旅レポ

台湾台東を陸と空から大満喫、ゆったり楽しむ田舎旅を体験(その4)

台東の海側でカジキの旨さとアミ族文化を知る

 台湾台東県庁は11月4日から7日にかけて台東の名産品や観光スポット、原住民族の文化などを体験し、台湾の今を紹介するプレスツアーを開催。その4となる今回は豊かな海の恵みが味わえる成功鎮とアミ族文化に触れることのできる部落などを中心にレポートする。

 台湾での最長の176kmの海岸線に面している台東県。旅の最後に訪れたのは、漁業が盛んな成功鎮周辺。カジキが有名で台東に訪れたのならば、必ず味わっておきたいグルメのひとつだ。また、同時に色濃く原住民族の文化が残る場所としても知名度が高い。特にアミ族が多く暮らすエリアとしても知られている。

山道を抜け美しい海岸線が見えてきたら、まもなく漁業で有名な成功鎮に到着する

アミ族が暮らす部落でエコな楽器やしめ縄作りを体験

 台東のシンボルともいえる「三仙台」は8つのアーチの橋が美しく、風景区として指定されている場所だ。日本の海岸とは異なり、大きな丸みを帯びた石がゴロゴロしており、実際に橋の近くへ行くのは徒歩だとかなり難しい。ビーチサンダルではなく、しっかりした靴を履いておこう。

 海岸にほど近い場所にあるのが、「比西里岸部落」。アミ族が暮らすエリアだ。「比西里岸=Pisiliang」は山羊の放牧の意味を持つ言葉で、それが部落の名前となっている。以前は、周辺で放牧を行なっていたが環境保全のため現在は行なっていない。しかし、山羊への熱い想いから、現地のアーティストと協力し、伝統文化である流木を使った山羊のアート作品が100匹並べられ、アットホームな雰囲気となっている。

 入り口の看板には訪れる観光客への歓迎の言葉とともに、部落でのマナーについて書かれているので、忘れずに読んでおこう。許可なく部落の住宅に侵入しないこと、音は小さく。そしてプライバシーを尊重してほしいこと、環境を守り、展示している作品を大事にしてほしいことなどが書かれている。

アミ族が暮らす海岸沿いの「比西里岸部落」へ。入り口には部落に入るときの注意事項がある
部落の人々と現地のアーティストが創った山羊のモチーフたち

 部落に入ると、ステージや食事ができる「比西里岸PAWPAW鼓楽団」の建物を発見。「比西里岸PAWPAW鼓楽団」とは、同部落の若者の流出を防ぐために、何か若者が美中になれるものをと生み出された楽器「PAWPAW鼓」を演奏する青年団のことだ。メンバーは10~20代前半が中心となっている。彼らの演奏が楽しめるステージが1階に、2階はカフェとなっており、吹き抜ける海風が心地よい場所だ。

 この日は屋外ステージで演奏中とのことだったため、移動し迫力の演奏を楽しむことに。

 会場に到着すると、ワンステージを終え休憩中の彼らの姿が。演奏中では聞けない衣装や太鼓についてを詳しく聞いてみることにした。まずは衣装について。少女が頭に着けているのはウサギの毛で作られたヘッドドレス。花や羽などもデコレーションされきらびやかな印象。カラフルなエプロンは未婚の印。その下にはスカートがあり、花や雷などが使われた家紋が刺繍されている。そのため、種類もいろいろ。スカートを見ればどの家の出身なのかが分かるようになっていると話してくれた。

ふわふわのヘッドドレスにカラフルな民族衣装がアミ族の女性の特徴

 青年も同じような色違いの上着とカラフルな腰巻きを着用。未成年はパンツルック、成人したらスカートとなる。腰部分に鈴があり、部落を走る際に音が鳴り居場所が分かるように着けられているそうだ。

カラフルさは女性と同じだが、青年は腰にたくさん鈴が付けられている

 演奏で使う「PAWPAW鼓」も見せてもらった。漁で使い終わった“浮き”(アミ族の言葉でPAWPAW)と流木を使い、動物の皮を張り製作。流木部分にはアミ族伝統の彫刻も施され、使う飾りは民族衣装と同じ織物。演奏スタイルは太ももに挟んで安定させて打ち鳴らすため、かなり大きな音が出る。

 演奏も聞いたが、最初の1打から空気がビリビリするほどの迫力。伝統の歌とともに、打ち鳴らされる太鼓の音色にしばし酔いしれた。上演開始時刻は土曜と日曜の11時と14時。料金は大人(300NTドル:990円、1NTドル=約3.3円換算)、子供(200NTドル:約360円)。電話かメールでの予約が必要だ。

環境を考慮したリサイクル素材で作られた「PAWPAW鼓」
太ももに挟んで演奏する
比西里岸PAWPAW鼓楽団(比西里岸文化中心)

所在地:成功鎮白漣路260号
TEL:+886(0)89-854-434
Webサイト:比西里岸PAWPAW鼓楽団(中国語)

 続いて訪れたのは、「石山部落」。こちらは海側というよりは少し内陸に入った川沿いの場所で台東市内。農業と伝統の流木を使った彫刻が収入源で、周囲は田んぼに囲まれていてのどかな雰囲気。部落の入り口には大きな彫刻が飾られている。

 二毛作を行なっているため、刈り取り後の稲を使って日本向けのしめ縄製作が行なわれている。「石山木工坊」では、お正月向けに製作の真っ最中。美しく編まれていく姿に思わず見とれてしまった。工坊ではしめ縄のほかにも、水に強い月桃や稲製の帽子(1200NTドル:約3600円)も販売。

 香りもよく、たとえ水に濡れても形を整えるだけで元通りと素材の特性を活かしたものだった。まだデザインも麦わら風からハットなど豊富。また、ハンドクリーム(120NTドル:約360円)も爽やかな香りがして、着け心地もよかった。また、アミ族の衣装の展示や月桃網織包などもバッグ類も販売している。製品は「石山木工坊」から徒歩5分ほどの「石山工坊」で購入ができる。

「石山木工坊」ではベテランの職人たちが素早く、美しくしめ縄や帽子を製作していた
「石山工坊」では、月桃帽子やハンドクリーム、バッグなどを販売。ノリのいいスタッフが出迎えてくれる
アミ族の民族衣装もあった。こちらは男性用

 なお、「石山工坊」にて「注連縄御守DIY体験」(250NTドル:約825円)が体験可能。25分ほどかけて丁寧に製作していく。すでに編まれた稲を使い、まずはサイドを叩き平らに。その後グルーガンで接着していく。お飾りやストラップ部分を選び、それぞれをデコレーション。

 時間が一番かかるのは、どの願いを中央に掲げるか。「商売繁盛」をはじめ「金運アップ」「青春よ永遠に」「恋愛成就」などさまざま。なお、今回は「綺麗になれますように」をチョイス。願いごとを選ぶ際にかなり盛り上がるのと、同行者の望みが垣間見られるのでおもしろい。

「石川工坊」ではしめ縄作り体験ができる。まずは縄のサイドを叩き平らにする
グルーガンでサッと叩いた部分を接着
ストラップやお飾りを自分の好みに合わせてコーディネート
己の欲と向き合いながら、大量のお札の中から願いごとをチョイス
完成したしめ縄はパッケージングされて渡される
台東 KaKaWaSan石山部落

所在地:台東市吉林路一段231巷33号
TEL:+886(0)89-231-817
Webサイト:台東 KaKaWaSan石山部落(中国語)

カジキを堪能できる鉄人の店で地元料理の数々を味わう

 成功鎮エリアを訪れたなら必ず味わいたいのが名物のカジキ。今回は地元でも一目置かれるカジキの目利きの鉄人・林氏が選んだ魚を堪能できる「佳濱成功旗魚」へ。水揚げ後、急速冷凍されたカジキなどの宅配も行なっているためレストランの1階には冷凍庫がずらり。

 いつでもフレッシュなカジキが食べられると地元はもちろん台湾国内からも人気のお店だ。お勧めはやはり、お刺身。かなり肉厚で、まずは何も付けずに1口、そして次は醤油、最後にワサビ醤油と3段階に分けて食べるとよいそうだ。なお、お米はもちろん池上米。なお、カジキの刺身や煮付けのほかにも。マンボウの刺身サラダやマンビキの卵とキュウリの炒め物やスープなど成功漁港で揚がった魚をたっぷり使ったメニューが揃う。

 色は濃い目だが、さっぱりした味付け。なによりもご飯が進む。日本ではなかなか味わえないマンボウのコラーゲンを使ったレモン味のひんやりデザートも味わえる。つるんとした食感と爽やかなレモンがベストマッチ。単品でも「海鮮蒟蒻」(50NTドル:約165円)は頼めるのでぜひ女性にお勧めしたい。

「佳濱成功旗魚」はカジキの目利き・林氏が選んだ最高のカジキが味わえると人気
カジキの刺身の盛り合わせ。肉厚で日本の刺身よりもかなり大きい
カジキの煮付け。日本の煮付けに近いがさっぱりしていて、カジキの美味しさが引き立っていた
マンビキの卵を使った炒め物
マンビキの卵を使ったスープ。出汁が利いたスープはじんわり体にしみ込む味
池上米もたっぷり。思う存分味わえる
マンボウ料理も豊富。マンボウの刺身を使ったサラダとコラーゲンたっぷりのデザート
名産のネーブルオレンジ
佳濱成功旗魚

所在地:成功鎮大同路65号-1
TEL:+886(0)89-854-899
営業時間:9時30分~22時
Webサイト:佳濱成功旗魚(中国語)

海を眺めてゆったり。目的別に海沿いの宿泊施設をチョイス

 新鮮な魚を味わったり、サーフィンを楽しんだり海での過ごし方はさまざま。宿泊場所も目的にあったエリア内の施設を選びたいもの。今回は2つの宿泊施設を見学した。まずは、成功漁港、そして「佳濱成功旗魚」からすぐの「東海岸海景渡假飯点」。徒歩圏内に海があり、周辺は漁港にあがった魚を味わえる店が揃っている。8階建てで56部屋、6種類の客室は海に面したバルコニー兼サンルームを完備。「浪漫海景房」(1泊NTドル5000~:約1万6500円~)は10坪でカラフルなウォールペーパーがポイント。ベランダの目の前には学校のグラウンドが広がり、その向こうには海が臨める。地元感あふれるロケーションにほっこり。

「東海岸海景渡假飯点」は地元密着型のアミ族のデザインが活かされた内装が特徴
「浪漫海景房」(1泊5000NTドル~:約1万6500円~)。ベランダからは学校の校庭と海が見え、のどかな雰囲気
東海岸海景渡假飯点

所在地:成功鎮太平路52-1号
TEL:+886(0)89-855-255
Webサイト:東海岸海景渡假飯点(中国語)

 台湾一よい波でサーフィンを楽しみたいのなら成功鎮のお隣である東河郷まで脚を運んでみよう。2011年にサーフィンブームが巻き起こり一気に注目エリアに。北東季節風の影響でいい波のポイントとなっているのだ。シーズンは9月から5月。国内外から多くのサーファーが集まってくる。

 その際に利用したいのが日本語も通じる「サーフ&ゲストハウス熱帯低気圧」だ。車のチャーターもできるため自前のサーフボード片手に訪れることができる。ホテルとトイレなどが共同のバックパッカー向けの部屋を用意。今回見学した「Ocean Room」(1泊4800NTドル~:約1万5840円~)は温水洗浄便座付きのトイレに、ゆったりダブルベッド。バルコニーからは海景色も楽しめる。朝食は、別棟のカフェスペースへ。台湾の家庭料理からおしゃれなデザートまでが味わえる。静かな環境でいい波に乗りたいサーファーにお勧めだ。

「サーフ&ゲストハウス熱帯低気圧」の宿泊施設側の外観
窓からの光で明るい客室。ベランダも広々
カフェスペースは別途歩いて10秒ほどの場所にある。定食からスナックまでメニューは豊富
サーフ&ゲストハウス熱帯低気圧

所在地:東河郷南東河108号
TEL:+886(0)89-896-738
Webサイト:サーフ&ゲストハウス熱帯低気圧

 山から海までたっぷりと台東の魅力を巡った今回のツアー。日本では味わえないダイナミックな料理から肉厚の刺身、そしてブランド米をはじめ、色々な種類の大地の、海の恵みを堪能することができた。同時に、台湾原住民族の今も息づく文化を体験するなどアクティビティも台東ならではの時間が過ごせるものばかりだった。

 台北や台南、高雄に比べるとまだまだメジャーな場所ではないが、一度訪れたらならばその美味しさとおもしろさに心奪われる場所だ。台湾旅行の目的地の一つとして加えたのなら、今までのイメージとは違う新しくて懐かしい台湾の姿が見えてくるはずだ。

相川真由美

フリーライター/鉄鋼業やIT系やエンタメ関連の雑誌やWeb媒体の編集者を経て、フリーの記者として活動中。海外は一人旅がほとんど。趣味は世界のディズニーのパーク&リゾート巡り。最近は年間パスポート片手に日々舞浜通い。うなぎとチョコレートが好物で、旅の基本は“出されたものは全部食べる”。激辛とうがらしから謎の木の実まで挑戦するのがモットー。