荒木麻美のパリ生活

リサイクルを超え、ごみを出さない生活にシフトする人が増加中。パリの「Zero Waste(ごみゼロ)」への取り組み(前編)

パリで盛り上がる「ゼロ・ウェイスト:ごみゼロ生活」。その講演会やアトリエに参加してきました

 以前ご紹介したEmmaüs(エマウス)もそうですが、パリのリサイクル活動はますます盛んです。そしてその進化系ともいえる「ゼロ・ウェイスト:ごみゼロ生活」への注目も高まっています。

 フランスには「Zero Waste France(ゼロ・ウェイスト・フランス)」というアソシエーションが1997年からあるのですが、Zero Waste France主導のもとに作られた「La Maison du Zéro Déchet(ラ・メゾン・デュ・ゼロ・デシェ、ゼロ・ウェイストの家)」という施設が、パリ18区のモンマルトルの丘のふもとにあります。

La Maison du Zéro Déchet(ラ・メゾン・デュ・ゼロ・デシェ、ゼロ・ウェイストの家)

 施設がオープンしたのは2017年7月だったのですが、これまで行く機会がありませんでした。オープン当初に何度か行きたいアトリエや講演会があったのですがすぐに満席になってしまい、その後すっかり忘れていたからです。

 でも最近ふと思い出し、「ゼロ・ウェイスト入門」という講演会と、「ごみ箱の分析」というアトリエに参加してきました。

Zero Waste France

Webサイト: Zero Waste France(英語)

La Maison du Zéro Déchet

所在地: 3 Rue Charles Nodier, 75018 Paris
Webサイト: La Maison du Zéro Déchet(仏語)

 扉を開けるとまずはゼロ・ウェイスト関連商品が並んでいます。固形シャンプーに固形歯磨き粉(どちらも包装を簡素化できる)、環境に優しい掃除グッズ、布のコーヒーフィルター、弁当箱、水筒、風呂敷、布ナプキンや月経カップ、布おむつなどが並んでいます。書籍コーナーもあります。コーヒーやお茶なども提供しています。

個人的には月経カップをお勧めしませんが、布ナプキンは私もここ15年くらい使っていて、とても快適です
布ナプキンや月経カップに切り替えたために不要になった、未使用の紙ナプキンやタンポンはここに。ホームレスの女性などに配布されるそうです
La Maison du Zéro Déchet一押しの一冊はこの「Famille zéro déchet(ゼロ・ウェイスト家族)」だそう。ゼロ・ウェイストに家族でどう取り組めばよいのか、イラスト付きで分かりやすく書いてあります

 奥がアトリエや講演会の場所です。場所が狭いので、講演会もアトリエも満席でした。参加者は20代から30代と思われる若い世代が中心です。参加者のプロフィールを何人かに聞いてみましたが、会社のエコ意識を向上させたいという同僚同士、環境問題に関心のある学生、La Maison du Zéro Déchetのアトリエなどにリピーターで来ている人、家にコンポストを設置しているという親子、ヴィーガンの人もいて、参加者の「エコ意識」はかなり高そうです。私が日本人だと分かると「こんまりの番組を見たよ!」と言ってくる人もいました。

講演会の様子
アトリエの様子

 ブティックのスタッフや講師役の人も若そうでした。La Maison du Zéro Déchetでは100人ほどが働いているそうですが、ほぼ全員がボランティアです。先生として来ていた彼らの本業を聞くと、ゼロ・ウェイスト生活の指導や、手作りコスメなどのアトリエを主催しているとのこと。

 私が参加した講演会やアトリエの内容から一番大切なところを書くと、フランスで1年間に出されるごみの量は約3億トン。これを処理するのにかかる費用は約170億ユーロだそう。リサイクル運動は確かに進んでいますが(関連記事「家庭での分別はかなり適当、それでもリサイクル率30%」)、リサイクルには大量のエネルギーや費用が必要です。

 そのためLa Maison du Zéro Déchetでは、以下の5つの「R」を生活に取り入れることを推進しています。

1. Refuser: ごみになるものを「断る」
2. Réduire: 必要なものを「減らす」
3. Réutiliser: 「再利用する」
4. Recycler: 1~3ができない場合は「リサイクルに出す」
5. Rendre (à la terre): コンポストにして「土に返す」

 5Rは重要度順になっています。つまり一番大切なことは最初の「1」の「Refuser」。できるだけ「買わない」「もらわない」ことなのですね。

 5R実践のために、普段の生活ですぐに取り入れられることの紹介(エコバックや水筒を持つ、リサイクル品を買うなど)、エコ掃除の基本的なやり方、お勧めする本や商品を量り売りしてくれるお店の紹介、庭がなくてもできるという、生ごみの「ミミズコンポスト」の説明などもありました。

 コンポストといえば、以前参加していたJardin partagé(共有庭園、関連記事「都会の喧騒の中にある秘密の畑」)にコンポストがあったので、生ごみを持って行っていたのですが、引っ越し後は持って行くところがなくなってしまいました。アパートによっては敷地内に共有のコンポストを設置しているところも増えていますが、私のアパートにはありません。

 そういう人にはミミズコンポストなら臭いがなく手入れが楽とは言っていましたが、うちにはベランダもありません。家の中にコンポストというのは、我が家には猫もいますし、まずは実物を見て、もっとよく調べようと思っています。ちなみにパリの市役所では、ときどきこのミミズコンポストキットを無料で配布していて、大人気です。

 La Maison du Zéro Déchetに行ったあと、今度はZero Waste Franceの支部であるZero Waste Paris(ゼロ・ウェイスト・パリ)主催の「ゼロ・ウェイストのアパート訪問」というイベントもあったので行ってきました。モデルルームみたいなものかなと思っていたのですが、実際に人が住んでいるアパートを、住人が一般に解放してくれていたのでビックリです!

 場所は10区。プライバシーの関係で写真はありませんが、すてきなお宅でした。そこに住んでいるのは夫婦に娘さん2人の4人家族です。ご主人は不在でしたが、お母さんと、とっても素直でかわいい10歳前後の娘さん2人がオープンキッチンに迎えてくれました。

 そこで普段の暮らしぶりについて、使っている商品やお店の紹介などをしながら紹介してもらい、30分という短い時間でしたけど、ゼロ・ウェイスト生活を楽しんでいる様子が伝わってきました。ただ、私の一番の目的はミミズコンポストを見ることだったのですが、このアパートは敷地内に共有のコンポストがあるとのことで、そこだけは残念でした!

写真手前にあるハンカチは、年ごろの娘さんたちがティッシュの代わりに使っているそう。フランスではお年寄りが使っているイメージなのですが、「学校で何か言われない?」という質問に対し、「人のことは気にしないわ!」と頼もしい答えが。私の夫も愛用していますが、鼻かみ用と手拭き用で使い分けています。エコのためではなくて、紙より肌触りがよいから手放せないそうです

 ごみゼロといきなり言われたら「えー、無理!」と私も思います。でもどこに行っても「まずは何でもいいからできることから」と言っていたので、私もこれまで以上にできるところから取り組んで行きたいと思っています。Zero Waste FranceとLa Maison du Zéro Déchetでは、随時講演会やイベントを開催しています。まずはここに参加することから始めてみてもいいですよね!

 2018年にZero Waste Franceが創設したRien de neuf(リアン・ドゥ・ヌフ、新しいことは何もない)というサイトでは、随時ゼロ・ウェイストに関するイベントの告知も出ていますから、ここに登録するのもよさそうです。フランス語になりますが、登録するとゼロ・ウェイストにどう取り組むとよいかといったニュースレターも届きます。

La Maison du Zéro Déchetでは「チラシお断り」シールを無料で配っています。早速ポストに張ってみたら少し減りました。パリの市役所でも配布しています

 このあと、パリでゼロ・ウェイストな生活を送るためにお勧めされたイベントやレストラン、関連するお店にも行ってきましたので、これについてはまた来月にご紹介したいと思います!

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。Webサイトはhttp://mami.naturo.free.fr/