旅レポ
富山湾の神秘“ホタルイカ”は今が旬! モータージャーナリスト・岡本幸一郎が富山県のオススメ観光スポットを紹介
2019年4月28日 09:00
筆者の生まれは富山県の滑川市だ。背後にそびえ立つ3000m級の立山連峰と、「天然の生簀(いけす)」と呼ばれるほど豊富に魚介類の獲れる富山湾に囲まれた富山県は、豊かな自然育まれた海山の幸に恵まれ、米どころとしても知られる。そして滑川市というのは富山市の東隣りに位置する。人口3万人あまりの小さな町は、まさしく今、富山湾の春の風物詩として知られる名産のホタルイカがシーズンを迎えている。
さて、東京から富山にアクセスするにはいくつかの方法があるのだが、筆者の実家のある滑川はちょっと微妙な位置関係にある。飛行機だと富山きときと空港からバスで富山駅まで行き、鉄道に乗って滑川駅まで行くことになるのだが、乗り換えが少々面倒。開業して4年が経過した北陸新幹線だと、富山駅と黒部宇奈月温泉駅のちょうど中間あたりに位置するので、せっかく新幹線なら約2時間で富山に上陸できても、滑川まで行くには乗り換えが必要で少々時間を要してしまう。
クルマだと約400kmの距離があるが、今では上信越自動車道や北陸自動車道も整備が進んで対面通行区間もほぼなくなり走りやすくなったので、やはりクルマで行くのがもっとも快適かなと思っている。
そんななか、先日登場した日産「リーフe+」の航続距離が、なんとWLTCモードで458kmに達したとのことで、さっそく富山まで走ってみた。なお、その気になれば計算上は無充電でも行けたはずなのだが、今回は念のため途中で1回だけ充電した。
今が旬のホタルイカ
ホタルイカは3月中旬からゴールデンウイーク過ぎまで定置網による漁が行なわれ、それをすぐ近くの滑川漁港から出航する船に乗って見学する海上観光や、実家のすぐ近くにある「ほたるいかミュージアム」でも、この時期だけ特別展示が行なわれる。
館内にはいくつものコーナーがあり、ホタルイカの生態やどこが光るかなど学術的な知識を子供にも身につけてもらえるよう分かりやすく解説している。実際に使われる網を用いて漁の様子を再現した「発光ショー」は、5月下旬まで実施。また、海洋深層水の中で実際に富山湾のさまざまな深海生物を飼育し、それを見られるようにした展示もある。
さらに、シーズンの時期のみ、生きたホタルイカに触ることのできるコーナーもある。実際に手に取ってみると活きがよくてビックリ。手の上でも光ってくれて感激! ところで、実は過去に踊り食いのように食べてしまった人がいたらしく、「食べないでください」との旨が書かれているのには笑ってしまった……。
ほたるいかミュージアムに隣接して、おみやげ売り場や富山湾を一望できるレストラン、富山湾の深層水を利用したタラソテラピー体験施設などもあるので、ミュージアムに来た際はぜひそちらにも立ち寄ってみるとよいだろう。
今回の旅では富山駅の近くのホテルに宿泊した。筆者は30数年前、電車通学で富山駅から歩いて近くの高校に通っていたのだが、当時とはまったく様子が変わって見違えるほどオシャレな景色になっているのを見ると、少なからず衝撃を受ける思いだ。
繁華街からほど近くの大通りに面したところには、お濠と天守閣が印象的な富山城がある。その周辺もこんなだったっけ?と思うほどキレイに整備されていて驚いた。また、富山市内には路面電車が縦横無尽に通っているのも特徴の1つで、筆者が高校に通っていた当時と変わらぬレトロな車両と最新鋭のモダンな車両が同じ線路を交互に走ってくるのを目にするのは感慨深いものがあった。
旧友に会いに黒部市へ
せっかく富山に来たので、黒部市在住の旧友に会おうということに。北陸道を新潟方面に走り、黒部市に向かう。途中にある有磯海SA(サービスエリア、下り)のレストランで提供される「越中とやま 食の玉手箱“旅のしおりに想いを込めて”」というメニューは、レストランメニューコンテスト全国大会においてみごと全国158店舗のなかでグランプリに輝いたというから大したもの。やるじゃないか、富山! この日は午前中だったので残念ながらまだ準備中だったが、いずれあらためて食すことにしたい。
また、同SAでは富山の名産品が一堂にとりそろえられているので、お土産を調達するにももってこいだ。筆者のオススメは、鱒寿司と甘金丹(かんこんたん)。富山のお土産といえば真っ先に思い浮かぶ鱒寿司は、生ものながら翌日までもつので助かる。
もう1つの甘金丹は、富山というのは薬でも非常に有名で、覚えやすいようにとあえて薬のような名前が付けられたそうだが、実際にはカスタードクリームをやわらかなスポンジで挟んだ、いかにも女性ウケのよさそうなお菓子なので、ぜひお試しあれ。
北陸道を黒部ICで下りて富山湾の方に進むと、生地(いくじ)という海沿いの街に高校で同窓の岩瀬新吾氏が代表を務める「皇国晴酒造」がある。創業は1877年と長い歴史があり、敷地内に日本名水百選に選ばれた水が湧き出ていることでも有名だ。
久々に再会し、せっかくの機会なので酒造蔵を見学させてもらうことに。一般の方も見学可能で、希望者は公式サイトから問い合せいただきたい。地元の小学生が社会科見学に来ることもあるそうだ。
蔵元内に直売所もあって、この日はちょうど発売されたばかりの新商品の「幻の瀧 純米大吟醸」を紹介してもらった。「蔵内から湧出の日本名水百選の軽やかな水と富山県産米を用いて醸した、米の旨味を感じることのできる軽やかな日本酒です」と岩瀬代表。もちろんクルマの旅なので、のちほどゆっくりいただくことにしよう。
なお、皇国晴酒造では毎年恒例の蔵開きイベントを、新元号で初となる今年は5月25日に開催予定。入場無料で、時間は10時~15時(雨天決行)。秘蔵酒の販売や酒粕詰め放題などの催物もあるそうなので、ぜひ多くの人に足を運んでいただけると幸いに思う。
皇国晴酒造からほど近くには、道の駅ならぬ「魚の駅 生地(いくじ)」がある。2棟のうち「とれたて館」は、黒部漁港で獲れた新鮮な鮮魚や海産物加工品をはじめ、地域の土産物などを販売している。もう1棟の「できたて館」はレストランで、海鮮丼などのメニューのほか、干物を自身で焼いて食べることもできる。
全国的に有名な宇奈月温泉から五箇山へ
黒部市から南へ下ると、宇奈月温泉という全国的に有名な温泉街がある。クルマでアクセスするには、黒部ICから山側へしばらく走ればよく、途中、信号もほとんどない。
北陸新幹線の黒部宇奈月温泉駅からは直通の電車も出ており、少々時間はかかるが富山駅からのアクセスもわるくない。泉質が素晴らしいと評される温泉はもちろん、雄大な景色の中を散策できるハイキングコースもある。今回は時間に余裕がないのだが、せっかくなのでせめてと思い足湯「おもかげ」へ。
そこから一路、合掌造りで知られる五箇山を目指す。合掌造りというと南隣りの岐阜県の白川郷が有名だが、富山県の南西端にも同じように合掌造りの建物が居並ぶ地区がある。
1995年には白川郷とともに「白川郷・五箇山の合掌造り集落」として世界遺産に登録された。全国的には白川郷のほうがはるかに知名度は高いわけだが、富山にもこんなに立派な合掌造りがありますぞ!
菅沼集落と相倉(あいのくら)集落というやや距離の離れた2か所があって、今回は相倉集落に行ってみた。こんな風景が見られるのは世界でもこのあたりだけ。2015年3月にはアメリカのCNNによる「日本の最も美しい場所31選」の1つとして選ばれたこともお伝えしておこう。
今回はここまで。富山にはほかにもたくさんの観光スポットがあるので、ぜひまたの機会に紹介したい。読者の皆さまにも、ぜひ富山に足を運んでいただけると幸いに思う。