荒木麻美のパリ生活

飲み水を探して試行錯誤中

パリの水事情

 人間の体内には約60%の水分があるといいます。これだけを見ても、どのようなお水を飲むかは、健康にとってとても大切なことが分かりますよね。

 私がパリに着いてしばらくは、水道水をそのまま飲んでいました。しかし私のお腹は緩くなり、なにかを食べるたびにトイレに行くという状態に。渡仏して半年で5kgくらい痩せましたが、今思えば新しい生活のストレスに加え、水道水を飲んでいたからだと思います。

 その後、特に自然療法を学び始めてから、飲み水を探す旅が始まりました。フランスの自然療法でもどのような水を飲むかはとても大切なことで、クライアントさんにも必ずアドバイスを出す項目です。

 ペットボトルの水を買っているときもありましたが、お店で買って持って帰ることが大変なことと、プラスチックに入っていること、ペットボトルの水への疑惑がいくつかニュースで取り上げられたことなどが重なり、水道水から蒸留水を作り、料理には浄水器を通した水を使うことで、今のところは落ち着いています。水道の横に付けるタイプの浄水器もよさそうですが、これからキッチンのリフォームを予定しているので、まだ試していません。

これが蒸留水を作ってくれる機械。単純な構造なので、購入して6年ほど経ちましたが、まったく壊れる気配がありません。味は美味しい~! と私は思いませんが、そこは割り切っています
浴室に義父が付けてくれた謎の機械。水道水の石灰分を減らし、シャワーはもちろん、洗濯機や食洗器にも石灰が溜まりにくくなるとのことですが、いまだに仕組みがよく分かりません

 それでも安定してそれなりに質の高い水を供給してくれるパリの水道には感謝していますし、一度はパリの水道水はどうやって届けられているのかをきちんと知りたいと思っていました。

 そこで行ってきたのがパリ16区にある「Pavillon de l'eau(水のパビリオン)」。パリの水道水について、歴史から水源、そこからどのように水道水を作っているのか、パネルや写真、模型などとともに説明してくれる場所です。

掃除用や公園の噴水など、飲み水以外の水についても説明しています。
パリ市内の水源は4つに分かれています(パリの水道業務を行なうEau de Parisより)
パリ市内にはこうした無料給水所が点在しています

 なお、パリには地下水層から汲み上げた水を飲めるところが3カ所あります。ペットボトル片手に水を汲みにくるパリジャンも多いです。

これは18区にある地下水の給水所
私のお気に入りのパリの公園の一つ、ビュット・ショーモン公園
ビュット・ショーモン公園では水がふんだんに使われているのですが、この水も浄水場で作られた水なんですね

 飲み水の水質検査は50項目以上に渡り、毎日複数回の検査をしているそう。実際に飲んで味がおかしくないかといったチェックもされているそうです。Eau de Parisによると、乳児から老人まで、あらゆる人が飲んで問題ないとか。パリ市民のパリの水道水への信頼も絶大で、「水道水を信用しているか?」という問いに86%の人が「はい」と答えているそうです。

 なお、フランスの自然療法では、お水はあくまで体に負担にならない、簡単にいうと体を「浄化する」ものであると捉えています。ですから、できる限りミネラル分の少ない軟水を勧めます。

 しかしパリの水道水の成分を見ると中硬水となり、ちょっと硬度が高過ぎるといえます。それに、塩素が含まれているうえに、パリのアパートは築年数が古い。水道管を定期的に取り替えているとはいえ、どこかがものすごく古い可能性はありますよね? 古い水道管から水道水になにが含まれてしまうかは謎、という疑惑も残ります。

水道水の成分(1Lあたり、※Eau de Parisより)

カルシウム:90mg
マグネシウム:6mg
ナトリウム:10mg
カリウム:2mg
重炭素塩:220mg
硫酸塩:30mg
塩化物:20mg
硝酸:29mg
フッ素:0.17mg

 ですから、もし可能でれば、比較的実行しやすいのは、せめて飲み水だけはお店でミネラル分の少ない、赤ちゃんにも大丈夫と書かれているような軟水を買うこと。調理用には私のように浄水器を通すか、蛇口にフィルターを付けることなどをお勧めします。

 毎年9月に「Les Journees Europeennes du Patrimoine(ヨーロッパ文化遺産の日)」という、普段は入ることのできない、フランス国内だけでなく、ヨーロッパ各地の重要文化施設に入れる日があります。2015年、私はパリ13区にある浄水場を訪ねました。この浄水場は飲み水ではなくて、公園や掃除用に使われる水を作る工場なのですが、爆音が響き渡る工場内の見学はなかなか興味深いものでした

Pavillon de l'eau

所在地:77 Avenue de Versailles, 75016 Paris
電話:+33(0)1 42 24 54 02
開館日:10時~18時(月曜日~金曜日)
URL:Pavillon de l'eau(フランス語)

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。フランス人の夫と黒猫と暮らしています。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。2016年は卒業論文を執筆しながらカウンセリングも少しずつ始める予定です。