旅レポ
ディープな韓国を地方でたっぷり味わう。青陽、扶余、公州をめぐる三国志百済旅(その1)
韓国有数の唐辛子の産地・青陽郡。スリリングな吊り橋を体験
2016年10月21日 00:00
韓国の忠清南道に位置する青陽郡、扶余郡、公州市が共同で10月6日~10月9日の4日間にわたりプレスツアーを実施した。“韓国三国志”として700年にわたる百済の歴史の繁衰の紹介や、同地域の現在の魅力をたっぷり詰め込んだツアーの様子をレポートする。
今回めぐった青陽(チョンヤン)郡、扶余郡、公州市は、韓国の三国時代で知られる高句麗、百済、新羅のうち、百済の都の中心が存在していた場所。百済は700年ほどの歴史があるが、そのうち現在のソウルを500年間ほど首都としていたが、高句麗に攻め入られたことで公州へ遷都し約60年。そして扶余で約120年間都を置いた縁深い地域。最初に足を運んだ青陽郡は、百済で使用された屋根瓦が多く製造されたエリアで、現在は農業が中心。特に唐辛子の産地として有名だ。
今回紹介する青陽郡は、仁川国際空港からクルマで約3時間ほど。忠清南道の中央に位置しており、面積は479.63km2、人口は3万8000人弱。道立公園の七甲山をはじめとする多くの丘陵があり、耕作地域は少ないながら田園風景とともに唐辛子畑が広がる、のどかなエリアとなっている。特産物は青陽唐辛子(チョンヤンコチュ)に、国内で約70%のシェアを誇るクコの実。唐辛子は韓国内でも「唐辛子=チョンヤンコチュ」といわれるほどの代名詞的な品だ。
キュートなマスコットがお出迎え。唐辛子村で歴史を学ぶ
最初に訪れたのは「青陽唐辛子文化村」。郡が運営する、歴史や生産方法などを学べる施設で、総面積9万8969m2の広大なエリアには、唐辛子展示館、企画展示室、ミーティングルームを備える「唐辛子博物館」、14棟のペンションなどが併設されている。
まずは「唐辛子博物館」へ。館内に入るとまずは青陽郡の公式マスコットである「プルミ」と「バルグミ」がお出迎え。唐辛子とクコの実をアレンジしており、郡内のさまざまな場所で見かけることができる。ここでは韓国の料理には欠かせない食材である辛い唐辛子の伝来についてスタッフに解説をしてくれる。
スペイン、そして日本を通じて16世紀に伝来したことや、栽培技術が確立される19世紀までは貴重だったため王族のみが口にできたものであり、その上キムチも白かったなどのエピソードを解説。甘い唐辛子も19世紀にアメリカを経由して入ってきたそうだ。
また、寒暖の差が激しい地域であり、水はけがよく、火山灰を含んだ土地だからこそ美味しい唐辛子の栽培が可能。なお、青陽唐辛子が国内で支持される理由として、郡が生産管理を行ない一定の品質をクリアしたものだけを出荷しているからだと説明。味の特徴として甘みを含んだ辛さを挙げ、キムチに使ったときに辛いだけではないのが人気の秘密だと教わった。実際にキムチを漬ける際は、青陽唐辛子だけでは辛すぎるため、半分は通常の唐辛子を使い味をマイルドにするそうだ。
生産方法としては、2月の初めに種まきを行ない、苗を5月に畑に移動。収穫は9月頃。ウイルスの繁殖を防ぐために耕作地に黒い布をかぶせる。実際に青陽郡のビニールハウスの多くに黒いシートが掛けられていた。
なお、併設された「世界の唐辛子展示館」では辛さナンバー1から4までの唐辛子を栽培。通常の180倍もの辛さを含む唐辛子「ブート・ジョロキア」も展示。世界の植物を育成する「自然生態館」では、同館で育てている世界最大の花「ショクダイオオコンニャク」についても説明。花の開花時期ではないため現在は根だけの状態で、模型が展示されていた。
青陽唐辛子村
所在地:青陽邑ムクドンキル14
TEL:+82(0)41-940-2875
Webサイト:青陽唐辛子村
青陽郡民の胃袋・青陽市場の五日市で地元野菜をチェック
青陽郡における唐辛子の歴史や栽培を学んだあとは青陽市場で実際に取引されている様子を見学。5日ごとに昔から商人たちが集まり売買を行なっていた「五日市」が1971年から現在の青陽市場で開かれるようになり、人々の生活を支えている。
当初は牛市場として形成され大事に育てた家畜の取引が中心だったが、次第に地元の野菜や山菜などの売買がメインに。現在は有機農栽培の野菜をはじめ地域の特産物を購入したり、食べ歩きを楽しんだりしながら買い物ができる人気のスポットとなっている。
なによりも新鮮さと安さが売り。バナナが1箱5000ウォン(約500円、1ウォン=約0.1円換算)、リンゴも1袋5000ウォン(約500円)と思わず買いたくなる価格設定が魅力だ。市場の途中にはモチ米の焼き菓子(カンジョン)やチヂミも販売されており、スイーツや軽食片手に散策も楽しめる。
市場には、青陽唐辛子やクコの実をはじめとした名産物とともに、日本とは異なり短い形のニラや白菜に高麗人参、そして清麹醤(チョングッチャン)など家庭料理には欠かせない食材がズラリ。なお、魚介類も豊富に揃っており、タコやカニなどの海鮮が販売されていた。
市場の入り口付近には「青陽クコの実園芸農協」があり、乾燥したクコの実や加工済みのティーバッグセットなどを販売。特産物の一つであるクコの実は唐辛子同様に、寒暖の差が激しく豊かな土地だからこそ栽培が可能な植物。1960年代には海外に輸出するほどの生産量を誇っており、現在も国内シェア70%を占めている。韓国では高麗人参、クコの実、ドクダミを三大薬草として昔から重宝されてきた歴史がある。脳機能や肝機能の活性化をはじめ、目にも優しく、スーパーフードとして注目を浴びている食材だ。
青陽市場
所在地:青陽邑七甲山路4キル
青陽クコの実園芸農協
所在地:青陽邑七甲山路4キル28
TEL:+82(0)41-943-6999
韓国最長級の吊り橋でスリル体験、龍と虎の伝説と人気スポット巡り
青陽郡は高さ561mの「七甲山(チルガプサン)」の麓に位置しており、七甲山は豊かな自然と美しい景観で登山コースとしても人気。難易度別に7つのコースがあり、短いもので約1時間、長いもので約7時間かかるものと種類もさまざま。韓国では珍しい、岩ではなく土でできた山のため歩きやすいと評判だ。
今回訪れた「天庄湖吊り橋」は東側にあり全長207mの韓国最長級の吊り橋。高さ24mで幅1.5m。橋の中央を渡る際には最大で30~40cmほど上下左右に揺れ、キシキシと鳴る音も相まってスリル満点。橋の途中には湖が見えるようにと網状になった場所もあり、思わずその高さにクラリとなる。ボランティアスタッフの解説を利用すれば、橋の詳細をはじめ、フォトスポットや見どころなども教えてくれる。
橋の途中には青陽唐辛子とクコの実の巨大オブジェ、そして橋を渡った先には玉を持った龍と虎のオブジェが鎮座。その昔、天に登る途中に湖に落ちた人間の子供を助けた優しい龍と、その姿を見て改心した虎の伝説が元になっている。なお、天に昇る途中の龍は口に玉を咥えているが、地上に残った龍は手に玉を持つという違いや、実はこの橋は龍との解説もあり、伝説と橋がリンクしているなどの発見もあった。
また、その先の登山道を15分ほど登ると「願いの岩」もあり、願いを短冊に書き紐にくくり付けると叶うといわれている。年に2回短冊を燃やすお焚き上げの行事も見もの。短冊は岩の近くの小さな小屋に設置されており、無料なので忘れずに願いを書いておこう。
なお、「天庄湖吊り橋」の入り口付近には売店があり、シッケ(2000ウォン、約200円)やクコの実茶(3000ウォン、約300円)、食べた分だけ支払うシステムの韓国おでん(1000ウォン、約100円)などを販売。
シッケは甘酒に似た伝統的な飲み物。デザートを思わせる甘さで散策前のエネルギーチャージや散策後に喉を潤したいときに最適。クコの実茶は松の実やクコの実、ナツメがトッピングされており、噛みながら飲むという印象だった。苦味のなかにほのかな香ばしさと甘みがあり、体にじんわり染み込む。
おでんは見た目は油揚げだが、魚の練り物のオムクを串刺しにしたもの。タレを付けて味わう韓国ではかなりメジャーなストリートフード。売店に散策の前後に立ち寄り、韓国ならではのメニューでほっと一息ついてみるのもいいだろう。
天庄湖吊り橋
所在地:定山面天庄湖キル24
TEL:+082(0)41-940-2723
Webサイト:天庄湖吊り橋