井上孝司の「鉄道旅行のヒント」
不正はないのに自動改札機に怒られた話
2023年5月24日 06:00
正規の乗車券・特急券などを所持しているかどうかは、券面記載事項を確認すれば分かるから、有人改札で問題になることはないだろう。ところが自動改札機の普及により、話がややこしくなってきた。機械というものは、仕様どおりに使わないと容赦なくエラー判定を出してくるからだ。
入場記録がないきっぷでエラー判定
紙のきっぷを持って有人改札を通ると、きっぷに入鋏したり、スタンプを押したりして「確かに改札を通って入場しましたよ」という印にしている。
しかし現実問題としては、自動券売機だけ設置した無人駅が随所にある。そうした駅で購入したきっぷを使って列車に乗ると、きっぷの外観だけでは改札を通っているかどうかの識別はできない。とはいえ有人駅の有人改札、あるいはワンマン列車の乗務員が券面記載事項を確認すれば、特に問題は起こらない。
では自動改札機はどうか。自動改札機に対応する紙のきっぷを使用する場合、入場した駅に自動改札機が設置されているのであれば、そこできっぷを自動改札機に通しておく必要がある。自動改札機を通したときに、きっぷに「入場」の情報が書き込まれるからだが、それがないとどうなるか。
これは筆者が実際に経験したパターン。「入場」の情報がないスッピンのきっぷで出場あるいは乗換改札を通ろうとして、エラー判定が出て自動改札機に弾かれたことがある。そういうときには、有人通路で券面記載事項を確認してもらい、問題がなければ通してもらえる。
ただし、在来線と新幹線の乗換改札から入場するところで弾かれると、手間が増える。新幹線を降りて出場するときにも有人通路に行って事情を説明するハメになるからだ。新幹線に乗るところで自動改札機を通していないきっぷを所持しているわけだから、それを出場時に自動改札機に通せば、また弾かれる。
一筋縄ではいかない改札機事情
都市部の駅で一般的な、扉付きの自動改札機があれば間違えようがない。ところが、無人駅にするような路線は利用が少ないから、コスト低減のために簡易型の自動改札機を設置することがある。
例えば、JR西日本で用いられている簡易型の自動改札機は、ICカードによる入出場と、紙のきっぷの入場だけを扱う。紙のきっぷの出場は、単に箱に入れるだけだ。そして入出場のいずれも扉はないから、知らないと「これが自動改札機である」と認識しそこなう可能性はある。
「JRの改札は自動改札化されているが、別の私鉄も同じ駅に乗り入れており、そちらは自動改札化されていない」パターンもあり得る。ただし、私鉄の改札からいったん外に出て、JRの改札から入場し直せば、何も問題は起こらない。
問題は、JRと私鉄の間に乗り換え改札があり、しかもそれが自動改札機ではない場合。そして、事前にJRの乗車券を発券してあるとどうなるか。すでに手元にはきっぷがあり、それを用いて自動改札機を通らずにJR線内に入ることになるので、「自動改札機があるはずの駅で自動改札機による入場記録がない」きっぷが発生する。そうしたきっぷで自動改札を通って出場したり、新幹線乗り換え改札を通ったりしようとすると、弾かれる可能性が出てくる。
磁気券は保管場所に注意
何もわるいことをしていないのに自動改札機に弾かれる場面としては、「きっぷの磁気エンコード情報が破壊されていた」も考えられる。磁石にくっつけるようなことをすると、こういう目に遭うリスクが増える。昔と比べるときっぷの磁気保持力が上がっているので、こういうトラブルは減っていると思われるが。
そこで近年、問題になりそうなのが、スマートフォンの手帳型ケース。なぜか往々にして、きっぷやキャッシュカード、クレジットカードがちょうど入る仕掛けが用意されている。そこにきっぷを入れておけばなくさないだろう、とは多くの人が考えそうな話だ。
ところが、手帳型ケースは往々にして、「蓋」の部分を固定するために磁石を用いている。これが磁気券にわるさをすると困ったことになる。そういえば、どこかの宿泊施設で「カードキーの情報が破壊されるので、カードキーをスマートフォンの手帳型ケースに入れないでください」とお願いするポスターを掲出しているのを見かけたことがある。
たまたま筆者はクレジットカードなどを保管するために、専用の小さなポーチというかカードケースというか、その種のものを用意している。そこで、そこに紙のきっぷも一緒に入れる方法を試行している。「なくして困るものはひとまとめに」というわけだ。ただし、なくしたときの被害が甚大になるが。