旅レポ
ディープな韓国を地方でたっぷり味わう。青陽、扶余、公州をめぐる三国志百済旅(その5)
百済の人々が見た風景と伝統×最新韓屋を体験
2016年12月9日 00:00
韓国の忠清南道に位置する青陽郡、扶余郡、公州市が共同で実施したプレスツアーでは、“韓国三国志”として有名な高句麗、百済、新羅のうち、百済にまつわるエリアを中心に、歴史や文化、そして現在の姿などを紹介。
今回は2番目の都が置かれた公州市(コンジュ・シ)をピックアップ。百済時代の城郭や名産栗のマッコリを始め、一度は泊まってみたい韓屋など訪れたいエリア&味わいたいメニューをレポートする。
古墳の内部へ潜って入場、技術力とロマンに酔いしれる
プレスツアーの最後に訪れた公州市は、広さは940km2で人口約13万人。ソウルからバスなどで2時間ほど。475年に百済の文周王が現在のソウル(漢城)から公州(熊津)に遷都し64年間、都が置かれた場所だ。ユネスコ世界遺産登録がされた「公山城」や「宋山里古墳群」など百済文化を語る際に欠かせないエリアとなっている。
公州市を訪れたならば「宋山里古墳群」は必ず足を運んでおきたい名所の一つ。百済時代の王と王妃の墓があり、武寧王墳のほか1~6号墳の合計7つの古墳を見ることができる。古墳群へ行く前にまずは「宋山里古墳群模型館」で構造や埋葬品について学習しよう。
日本語も説明ボードに記載されているので安心だ。ここでは5号墳と6号墳、そして武寧王の内部を再現した模型に入ることができ、技術力の高さや、そのこだわりを間近に感じることができる。各古墳は入り口も小さく、羨道では腰をかがめないと入れないほど。しかし、玄室に入ると途端に空間が広がり、その落ち着いた雰囲気に驚く。
割石が積まれたドーム型の横穴式石室墳の5号墳は中に入ると壁の白い部分が目立つ。これは石と石を付けるために石灰を使っているからだ。夫婦が合葬できるよう通路があるのが特徴だ。続いて6号墳へ。韓国内に2つしかないレンガ墳で、石室の壁には四神図と呼ばれる青龍、白虎、朱雀、玄武が描かれている。また、レンガには当時のお金の五銖銭の模様がつけてあるので細かい部分まで見てみよう。
そして、唯一埋葬者が分かっている百済25代王・武寧王陵の模型へ。長方形型の磚築墳で発見当時は盗掘されておらず108種類、4600点が出土。玄室の大きさは長さが4.2m、幅2.7m、高さ3.1mとかなり大きめ。羨道も長さが2.9mあり、棺が安置される場所は一歩上がり、玄関のようにもなっている。
内部は縁起のよい数字である28種類のレンガを使い、天井、壁、床が石灰で防水加工が施してある。レンガをよく見ると中方、急使などの文字が刻まれ配置される場所がわかるようになっているのも面白い。蓮の模様がレンガにびっしりと刻まれ美しさも格別。
別室には、発見当時の状態を再現しており、王の墓を守る鎮墓獣や埋葬された王の身分証である墓誌石や南枕であったことなどがわかるようになっている。なお、一緒に埋葬されていた王妃の親知らずと思われる歯も1本発見され、解析により30代程度の年齢であったことが分かっている。
古墳の構造などを学んだあとはいよいよ「宋山里古墳群」へ。1997年までは実際に入ることができたが、現在は保存のため内部は立ち入りができない。外からその大きさを見ることはできる。模型館から徒歩5分ほどの山あいに現れる古墳群の雄大さは格別。5号墳、6号墳を守る山だと思われていた後ろの山が実は武寧王陵という話もロマンがある。
宋山里古墳群
所在地:公州市王陵路37-2
TEL:+82(0)41-856-3151(武寧王陵観光案内所)
入園料:大人:1500ウォン(約150円、1ウォン=約0.1円換算)、青少年1000ウォン(約100円)
開園時間:9時~18時
美しい埋葬品や出土品の数々は、「宋山里古墳群」から徒歩5分の「国立公州博物館」で鑑賞することができる。2016年12月4日まで企画展「武寧」で国宝が一堂に介した。模型館にて埋葬品の種類や配置などを一通り頭に入れておくとより楽しむことができる。
見所はやはり国宝に指定された装飾品たち。王の「金製冠飾」は冠帽の左右か前後に付けられる装飾品。解説をしてくれた92歳のファン先生は「純度99パーセントの金で作られており、260個以上の円形瓔珞が施され、動くたびに音が鳴る工夫も。勝利や豊かさを象徴する花々や炎をモチーフにした造形の可憐さも注目してほしい」と語ってくれた。王妃の「金製冠飾」も展示されていたが、こちらはいたってシンプル。しかし気品があふれ、百済の栄華が感じられる装飾品だ。
武寧王陵に使用されていた実際のレンガや鎮墓獣、墓誌石の展示も見逃せない。蓮華文や中方が刻まれている壁側のレンガの長さや、鎮墓獣の大きさや表情の愛らしさはもちろん、墓誌石に刻まれた文章までがはっきりと見ることができ、時間旅行をしているような感覚に。
また、日本と百済との関係が感じられる木棺も再現されたものを展示。日本の南部地方に自生する“高野槇”で作成されており、博物館の入り口にも植栽されているので見ておこう。なお、発掘された当時の配置で埋葬品が展示されているブースもあるので、たっぷり時間をかけて展示物を目に焼き付けてみては。
国立公州博物館
所在地:公州市観光団地路34(熊津洞360)
TEL:+82(0)41-850-6300
入館料:無料
開館時間:9時~18時(火~金曜日)、9時~19時(土、日、祝日)、月曜日休館
Webサイト:国立公州博物館
いざ、熊津城へ! 絶景広がる城郭を1時間かけてウォーキング
今回の百済の史跡を巡る旅もユネスコ世界遺産の「公山城」がラスト。長さ2.6kmの城郭を持つ「公山城」は百済の時代「熊津城」と呼ばれており、64年間王都を守ってきた場所。建設当時は土で作られた土城だったが朝鮮時代に石城となり今の姿に。
百済から朝鮮時代に至るまで地方都市の中心地だったため敷地内にはいろいろな年代の史跡が残っているのが特徴だ。東西南北にそれぞれ楼があり、すべてをまわる場合は1時間かけて城郭を歩くこととなる。
バスターミナルから5分ほど登ると、まずは錦西楼に到着。1993年に復元され土日には「熊津城守門兵勤務交代式」も見ることができるスポット。錦西楼をくぐると色鮮やかな虎が迎えてくれる。
しばらく道なりに歩き、木々を抜けると見晴らしのよい錦江沿いのエリアに到着する。城郭から見る錦江の景色は百済時代とほぼ変わらないため、いにしえからの想いに浸ることもできる。景色を眺めながら進むと突如こんもりとした土に道が変化。ここから先が百済時代そのままの土の城郭だという。
設置された看板によると朝鮮時代に作られた石の下に百済時代の城跡が残っており、実際467m分発掘された」とのこと。例えて言うならば、「蒸した餅を積んだようにとても頑丈で、この技法は日本にも伝わった」と書かれていた。実際に歩いてみたところ、道が細かったり急勾配があったりとかなりハードな道だった。
途中には楼とともに「双樹亭」と呼ばれる場所も。ここは、初日に味わった、きな粉餅「インジョルミ」にまつわる場所で、朝鮮時代に戦を逃れるために仁祖が公州に避難した。その際に“イム”さんが作った餅を絶賛し、“最高に美味しい=ジョルミ”と組み合わせて餅の名前になったという。また同じエリアには王宮址もあり、時の流れを感じずにはいられない。
ぐるりと城郭を巡ると最後は絶景エリアが待っている。錦西楼につながる城郭の美しさと壮大さ両方を感じることができフォトスポットとしても最適。四神の描かれた旗が風になびく姿も美しい。
なお、「公山城」では百済時代の衣装体験も可能。スタッフに聴いたオススメコーデは、赤を基調とし、紫とゴールドがアクセントになっている衣装。体験は2000ウォン~(約200円~)と手軽なのでぜひ挑戦を。
公山城
所在地:公州市熊津路280
TEL:+82(0)41-856-7700(公山城観光案内所)
入館料:大人1200ウォン(約120円)、青少年800ウォン(約80円)、子供600ウォン(約60円)
観覧時間:9時~18時
名産の栗をたっぷり使ったスペシャルなマッコリを味わう
公州の名産品といえば栗。公州栗と呼ばれ、土壌のよさと安定した栽培技術により保存がきき、糖度も高いのが特徴。ここでしか味わえない地元の栗を使って作られた「栗マッコリ」も人気だ。「サゴク醸造場」で作られている「栗マッコリ」は中でもまろやかな口当たりと栗の優しい風味が韓国国内でも評判。
今回特別に製造過程を見学、大きな泡が出ていることがうまく発酵している証拠とのこと。一番人気の栗マッコリを始め各種マッコリの試飲もあり、栗マッコリは栗の色そのもののほんのりイエローがかったカラー、通常のマッコリと比べるとその違いは一目瞭然。口に含むと栗の香りが広がり、飲み終わった後もしばらくほんのり栗感が残るほど。飲み口は柔らかくほんのり甘さもあり女性にもオススメ。
なお、生マッコリのため賞味期限は10日後で日本には持ち帰りができない。現地で発見したら必ず飲んでおこう。栗のほかにも、ヒエや桑の実、とうもろこしなど種類は豊富。組み合わせは自由で7本で1万ウォン(約1000円)となっている。直売は行なっていないので各種酒店で購入しよう。
サゴク醸造場
所在地:公州市寺谷面麻谷寺49
TEL:+82(0)41-841-9308
Webサイト:サゴク醸造場(韓国語)
韓国でも大人気の最新型韓屋ステイを体験しよう
伝統的な建築方法を使い松や杉で建てられた韓屋ステイを体験するならば、最新の設備と伝統が合わさった場所を選んでみてはいかがだろうか。「公州韓屋村」は、公州市が運営する2010年にオープンした施設で、価格がリーズナブルな部分が魅力。
9000坪(約3万m2)以上の広大な敷地には、団体宿舎16棟37室、個別宿泊棟が16棟20室。バーベキューエリアやレストランなども併設されており、ファミリーはもちろん修学旅行生にも人気。客室は瓦屋根と藁葺き屋根の2タイプがあり、カードキーも導入され、見た目とは異なりセキュリティーも万全。
オンドルは伝統の薪を使い昔ながらの方法でスタッフが部屋を暖めてくれる。一度温めると約12時間は暖かさが持続するという。なお、安全のため火を使った調理は不可。そのためキッチンは完備されていない。食事は施設内のレストランや9カ所の野外炊事場を使おう。
個別宿泊棟の客室はシャワーやトイレも綺麗で快適。伝統的な家具が並べられ、テレビも完備。縁側に出て家族で会話を楽しんでいる宿泊者も多かった。また、団体部屋もかなりの広さ。ロッカーも客室内にあり個人の荷物が保管できるようになっていた。
客室周辺を散歩してみるのも楽しい。昔ながらの建物に囲まれて、まるでタイムスリップしたかのような雰囲気。写真撮影にも最適なのでお気に入りの場所で撮ってみてはいかがだろうか。体験プログラムも人気で韓紙を使った小物作りや、王から平民まで衣装が揃う百済の衣装体験、インジョルミ作りなどさまざま。それぞれ5000~1万5000ウォン(約500~1500円)となっている。なお、人気の宿泊施設のため常に予約はいっぱい。宿泊したい場合は早めの予約が必須だ。
公州韓屋村
所在地:公州市観光団地ギル12
TEL:+82(0)41-840-8900
宿泊料金:10万~25万ウォン(約1万~2万5000円)
Webサイト:公州韓屋村(韓国語)
ワンランク上の韓屋リゾート気分を味わいたいならば「松香ペンション(ソルヒャン・ペンション)」がおすすめ。2015年にオープンしたばかりの知る人ぞ知る隠れ家的韓屋ペンションだ。静かな谷に位置する同ペンションは、松や炭、黄土を使い伝統的な方法で建築。バスルームも森林浴効果を意識しヒノキを使うなど贅沢な仕様となっている。
部屋に一歩足を踏み入れるとふわりと木の香りが漂いリラックス効果も抜群。木調の客室は落ち着いた雰囲気でオンドルも暖かく、自分の家に帰ってきたような心地よさ。布団もふんわりで熟睡を促してくれる。なお、Wi-Fiなどのインターネットは完備されておらず、逆にそれが外界とのつながりを遮断し、心身ともにリセットしてくれる。広めのキッチンと室内にドラム式のランドリーも完備して長期滞在もサポート。
今回、週末に宿泊して20坪(約66m2)で30万ウォン(約3万円)、15坪(約50m2)で25万ウォン(2万5000円)だったが、金額に関しては問い合わせを。
バーベキューエリアも完備し、部屋からそのまま美しい景色を見ながら食事を楽しむことも。バーベキューグリルはオーナーが開発した特注品で高さ調整が楽にでき、厚めの肉はジューシーに、お芋はほっこり仕上がるうえ、チゲも作ることができる優れもの。
客室のサイドにはテントも用意され、雨天の場合や寒い場合はこのなかで食事が楽しめる。食事はオーナーの奥さん自らが腕をふるった手作りのキムチやナムルを始め家庭的な雰囲気のメニューが並ぶ。グリルを使い自分たちで肉などの食材を調理しながら、家族や仲間とのコミュニケーションをとってみては。焼けた肉は新鮮な地元の野菜にのせ、コチュジャンや生ニンニク、刻み唐辛子と一緒にほおばろう。
同ペンションには、カフェも併設。手作りのマフィンや、ゆっくりと焙煎し淹れたコーヒーなどが味わえる。朝食はビュッフェ形式を採用し、朝の7時30分~9時30分に利用が可能だ。フレッシュフルーツに、ブレッドやコーンフレーク、ボイルドエッグなどシンプルで体に優しいメニューが並ぶ。鳥の声や森の木々がざわめく音を聞きながら優雅にパラソルの下で食事もでき、ゆったり朝食を味わうよさを実感できるはずだ。
松香ペンション(ソルヒャン・ペンション)
所在地:公州市反浦面鶴峰里85-1
TEL:+82(0)42-824-6600
Webサイト:松香ペンション(韓国語)
4日間にわたり、百済にまつわる青陽郡、扶余郡、公州市と史跡や文化、そして食を巡った今回のツアー。ソウルをはじめとする都市とはまた違った味わいがあふれる時間が流れ、充実の旅だった。
歴史は苦手と思うかもしれないが、実際に行ってみると新たな発見や自分たちとのつながりも感じられ興味もわくはず。名物や食を味わうだけでも楽しい。高速道路を使い2~3時間移動するので、その間にパーキングエリアに寄ってみるのもよいだろう。
途中で立ち寄った松山ブドウサービスエリアでは、うどんとセットになった「いなり寿司定食」(6500ウォン:約650円)を味わえる。移動するからこその楽しみも一緒に体験してみてはいかがだろう。