荒木麻美のパリ生活

最期の別れから見るフランス、葬儀が映し出す死生観・宗教観・家族のあり方

葬儀会社の一つ

 フランスに住んで20年ちょっと、葬儀に参列することが何度かありました。今年もフランス中部にあるオルレアンで夫の伯父の、パリで知人の葬儀がありました。

 フランスでは病院や自宅で亡くなると、葬儀会社を通して手続きを進めるのが一般的です。

 葬儀は、亡くなってから2週間以内に行なわなくてはなりません。教会の都合などで週末に行なわれることはあまりありません。葬儀までの間、昔は自宅に遺体を安置することがあったようですが、現在は葬儀場か病院の安置所に数日間安置されます。この間、故人に近しい人は遺体に対面に行くので、日本の通夜のようなものかもしれません。

 ただし、フランス人は遺体に会いに行く人はあまりいないと思います。潜在的に現在のフランスで死はタブーだからだと私は感じていますが、生前の元気なときの記憶を残したいという人が多いです。私はフランスでは一度だけ会いに行ったことがありますが、そのときも来たのはごく数人でした。

 葬儀は、亡くなった人がカトリック信者であった場合は、カトリック教会で式を行なうことが多いです。伯父の葬儀は地元の教会で、かなり高齢の神父が来たので不思議に思っていたら、伯父が生前お願いしていたと。この神父は現在ほぼ引退状態で、住んでいる高齢者向け施設からわざわざ来たそうです。そこまでしてお願いしていただけあって、人生の素晴らしさについて、ユーモアを交えて愛情深く話していて、カトリック信者ではない私にも響きました。

 葬儀の内容はこのほか聖歌、聖書朗読、家族のスピーチなどになります。参列者の服装に決まりはなく、派手な色の人はいませんでしたが、ミニスカートの人はいましたし、ジーンズで来ている人はたくさんいました。

教会での葬儀の様子

 最後にカトリック信者であれば薄い円形のウエハースを神父からもらう聖体拝領があり、その後、香煙がたかれるなか、カトリック信者でなくとも、全参加者が聖水をかけながら棺のまわりを回って終了です。棺は閉まっているので遺体を見ることはできません。葬儀は全部で1時間くらいです。伯父は80歳前半でしたが、一生を同じ土地で暮らしたので参列者がとても多く、棺が聖水で水浸しになっていました!

 教会での葬儀が終わるとすぐに墓地に向かいます。フランスの墓は期限付きが一般的です。フランスでは家族の墓、カップルだけの墓、一人だけの墓、という3種類がありますが、いずれも購入時に払っていた分がなくなり、更新がない場合は撤去されます。その際、遺骨は共同納骨施設へ移されます。

古くは見えない墓でも、権利が終わっているので連絡を、と書かれた札が置いてありました

 フランスでは長男だから家族の墓に入るということはないのですが、長男にあたる伯父は両親の墓に入りたいと生前言っており、入るスペースを考慮して火葬で、とも言っていました。しかし伯父の死後、妻や子供たちがやはり火葬は嫌だということになり、バタバタと墓を探し、土葬となりました。

 伯父の葬儀後、墓地まで行く人は故人に近しかった人となるので、ぐっと減ります。穴に棺を入れたあと、参列者は植物を棺の上に投げ入れて終わりです。神父が来ることもあるのですが、高齢だったためか今回は来ていませんでした。参列者が去ると棺に土をかけ、仮の墓標を置いておきます。参列者は近くのレストランで、立食の軽食を食べながら故人を偲んで解散しました。

葬儀会社の人が花や葉(おそらくツゲ)を渡してくれます
仮の墓標が置かれた墓

 パリの知人は、パリ市内で唯一火葬をしてくれるペール・ラシェーズ墓地内の建物で、無宗教の告別式のようなものをしました。故人の好きだった音楽が流れるなか、数人が故人を偲ぶスピーチするだけの簡単なもので、その後、故人は火葬に、参列者は同じ建物内のサロンで故人を偲びつつ軽食を食べました。教会と違い、式場が複数あるので、次から次へと式が行なわれていました。

ペール・ラシェーズ墓地内にある、大きなドーム屋根の火葬場

 伯父は結局土葬となりましたが、最近のフランスでは約半数が火葬です。パリの知人は同性婚をしていましたが、残されたパートナーは墓を作らず、近いうちに2人の思い出の場所に、法律に沿った形で遺灰をまくと言っていました。このように墓地内の散骨区画でなく、自然のなかに散骨した場合は、故人の出生地の市役所に届け出る義務があります。火葬した場合、納骨堂に収めることもあります。

 お墓参りについては、11月1日は諸聖人の祝日というカトリックの祝日で、国民の祝日でもあります。フランス人はこの日に墓地を訪れ、菊の鉢植えを墓に供えるのですが、これに行かない人が増えており、ある調査によると4割ぐらいが行かないとなっています。行かない理由としては、カトリックの洗礼を受けただけのカトリック教徒なので宗教的儀式に興味がない、墓が遠い、先祖や故人へのつながりを重視していないなどです。11月1日に関わらず、私はときどき夫と一緒に夫の母方の祖父母の墓参りに行きますが、これは生前の関係が親密だったからで、父方の方には一度も行ったことがありません。

 私はパリとその周辺の事情しか分からず、別の地方に行けばまたいろいろあると思いますが、以上が私の知るフランスの葬儀事情です。夫が日本での私の父の仏式葬儀に出たときは、遺体との関わり(特に遺骨拾い)、葬儀での服装、その後の墓参りの習慣など、フランスとの違いに驚いていました。大切な人を亡くしたときの気持ちは世界共通だと思いますが、葬儀を通して故人の死生観・宗教観・家族観、そしてその国の文化も見えますね。

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。Webサイトはhttp://mami.naturo.free.fr/