荒木麻美のパリ生活

家庭での分別はかなり適当、それでもリサイクル率30%

パリのゴミ事情

 9月17日と18日はヨーロッパ文化遺産の日でした。この日は通常非公開の建造物を訪問できるのですが、2015年に訪問した浄水場に続き、今年我が家が向かったのはゴミ処理場でした。

 なぜゴミ処理場に行ったのか? 普段のパリでのゴミの出し方がわりといい加減なので、ここからどうやってリサイクルされていくのか、現場を見てみたかったのです。

 ちなみに、ヨーロッパ文化遺産の日の施設・建造物公開は、事前予約は必要な施設はあるものの旅行者でも見学可能です。また、ヨーロッパ文化遺産の日以外にも不定期に公開している施設があり、ゴミ処理場であればSyctomのWebサイトで確認と、必要に応じて申し込みを行なえます。

パリのゴミの出し方はかなりアバウト

 パリのゴミの出し方からご紹介しましょう。パリ市内では一軒家は珍しいので、大抵の住人はアパート内にある大きなゴミ箱にゴミを出します。

 ゴミ箱には3種類あり、緑は一般ゴミ、黄色はリサイクルゴミ、白がビン類です。24時間好きなときにゴミを出して構いませんが、ビンを捨てるときは大きな音が出るので、日中に出すのがマナーですね。

色分けされたゴミ箱
ビンを捨てるために、このようなゴミ箱も道に設置されています

 リサイクルゴミになるのは、プラスチック、紙、段ボール、缶、小型の電化製品です。そのほか、電球や電池はスーパーなどに回収箱があるので、そこに持って行って捨てています。電化製品は販売業者に持っていきます。まだ着られる洋服は専用のボックスに。ゴミ箱に入りきらない大きなゴミは、家具類であれば市役所にオンラインで連絡をし、提示された番号を紙に書いて貼っておけば、市のトラックが来て回収してくれます。それ以外の大型のゴミは、自分で廃棄所に持って行きます。

電球や電池の回収箱。ゴミ箱と勘違いしているのか、レシートも大量に入っています!
洋服専用の回収ボックス。回収車が来る前に、引っ掻き棒などで中にある服を引っ張りだす人もちらほらと
家具類のゴミにはこのように紙を貼っておくと、無料で引き取ってくれます。まだ使えそうな物は、たとえ紙が貼ってあっても誰かが持って行くことも多々あります
家具以外の大型のゴミは、このような廃棄所に自分で持っていって捨てます。面倒なのでしょうね、これをしないで道端に不法投棄している人も多いですが

 ポイントは、粗大ゴミ以外はすべて、緑のゴミ箱に入れてもなにも言われないということ。本来なら黄色や白のゴミ箱に入れるべきものが、緑のゴミ箱に入っているのはよくあることです。でも日本のように正しく分別されていないとゴミを持っていってくれないなどということはありません。

処理場へ持ち込まれるゴミは1日6300トン

 話を戻し、ゴミ処理場見学をしたのは、パリ市南西、15区の住宅街に隣接したイシー=レ=ムリノーというところ。ここに、パリ市を含む84の自治体が作る組合Syctomの処理場の一つがあります。

Syctomが担当する地域(SyctomのWebサイトより)

 ゴミ処理場とは思えない、緑の多い近代的な建物内に入ると、時間毎に一定の人数が呼ばれて中に入り、ゴミ処理の一連の流れを見ることができます。

処理場全体の模型図
各家庭でゆるく分別されたゴミは、処理場で機械を通して細かく自動的に分別されます。機械で分別不可能なゴミは、人の手で分別されます。分別所に入る人を見ていると、有色人種がほとんど。私の見る限り、処理場の管理職らしき人を除き、ゴミ収集車に乗っている人、道を掃除している人など、パリで清掃業に関わる人のほとんどが有色人種です

 今回の見学時間は約1時間でしたが、その間に説明されたことの概要は以下のとおりです。数字はすべて2015年度の報告書からとのこと。

  • Syctomが担当するエリアに住む人は600万人(フランス全人口の10%)
  • 年間に1人が出すゴミの量は472kg
  • Syctomが1年間に受け入れるゴミの量は240万トン(1日6300トン)
  • そのうち190万トンは一般ゴミ
  • 18万トンがリサイクルゴミとして出されるが、実際に使われるのは72%の13万トン
  • そのほか、家具や自転車といった粗大ゴミが18万トンで、リサイクルされるのは60%の10万8000トン
  • 金属類も35トンがリサイクルされている
  • ビンはSyctomではない業者が扱っているが、11万6千トンがリサイクルされている

以上、すべてのゴミに対するリサイクル率は30%とのこと。

 そのほかの燃やすことのできない、埋め立てられるゴミは21万2000トンとなり、全体のゴミの9%になります。

 このほか廃棄物エネルギーとして、可燃ゴミを焼却処理して発生する蒸気から、パリ市内及び近郊の公共施設などに暖房と温水を供給しているほか、電気も作って電力会社に売っているとのことでした。またこの際、処理場の煙突から出ているのは水蒸気のみで、大気中に汚染物質を出していないとのことでした。

ゴミの細かい分別は必要か否か?

 今回、日仏のゴミに関する統計もいろいろ見てみたのですが、Syctomの担当する地域に住む1人あたりのゴミ排出量は、同じく大都市である東京より多いものの、リサイクル率は東京より高かったのが本当に意外でした。

 私は日本に一時帰国するたびにゴミの分別表を再度頭に叩き込もうと必死になるのですが、フランス人の夫は「これ、僕にはちょっと複雑過ぎる……」と言います。それでも私はパリも日本のように各家庭でもっと細かくゴミを分別して出した方がよいのに! と思っていました。でもゴミの分別の細分化とリサイクル率とはあまり関係がないのでしょうか?

道のいたるところにゴミ袋が設置されているにも関わらず、それでもゴミやタバコの吸い殻のポイ捨てを止めない人を見ると、かなりイラッとします

 今後、さらなるリサイクル率向上を目指しているSyctomですが、同時にパリジャンにゴミの量自体を減らそうという意識、それと舗道はゴミ箱ではない、ゴミのポイ捨て、犬の糞尿の放置はいけないのだという意識の向上を強く願っています。道がもう少しきれいになるだけで、私のパリ生活ストレス度はかなり下がること間違いなしなのですけど。

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。フランス人の夫と黒猫と暮らしています。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。