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沖縄観光コンベンションビューロー、インバウンド消費拡大へ「キャッシュレスセミナー」開催

外国人旅行者向けに電子決済導入を促進

2018年3月15日~16日 開催

沖縄県とOCVBは県内観光関連事業者や団体を対象に「キャッシュレスセミナー」を開催した

 好調に伸び続ける訪日外国人旅行者。沖縄も2017年は日本人と外国人を合わせて940万人と過去最高の入域観光客数となり、外国人旅行者数も順調に増えている。

 一方で、外国人旅行者による消費額の伸び悩みが課題となっている。その要因の1つが、キャッシュレス化の遅れとされ、消費額アップを図るためにも今後キャッシュレス化の推進が望まれる。

 そこで沖縄県とOCVB(沖縄観光コンベンションビューロー)は3月15日に名護市で、16日に那覇市において、電子決済研究所 代表取締役社長の多田羅政和氏を講師に迎え、県内観光関連事業者や団体を対象に「キャッシュレスセミナー」を開催した。本稿では16日の那覇市・ロワジールホテル那覇で開かれたセミナーをレポートする。

 多田羅氏の講演に先立ち、沖縄県文化観光スポーツ部 観光振興課から沖縄観光の現状、観光ブランド「Be.Okinawa」についての説明があった。

 国内旅行市場が、少子化や経済状況を背景に縮小傾向にあり、インバウンド市場の拡大の必要性、また対象市場の多様化(東アジアに依存している現状を、欧米豪露へ拡大)を図る必要があることが述べられた。その方策の1つとして、沖縄のブランディングを確立するため沖縄県では「Be.Okinawa」を掲げ、広くアピールしていることが紹介された。

沖縄県文化観光スポーツ部 観光振興課による沖縄観光ロゴ「Be.Okinawa」の説明。「美しい自然と温かい人たちに囲まれて、本来の自分を取り戻せる島」の意味が込められている

 続いて多田羅氏が登壇。電子決済サービスの現状やインバウンド消費拡大への期待、電子決済サービスの種類、導入ポイントなどについて語られた。

 電子決済はプリペイド、デビット、クレジットの3つに分けられ、世界的にデビット決済が広く使われている。韓国や中国は9割が電子決済になっており、欧米でも3割~5割が電子決済。ところが日本の電子決済は18.3%で、現金決済が主流となっている。日本政府では、2027年までにこの割合を40%に上げる目標を掲げているという。

株式会社電子決済研究所 代表取締役社長 多田羅政和氏。Webサイト「電子決済マガジン」にて電子決済についての情報を日々発信している

 日本ではSuicaなどの交通系や楽天Edyといった非接触IC方式の電子マネーが急成長したが、その成長率が急激に落ち込んでいる。今後注目したいのが、スマートフォンアプリによる「ネット決済」である。

 日本でもLINE Pay、楽天ペイなどのサービスが始まっているが、中国ではほとんどの人がAlipayかWeChat Payを使用。両方持っている人も多い。

 スマートフォンアプリには、現在使われている非接触IC方式やQR・バーコード方式のサービスを入れられること、読み取り端末にもスマートフォンやタブレットが使えることなどからも、今後の主流になるだろうとのこと。

 キャッシュレス化の導入をどのように進めていくかについては、まずは国際ブランドのクレジットカードに対応する非接触IC「EMV」の導入、次に中国人観光客に対応するためAlipay、WeChat Payの導入が提案された。

日本では電子マネーが普及しているとはいえ、電子決済は2割弱にとどまっている

 沖縄のキャッシュレス化について多田羅氏の印象は、店舗ではそれほど遅れているとは感じなかったがタクシーは導入が遅れていると感じたという。「タクシーは飛行機を降りて最初に使うものなので、印象は大事」と感想を語った。

 セミナーは、海外で実際に電子決済で買い物をしたときの映像を流すなど、とても分かりやすい内容だった。平昌オリンピックに行った際には、非接触ICチップが組み込まれたグローブやピンバッチなどのグッズが販売されていたことも紹介。

 キャッシュレス化で外国人旅行者の消費額アップを図ろうというのが今回のセミナーの主旨であったが、実際にキャッシュレスでの支払いは、現金よりも多く消費するというデータが得られているとのこと。現金をほとんど使わない国・地域からの旅行者は、現金しか使えない店では購入意欲がなくなってしまうだろう。

 電子決済に対応する読み取り機も安く買えるようになっており、手数料も明確化されているなど導入のハードルが低くなっているそうで、観光産業関連の事業者はもちろん、個人経営の飲食店や販売店などへもキャッシュレス化が広まることを期待したい。

事前に参加者から募った質問事項についてのアドバイスも