旅レポ
豊かな自然と歴史に彩られた匠の技を一気に味わう山口県の旅(その1)
岩国の錦帯橋や紅葉、白ヘビに興奮。柳井市の古民家カフェでのジビエ料理も
2016年11月30日 00:00
本州最西端、九州側から見れば本州の玄関口といえる山口県。関門海峡をはさみ南に瀬戸内海、北に日本海と性格の異なる2つの海を有し豊かな海の幸にも恵まれ、内陸部には日本最大のカルスト台地「秋吉台」、日本最大級の鍾乳洞「秋芳洞」を抱え観光資源にも恵まれた県です。しかしながらその多様さゆえか、いま一つ全体像というか県のイメージがはっきりしないなぁ、なんて思う筆者の不勉強さを払拭すべく、今回山口県が行なったプレスツアーに参加してきました。
ちなみに今回のコースには入っていませんが「秋吉台」は誰もが「あきよしだい」と読むのに対し、「秋芳洞」は「しゅうほうどう」だったり「あきよしどう」だったりとその読み方は人によってまちまちですが、正式には「あきよしどう」だそうです、念のため。
余談はさておき、今回は岩国市、柳井市、下松市、周南市、光市、山口市、宇部市と瀬戸内海に接する7つの街を2日間で訪問する弾丸ツアーで、旅の始まりはお隣広島県と接する山口県東部の街、岩国市から始まります。
東京・羽田空港からわずか1時間45分のフライトで岩国錦帯橋空港に到着。アメリカ海兵隊や日本の海上自衛隊が使用するための「岩国基地」という名前の方が馴染みのある人もいるであろうこの空港は、2012年から民間利用が再開され、近隣の観光地の名を加え岩国錦帯橋空港との愛称となっています(正式には「岩国飛行場」)。こじんまりとした空港ながら羽田空港からは1日5便就航されているので、関東圏からこの地への旅行プランに不自由はなさそうです。
匠の技で自然に挑む名橋「錦帯橋」
空港からクルマで20分ほどの距離にある最初の訪問地は、空港の愛称にも用いられている「錦帯橋」です。木造としては異様に長いその橋は日本三名橋にも数えらる立派なもので、遠くから見たその形もさることながら、至近距離で見たその木造建築物の端正な美しさは圧巻です。下を流れる錦川は一見穏やかで風情のある川ですが、いったん荒れると凶暴な姿を見せる暴れ川でもあり、大昔は何度も被害の憂き目にあったそうです。
1673年に流れない橋を目標に現在と同じタイプの橋が完成するも、それでも2度の流失。その都度継承された技術に改良を加えて再建し、現在に至る歴史的にも貴重な橋として残されています。5つ並んだアーチのうち、中央の3つは文字どおりアーチ構造の橋ですが、両端の2つは実は反りをもたせた桁橋という構造。河原に降りて裏から覗いてみると、その端正かつ複雑な木の造形には目を奪われます。ツアー当日はあいにくの曇り空でしたが、河原に並ぶ桜が咲きそろう頃、青空のもとでもう一度この橋を眺めてみたいものです。
吉香公園とその周辺でかつての城下町の風情を楽しむ
河原に広大な駐車場のある錦川の東側から、見た目以上にアーチの傾斜がきつい錦帯橋を踏みしめて西側へ渡ると、そこは吉香(きっこう)公園を中心に多数の神社や史跡、美術館が立ち並ぶエリアになります。全国的に有名な桜の名所でもあり、山頂にそびえる岩国城へも、ここからロープウエイに乗れば15分(ロープウエイの乗車は約4分)程度で行くことができます。
公園入り口近くではなぜかソフトクリーム屋さんがひときわ目立っていて、ここだけで100種類以上の味が選べます。甘いもので一息ついてから散策を楽しむのもよいかもしれません。
岩国のシロヘビに会って運気アップ!
吉香公園でうっすら色づき始めた紅葉を楽しみながら散策し、向かった先は2016年3月にリニューアルオープンしたばかりの「岩国シロヘビの館」です。白く光沢のある体に、ルビー色の瞳をしてるシロヘビは、昔から岩国だけに集中して生息しているそうです。その珍しさからとても縁起のいい生き物とされ、学術的にも貴重で国の天然記念物に指定されています。
館内にはシロヘビのことがクイズ形式で分かるコーナーや映像での紹介などがありますが、なにより実際に生きているシロヘビを見られるのが最大の特徴です。生物学的にはアオダイショウのアルビノだと言われていますが、遺伝的に安定しているのは世界的にも珍しいそうです。普段ヘビがあまり得意ではない人でも、この真っ白な姿を見ていると、かわいらしく見えてくるかも知れません。
山あいの古民家でいただく鹿肉ジビエカレー
朝からの錦帯橋、吉香公園散策のあとはお昼ご飯を食べに南下し、お隣の柳井市へ。山あいにポツンと建った素朴な古民家が今回の目的地「ItonamiCafe」です。
なんでも2年前に東京からこの地に移住してきたという家族が2016年の春にオープンしたというこのカフェ。外観からはまず普通の民家と見分けがつきません。120年前に建てられたというこの民家は、元々この村の村長の家だったらしく、中は広々としているのですが、過度な装飾は見当たらずおおむね昔のまま。若い人の目には新鮮に映り、年配者には妙に懐かしく思える普通すぎるその佇まいは、(ちょっと行儀がわるいのですが)食後にゴロンと横になりたい気分。実際地元のお客さんのなかにはそんな過ごし方をする方も少なくないようで、「昔の普通」を楽しめる場所がここ「ItonamiCafe」なんだと感じます。
メニューは地元の米や野菜にこだわったもので、こちらも地元の人にしてみればごく普通。地元の人にとって普通じゃないのは山のなかに突然現われたカフェという存在そのもの。田舎パンを使った軽い食事からしっかりとしたランチメニューまであり、今回はそんななかから鹿肉ジビエカレーとお野菜のランチをいただきました。
食事前にちょっと頭をよぎったジビエの癖や匂いは気にならず、でも豚や牛とは明らかに違う食感と味を楽しみながら、食後にはゴロンと横になりたい気分を抑えつつデザートの自家製ケーキをいただきました。ちなみに、地元へのこだわりは建物や食材だけにとどまらず、器も地元の陶芸作家の手による作品を使用しているとのことです。
ちなみにこちらのお店は、生産者から流通、食品、観光・物産団体そして消費者団体にいたるさまざまな行政の24団体で構成される「やまぐちの農林水産物需要拡大協議会」が現地調査を行なって認定する「やまぐち 食彩店」に認定されたばかりだそうです。つまり隅から隅まで山口を満喫できるところなんです。
また、オーナーさんがここにお店を構える際には、下見などにかかった費用に対する県からの補助金や、市町村による空き家探しなど、さまざまな支援を活用したとのことです。旅して海も山も豊かな山口県の味をお墨付きの店で堪能するもよし、そんなところで生活を始めちゃうのもよし、というわけです。
ItonamiCafe
所在地:山口県柳井市日積3060
TEL:0820-28-0067
営業日:月・金・土・日曜
営業時間:11時~17時
Webサイト:ItonamiCafe
さて、柳井市の山中で贅沢な時間を過ごしたこのツアーは、次に柳井市の市街地に向かいます。