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ATR、CEO クリスチャン・シェーラー氏が来日会見で競合への優位性を強調
新たなブランドコンセプトにも言及
2017年10月11日 06:30
- 2017年10月10日 実施
フランスのターボプロップ機メーカーのATRは10月10日、CEOのChristian Scherer(クリスチャン・シェーラー)氏の来日に合わせて記者会見を行なった。ATRは双発ターボプロップ機のATR 42シリーズとATR 72シリーズを製造しており、日本ではJAC(日本エアコミューター)と天草エアラインがATR 42-600型機を導入している。
会見ではシェーラー氏が市場戦略を、Airline Marketing ManagerのEerika Somersalo(エリカ・ソメルサロ)氏が新たなブランドコンセプトについて解説した。
シェーラー氏は自らの機材を「離島を結ぶコネクタ」としつつ、離島間だけでなく地方間を結ぶ短距離路線の運航にも高効率で適していると話す。
仮に日本の地方間路線のうち、適当と思われる70路線をすべてATRの機材に置き換えると、年間で燃料を5万3000トン、燃料代を5400万ドル、CO2排出量16万8000トン、運航コストでは7800万ドルをそれぞれ削減できるとして、経済効率の高さをアピールした。
それを裏付ける根拠として、燃費は競合のターボプロップと比較して40%、70席クラスのリージョナルジェット比なら85%少なく、1フライトあたりのコストは競合ターボプロップ比で20%減、70席クラスのリージョナルジェット比なら40%減というデータを示した。その結果、1機あたりの年間コストに換算すると、競合ターボプロップ比で100万ドル、70席クラスのリージョナルジェット比で250万ドルの削減が可能だという。
会見後のインタビューでシェーラー氏は、コスト以外で競合のターボプロップであるボンバルディア DHC-8-Q400型機に対するATRの明確なアドバンテージは、より短い滑走路で離着陸できることだと述べたが、会見中にもこの点は強調していた。
実際、ATR 42-600型機は最短1000mの滑走路で離着陸が可能だが、より短い800mでの短距離離着陸(STOL:Short Take-Off and Landing)を実現するATR 42-600S型機にも言及。推力の強化やラダーの改良、キャビンの軽量化によって、複雑な地形でも離陸後すみやかに旋回することなどにより、Q400型機では離着陸できないような小規模空港でも運用できると話した。ATR 42-600S型機は2020年の導入開始を予定している。
短距離を飛ぶターボプロップは、2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて需要がさらに増えることを見込んでおり、会見最後のスライドでは「2025年までに離島、地方間、政府専用機などで100機程度の導入の余地がある」と締めくくった。
続いて登壇したソメルサロ氏は「空の旅は目的地に到着することだけではない」としたうえで、新たなブランドコンセプト「Enjoy an Extraordinary Air Travel Experience with ATR(ATRとともに格別な空の旅を)」について説明した。
同氏はATRが空の風景を楽しむためにベストの選択である理由として、リージョナルジェットの巡航高度が約1万700m(3万5000フィート)なのに対して、ATRは約6100m(2万フィート)と低く、高翼機(胴体上部に翼が設けられている機体)であるため、視界を遮るものがないという2点を挙げた。
一方「暖かみのある作り」と表現したキャビンは、インテリアをイタリアのデザインハウス、ジウジアーロが担当しており、競合のターボプロップ機より胴体の横断面が23cm大きく、座席幅に余裕があるとアピール。曲線を多用したシートの幅は18インチ(約45.7cm)。また、6枚羽根のプロペラによって振動が少なく、静粛で快適なキャビンであるとした。
なお、ATR 42-600型機の機内の様子については、関連記事「JAC、全48席の新鋭機『ATR 42-600』型機の機内を公開。関係者を招いてお披露目式」や「天草エアライン、2016年1月に運航を開始する『ATR42-600(みぞか号)』を披露」に詳しい。
最後にソメルサロ氏は巡航高度について再び触れて、リージョナルジェットとの客室与圧の違いを説明した。飛行機の機内は気圧を一定に保ち、乗客が快適に過ごせるよう与圧しているが、約1万mを巡航するリージョナルジェットの客室与圧は標高約2200m(7200フィート)で過ごすのに相当し、頭痛や疲労の原因になっているという。ターボプロップのATRの客室与圧は約1160m(3800フィート)相当であるため、身体への負担も少ないとした。