旅レポ

富山湾の神秘“ホタルイカ”は今が旬! モータージャーナリスト・岡本幸一郎が富山県のオススメ観光スポットを紹介

モータージャーナリスト・岡本幸一郎氏がオススメの富山県観光スポットを紹介。富山城址公園は富山市の中心部に位置し、園内には郷土博物館(天守閣内部)、佐藤記念美術館などがある

 筆者の生まれは富山県の滑川市だ。背後にそびえ立つ3000m級の立山連峰と、「天然の生簀(いけす)」と呼ばれるほど豊富に魚介類の獲れる富山湾に囲まれた富山県は、豊かな自然育まれた海山の幸に恵まれ、米どころとしても知られる。そして滑川市というのは富山市の東隣りに位置する。人口3万人あまりの小さな町は、まさしく今、富山湾の春の風物詩として知られる名産のホタルイカがシーズンを迎えている。

 さて、東京から富山にアクセスするにはいくつかの方法があるのだが、筆者の実家のある滑川はちょっと微妙な位置関係にある。飛行機だと富山きときと空港からバスで富山駅まで行き、鉄道に乗って滑川駅まで行くことになるのだが、乗り換えが少々面倒。開業して4年が経過した北陸新幹線だと、富山駅と黒部宇奈月温泉駅のちょうど中間あたりに位置するので、せっかく新幹線なら約2時間で富山に上陸できても、滑川まで行くには乗り換えが必要で少々時間を要してしまう。

 クルマだと約400kmの距離があるが、今では上信越自動車道や北陸自動車道も整備が進んで対面通行区間もほぼなくなり走りやすくなったので、やはりクルマで行くのがもっとも快適かなと思っている。

 そんななか、先日登場した日産「リーフe+」の航続距離が、なんとWLTCモードで458kmに達したとのことで、さっそく富山まで走ってみた。なお、その気になれば計算上は無充電でも行けたはずなのだが、今回は念のため途中で1回だけ充電した。

今が旬のホタルイカ

 ホタルイカは3月中旬からゴールデンウイーク過ぎまで定置網による漁が行なわれ、それをすぐ近くの滑川漁港から出航する船に乗って見学する海上観光や、実家のすぐ近くにある「ほたるいかミュージアム」でも、この時期だけ特別展示が行なわれる。

ほたるいかミュージアムのエントランスにて

 館内にはいくつものコーナーがあり、ホタルイカの生態やどこが光るかなど学術的な知識を子供にも身につけてもらえるよう分かりやすく解説している。実際に使われる網を用いて漁の様子を再現した「発光ショー」は、5月下旬まで実施。また、海洋深層水の中で実際に富山湾のさまざまな深海生物を飼育し、それを見られるようにした展示もある。

 さらに、シーズンの時期のみ、生きたホタルイカに触ることのできるコーナーもある。実際に手に取ってみると活きがよくてビックリ。手の上でも光ってくれて感激! ところで、実は過去に踊り食いのように食べてしまった人がいたらしく、「食べないでください」との旨が書かれているのには笑ってしまった……。

 ほたるいかミュージアムに隣接して、おみやげ売り場や富山湾を一望できるレストラン、富山湾の深層水を利用したタラソテラピー体験施設などもあるので、ミュージアムに来た際はぜひそちらにも立ち寄ってみるとよいだろう。

「富山湾の神秘」と称される特別天然記念物のホタルイカに触れることができる、ほたるいかミュージアムの入場料は通常大人800円、小人400円だが、この時期はクーポンで割引を実施中。TEL:076-476-9300
富山湾に大量のホタルイカが打ち上げられる、いわゆる「ホタルイカの身投げ」の様子。ホタルイカの身投げが見られる海上観光は2019年は3月21日~5月6日まで実施。料金は大人5000円、小人(小中学生)3000円。朝3時に出港予定で、要予約。TEL:076-475-0100(海上観光予約専用ダイヤル)

 今回の旅では富山駅の近くのホテルに宿泊した。筆者は30数年前、電車通学で富山駅から歩いて近くの高校に通っていたのだが、当時とはまったく様子が変わって見違えるほどオシャレな景色になっているのを見ると、少なからず衝撃を受ける思いだ。

 繁華街からほど近くの大通りに面したところには、お濠と天守閣が印象的な富山城がある。その周辺もこんなだったっけ?と思うほどキレイに整備されていて驚いた。また、富山市内には路面電車が縦横無尽に通っているのも特徴の1つで、筆者が高校に通っていた当時と変わらぬレトロな車両と最新鋭のモダンな車両が同じ線路を交互に走ってくるのを目にするのは感慨深いものがあった。

旧友に会いに黒部市へ

北陸道 有磯海SAにて。お土産のオススメは鱒寿司と甘金丹(かんこんたん)!

 せっかく富山に来たので、黒部市在住の旧友に会おうということに。北陸道を新潟方面に走り、黒部市に向かう。途中にある有磯海SA(サービスエリア、下り)のレストランで提供される「越中とやま 食の玉手箱“旅のしおりに想いを込めて”」というメニューは、レストランメニューコンテスト全国大会においてみごと全国158店舗のなかでグランプリに輝いたというから大したもの。やるじゃないか、富山! この日は午前中だったので残念ながらまだ準備中だったが、いずれあらためて食すことにしたい。

北陸道 有磯海SA(下り)は滑川市と黒部市の間に位置する魚津市にあり、一般道からもアクセスできる。2016年の高速道路のSA、PA(パーキングエリア)のレストランメニューコンテスト全国大会においてグランプリに輝いたメニューである「越中とやま 食の玉手箱“旅のしおりに想いを込めて”」は3200円で提供中

 また、同SAでは富山の名産品が一堂にとりそろえられているので、お土産を調達するにももってこいだ。筆者のオススメは、鱒寿司と甘金丹(かんこんたん)。富山のお土産といえば真っ先に思い浮かぶ鱒寿司は、生ものながら翌日までもつので助かる。

 もう1つの甘金丹は、富山というのは薬でも非常に有名で、覚えやすいようにとあえて薬のような名前が付けられたそうだが、実際にはカスタードクリームをやわらかなスポンジで挟んだ、いかにも女性ウケのよさそうなお菓子なので、ぜひお試しあれ。

 北陸道を黒部ICで下りて富山湾の方に進むと、生地(いくじ)という海沿いの街に高校で同窓の岩瀬新吾氏が代表を務める「皇国晴酒造」がある。創業は1877年と長い歴史があり、敷地内に日本名水百選に選ばれた水が湧き出ていることでも有名だ。

 久々に再会し、せっかくの機会なので酒造蔵を見学させてもらうことに。一般の方も見学可能で、希望者は公式サイトから問い合せいただきたい。地元の小学生が社会科見学に来ることもあるそうだ。

皇国晴酒造の敷地内では北アルプスの雪解け水が100年かけて湧き出ている
蔵見学では酒造の過程や醸造法の違いによる香りの違いなどを教えていただいた

 蔵元内に直売所もあって、この日はちょうど発売されたばかりの新商品の「幻の瀧 純米大吟醸」を紹介してもらった。「蔵内から湧出の日本名水百選の軽やかな水と富山県産米を用いて醸した、米の旨味を感じることのできる軽やかな日本酒です」と岩瀬代表。もちろんクルマの旅なので、のちほどゆっくりいただくことにしよう。

 なお、皇国晴酒造では毎年恒例の蔵開きイベントを、新元号で初となる今年は5月25日に開催予定。入場無料で、時間は10時~15時(雨天決行)。秘蔵酒の販売や酒粕詰め放題などの催物もあるそうなので、ぜひ多くの人に足を運んでいただけると幸いに思う。

「幻の瀧 純米大吟醸」は1800mLが5000円(税別)、720mLが2500円(税別)

 皇国晴酒造からほど近くには、道の駅ならぬ「魚の駅 生地(いくじ)」がある。2棟のうち「とれたて館」は、黒部漁港で獲れた新鮮な鮮魚や海産物加工品をはじめ、地域の土産物などを販売している。もう1棟の「できたて館」はレストランで、海鮮丼などのメニューのほか、干物を自身で焼いて食べることもできる。

魚の駅 生地
魚の駅 生地では黒部漁港で獲れた新鮮な鮮魚や海産物加工品を販売。取材当日は立派なベニズワイガニは1パイ800円から。ホンズワイ、フクラギ(ブリの小型魚)、マダイ、カンダイ、マトウダイ、ホウボウ、サゴシ、スズキ、ヒラマサ、イシダイ、チカメダイ、クロソイ、ケガニ、イシモチ、ヒラメ、ウスメバル、ウッカリカサゴなどが並んでいた

全国的に有名な宇奈月温泉から五箇山へ

 黒部市から南へ下ると、宇奈月温泉という全国的に有名な温泉街がある。クルマでアクセスするには、黒部ICから山側へしばらく走ればよく、途中、信号もほとんどない。

 北陸新幹線の黒部宇奈月温泉駅からは直通の電車も出ており、少々時間はかかるが富山駅からのアクセスもわるくない。泉質が素晴らしいと評される温泉はもちろん、雄大な景色の中を散策できるハイキングコースもある。今回は時間に余裕がないのだが、せっかくなのでせめてと思い足湯「おもかげ」へ。

宇奈月公園の一角にある足湯「おもかげ」は、宇奈月温泉開湯80周年を記念して2003年に作られた。約40℃で泉質は弱アルカリ性の単純温泉。あずまやにベンチが設けてあり、足元には黒部川の急流に洗われた自然石を使用

 そこから一路、合掌造りで知られる五箇山を目指す。合掌造りというと南隣りの岐阜県の白川郷が有名だが、富山県の南西端にも同じように合掌造りの建物が居並ぶ地区がある。

 1995年には白川郷とともに「白川郷・五箇山の合掌造り集落」として世界遺産に登録された。全国的には白川郷のほうがはるかに知名度は高いわけだが、富山にもこんなに立派な合掌造りがありますぞ!

3月中旬の訪問時にはまだ雪が残っていたが、今年は積雪が少なめだった模様。白川郷ともども、倶利伽羅峠の戦いで敗れた平家の落人がこの地に住んだのが起源と伝えられる。民宿や食事処、土産品店もあり、一部見学可能

 菅沼集落と相倉(あいのくら)集落というやや距離の離れた2か所があって、今回は相倉集落に行ってみた。こんな風景が見られるのは世界でもこのあたりだけ。2015年3月にはアメリカのCNNによる「日本の最も美しい場所31選」の1つとして選ばれたこともお伝えしておこう。

 今回はここまで。富山にはほかにもたくさんの観光スポットがあるので、ぜひまたの機会に紹介したい。読者の皆さまにも、ぜひ富山に足を運んでいただけると幸いに思う。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。