荒木麻美のパリ生活

2025年までに食品廃棄物を50%削減。パリの食品廃棄対策

アプリ、スーパー、レストランなど、民間レベルでの動きもますます活発に

今回はパリの食品廃棄削減の取り組みを紹介します

 フランス環境エネルギー管理庁(ADEME)の2019年11月の発表によると、フランス人1人当たりが1年間に出す食品廃棄の量は30kg。そのうち7kg分は未開封の食品です。金額にすると、1人当たり1年間に100ユーロから160ユーロとなります。

 現在フランスでは2025年までに食品廃棄物を50%削減するという目標を掲げており、2016年2月には「食品廃棄禁止法」が成立しています。延べ床面積400m 2 以上のスーパーは、売れ残った食品を寄付することなどが義務付けられたのです。

 一方で民間レベルでの食品廃棄削減への取り組みも各種起こっており、今回はそのいくつかをご紹介したいと思います。

 まずは食品廃棄対策アプリから。フランスでは2016年にサービスが始まった「Too Good To Go」をはじめ、食品廃棄対策アプリがたくさんあります。一番人気のアプリはToo Good To Goなのですが、商品の争奪戦が激しいと聞いたので、私は今回、二番手と思われるアプリ「Phenix」を試してみました。

 使い方はとても簡単。登録をして近所で商品を提供しているお店を検索して、気に入ったものがあれば購入。指定された場所と時間に取りに行きます。

 私はオーガニックカテゴリーで検索をかけたところ「開けてからのお楽しみセット」が出ていたのでこれを通常価格の半額で購入。20時半から21時の間に取りに来るようにとのことだったので行ってきました。

Phenix

 お店はBIO(ビオ、オーガニック)専門の野菜や総菜を扱うところで、内容はリンゴにチコリ、それとカブをメインにいろいろ入ったサラダでした。家に持ち帰り、すべてを混ぜてサラダにして食べましたが、時間のない人にはお手軽かつ安いので喜ばれそうです。

 フランスでは新型コロナウイルスの感染拡大を受け、3月15日から飲食店を含む多くの店舗・施設の営業が期間未定(本記事執筆時点)で禁止されています。Phenixはその発表があってすぐ、飲食店は食品や調理済み食品を営業禁止の間、手数料無料でPhenixを通して販売できるとしました。

「Les Frigos Solidaires(連帯の冷蔵庫)」は、フランスでは2017年に始まりました。最初に設置されたのは、パリ18区にあるレストラン。現在ではパリだけではなくフランス各地に増えつつあります。

Les Frigos Solidaires

Webサイト: Les Frigos Solidaires(仏語)

 連帯の冷蔵庫の設置場所は、サイトにあるマップで随時更新されています

 冷蔵庫のシステムはとてもシンプル。自宅、商店、レストランなどで余った食品をここに自由に持ち込みます。持ち込めないのは家で調理されたもの、肉や魚、開封済みのもの、アルコール。あとは持ち込まれた食品を、必要な人が持ち帰ります。

 私が訪ねたのは10区の「La base(ラ・バーズ)」。気候変動対策や公平な社会を目指す10のアソシエーションによって運営されています。会員用のコワーキングスペースやバーがあり、関連イベントも開催されています。

La base(ラ・バーズ)
La base

所在地: 31 Rue Bichat, 75010 Paris
Webサイト: La base(仏語)

 冷蔵庫は入り口すぐのところにありました。中を覗いてみると、この日入っていた食品は近所のレストランからのもののよう。

 スタッフに尋ねると、「個人的に持ち込む人もいるし、うちのまわりはレストランが多いので、レストランからのものもよく入っているよ。うちに来る会員が持って行ったり、会員でない人がふらっと来て持って行ったりしているよ」とのことでした。

 最後にご紹介するのは、パリ19区に2019年11月にできた「Nous, Anti-Gaspi(私たちは浪費をしない)」というスーパー。1号店はブルターニュ地方で2018年に開店し、2020年3月現在、8店舗まで増えました。

Nous, Anti-Gaspi(私たちは浪費をしない)
Nous, Anti-Gaspi

所在地: 64 Rue du Pré Saint-Gervais, 75019 Paris
Webサイト: Nous, Anti-Gaspi(仏語)

 ここでは賞味期限の近い商品だけでなく、形などが規格に合わなかった食品などが並んでいます。というのは、フランス環境エネルギー管理庁によると、フランスでは食品の20%から30%が商品となる前に廃棄されており、例えばサラダであれば半分が捨てられているのです。

 店内は想像していたよりもだいぶ広かったです。また、BIOの商品が多いことにも驚きました。そして気になる価格は、一般価格より30%ほど安いそうです。

Nous, Anti-Gaspiの店内

 店内には食品だけでなく、日用品やアルコール類もありました。これらは配送中に梱包がつぶれてしまった、新シリーズが発売されたなどで、ほかの店では売れない商品です。

Nous, Anti-Gaspiでは日用品なども販売

 私が行った日は週末明けだったのですが、「あれ、なんだか棚の商品がまばら? 週末に売れちゃったのかな?」とお店の人に聞いてみると、「普通のお店のように計算して仕入れができないためにこういう日もよくあるよ」とのことでした。

卵売り場もこんな感じ。この日のBIOの卵は在庫ゼロでした

 品質ですが、果物はよかったのですが、この日の野菜はちょっと元気がないので、スープならOKかなぁというものが多かったです。でもこれも行くタイミングによると思いますし、果物や野菜以外の商品のためだけでも、行く価値は十分にあると思いました。

 以前ご紹介した市場に出せない野菜を使ったレストン「Simone Lemon(シモーヌ・レモン)」もそうですが(関連記事「パリの『ゼロ・ウェイスト』への取り組み(後編)。修理・修繕会、ブティック、レストラン……関連スポットを訪ねる」)、パリの食品廃棄対策はあちらこちらで見ることができます。

 私にとってもこれらの運動は大変興味深いものなので、今回ご紹介したアプリやスーパーをときどきチェックしつつ、いただきもので食べられないものが出た場合などは、共有の冷蔵庫に持っていくようにしたいと思います!

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。Webサイトはhttp://mami.naturo.free.fr/