旅レポ
タイ東北部イサーン地方の食と文化、バンコクの今を知る旅。カラシン県でめずらしいライス・キャッスルや恐竜の博物館を見学する
2019年4月27日 09:00
東南アジアの旅行先として日本人にも人気のタイ。東南アジア有数の大都市であるバンコクや南国リゾートのプーケット、過ごしやすい気候と独特の文化で人気になっている北部のチェンマイなど、魅力的なエリアが数多く存在する。それ以外にもまだまだ知られていない素晴らしいスポットはたくさんあり、タイの奥深さを認識させられる。今回はタイ国政府観光庁主催の取材ツアーで訪れた東北部のコーンケーン県やカラシン県について紹介しよう。
バンコクにあるスワンナプーム国際空港までは、東京の羽田空港からだと直行便で約6時間30分ほど。そこから国内線でコーンケーン空港までは約1時間の行程だ。スワンナプーム空港からはタイ国際航空が運航するブランドの一つ「タイスマイル」の飛行機が飛んでいるので、今回はそちらを利用した。もちろん、LCCが多く就航しているバンコクのもう一つの空港、ドンムアンからコーンケーンまで飛ぶこともできる。ちなみに陸路だと、道路状況にもよるが、おおよそ6時間ほどの道のりになる。
タイ東北部イサーン地方の食と文化、バンコクの今を知る旅
タイの東北部はイサーン地方と呼ばれ、そのなかで南イサーンの経済の中心がコーンケーンだ。1964年に設立された国立の総合大学「コーンケーン大学」のある学園都市として栄えてきた歴史がある。観光スポットとしては、コーンケーンの東に位置するカラシン、1994年に恐竜の化石が発掘されたのを皮切りに次々と貴重な化石が発掘されており、近隣には恐竜博物館も建てられている。また、養蚕業も盛んで、タイシルクの生産地としても有名だ。
コーンケーンに宿泊する際に便利な高級ホテル
さて、訪れるには何はともあれ宿泊施設が必要。まずはコーンケーンで宿泊したホテルを紹介しよう。こちらの「プルマン・コーンケーン・ラジャオーキッド・ホテル」は5つ星の高級ホテル。それほど高層ビルが立ち並ぶわけではない県内においては22階建ての高さは遠くからでも分かり、主要なアイコンにもなっている。市の中心部に位置しており、コーンケーン空港からもクルマで約10分とアクセスも良好。いくつかのレストランやバーラウンジのほか、MICE用途に便利な多目的会議室も15部屋用意されており、企業のセミナーや発表会、VIPの会合などにも使われている。ゆったりとした広さの客室からはコーンケーンの市内を一望でき、清潔に保たれたベッドに横になれば旅の疲れもたちまち癒してくれる。
レイクサイドにあるカジュアルなレストラン
到着したその日の夕食は「スマイル・ウォーターサイド・レストラン」でいただいた。プルマン・コーンケーン・ラジャオーキッド・ホテルからクルマで10分ほど走った先にある湖畔のレストランだ。早速、“激辛”と言われているイサーン料理を体験するのかとドキドキしたが、スタッフの配慮によりマイルド仕様になっていたので少しホッとした。鶏肉や豚肉のミンチを使ったラープや、もち米を詰めて発酵させたソーセージのサイクローイサーンといったイサーンを代表する料理は発酵調味料のおかげか、奥深い旨味が印象的だった。
シリキット王太后も愛用する高級シルクを作る村
2日目に最初に訪れたのはコーンケーンの東にあるカラシン県。ここの北部には、タイ東北部の民族プータイ族が住む「バーンポーン・プレーワー・シルク村」があり、美しい手織りシルクの「プレーワー」が有名だ。プータイ族の女性の正装は黒地の上着の上から「サバイ」と呼ばれる絹織物を肩掛けする。このサバイは赤が基調の緻密で美しい幾何学模様を織り込んだシルク製の細長い帯で、これがもともとはプレーワーと呼ばれていた。
プレーワーが有名になったのはプミポン前国王の王妃であるシリキット王太后がこの村に訪れたことから始まる。1977年にシリキット王太后(当時は王妃)が訪れた際に、村の人たちは足元を汚してはいけないとプレーワー(サバイ)を絨毯の代わりに敷いて出迎える。しかし、シリキット王太后は足を止めてプレーワーを手に取り「なんて美しいのでしょう。こちらをいただけませんか?」と声をかけ、その後はこの織物を巻きスカートなどにもできるように幅を広げるように勧め、自ら熱心に保護や奨励活動を行なったそうだ。
この日のランチは見学施設に併設されているレストランでいただいた。卵、鶏肉、野菜など、どの素材も地元で収穫した物であり、田舎の素朴な味を楽しめた。ただし、こちらで出されたディップソースはこの旅行のなかで一番の激辛であり、イサーン料理ならではの辛さも体験できた。
恐竜の化石の発掘現場も見学できる自然史博物館
カラシンならではのスポットとして、恐竜で有名な「シリントーン博物館」がある。こちらは東南アジアで最大の自然史博物館として、生物の進化や人類の誕生などの展示、そして恐竜の生態などを8つのエリアに分けて紹介している。実際、付近は恐竜の化石が数多く発掘されており、現在までに7頭以上が確認されている。展示されている化石は保護の観点からレプリカがほとんどであるが、併設されている研究室には実物が置かれており、ガラス越しだが本物を見ることができる。また、博物館の周囲には現在も発掘調査を行なっているエリアが4つあり、そのうちの1つは閲覧スペースが設けられているので発掘の様子を間近で見れる貴重な体験ができる。
おもしろいエピソードとしては、この地域で初めて恐竜の骨を発見したのは近くにあるお寺の和尚さんで、1970年のことである。発見した骨が恐竜のものであると判明したあとも、和尚さんの「まだまだ出てくるから掘ってみなさい」という言葉どおりに発掘作業を進めると、出るわ出るわで状態のよい約700個以上の化石が出土した。敬虔な仏教国であるタイらしいお話だ。
ライス・キャッスルを築いて豊穣のお祭りを祝う寺院
こちらのお寺「ワット・サウェッタワン・ワナラーム」では期間限定だが、ライス・キャッスル(もち米の稲わらを使ったお城)を見ることができる。このお城は、2月9日~12日にかけて行なわれるお祭りで、豊穣の神様に奉納するために作られるものだ。村人が持ち寄ったもみ殻付きの稲わらを100万本以上使っており、製作に必要な準備期間は2か月というからスケールの大きさに驚く。訪れた日は祭りの前日であり、ライス・キャッスルもほぼ完成状態で、まわりでは祭りの準備のために照明や音響などのセッティングが行なわれていた。ちなみに祭りが終わると城を解体し、稲わらは脱穀して、村人や恵まれない人たちに寄進されるとのことだ。