内していく。3人目は「前回の搭乗時にオーバーセールと言われ、乗れるかどうか不安だった。なぜそんなことが起きるのか」と訴える女性。謝罪しつつも、各参加者それぞれの言葉で分かりやすく解説を行なっていた。ほとんどの参加者はこの3組目の対応までで時間が終了。4組目は高齢の夫妻で搭乗口を聞いて来るが、福岡空港の壬生恵香さんがはじめて対応にあたったときには拍手が起こっていた。
国内空港部門はアナウンス審査と同じく通常のチェックインにとどまらないさまざまなシチュエーションが用意され、高い対応力が求められる内容だ。1組目の外国人には英語で観光地のどこに行なったかを聞いたりと会話するうちに日本好きだと分かり、富士山が見える窓側の席を勧める参加者もいるなど対応が見事。視聴覚障がいを持つ男性への対応もそれぞれ工夫が見られ、寄り添う姿勢が見られた。
審査ポイントや聴覚障がい者のコミュニケーションについての解説を実施
休憩を挟んで国内9名全員の審査を終えて、審査員たちから簡単に講評が語られた。まず星野リゾートの渡部氏からは「今回の審査ではIT化が進むなかで人が行なうサービスの価値が何かを考えたとき、“この人に不満を言ったり声をかけたりしたいと思うかどうか”を意識した」と説明。「ミスをしないところがすごいのではなく、どれだけ寄り添えるか、顧客が声をかけたくなるか」で評価したとのこと。「実質的な問題への対応ではなく、目の前の心理的ニーズをどれだけ掘り起こせるかが要所要所で見られて、こちらも勉強になった」と参加者たちを評価した。
続いてアメリカン航空会社のJ. Russ Fortson氏は「今日の午後は特に勝者を決めるのは難しかった」とコメント。JALとアメリカン航空との共同事業に感謝を述べ、「JALからは特にサービス関連でたくさんのことを学んだ。本当にみんな素晴らしかった」と語った。
大川氏からは「皆さんがこの緊張感のなかであれだけの対応ができたことを、誇りに思いました」とコメント。「大事なことは独りよがりにならないこと。またこのスタッフに会いたいなと思ってもらうこと」だと指摘。「今日の皆さんにはどなたにもサービスされたい、また会いたいと思いました。本当にお疲れさま」と参加者たちをねぎらった。
ここで審査員たちが別室に移って審査を行なう時間を使って、空港オペレーション教育訓練部長の上原博信氏から「サービスコンテスト審査のポイント」が解説された。この解説からは、高齢者や聞こえにくい人にも音が聞き取りやすくなる「ミライスピーカー」を使用。このミライスピーカーは、2016年8月から羽田空港のJALチェックインカウンターに導入され、2018年1月からは国内14空港に追加導入されているもの。
上原氏は、参加者をねぎらったあと、「IT化やお客さまの多様化など環境が変化するなかで、これまで以上に理解力や対応力が求められている」と解説。海外空港部門では日本語、英語など各言語での「コミュニケーション能力」を、国内空港部門では言語、聴覚障がいをはじめとする「対応能力」を重視したという。
これまで以上に多様なお客さまのニーズに沿った知識とサービス、対応力が求められる一方、これまで培ってきた「おもてなしの心」をベースとしたサービスは普遍だと解説した。
また、今回、国内空港部門ロールプレイ審査で実際に聴覚障がいを持つ方の協力を得て審査を実施。自らも聴覚に障がいを持つJALの井上彩香氏も審査に参加し、コンテストの参加者らに「耳の不自由なお客さまへの空の旅サポートについて」というタイトルで、聴覚障がい者のコミュニケーションについての解説を行なった。
井上氏からはまず、「聴覚障がいにはいろいろな種類や聞こえの程度があり、コミュニケーション方法も人それぞれ違う」と解説。誰もが同じコミュニケーション方法とは限らないという。また、「聴覚障害は見た目で区別がしにくい。今回の審査では『気づき』『伝える』『情報』の3つが審査のポイントになる」と詳細について解説した。
聴覚障がいを持つ方は「普段耳からの情報が入ってこないためまわりの状況を見ながら自分で判断して行動しているが、イレギュラー発生時に困る」といい、「耳の不自由なお客さまではないかと素早く気付き、すぐに対応できているかを審査した」とのこと。また「筆談などチェックインに時間がかかるが、愛情を込めて一生懸命伝えようとする姿勢がとても大切」と説明した。筆談ボードやメモ用紙などを有効活用し、正面から口元をはっきりと見せているかをポイントとしたという。最後に「情報」として電光掲示板での表示プラス、「一歩踏み込んだ情報提供の対応ができているかどうか?」もポイントとされた。
最後に「コンテストを機に手話を覚えていただき、今後の現場で耳の不自由なお客さまと出会ったときに、手話であいさつをしてくださるとうれしい」とコメント。「あらゆるお客さまにとってやさしいJAL、日本らしい『おもてなし』を大切に日本からも世界からも愛されるJALを目指してともにがんばっていきましょう」と締めくくった。
審査結果発表! 「空港の代表」の受賞に応援団からも大きな歓声が
審査がまとまり、「2017年度空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」の表彰式が行なわれ、本選出場者には“おもてなし”を花言葉に持つアルメリアの花をデザインしたバッジが贈られ、「サービスアドバイザー」の資格が与えられたことが解説された。また、国内空港部門は優秀賞、準優秀賞のほか、今回特別に審査員特別賞も発表された。
空港本部長の阿部氏から各賞を発表し、審査員特別賞は福岡空港の荒木愛さんと大分空港の伊美絢乃さんが受賞。表彰状と副賞が贈られた。福岡空港の荒木さんからは「昨年も参加しましたがファイナリストに残れず、来年こそと1年がんばってきました。支えてくださった皆さまや福岡空港をご利用いただく皆さまに感謝でいっぱいです」とコメント。大分空港の伊美さんからは「これからも大分空港の仲間と助け合いながら、いろいろな方に寄り添ってサービス面でがんばっていきたい」とコメントした。
各賞の発表の瞬間は、受賞発表のたびに会場後方で応援していた応援団から大きな歓声と拍手が上がった。「各空港の代表」として参加している参加者たち。各空港のチームとして一体感が感じられた。個人のコンテストではあるが、さながらスポーツの対抗戦のような雰囲気で、このコンテストが空港サービスを担うスタッフの方々にとって大きい存在であることが感じられた。
海外空港部門の発表に移り、準優秀賞はデリー空港 ANJU SINGHさんが受賞。ANJUさんからは「今回、自分のスキルをインドの方だけでなくJALの皆さんに披露して、国際的に見ていただく大きな機会になりました。これからも、JALの乗客の皆さんのためにもっと努力して行きたいと思います」とコメントした。
続いて海外空港部門の優秀賞は釜山空港の金民基さんが受賞。金さんからは「先ほど画面に“おもてなし”の言葉が表示されましたが、この言葉はJALに入社して初めて知りました。常にお客さまに寄り添ってお客さまのご要望を受け入れるという文化は、日本でも海外でも韓国でも強みになると思っています。これからもおもてなしを実現できるよう努力していきたいと思います」と日本語でコメントし、トレーナーらに感謝を述べた。
そして、国内空港部門 準優勝賞は伊丹空港 髙村真由さんが受賞。髙村さんは伊丹空港の仲間らへの感謝を語ったあと「この賞は私の名前でいただいておりますが、大阪・伊丹空港および協働いただいた方々にいただいた賞だと思っております。伊丹に帰ってうれしい報告ができることを光栄に思っています」とコメントした。
最後に、国内空港部門 優勝賞に羽田空港の永見愛里さんが発表されると、会場からはひときわ大きな歓声と拍手が上がった。会場の後方に多く駆けつけていた応援団のなかには感動で泣く人もおり、ここまでのチームでの努力が伝わってくる瞬間だった。
見事優勝した羽田空港の永見さんからは「今日は皆さまのロールプレイを見ながら、自分の未熟さをひしひしと感じておりました。羽田空港はシステム刷新が早かったこともあり、時間がないなかで皆さまにご指導いただきました。予選では“感性を磨く”という点が語られ、この1カ月間重きを置いてやってきました。お客さまに対して、提案として差し出せる引き出しがどれだけ持てるかが大事なことなのだとこのコンテストを通じて学びました」と語った。
受賞結果の発表後、代表取締役副社長 藤田直志氏から総評が語られた。「本選・予選に参加された皆さん一人一人が空港の代表です。自信を持って部署に帰って、さらにサービスを提供いただきたい。皆さんミスもなく緊張したなかで評価も厳しかった。こうしたなかで勝ち抜かれたことを大変うれしく思います。総評の代わりに、皆さん一人一人にフィロソフィをお伝えしたい」と語り、本選出場者一人一人にコメントした。社外審査員や関係者らへの感謝を伝え、全員で振り付きで「イイネ イイネ」をして笑顔で終了した。