荒木麻美のパリ生活

サービス開始10年目にリニューアルされたパリのレンタサイクルサービス「Velib」

CO2削減のためにパリ市も積極的に取り組むシェアリングサービス

 2007年に「Velib(ヴェリブ)」が導入されてからずっと、私はレンタサイクルを愛用していました(関連記事「パリでレンタサイクルに乗ろう!」)。前のアパートには自転車置き場がなく、道に自転車を置きたくなくて、自分の自転車を持っていなかったからです。

 その後、今のアパートに引っ越してきたときは、敷地内に自転車置き場があったので自転車を購入、それも電動自転車を購入し、必要に応じてVelibと併用するという快適な生活を送っていました。しかしアパート内の自転車置き場に置いていたにも関わらず、半年も経たないうちに私の自転車は盗難の憂き目に。鍵を2つも付けていたにも関わらず、です。自転車に限らずとにかく何でも盗まれてしまうパリ。もう自分の自転車を持つのは止めました。

 そんななか、2017年にJCDecauxからSmovengoにVelibの運営会社が変わるという発表がありました。おかげでこれまでの駐輪場はすべて取り壊され、新しいシステムで作り直さないといけませんでした。これに伴い、登録料金が年間29ユーロから37.20ユーロに値上がり。普通の自転車のほか、電動自転車も導入されたのですが、この使用料は年間ほぼ100ユーロとなりました。

 新Velibの大まかな料金は表のようになります。購入は一部の利用端末機(ボルヌといいます)でも買えますが、公式サイトや専用アプリから購入しておくのが一番です。

これがボルヌ
新Velibの利用料(30分間)
サービス名V-LIBREV-PLUSV-MAXV-DecouverteV-Sejour
登録料0ユーロ3.10ユーロ/月、37.20ユーロ/年8.30ユーロ/月、99.60ユーロ/年5ユーロ/24時間15ユーロ/1週間
自転車1ユーロ0ユーロ0ユーロ(1時間まで)0ユーロ(同時に5台まで利用可能)0ユーロ(同時に5台まで利用可能)
電動自転車2ユーロ1ユーロ0ユーロ1ユーロ1ユーロ

新Velibの利用方法

1. V-Boxというスクリーンの右の方にあるボタンを押してから、Navigo(公共交通機関用のカード)またはVelib Metropoleというカードを持っている場合はこれをタッチ。画面に「Go」アイコンが出たら、自転車を引き抜く。

手持ちのNavigoをアクティブにするには
パスを使う場合

2. 24時間または1週間パスを使う場合は、購入時に出る8桁のアクセスコードと、4桁の暗証番号を入力。

コードを使う場合

3. 自転車を乗り終わったら駐輪場に戻す。

 当初は2018年1月までに新サービスは完全に移行されると言われていましたが、新しい駐輪場はなかなかできず、できてもシステムの不具合が頻発。2018年、私はパリにいないことも多かったので、Velibを更新しないまま2019年を迎えました。

2018年1月19日までに工事が終わると書いてあったのですが、新しい駐輪場が設置されたのは、このあとずいぶん経ってからでした

 いろいろあった末にようやくシステムが落ち着いたようなので、2019年になって再び利用を始めたVelibですが、使ってみて新しいVelibのよいところはありました。

 まずはV-Boxに利用時間や走行距離などが表示されるのですが、無料の30分まであとどれくらいかがすぐに分かるのはとても便利です。

 また、JCDecaux時代の自転車は22kgでとても重く感じたのですが、Smoovengoのは20kgと、少しだけ軽くなりました。実際に乗ってみるとこの違いは大きいです。料金は高いものの、電動自転車(普通の自転車は色が黄緑なのですが、電動は色が水色)は意外と上り下りの多いパリ市内ではうれしい人もいることでしょう。

 さらに今はまだサービス提供がされていないものの、今後、駐輪場がいっぱいのときは、すでに止まっている自転車に自転車をつなぐことで返却したことになるそうで、これはとても助かりそうです。

 パリ市は環境対策の一環として、自転車利用の促進を進めています。2020年までに駐輪場や自転車専用レーンの大幅な増設も計画されており、現在各所で工事が行なわれています。

見えづらいかもしれませんが、このように自転車と自転車をケーブルでつなぐことができます。ただ今はまだこれでは返却したとは見なされません
うちの目の前の道路でも、自転車専用レーン設置の工事が始まりました

 パリ市のレンタサイクルとは別に、2017年からレンタサイクル市場に多くの動きが起こっています。ボルヌを必要としないレンタサイクルが多く出てきており、たとえば「Gobee.bike」「Ofo」「oBike」「Mobike」といった名称で出てきたレンタサイクルは、パリ市ではなく民間企業による運営です。スマホでレンタサイクルを検索し、QRコードで開錠、好きなところで乗り捨て可能。2019年からは「Oribik」という電動自転車のレンタサイクルも始まりました。

 ただ、これら民間のレンタサイクルのうち、GoBee.bike、Ofo、oBikeは盗難や破壊の多さ、経営悪化などの理由により、すでにパリからのサービスを撤退しています。

壊されたレンタサイクルたち

 でも私はこういう乗り降り自由のレンタサイクルを好きではなかったので、あまり残念ではありません。というのも、好きなところで自転車を乗り捨てできるのは便利な反面、あり得ない場所に自転車が放置されていることが多いため、とても邪魔だからです。

歩道などに放置されて邪魔なレンタサイクル

 民間企業による電動キックボードのサービスも続々と始まったのですが、これまた好きなところに放置されているので邪魔ですし、キックボードは歩道も走ることが多いので、とても危なく感じます(電動キックボードは今後法律で規制が入る予定)。以前、電動キックボードに子供を乗せて疾走している人を見かけたこともありましたが、ヘルメットも着用しておらず、本当に危ないと思いました。

これまた適当なところに放置されて邪魔な電動キックボード

 民間のレンタサイクルも電動キックボードも、指定されたところ以外に停めているとパリ市に罰金を払わないといけないので、職員が片付けている様子をときどき見かけますが「なんだかなぁ」という気持ちになります。

 ちなみに以前紹介した、2011年に始まった電気自動車のサービス「Autolib'(オートリヴ)」は、多額の赤字のために2018年7月で終了となり、現在は大手自動車メーカー数社が電気自動車のシェアリングサービスに乗り出しています(関連記事「パリのレンタル電気自動車と電動スクーター」)。

ルノーによる電気自動車シェアリングサービス「Moov'In Paris」
パリには現在、Cityscoot(シティスクート)以外にもCoupやTroopyといったシェアスクーターがあります

 パリの自転車、電動キックボード、スクーター、電気自動車のシェアサービスは、今後もいろいろな動きがありそうですね。今後引き続き注目していきたいと思っています。

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。Webサイトはhttp://mami.naturo.free.fr/