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キリンの横を自動運転バス「ロボットシャトル」が走る。DeNAと横浜市が金沢動物園で試乗会

走行シーンを紹介。4月27日~28日に入園者向け一般試乗会実施

2017年4月27日~28日 一般向け試乗イベント実施

キリンの横を走る自動運転バス「Robot Shuttle(ロボットシャトル)」

 DeNA(ディー・エヌ・エー)と横浜市は4月24日、自動運転社会を見据えた新しい地域交通のあり方を検討する「無人運転サービス・AIを用いた地域交通課題解決プロジェクト」を開始した。最初の取り組みとして、横浜市金沢区の金沢動物園において、DeNAの自動運転バス「Robot Shuttle(ロボットシャトル)」の試乗イベントを4月27日~28日に実施する。それに先駆けて報道向けに試乗会を行なった。

 ロボットシャトルは、最大12名が乗車できる運転席のない電気自動車。フランスのEasyMileの製品「EZ10」で、10人程度の乗車を想定した車種。事前に作成した地図データに設定したルート上を走行するもので、カメラ、各種センサ、GPSで自車位置を測定しながら自動運転し、ルート上に障害物などがあれば、自動的に減速や停車をして危険を回避する。

 これまでにロボットシャトルは、千葉市のイオンモール幕張新都心に隣接する豊砂公園での試験走行のほか、秋田県仙北市の田沢湖畔、神奈川県の横須賀リサーチパーク、九州大学伊都キャンパスで走行実績がある。現在は「自動運転利活用サービス」として神奈川県の支援のもとで開発を続けており、今回の試乗イベントに乗車した人からもアンケートを集める予定という。

 このプロジェクトは横浜市とDeNA、横浜DeNAベイスターズ、横浜スタジアムの4者で3月10日に締結したスポーツ振興と地域経済活性化に向けた包括連携協定「I☆YOKOHAMA認定」における取り組みや、横浜市の「IoTオープン・イノベーション・パートナーズ(I・TOPヨコハマ)」の活動となる。

 金沢動物園での一般向け試乗イベントは、園内の片道180mのコースを往復乗車する。コースは動物園入口を入り、なかよしトンネルを抜けたところから、アフリカ区のサイ、キリンの横を通る経路。4月27日と28日の試乗時間はどちらも10時~15時。雨天の場合は中止。来場者が先着順で体験でき、予約などは不要。乗車料は無料だが、動物園の入場料が別途必要になる。

場所は横浜市金沢区の金沢動物園
園内には告知ポスターもあった
ロボットシャトル
試乗イベントの概要
ロボットシャトルの前に立つ、(左から順に)株式会社ディー・エヌ・エー 執行役員 オートモーティブ事業部長の中島宏氏、横浜市経済局長の林琢己氏、公益財団法人 横浜市緑の協会金沢動物園長の原久美子氏、動物園の人気者、フクロウのフーちゃんと飼育員
フクロウのフーちゃんはなかなか前を向いてくれず、飼育員を困らせる場面も
試乗するDeNA 執行役員 オートモーティブ事業部長の中島宏氏、横浜市経済局長の林琢己氏、金沢動物園長の原久美子氏
そのあとには、近隣の市民代表が試乗した

5.4km/hで園内を走行

 報道向けの試乗は休園日に行なわれたため、ロボットシャトルのまわりに柵などはないが、一般向けの試乗の際は柵などを設けるという。試乗は、まずロボットシャトルに乗車し、ドアを閉めるボタンを押すとスタートする。

 これは、エレベータの扉のようにユーザーが「閉まる」のボタンを押すと自動運転が始まるような形態を目指しているため。試乗イベントでは安全のため、オペレータースタッフが添乗する形になるが、扉を閉めるボタンについては、乗客の代表が押すようになり、自動運転がスタートする。

 ロボットシャトル自体は最高40km/hで走行する能力を持つが、今回は園内ということもあり5.4km/hと人間が歩くよりも少し速い速度で走行する。途中、半径の小さいカーブがあるところでは、速度を落とすように設定されているほか、何か障害物などを発見すれば減速し、障害物が近づいて衝突しそうになる距離になったらロボットシャトルを緊急停止させる。また、現在のセンサでは30cmよりも背の低いもの、例えば小動物などは感知しにくいため、その点でも停止操作するためオペレーターの添乗が必要だという。

 今回の走行については、事前にオペレーターが手動で走行して走行状態を読み込ませ、そのままロボットシャトルが設定どおりに何度も同じ場所を正確に走行する方式。担当者によればそのトレース性能は「轍ができるほど」だという。

 往復の走行となるが、クルマには運転席がなく、終点で折り返す際も向きを変えずにそのまま戻ってくる。電気自動車のバッテリは満充電から走行状態にもよるが10時間程度は走行できるということで、試乗が行なわれる両日とも、途中の充電休憩などなしに10時~15時の試乗イベントを実施できるとしている。

金沢動物園を試走する自動運転バス「Robot Shuttle(ロボットシャトル)」
ロボットシャトル
ドアは片側のみ
反対側には動物園のロゴが入る
どちら向きにも走ることができる
車体のコーナーにはセンサを搭載
フロントにもセンサ
屋根上にもGPSなどセンサが並ぶ
外からドアを開ける押しボタンスイッチ
シートは3列がけ×2の6名が着席可能
手すりに小さいモニタがある
上部にもモニタがある
室内のドアスイッチ
走行中。向こうにキリンが見える
運転士がいないので前方の視界も開けている
ドアが開いたところ
車いすなどの乗車時はスロープが電動で出てきて、ドア側の車高も下がる
タイヤはミシュランの冬タイヤ Alpin 185/65R15、ホイールは鉄でホイールキャップをはめている
ロボットシャトルはスロープも内蔵。スロープが出るときはドア側の車高が下がる
園内を走行中。右側がアフリカ区
ヒガシクロサイの横をカーブしてスタート地点に戻ってきた
キリンの横を通る自動運転バス「Robot Shuttle(ロボットシャトル)」

市の2つのオープン・イノベーション推進システムを推進

横浜市経済局長 林琢己氏

 試乗を前に、挨拶を行なった横浜市経済局長の林琢己氏は、現在の施策である「I・TOP横浜」と「LIP.横浜」の2つのオープン・イノベーション推進システムを説明、なかでも「I・TOP横浜」については「横浜市の産業、大学等、産学の分野に集積があり、そういったものを活かしていく。産学間に金融機関を加えてプレーヤーの方々の交流やマッチングをして、新しいビジネスモデルを創出し、社会課題解決へ貢献する」と説明した。

 さらに林氏は「横浜市の抱えている社会課題の大きな部分は、少子高齢化、人口減少社会。2019年には人口のピークで人口減少がはじまり、非常にスピードが早い高齢化社会を迎える。まさに少子高齢化社会を克服して暮らしやすい社会にするためには、移動手段のイノベーションが必要という認識があるので、自動運転は一つの大きな可能性」と期待を寄せた。

2つのオープン・イノベーション推進システム
I・TOP横浜の特徴
I・TOP横浜は30団体・企業が参加を内諾
新たなビジネスモデルの創出があり、そこに自動運転プロジェクトがある
2019年に人口がピークになり人口減少と少子高齢化社会へ
自動運転プロジェクトは地域交通課題の解決を目指す
株式会社ディー・エヌ・エー 執行役員 オートモーティブ事業部長 中島宏氏

 DeNA 執行役員 オートモーティブ事業部長の中島宏氏は、今回のプロジェクトの趣旨を「自治体、地域交通事業者、DeNAが三位一体となって取り組む新たな地域交通のロールモデルの構築を目指す」とし、ゴールは「持続可能なモビリティの実現」にあると説明。

 起伏の激しい土地ということから、「実際に、駐車場から入口とか、起伏の激しいところに実ニーズが多いのかなど、どこで運行することで、ニーズを満たし、課題を解決するといったことを動物園の方とディスカッションする」とし、単なる自動運転車の走行よりも、金沢自然公園および金沢動物園における定期運行の実現可能性の検証を重視すると説明した。

プロジェクトの趣旨
プロジェクトのゴール
実現に向けたステップ
走行コース
ロボットシャトル概要
これまでの走行実績