旅レポ

ディープな韓国を地方でたっぷり味わう。青陽、扶余、公州をめぐる三国志百済旅(その2)

百済にまつわる文化や名所を巡り、食を堪能

 韓国の忠清南道に位置する青陽郡、扶余郡、公州市が共同で10月6日~10月9日の4日間にわたりプレスツアーを実施した。“韓国三国志”として700年にわたる百済の歴史の繁衰の紹介や、同地域の現在の魅力をたっぷり詰め込んだツアーだ。

 前回に引き続き、韓国の三国時代で知られる高句麗、百済、新羅のうち、百済の都の中心が存在していた青陽(チョンヤン)郡の旅をレポートする。

黄金の亀に触れて運気アップ。「七甲山」のパワースポットへ

 七甲山の麓にはパワースポット「霊亀抱卵形地勢」と呼ばれる卵を抱く亀に似た地形の場所があり、多くの観光客が訪れる人気のエリアとなっている。その場所に2016年4月にオープンしたばかりの施設があり、世界最大長さ6.5m、幅5.5mの黄金の福の亀が鎮座している。孵化した子亀と母亀が仲よくおり、福と刻まれた卵にお賽銭を投げ、長寿を願う。

 百済時代に体の弱い家系に生まれた学者(ソンビ)の夢に、ある夜、卵を抱く亀が出てきて、天寿を全うすることができたという亀岩の伝説がこの地にあり、それをモチーフとしている。

 また、像からほど近い「之川」には、幸運を呼ぶ金の亀が住んでいるという話も伝わっている。実際に風水的にもよい場所で以前は学校として利用されていたが、今後は百済建築に使われた屋根瓦の産地として、瓦造りなどを体験できる施設となる予定。

丘の上には黄金の福の亀が待っている
母亀と孵化した子亀に触れるとご利益がある
お賽銭を卵めがけて投げるが、なかなか入らず難しい。そのため入ったときの喜びもひとしお
施設内では、今後百済時代に使われた瓦作り体験も予定している
黄金の福の亀

所在地:忠南青陽郡大峙面七甲山路514

七甲山の夜は星空にうっとり、巨大望遠鏡で宇宙を観察

 七甲山の地形と豊かな自然環境を活かした「七甲山天文台スターパーク」では、昼間だけではなく、夜の星空を堪能できるアクティビティが人気。国内最大級口径のAPO 304mmの屈折望遠鏡が設置されたメインの観察室や、半球型スライディングドームに設置された望遠鏡で、土星や月をはじめさまざまな惑星をじっくり観察できる。

 なお、屋内のシアターでは重力やアポロ13号についてなど基本的な情報を紹介するアニメーションを3Dで約14分間放映。また別のシアターでは5D映像が体験可能な12mのプラネタリウムも完備されている。郡が運営しているため入場料は7~12歳までが1000ウォン(約100円、1ウォン=約0.1円換算)、13~18歳が2000ウォン(約200円)、大人が3000ウォン(約300円)で、気軽に学びに訪れることのできる価格設定となっている。

「七甲山天文台スターパーク」は山の上の途中にあるため、観光バスの場合は途中から徒歩で向かう
19時過ぎに到着したら、すでに家族連れの来館者が多数おり、星空を眺めるなど楽しんでいた
国内最大級口径のAPO 304mm屈折望遠鏡が設置されたメインの観察室
スライド式のドームは夜になると星空を観察されるために解放され、望遠鏡で惑星観察ができる
主人公のレイが宇宙の基本を学ぶアニメーションも3Dで上映中
宇宙について学ぶために社会科見学などで学生が訪れるスポットとなっている
七甲山天文台スターパーク

所在地:定山面ハンティコゲキル178-46
TEL:+082(0)41-940-2790
Webサイト:七甲山天文台スターパーク

地元の食材をふんだんに使った韓国ならではのメニューに舌鼓

 地元の新鮮な野菜や食材をふんだんに使った韓国料理が味わえるのも青陽郡の魅力の一つ。今回は3店舗でそれぞれ地元の味を堪能することができた。

 まずは「サンゴルチャギ」で「清麹醤(チョングッチャン)」をチョイス。価格は7000ウォン(約700円)。青陽郡は発酵食品が熟成されるのに最適な条件が揃っており、味噌を使った鍋(チゲ)もかなりの美味しさだ。清麹醤は栄養価が高く、消化のよい食品として人気が高まっている健康フード。たっぷりの野菜と豆腐を入れて、煮込むことで納豆に似た独特の香りが上がり、韓国のお袋の味として愛されている。匂いはかなり強いが味は濃厚で病みつきになる美味しさ。味噌の深い味わいが豆腐や野菜に染み込み、白いご飯と一緒に口に含むと至福の時間が訪れる。

 副菜として、白菜のキムチ、どんぐりで作った伝統食品トトリムクなども提供。お店の前には「清麹醤」の材料である大豆に深い関係のある「七甲山」のオブジェと歌詞が。歌詞の内容は、母子家庭で育てた娘が嫁に行き、とても悲しむ豆刈りの母親目線の歌。「天庄湖吊り橋」の入り口で楽曲が流れていたり、銅像があったりと人気の歌だ。お店は黄金の福の亀にほど近い立地のため、パワースポット巡りのあとに立ち寄ってみてはいかがだろう。

一度食べたら忘れられない強烈な香りと美味しさの「清麹醤」。おかわりもできるため、足りない場合はリクエストしよう
副菜にはキムチやトトリムクがずらり。白いご飯も付く
有名曲「七甲山」の登場人物のオブジェと歌詞が飾られているのでお店が見つけやすい
サンゴルチャギ

所在地:大峙面七甲山キル147
TEL:+82(0)41-942-2900

 続いては、青陽市場にほど近い「ダレジョン会館」の「カルビタン」(9000ウォン、約900円)を紹介。じっくりと煮込まれた透明のスープには、ほろほろに煮込まれたカルビに韓国春雨や豆腐、ニラに大根がたっぷり。塩コショウでシンプルな味付けながら、カルビの旨味が溢れたアツアツのスープを一口味わえば、じんわりその美味しさが体に染み込んでくる。コラーゲンたっぷりで女性にもオススメの韓国の定番メニューだ。

 具材を食べたら、セットのご飯を投入すれば雑炊感覚でスープをぺろりと完食。水キムチ、カクテキに白菜キムチ、そしてしいたけの和え物にセリの胡麻和え、コチュジャンがセットで付く。テーブルの上に用意されたコチュジャンをスープに加えて、味の変化を楽しんでみてもよいだろう。

透明スープにはコラーゲンがたっぷり
コチュジャンや定番のキムチ、チヂミなどが並ぶ
店舗は靴を脱いで上がるスタイル。昼過ぎに入店したが、地元の人たちもカルビタンを味わっていた
ダレジョン会館

所在地:青陽邑中央路11キル4-1
TEL:+82(0)41-943-9999

 そして3店舗目は「七甲山マッチプ」の「地鶏の水炊き」(4万5000ウォン、約4500円)を中心と定番料理のセット。店名は“七甲山の美味しい店”という意味で地元の野菜をふんだんに使ったメニューが自慢。店外にはたくさんの壺があり、熟成中の自家製味噌などが並ぶととともに、テーブルにはたくさんの乾燥中のどんぐりも。

 店内は靴を脱いで上がるスタイルで、大きなテーブルを囲んで家族や友人を始め大人数で食事が楽しめる広さ。メインの鶏の水炊きはじっくりと煮込まれた白濁のスープに柔らかな鶏肉が隠れており、いつまでも食べていられるほどの美味しさ。ピリリと辛めの味付けがされたトトリムクや、コリコリとした歯ごたえが楽しめる鴨肉(オリコギ)の焼肉。さっぱりとした味の黒豆腐や各種ナムルやキムチのセットと組み合わせればここだけで韓国の“食べておきたい”を網羅できる。

 もちろん青陽郡ならでは青陽唐辛子も味噌に付けてそのままガブリといただこう。最初はほのかな甘さを感じつつもジワジワと辛さが口の中に広がり、気付いた頃には体中から大量の汗が噴き出すほどの威力。一口かじっただけでも10~15分ほど汗が引かない状態となるが、その美味しさは試してみる価値がある。

 食事の途中には、大きめの銀のボールに入った混ぜご飯が渡されるので、分からないときは積極的に食堂のおばさん(イモ)に声をかけよう。山菜ビビンバの作り方や、美味しい食べ方を教えてもらえる。なお、お祝いの膳には欠かせないきな粉をかけたお餅(インジョルミ)や、もっちりとした味わいのお餅(トック)もデザートに出された。もちろん、この地域でしか味わえない黒マッコリも注文。通常のマッコリは白濁だったり、素材によっては黄色味かかっているが、こちらは茶色かかった色が特徴だ。生マッコリのため日本への持ち帰りができないため出会ったら必ず飲んでおこう。

メインの鶏の水炊き。旨みをたっぷり含んだスープは食欲を呼び覚ます起爆剤のよう。これで4人分だが、あっという間になくなってしまうほどの美味しさ
もち米を水炊きの中に入れれば雑炊としてサラリと食べられる
青陽郡滞在中に地元の名産品である青陽唐辛子を必ず味わおう。味噌をつけてかじるのが定番
トトリムクはピリ辛にアレンジされたもの
木綿仕上げの黒豆腐。さっぱりとしており、このままでも十分美味しい
オリコギの鉄板焼き。歯ごたえとともに、噛むたびにじわっと溢れ出る旨みがたまらない
各種ナムルとご飯、自家製のコチュジャンを混ぜて山菜ビビンバも自分で作れる
黒マッコリは青陽郡ならではのお酒。こちらは「チルガプサンチルジャンジュ」
デザートはインジョルミなどのお餅系スイーツが振る舞われた
店舗の外の壺には自家製味噌がたっぷり
店頭にはどんぐり粉の販売や料理で使うどんぐり、トトリムクが置かれていた
七甲山マッチプ

所在地:大峙面長谷キル119-39
TEL:+82(0)41-943-5912

オンドルにキッチン、地元のシャレーで韓国スタイルの宿泊を体験

 七甲山周辺には自然を活かしたキャンプ場やペンション、シャレーなどが多くあり、韓国ならではの設備で地元民のようなバケーションを楽しむことができる。今回宿泊した「七甲山休養ランド」は12組が宿泊できる施設で、最大18名が1部屋に泊まることができる。ファミリー層、学生団体での利用にぴったりだ。

 敷地内には1年中ソリができるエリアや、パー3の9ホールを備えるゴルフ場、運動場などが併設されており、アクティビティを楽しめる。今回宿泊したのは11名で宿泊できる大部屋。価格はオフシーズンが14万ウォン(約1万4000円)、ハイシーズンが17万5000ウォン(約1万7500円)となっている。1部屋の最低宿泊可能人数も7名からと大人数での宿泊をメインにしている。

 一軒家のような外観の棟が隣接しており、中に入るとリビングで2つの個室に分かれている。全部屋にオンドルが設置されており、地べたに座っても温か。また、コンドミニアムタイプの宿泊施設が主流の同国ならではの大きめのキッチンと冷蔵庫、そしてしっかりした机も3台重ねて置いてあるなど、全員でテーブルを囲んで食事ができるようになっている。

 キッチンには、包丁から鍋、食器類が一通り揃っており、ミネラルウォーターサーバーも完備。食材さえ揃えばすぐにでも自宅のように食事を作ることができる。また、屋外にはバーベキュー施設も。韓国ではバーベキューの際に食材調達から調理、片付けまですべてを男性陣が担当する。女性陣はお肉が焼けるのを待っていればいいとのことで、家での日々の働きぶりに感謝する意味もあるそうだ。

外観は一軒家。リビングと個室が2つ。トイレ、風呂、洗面所も2つずつと親戚や友人同士で宿泊してもプライベートは守れる
広々したキッチンは数人で料理をしても大丈夫。棚には食器や調理道具。ウォーターサーバーもサイドに設置されている。机も3台で大人数でもOK
周辺には、ソリ場や運動場、バーベキュー施設などを完備

 暖かなオンドルの上に敷く布団も、イブルと呼ばれる韓国ならではの布団を使用。日本の布団に比べると薄い印象だが、オンドルが温かく逆に掛け布団がいらないほど。床に直に敷くタイプのため、慣れなかったり少し背中が痛い場合は重ねて使ってみよう。

 なお、浴室とトイレも韓国式。今回はシャワーと洗面所、トイレの間に境がないタイプ。シャワースペースには小さな石鹸が1つ置いてあるが、シャンプーやコンディショナー、ボディーソープのほか、歯磨きセットやドライヤー、タオルは持参する必要がある。

 コンセントはCタイプ。日本のプラグの直挿しはできないので必ず変換プラグを用意しよう。なお、ネット環境に関してはベストな状態。Wi-Fiは自由につながり、速度も速くサクサクと動くのでストレスフリー。学生団体以外にも会社の合宿などで使われる機会も多い施設であることが納得できる速さだった。

オンドルの上なので薄めの布団でも快適に眠ることができる。オンドルの温度は壁のリモコンで調節。この日は低めの26℃で設定
すべてがつながっているトイレ兼シャワールーム。アメニティは共有で使う石鹸が1つ
コンセントはCタイプのため変換プラグは必ず持参しよう
ネット環境は驚くほどよい。重いデータもサクサクダウンロードできるほどの快適さ
七甲山休養ランド

所在地:大峙面カチネ路815
TEL:+82(0)41-940-2800
Webサイト:七甲山休養ランド(韓国語)

 地元の人たちが集う市場に顔を出しつつ食材を選んで宿泊先でご飯を作るのもよいし、食堂で韓国ならではの味を堪能するのも楽しい。また、オンドルの上でくつろいだり、バーベキューをしてゆっくりと流れる時間を味わうなどバケーションの過ごし方はそれぞれ。

 周辺にはパワースポットをはじめ、スリル満点の吊り橋や、地域の歴史や環境を知る施設も多く見どころもたっぷり。今後は百済文化をより感じることのできる施設も開館予定なので、三国時代に興味がある人はもちろんのこと、雄大な自然のなかで地元ならではの宿泊施設でディープな韓国に浸かりたい人にオススメだ。

相川真由美

フリーライター/鉄鋼業やIT系やエンタメ関連の雑誌やWeb媒体の編集者を経て、フリーの記者として活動中。海外は一人旅がほとんど。趣味は世界のディズニーのパーク&リゾート巡り。最近は年間パスポート片手に日々舞浜通い。うなぎとチョコレートが好物で、旅の基本は“出されたものは全部食べる”。激辛とうがらしから謎の木の実まで挑戦するのがモットー。