荒木麻美のパリ生活
夏の平均気温上昇中。パリ市が熱心に取り組む暑さ対策
2023年7月15日 08:00
2019年にもパリの熱波について書きましたが、今年も6月に入ってすぐに暑くなりました! パリでクーラーのある家はまだ少なく、我が家も扇風機のみ。パリの場合、日中の最低気温が31℃、夜間の最低気温が21℃の日を「熱波日」と言います。6月に熱波日はなかったものの、日中30℃以上になった日が何日もあり、我が家の猫たちはぐったり、夫はごく軽いものでしたが熱中症になって慌てました。
約1万5000人の死者を出した歴史的熱波があったのは2003年のこと。私は2003年の秋にパリに引っ越してきたので、暑い日でも日陰に入れば快適だし、バカンスでパリを出てしまう人がかなり多いため、静かで涼しいパリの夏って最高!と思っていました。
しかしここ数年の夏の気温を見ると、高い年が続いています。フランス気象局発表による、6月から8月のフランスの平均気温を見ると、トップは2003年、次いで2022年、2018年、2019年、1947年となっています。6月だけで見ると、今年は2003年の次に暑い月でした。
「The Lancet Planetary Health」の発表によると、暑さで死亡する危険性がある欧州の都市第1位はなんとパリだそう。今夏も暑くなりそうという予測も出ているなか、パリ市がどのような対策を取っているのかをご紹介します。
水を十分に飲む、食事をきちんととる、身近な人同士で安否確認をしあうといった一番基本的なことについては、掲示板やチラシなどを使い、あちこちで伝えています。
年間を通して140か所の公園や緑地が24時間開放されていますが、夏季そして熱波の間は、さらに開放場所が増えます。
フランスでは熱波注意報を4段階で出していますが、レベル3になると、パリ市内の各区にある、冷房の効いた部屋が開放されることにもなっています。ただし数年前の熱波のなか、ようやくたどりついた市役所の冷房室は、肝心の冷房が壊れていたので油断がなりません!
高齢、一人暮らし、健康に不安があるといった人は、事前に「Reflex」というリストに登録しておくと、熱波が来たときに確認の連絡が来ます。1万人ほどが登録しており、2022年は連絡をした登録者のうち、158人の自宅に訪問して安否を確認したとか。
そのほかの対策としては、パリ協定も踏まえ、以下のようなことを行なってきました。
・2万5000本の植樹
・26か所に日陰を設置
・40か所の水飲み兼ミスト場を新たに設置
・60か所のミスト場を設置
・道路や学校敷地内の緑地化、冷却システム付ベンチなどを置いた休憩所の設置
・5000 戸の公営住宅の断熱改修
・「Cool roof」の促進:屋上を白く塗ることで、建物内の気温を上げづらくする
・エコリノベーション:建物の屋根や壁の緑化、古いアパートの壁や窓などを低エネルギー消費に改修した際の費用を補助する
今年も夏限定の「パリ海岸」がはじまりましたし、パリ市はあれこれと暑さ対策を取ってはいるものの、涼しくなったという実感はまだまったくありません。蚊やハエも昔より多いです。日除けシェードやブラインドの専門店に行ったところ、「今年は特に網戸の注文が多くて対応が追い付かない」と言っていました。ネズミが出たという話もあちこちから聞きます。
この記事を書いている7月頭時点ではまだ熱波日はありませんが、今後8月に向けてどうなるのかドキドキです。できる暑さ対策はすべてやり、合間にはパリ脱出バカンスも挟みながら、今夏も乗り切りたいと思います。日本の皆さまもどうぞお気をつけて!