荒木麻美のパリ生活

2024年末に再開予定。パリのノートルダム大聖堂再建の様子を知る展示会

 2019年4月、フランスはもちろん世界中のニュースとなったノートルダム大聖堂の大規模火災。あれから4年が経ちました。再建工事は進んでおり、2024年末までに再開される予定となっています。

大聖堂の前にはこのような観覧席が設置され、観光客らが座って大聖堂を見ていました

 現在パリで開催されている、2つの大聖堂再建に関する展示会を見てきました。

 一つは、ノートルダム大聖堂の目の前の地下、以前は駐車場だった場所に作られた会場で、“Notre-Dame de Paris : au cœur du chantier”(ノートルダム・ド・パリ、建設現場の中心で)という展示会が開催されています。期間はノートルダムが再開するまで、無料です。

 大聖堂の再建に向けて、世界150か国、34万人の寄付者から、8憶4500万ユーロ以上の再建資金が集まりました。

 この資金をもとに、屋根、柱、銅像、絵画、オルガン、ガラスなど、多岐に渡る再建がどのようなプロセスで進んでいるのかを、現場にいる人たちのインタビューを交えて詳細に知ることができます。オリジナルの状態をできるだけ損なわないよう、建設当時の木や石の分析には専門家による科学的アプローチはマストですし、すべてにおいて緻密で繊細な作業が続きます。この日も若者たちがガイドの話を熱心に聞いていましたが、これをきっかけに、こうした再建作業のどれかに関わる仕事に就きたいと思う人が出て来るかもしれませんね。

 有料ですが、ノートルダム大聖堂の建設から現在までの850年を見られるVRスペースもあります。続々と予約者が来ていたので、かなり人気がありそう。

 もう一つの展示会は、16区にあるシテ建築遺産博物館(Cité de l'architecture et du patrimoine)の“Notre-Dame de Paris. Des bâtisseurs aux restaurateurs"(ノートルダム・ド・パリ、建設業者から修復業者まで)です。

 ここでの見どころは「本物」がたくさんあること。特に尖塔のまわりに置かれていたブロンズ像は必見です。16体の像(12人の使徒と4人の福音伝道師)は、火災の数日前に修復のために移動していたため、奇跡的に難を免れました。

 がれきのなかから発見され風見鶏も感動もの。尖塔の頂上を飾っていたので、焼け落ちていてもおかしくなかったはず。この風見鶏、ただの風見鶏ではなく、なかには3つの聖遺物がおさめられており、すべて無事だったそう。3つとは、キリストが処刑されたときにかぶっていた茨の冠のトゲ1本、聖人サン・ドニと聖女サント・ジュヌヴィエーヴの遺体の一部です。

 1840年代から50年代に作られた、大聖堂や尖塔のデッサンや模型も多数展示されています。

 このほかにもオルガンのパイプや絵画、修復されたばかりのステンドグラスも見ることができ、再建後にこれらが大聖堂に戻る日が待ち遠しいですね。

現場で作業員が来ている作業服も展示されていました

 ノートルダム大聖堂の大火災は、動画配信サービスNetflixがドラマ化し、巨匠ジャン=ジャック・アノー監督も「ノートルダム 炎の大聖堂」として映画化しました。火災の原因はいまだ確定していませんが、当時一体何が起こっていたのかを知る参考にはなりそうです。

Netflixのドラマ「Notre-Dame/ノートルダム」の撮影風景。映画業界で働く夫が関わっていたので撮影を見学しました。青い部分にはあとからCG映像を入れたそう

 来夏のパリオリンピックには間に合いませんが、クリスマス頃にノートルダム大聖堂が再開した暁には、特にパリ市民は歓喜すること間違いなしですね!

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。Webサイトはhttp://mami.naturo.free.fr/