井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

穴場の改札を知ると混雑回避になる?

ご存じ、東京駅の東海道新幹線・在来線乗り換え改札。通路数は多いが、それでも渋滞してしまうことがある

 いつ頃からだろうか。盆暮れ正月・三連休といったタイミングで、「東京駅の新幹線乗り換え改札がこんなに混んでいて大変です」という写真付きの投稿がSNSに現われるのがお約束みたいになっている。せっかく指定席を確保していても、改札通過に手間取って乗り遅れたのではたまらない。

特定都区市内発着の特例と乗り換え改札の関係

 ところが困ったことに、どうしても在来線と新幹線の境界に設けられた乗り換え改札を通らなければならないことがある。それが、「特定都区市内発着の特例」が関わるケース。

 これは、東京、大阪など11都市内の駅と、その都市内の中心駅から営業キロが201km以上ある駅との間を乗車する際の乗車券に関わるもの。問題は、「都区市内発(または着)の乗車券は、それぞれの同じゾーン内ならどの駅でも入出場が可能」「ただし、同じゾーン内の駅で途中下車はできない」。

 具体例を挙げる。「東京都区内→大阪市内」の紙の乗車券を所持している場合、「東京都区内」に属するどの駅からでも入場できる。例えば、駒込駅で入場するとしよう。そこから山手線で東京駅まで行って、乗り換え改札を通って新幹線に乗り換える。新大阪駅で新幹線を降りたら、また乗り換え改札を通って在来線側に移り、「大阪市内」に属する駅、例えば大阪駅で出場する。

「特定都区市内発着の特例」のイメージ。この場合、東京駅と新大阪駅では新幹線と在来線の境界にある乗り換え改札を通る必要がある

 ただし、発着地となる特定都区市内では途中下車ができない決まりだから、駒込で入場したあとに東京駅でいったん出場してしまうと、前途無効で乗車券が回収されてしまう。着地側の新大阪駅でも同じだ。だから、混雑を承知で乗り換え改札を通過する必要がある。

 なお、これが問題になるのは発着地だけだ。例えば、「東京都区内→和歌山」の乗車券を所持していて、新大阪駅で特急「くろしお」に乗り換えて和歌山に向かうのであれば、新大阪駅でいったん出場しても下車前途無効にはならない。

チケットレスサービスは事情が異なる

 ところが、EXサービスや新幹線eチケットは事情が異なる。これらはいずれも新幹線の駅同士だけが対象で、特定都区市内発着の特例は適用されない。だから、先のケースで「駒込→東京→新大阪→大阪」と乗車した場合、「駒込→東京」と「新大阪→大阪」の運賃は別途必要となる。

EXサービスや新幹線eチケットのようなチケットレスサービスの対象は、新幹線の各駅同士で、「特定都区市内発着の特例」は適用されない。前後の在来線は別計算である

 スマートEXや新幹線eチケットは交通系ICカードで利用するものだし、EX-ICも現在は、EX予約専用ICカードだけでなく、交通系ICカードも利用できる。となれば、新幹線の前後で利用する在来線区間は、交通系ICカードで支払うのが便利だろう。

 さて。別計算になるのであれば、発地側にしろ着地側にしろ、新幹線と在来線の境界駅でいったん出場しても差し障りはない。そこで目を付けておきたいのが、ラチ外から直接、新幹線に入場できる改札口の存在。

 例えば東京駅であれば、東海道新幹線の専用改札として「八重洲南口」「八重洲中央北口」「八重洲北口」「日本橋口」がある。東北新幹線は、在来線の改札から入場して乗り換え改札を通るのがポピュラーなルートだが、実は新幹線直結の「日本橋口」もある。

 つまり、「新幹線をチケットレスサービスで利用する」かつ「乗り換え改札が大混雑」であれば、いったん出場してから、新幹線直結の改札を使って直接、新幹線側に入場する手が使えることになる。ただし歩く距離は増えるので、相応の時間的余裕は確保したい。

 ことに日本橋口は穴場である。実は、ここの近くで修学旅行生が集合しているのを見かけることが、よくある。改札が空いている事情と、修学旅行のような団体はえてして、端の方の車両が割り当てられる事情があるからだ。ただし日本橋口は駅の北端にあるので、16・17号車なら目の前だが、1号車は約400m先。すると号車によっては、日本橋口から上がるとホーム上を長々と歩く羽目になる。

東海道新幹線の日本橋口改札。ほかの改札と比べると空いている
東北新幹線の日本橋口改札。奥まったところにあるためか、そもそも存在があまり知られていないかもしれない

 博多駅だと、新幹線利用のメインは「新幹線中央改札口」と「新幹線中央のりかえ改札口」だろう。ところが実は、九州新幹線延伸に際して小倉寄りに増設された「新幹線ひかり広場改札口」と「新幹線北のりかえ改札口」があり、こちらの方がえてして空いている。

 実のところ、すべての駅でこうした「新幹線に直接入場できる目立たない改札」があるとは限らない。「まず在来線の改札を通り、さらに乗り換え改札を通って新幹線に入場する」ルートしかない駅も多いのだ。事前に、自分が利用したい駅の構内図を調べてみてほしい。

在来線でも意外とある「目立たない改札」

 実は在来線の話に限定してみても、1~2通路しかない、目立たない改札がひっそりと設けられている場面が案外とある。

 ポピュラーなのは、駅ビルに直接出入りできる改札を設けたケースで、秋葉原駅の「アトレ口」や金沢駅の「あんと改札口」が典型例といえようか。駅ビル直結かというと少し怪しいが、京王線新宿駅の「ルミネ口」も、職場が笹塚にあったときには重宝していた。

 JRの新宿駅だと、「西改札」「東改札」「南改札」が御三家だが、そうしたなか、ひっそりと目立たずに稼動しているのが、小田急線の地下改札に隣接する「中央西改札」。以前は出場専用だったから、ここから入場できるようになったことを知らない方も、もしかするといらっしゃるかもしれない。個人的に知っているところでは、名古屋駅在来線の「広小路口」も穴場だと思っている。

新宿駅の「中央西改札」。この左手にある京王線連絡通路や小田急線乗り換え改札に向かう人は多いが、それと比べると中央西改札は空いている

 こうした、穴場的な小さな改札口が出現するのは、歴史があり、つぎはぎ拡張を繰り返してきた主要ターミナル駅が多いようだ。高架化や地下化などで駅を全面的に作り直すと、その時点できれいに再配置されて「穴場」がなくなってしまうようである。

 なお、こうした目立たない改札に隣接して指定席券売機が置かれている場合、ネット予約サービスの発券で「穴場」になるかもしれない。