旅レポ

ディープな韓国を地方でたっぷり味わう。青陽、扶余、公州をめぐる三国志百済旅(その4)

女子旅や恋人と行きたいエリアやグルメを紹介

 韓国の忠清南道に位置する青陽郡、扶余郡、公州市が共同で実施したプレスツアーでは、“韓国三国志”として有名な高句麗、百済、新羅のうち、百済にまつわるエリアを中心に、歴史や文化、そして現在の姿などを紹介。

 今回は、扶余郡(プヨ・グン)にまつわる、「薯童謡(ソドンヨ)」にちなんだ名所や、とっておきのスイーツ、メニューなどをレポートする。

一面のハスの花にうっとり、百済の王ゆかりの人口池へ

「国立扶余博物館」や「定林寺址五重石塔」と同じ扶余邑に位置する「宮南池」。百済の王が王宮の南側に作った韓国最古の人工池で、毎年7月には一面にハス(蓮)の花が咲き誇る観光名所となっている。韓国の三国時代を記録した「三国史記」には、「宮中の南に池を掘った」という記録や、「638年3月に王と王妃が池に船を浮かべ楽しんだ」という話も伝わっている。

 宮南池周辺は百済時代の異宮址として知られているが、30代王・武王(薯童)の伝説が伝わっており、幼少期は宮廷外で長薯を売りながら貧しい暮らしをしていたという。そんななかでも立派な青年に成長した彼のもとに王からの使いが現れ新羅の国勢を探れという命が下る。新羅のソラボルで26代真平王の娘・善花姫と出会い恋に落ちが、国籍や身分が異なり結ばれない運命と知った2人は「薯童謡」という歌を町中で流行らせた。その歌詞にある“姫は毎晩王宮を抜け出し、薯童に会いに行った”という部分に怒った王は姫を追放、薯童は百済に姫を連れ帰り幸せに暮らしたという内容だ。

 三国遺事に伝わる14曲の新羅の郷歌の一遍で、最も古いものとして知られている。韓国の放送局SBSの創立15周年を記念して制作された大河ドラマ「薯童謡」をはじめ、数々のドラマの撮影地のため作品のファンはもちろん、デートスポットとしても大人気。

 池の中央の「抱龍亭」では、まったりと池を眺めてほっと一息つくこともできる。板張りで気持ちのよい風が吹き抜ける場所で晴れた日には観光客でいっぱいになるほど。百済人や物語の登場人物になった気分で、大切な人と一緒に美しい風景を眺めてみてはいかがだろう。

 なお、見頃は7月頃だが、今の時期もさまざまな種類のハスを見ることができる。開花時間の朝の5~6時ごろは“ポンッ”というつぼみが開く音がいたるところで聞け、ハスのかぐわしい香りがあたりに立ちこめるという。なお、9~10時頃が見頃で、14時までに行かないと花が閉じてしまうので、訪れる時間には気を付けよう。

宮南池

所在地:扶余邑宮南里152-1
TEL:+82(0)41-830-2880(観光案内所)
入園料:無料
開園時間:年中無休

噴水がいたるところであがり、優雅な雰囲気の「宮南池」
たくさんの蓮が見頃の時期には一面に咲き誇る
蓮の中を歩く遊歩道もある。見頃はフォトスポットとして人気の場所だ
手前には長い橋があり、欄干4つ目あたりに立つ姿を撮影すると美しい写真になる
池の中央には「抱龍亭」があり、広がる景色をゆったり眺めることができる
「抱龍亭」には「薯童謡」の歌詞も掲げられている
駐車場には蓮にちなみ、形の似た菊形のパン(1袋3000ウォン、約300円)を販売。ミニカステラ風味のふんわりパンで、中に餡が入っている

ドラマ「薯童謡」の撮影セットで、王や王妃気分で記念撮影

 大河ドラマ「薯童謡」のセットをそのままテーマパークとして観光客に開放している「薯童謡テーマパーク」は数々のドラマの撮影場所として現在も使われている、必ず訪れておきたい観光スポットだ。運がよければ放送中の人気ドラマの撮影というサプライズに出くわすことも。実際に今回訪れた際、KBSで放送中の大河ドラマ「雲が描いた月明かり」を撮影しており、パク・ボゴム氏など主演俳優をはじめとする多くの出演者たちが一同に介していた。なお、ドラマの撮影エリアはもちろん立ち入りは禁止。セット周辺には小道具や衣装野搬入のために大型トラックが駐車するため、個人の記念撮影などはできない。

 もちろん撮影していないエリア以外は通常どおり運営しているのでご安心を。メインの王宮セットのほかにも、拷問体験や悪役の住む家、主人公たちが逃げまわる際などによく使われる民家周辺などいろいろなポイントがある。撮影も自由にできるため、お気に入りのシーンの再現をしたり楽しむこともできる。ドラマで見ていた実際の場所を目にすれば、より作品が身近に感じられ、より好きになれるはず。また、撮影現場に会えたならば、これから放映される作品に、より愛着と興味が湧くはずだ。

薯童謡テーマパーク

所在地:忠化面忠臣路616
TEL:+82(0)41-832-9913
入館料:大人2000ウォン(約200円)、青少年1500ウォン(約150円)、子供1000ウォン(約100円)
開館時間:9時~18時(3月~10月)、9時~17時(11月~2月)
休館日:毎週月曜日

「薯童謡テーマパーク」
「薯童謡テーマパーク」に一歩足を踏み入れると大河ドラマの世界が広がる
撮影で現在も使われているため寺院の看板は付け替え可能なように無地
どのシーンで使用されたのかをボードで解説
拷問体験では血糊りのついた小物などを無料で貸し出ししてくれる
庶民の家も再現。藁葺き屋根で王宮との違いが一目で分かる
建物の2階部分にも自由に上がれ、街並を一望できる
王宮のセットの前には“撮影”の文字が書かれた搬入中のトラックが停車
実際に使われる衣装や小物なども置かれ、出番を待っていた

扶余のローカルグルメ、ハスを使ったメニューを味わう

 扶余の代表的なローカルグルメと言えば「宮南池」でも見ることのできたハスを使ったメニュー。ハスは花、実、根はもちろん、茎や葉まですべて食べることができ、食材として多くのメニューに使われている。

 伝統茶カフェ「百済香」では、「蓮花茶」と呼ばれる花開いた大輪のハスの花を、ハスの葉茶に浮かべ楽しむセットが人気。3人用で1万5000ウォン(約1500円)となっており、大振りの茶器に入れられた温かいお茶を、小さめのボールに入れ替え、それをもう一度、一まわり小さな茶器に入れていただくスタイル。静かな空間でお茶に沈む花弁を眺めながらゆったりと時間を過ごすことができる。

 なお、セットにはお茶菓子として名物の「蓮花パン」が1個付く。蓮の葉を使っており、グリーンの生地がポイント。ほおばるとふんわりハスの香りが口の中に漂い夢心地に。甘みを抑えた餡ともベストマッチ。お土産としても人気で保存料を使っていないため賞味期限は4日ほど。美味しいうちに味わおう。

 ほかにも「蓮花シェーク」や「蓮葉ナツメ茶」などホットからコールドまで幅広く提供中。オーナーの畑で収穫されたこだわりのハスのみを使用しているので、安心して味わえるのもうれしい。

百済香

所在地:扶余邑東南里653-1
TEL:+82(0)41-837-0110
営業時間:11時~21時

「百済香」は「宮南池」からクルマやバスで5~10分ほどの場所。「宮南池」の帰りに立ち寄るのがお勧め
木調の落ち着いた店内は心地よい静けさが漂う
大きな茶器に注がれたハスの葉茶に浮かぶハスの花
一度小さめのボールに入れ替えてから器に再度注いでいただく
名物の「蓮花パン」とともに召し上がれ
「蓮の葉茶」も1万5000ウォン(約1500円)で販売中
蓮の葉パンは20個入りで1万7000ウォン(約1700円)

 蓮の葉を使った名物のハスの葉ご飯も、扶余を訪れたならば絶対に味わっておきたい一品。

 今回訪れた「サビ郷」はハスの葉ご飯専門店で、メニューもこれだけとこだわりのお店。「サビ饗宴ご飯定食」(1万6000ウォン、約1600円)は、メインのハスの葉ご飯とともに、ハスを葉を使ったチヂミやレンコンなどもたっぷり味わえる。蓮の葉ご飯は、もっちりとしたおこわにレンコン、ナツメ、ぎんなん、かぼちゃなどの具材をふんだんに使用。包みの葉を開くとふわりと蓮の香りが上がる。すっきりとした味わいに、程よいおこげのパリパリ感も絶妙で、もう1つ食べたくなる程の美味しさだ。

 もとはお寺の精進料理の一つだったそうだ。セットには、レンコン料理やタニシのきゅうりをコチュソースで和えたサラダ、蓮の葉の粉を混ぜたチヂミやチャプチェ、秋刀魚などの料理が並ぶ。もちろんお酒も、ハスを使ったマッコリをオーダー。まさにハス尽くしのメニューを堪能できる。

サビ郷

所在地:扶余邑宮南路38
TEL:+82(0)41-832-0282
営業時間:11時~20時

ハスの葉のロゴが目印の「サビ郷」
清潔感のある広々とした店内
4人前の「サビ饗宴ご飯定食」。副菜もずらりと並ぶ
ハスの葉ご飯。開けるとハスの香りがふわりと舞う。もちもち食感とおこげのカリカリのコントラストが美味しい
レンコンとハスの葉を混ぜ込んだチヂミ
タニシとキュウリのコチュソース和えはまろやかな味わい
ハスを使ったマッコリ。グリーンと思いきや、通常のホワイトだった

扶余の夜は上質空間へ、ロッテ扶余リゾートで疲れを癒す

 扶余邑から白馬江を挟んだ側にある「ロッテ扶余リゾート」は、韓国ならではのコンドミニアムタイプの台所、オンドルが設置された韓と洋がミックスした客室が特徴。地上10階、地下1階、全322室のホテルに、サウナやプール、近隣にはプレミアムアウトレットなどを併設した複合型リゾートとなっている。

ロッテ扶余リゾート

所在地:窺岩面百済門路400
TEL:+82(0)41-939-1000
Webサイト:ロッテ扶余リゾート

「ロッテ扶余リゾート」
百済建築様式を使った渡り廊下などが特徴。撮影スポットとしてもよい
広々としたロビーエリア。英語も通じるので安心

 2名からファミリー向けの最大6名まで宿泊可能なルームをはじめ、7タイプの部屋を用意。今回は「スイートルーム クリーンタイプ」に4名で宿泊。オンドルが設置された寝室が一部屋、ツインサイズのベッドが2台配置された寝室がもう一部屋。それらがリビングルームでつながっている。シャワーとトイレ付きのバスルーム、そしてトイレと湯船付きのバスルームが各1つ。親戚同士が一緒に泊まっても風呂やトイレではプライベートを守ることができる仕様だ。

 バルコニー付きの102m2の広々空間からはゴルフ場を一望できる。アメニティ類は女子にはうれしい英国トップアロマブランド「アロマセラピーアソシエイツ」を採用。旅で疲れた体を癒しリフレッシュしてくれる。

 ポット、ミニ冷蔵庫はもちろん、ミニキッチン付きのため、部屋で作った手料理を味わいながらリゾート気分を満喫することも可能。なお、地下にはセブン-イレブンやカフェもある。

 部屋のお風呂で満足できない場合は「アクアガーデン」へ。有料(大人1万ウォン:約1000円、子供7000ウォン:約700円)でサウナを利用できる。汗を流して気分転換にも最適だ。韓国方式が上手くミックスされた客室で、気が置けない友人や大切な人と一緒に静かな扶余の夜を過ごしてみてはいかがだろう。

コンドミニアムタイプの「スイートルーム クリーンタイプ」などは10月は13万0000ウォン~(約1万3000円~)弱で宿泊することができる
ベッドが2台とオンドルの利いた寝室がもう一部屋ある
バスルームとトイレも2つずつ完備。ベッドルーム側はバスタブ付き
アメニティは「アロマセラピーアソシエイツ」のもの。歯ブラシセットは付いていない。ドライヤーは用意されている
調理ができるようにミニキッチンも完備
食事や仕事もできるデスクも
4人で宿泊したため、水は2Lボトル1本が冷蔵庫に入れられていた
コンセントはCタイプ。フロントで変換機を貸してくれる
テレビは小さめ。フロントへの電話もここからかけよう
広々としたバルコニーからゴルフ場やまわりの山々を一望できる
「アクアガーデン」は朝一から営業しているので、目覚まし代わりにサウナを利用するのもあり

 韓国ならではの朝食を味わえるのも旅の楽しみ。ホテル1階の「ボンディマスル」は、350席の開放感あふれる空間で、日本料理、韓国、中華そして洋食のビュッフェを味わえる。

 お勧めは、「山菜ビビンバ」や、酔い覚ましスープこと「ヘジャンクク」、優しいおこげスープの「ヌルンジ」。「山菜ビビンバ」は、五穀米に地元の野菜をたっぷり乗せてコチュジャンで好みの辛さに味付け。「ヘジャンクク」や「ヌルンジ」は胃にも優しく朝食にぴったり。フレッシュなサラダ類やフルーツブレッド、フレーク類も豊富で、韓国料理が続いて久しぶりに洋食を食べたい人にもお勧めだ。

朝はホテル1階の「ボンディマスル」へ。7時から10時の間に朝食を提供する
水キムチをはじめ各種キムチが並んでいる
山菜ビビンバのゾーンには韓国海苔や野菜類など具材がたっぷり。五穀米に載せ、最後にタレやコチュジャンをトッピングし味わおう
クリームパンやジャムパンをはじめパン類も豊富に揃っている
新鮮な野菜やサラダ類もたっぷり
豆腐や蒸し料理など中華系もいろいろ
酔い覚ましスープこと「ヘジャンクク」。キャベツと牛肉入り
優しい味付けの「ヌルンジ」も朝食には欠かせない
「山菜ビビンバ」と「ヌルンジ」をチョイス。自分のペースで食べたい分だけ味わえるのがうれしい
マンゴームースや小豆を使ったデザートも味わえる

 扶余の歴史とともに女子旅やカップルでも楽しめるエリアを紹介した今回。次回はユネスコ世界文化遺産の「公山城」をはじめ、百済の王のきらびやかな装飾品に古墳、そして一度は宿泊したい人気の韓屋や、名産の栗マッコリなどを紹介する。

相川真由美

フリーライター/鉄鋼業やIT系やエンタメ関連の雑誌やWeb媒体の編集者を経て、フリーの記者として活動中。海外は一人旅がほとんど。趣味は世界のディズニーのパーク&リゾート巡り。最近は年間パスポート片手に日々舞浜通い。うなぎとチョコレートが好物で、旅の基本は“出されたものは全部食べる”。激辛とうがらしから謎の木の実まで挑戦するのがモットー。