旅レポ

巨大ショッピングモールや絶景で話題の高層ビルがオープンするかたわら、昔ながらの街並みも残るバンコクの今

78階建てで近未来的なデザインの「キングパワー・マハナコーンビル」。ビル内には「ザ・リッツカールトン・レジデンス・バンコク」なども入居している。入場する際は厳しいセキュリティチェックがあるので大きな荷物は持たない方がよい

 タイ東北部のコーンケーン県やカラシン県をメインに取材したタイ国政府観光庁主催の取材ツアーも終わりに近付き、一路バンコクへ。

 今回は4日目、5日目で訪れたバンコクの今を紹介しよう。

マハナコーン・スカイウォークで310mの高さを空中散歩

 まず最初に訪れたのは、バンコクの中心部にあるBTSチョンノンシー駅の目の前にそびえる「キングパワー・マハナコーンビル」。2018年末に竣工したこちらのビルは314mとタイのなかで一番高いビルになり、所々がブロックを崩したようなデザインで完成前から話題になっていた場所だ。

 何と言っても目玉は、ビルの屋上フロアにある床面がガラス張りのバルコニー「マハナコーン・スカイウォーク」だ。幅12m、奥行き4mほどの空間の下にはバンコクの景色がいやでも目に飛び込んでくる。ただし、ガラスを傷付けないための配慮からバルコニーに出る際は専用の靴を覆うカバーを付け、スマホなどの落とすと危険なものは一時預けることになる。そのため自撮りはできないので、専用スペースから友人などに撮ってもらう必要がある。

 また、屋上フロアの中心部は階段状になっており、そこを上るともっとも高い314mの展望台になっているので、こちらもオススメだ。時期や時間帯で異なるが、入場料は1000バーツ前後(約3500円、1バーツ=約3.5円換算)となっている。

1階から展望フロアのある74階までは高速エレベーターで約50秒ほど。エレベーター内には壁一面に上っていくような映像が流れるのでこちらも注目。ガラス張りのフロアからはバンコクの街並みが一望できる。78階の屋上フロアには専用エレベーターで移動する
スカイウォークを撮影可能ゾーンから覗き込んだもの。夜の方が下がはっきりと見えないから怖くなくてよいという意見もある
スカイウォークに出るには専用のレーンを進み、スタッフのチェックを受ける必要がある
こちらは74階からスカイウォークを見たもの。高所恐怖症の人にはオススメしません(笑)
もっとも高い314mの展望台からの景色。ちなみに屋上フロアはガラスの壁に囲われているが屋外なので風も強い

新しくて豪華なタイ最大級の巨大ショッピングモール

 次に訪れたのは2018年11月にチャオプラヤー川沿いのクローンサーン地区にオープンしたばかりの複合施設「アイコンサイアム」。

 タイのなかでも最大級の複合施設であり、外装も内装もとにかく豪華絢爛。訪れたのが夜ということもあり、チャオプラヤー川沿いに建つきらめく姿はとにかく美しい。ショッピングモールに入居している店舗は有名ブランドがズラリと並び、レストランも名店が多く軒を連ねる。また、施設内には3000人規模のコンベンションホールや、世界の美術館や博物館と提携して特別展示を行なう博物館などもオープンする予定になっており、今後ますます人が集まるスポットになることは間違いない。夜の18時、20時、21時には建物前の広場でイルミネーションに彩られた踊る噴水のショーも開催されるので、こちらも要チェックだ。

 夕食はこちらの4階にある高級レストランの「バーン・カニタ・ヘリテージ」でいただいた。タイの宮廷料理をモチーフにしたコース料理を楽しむことができ、なかでも人気のトムヤムクンは絶品。夜景を見ながら食事のできるテラス席も用意されているので、なんとも優雅なディナーを堪能できる。

バンコクの新しい観光スポットとして大人気の「アイコンサイアム」
人気のスポットでもあり、バンコクのなかでも特に渋滞するエリアなので、BTSサパーンタクシン駅からほど近いサートーン船着き場から無料のシャトル船で渡るのがオススメ。10分間隔で運航されているので便利だ
なかはスペースに余裕を持った開放的な造りであり、エントランスの柱や天井には金箔が使われるなど豪華な内装になっている
高級タイ料理が楽しめる「バーン・カニタ・ヘリテージ」。アイコンサイアムの4階にある
見た目も非常に美しい前菜
塩味、酸味、辛味のバランスが秀逸なトムヤムクン
バンコクの夜を料理と一緒に楽しめるテラス席

初めてのバンコクでも安心して泊まれるホテル

 タイでの最終宿泊地となったのは、BTS、エアポートリンクのパヤタイ駅にほど近い「ザ・スコソン ホテル バンコク」で、500室を用意する大型ホテルだ。1990年にオープンしたこちらのホテルは2018年10月に改装工事が完了。客室は落ち着いた内装になっており、ゆっくりと過ごすのに最適だ。スワンナプーム国際空港までエアポートリンクで約25分の位置にあり、日本人スタッフもいることから、初めてバンコクに訪れる人には安心して泊まれるホテルになっている。

空港にもバンコク市街にもアクセス良好な場所にある「ザ・スコソン ホテル バンコク」
デラックスツインの内装。ほどよい広さに落ち着きのあるインテリアが特徴。清掃が隅々まで行き届いており、清潔で過ごしやすい

バンコクの庶民文化を知るためにナーンルーン地区を散策

 旅の最終日は古きよきバンコクを知るためにナーンルーン市場の周辺を訪れた。このナーンルーン市場はタイ王宮の北東に位置する旧市街地にあり歴史も古く、100年以上も続いていることから「100年市場」と呼ばれるタイの昔からあるマーケットの一つだ。急速に都市化が進んでいるバンコクであるが、このエリアは昔ながらの街並みや文化も残る、ディープな場所でもある。

ナーンルーン市場
100年以上も庶民の台所としてにぎわいを見せるナーンルーン市場。荷車を押す人やカゴにたくさんの買い物を乗せた自転車、スクーターなどがひっきりなしに通る
色とりどりの生鮮食品や総菜が揃っているのも市場の魅力。総菜屋は先祖代々続く店も多く、昼時は老舗の味を求めて近隣のオフィスワーカーもよく来るそうだ

 市場周辺で最初に見学したのは「ワット・スントーンタマターン」(通称:ワット・ケー・ナーンルーン)というお寺。こちらには1960年代にタイで大活躍した俳優ミット・チャイバンチャーが事故で亡くなった際に葬式が営まれたお寺として有名だ。当時、300本以上の映画に出演していたミット・チャイバンチャーの人気はすさまじく、葬式に訪れたファンは何万人にもおよんだそうだ。

大俳優であるミット・チャイバンチャーの葬儀が行なわれたワット・ケー・ナーンルーン

 次にタイの文化を知るために昔ながらの建屋で、タイ舞踊の体験と香料を使った石灰の飾りを製作するワークショップに参加した。

 筆者には踊るスキルが1ミリもないので、必然的に石灰の飾りの製作を体験した。バナナの葉の上に糸を乗せ、香料を混ぜた石灰を適量ずつ等間隔に絞り出していくもので根気が試される。糸に垂らした石灰が固まれば完成で、紐状なので首にかけたり手首に巻いたり、髪を結う飾りとしても使えるものになっている。なお、こちらのナーンルーン地区訪問はタイの旅行会社「HIVE STERS」が用意しているので、興味ある人はサイトをチェックしてもらいたい。

タイ舞踊を披露する女性の師範
花の香りを溶かした水を使って石灰の飾りを作る
小袋に詰めた材料を等間隔に絞り出してゆく

タイシルクのトップブランドが提供する創作タイ料理

 ナーンルーン市場で美味しそうなものが目の前にあるのをガマンし、ランチで訪れたのは「スピリット ジム トンプソン」。タイシルクで有名なブランドであるジム・トンプソンが経営するレストランだ。

 料理には東北地方にあるジム・トンプソン・ファームで生産された厳選素材をメインに使用しており、伝統あるタイ料理を1から分解し、再度組み立て直すというコンセプトで提供している。バンコクにはほか4店舗がジム・トンプソンの高級レストランとして運営されているが、そのなかでもこちらのお店は最近オープンしたこともあり、洒落た内装と料理スタイルから特に女性が一度は行ってみたいレストランとして挙げている。

 提供される料理はとにかく手の込んだものになっており、素材の味を大切にしながらテイストはタイ料理、でも見た目はまったく新しいものといった感じで、今までイメージしていたタイ料理とは一線を画す内容になっている。新しいタイ料理を体験したい方にオススメだ。

斬新なスタイルで提供されるサラダ「ヤムタワーイプラーヌアオーングロープ」。個々の素材が美しく並べられ、それを魚醤、唐辛子、ココナッツミルクの入ったドレッシングで和えて食べる
前菜からメイン、デザートまで、とにかく色合いが美しく、写真映えのする料理が提供されるのも女性に人気の理由の一つ
ファッションブランドが運営するだけあって内装も美しい。建物の周囲や庭園には多くの緑があり、バンコクの喧騒を忘れるオアシスになっている

 5日間にわたってタイの東北地方コーンケーンとカラシン、それにバンコクを巡った今回の旅はとにかく濃密な内容だった。ラオスの流れをくむ東北の文化は興味深いものであったし、激辛でもだえると聞いていたイサーン料理もほんの少しだけ垣間見ることができた。それに本場のソムタムは一度は体験してもらいたい美味しさだったことも付け加えておこう。

 LCCなどの増加によってアクセスがよくなり、観光資源も豊富なことから訪れる人はこれからも飛躍的に増えていくであろうイサーン地方。タイ観光の魅力的なエリアの一つとして知名度が上がることは間違いない。

野村シンヤ

IT系出版社で雑誌や書籍編集に携わった後、現在はフリーのライター・エディターとして活動中。PCやスマートフォン、デジタルカメラを中心に雑誌やWeb媒体での執筆や編集を行なっている。気ままにバイク旅をしたいなと思う今日この頃。