旅レポ

白馬の古民家リゾート「旅籠丸八」に泊まってみた。暮らすように滞在するバケーションレンタルでまったり旅

ホテルでも旅館でも貸し別荘でもない、新しいスタイルの宿泊施設が白馬に登場

 日本有数のスキーリゾート地として知られる長野県白馬村。北アルプス山麓に位置する「HAKUBA VALLEY」の中核として、国内外から多くのスキーヤーやスノーボーダーが訪れ、1998年開催の長野オリンピックの舞台でもありました。

 そんな白馬村にこの冬オープンした古民家リゾート「旅籠丸八」は、もともとあった旅館や民宿を“高級感のある和とモダン”をテーマに再生・利用した宿泊施設。高級感ある古民家っていったいどんな感じですの~?とワクワクしながら北陸新幹線で長野入り。今回は長野駅東口から出ている直行バスで白馬村へと向かいました。

JR長野駅に飾られている21年前の長野オリンピックのポスター
白馬・栂池高原方面へは東口バス乗り場から直行バスで。1時間に1本の割合で出ています
なんと外国人率90%以上!びっくりするほどインターナショナルなバスの中。私以外ほぼ全員スキー客

泊食分離をコンセプトとした「旅籠丸八」

レセプションは別の建物「庄屋丸八」で。ダイニングとしても使われるクラブハウス的なところ

「旅籠丸八」があるのは白馬岩岳スノーフィールドから1.5kmほど離れた、民宿やホテルが点々と立ち並ぶ岩岳新田というエリアです。立ち並ぶといっても周囲はとても静かでのどかな里山の雪景色。近くには道祖神や水車小屋などが点在しています。

ちょっと歩いたところには道祖神や水車小屋があったりしていい感じ

「旅籠丸八」のユニークなところは、チェックインなどをするレセプションと宿泊する建物が分かれていること。といっても道を挟んで斜め前。歩いて1分なのでまったく気にならない距離です。そのレセプションがあるのが白馬村の歴史的古民家「庄屋丸八」です。昔の豪商屋敷というだけあって大きくて立派な建物。内部は和モダンにリノベーションされていて、奥は「丸八ダイニング」という創作和食がいただける素敵な食事処になっています。夜はこちらで夕食を食べたのですが、そのときの様子はまたのちほど。

江戸時代末期に建てられたという「庄屋丸八」。改築・改装が何度か行なわれて今にいたります
庄屋丸八の内部。夜はここが外国人でいっぱいに
庄屋丸八の前の道路脇には赤いおべべのお地蔵さまが。地域の人が大切に守っているのが分かります

 旅籠丸八にはバトラーさんが9時から21時まで駐在しています。何かあれば部屋からバトラーデスクまでは直通の電話があるので安心。周辺のお店や温泉、ゲレンデのことなど何でも教えてもらえますよ。チェックインをすませたら、そのバトラーさんの案内でいよいよゲストルームへ。

今回泊まった旅籠丸八 壱番館

 壱番館と弐番館という2軒の日本家屋が宿泊施設となっていて、建物自体はお隣同士。どちらも旅館や民宿を見事にリノベーションして、内装はもちろん外装も生まれ変わっています。今回私は壱番館にある2LJDKスイートアパートメントに泊まらせてもらえることに。ちなみに「2LJDK」の「J」はJAPANの「J」。いわゆる和室のことだそう。

キッチンそして大きなダイニングテーブル。一人には贅沢過ぎる広さ!
大きなソファの奥は和室。この部屋は6名定員のときは、畳の上に布団が敷かれます

 定員6名(エキストラ対応で最大で7名)まで泊まれるスイートアパートメントの広さは140m 2 。1階にはリビング、キッチン、テレビのある和室、バスルーム&トイレ。階段を上がった2階にはベッドルームが2室あります。壱番館にはスイートタイプがもう1つあるのですが、この日はドキュメンタリー番組の撮影で訪れていたクルーさん経ち5~6人が連泊していたようです。そんなビジネス利用はもちろん、サークルや仲よしグループ、3世代ファミリーでの旅行などに需要がありそうです。

食器やカトラリーが揃っているキッチン
冷蔵庫の中のジュースや炭酸水、ビールは無料
全自動洗濯機付きなので長期滞在に便利
トイレは2つ

 前述したとおり、旅籠丸八はレセプション機能が別の建物にあって、1棟貸しの、いわゆる「バケーションレンタル」です。なので、部屋に入ってしまったら完全に“我が家”状態。スキー目的ではなかった私はチェックイン以降、つかの間の“何もしない時間”を過ごすことができました。

 そうそう、スイート2室にはスマートスピーカーのAmazon Echo(アマゾンエコー)があって、落ち着いた高級感のある古民家の中ではジャズやボサノバがぴったりでしたよ。

広いバスルーム
アメニティも一通り揃っています
シャワーブース
今回泊まった「ろ」の部屋のみというジャグジー
ワインを飲みながらジャグジーに入るというセレブリティなアイテムも
階段を上がると……
マスターベッドルームとゲストベッドルームの2室
それぞれセミダブルベッドが2つ
入り口のドアに古いスキー板が飾られていたりと、インテリアも興味深いのです

弐番館にはタイプの違うゲストルーム6室

弐番館は生活道路を挟んだお隣の建物

 スイートアパートメントが2つあった壱番館ですが、弐番館は、1JKプレミアムアパートメント2室と、1JKアパートメント2室、1DKアパートメント2室の合計6室。1階に2部屋、2階に4部屋という構成です。どの部屋にもミニキッチン、冷蔵庫、テレビ、洗濯機、トイレとシャワーブースが備わっています。

旅籠丸八で私が一番気に入った場所がこの弐番館にあるシェアキッチン。利用は15時~21時で、入り口の黒板に部屋No.を記入すれば貸し切りに

 壱番館にはなくて弐番館にあるものがシェアキッチン。前身の旅館で使われていた厨房をこれまたモダンに改装してあって、まるでキッチンスタジオのようにおしゃれ! プロ仕様の調理道具が揃っているので、好きな食材をスーパーで買ってきて、ワインでも飲みながらみんなでワイワイ料理したら楽しいのでは?

 このシェアキッチンは時間ごとの予約制。グループ単位で貸し切れるのが魅力です。スーパーは周辺に3軒ほどあって、近いところではクルマで5分ほどの距離になります。

弐番館の1階にあるワインラウンジ。ワインセラーに入っているワインはなんと無料!
弐番館のお部屋はシャワーブースのみなので、部屋単位で貸し切れるお風呂が1階に2つあります
旅籠丸八は客室の名前に「いろはにほへとち」が付いています

 全6室ある弐番館のゲストルームはインテリアも作りもそれぞれ個性的。例えば定員2名の「ち」の部屋は、オレンジや黄色のクッションやカーテンでほかとは違うポップな雰囲気になっていました。もともとの建物の骨格を利用しているので、日本家屋特有の梁や柱などはそのまま残っています。家具やカーテン、ファブリック、壁紙などで古民家がこんなにも変わるんだ~!と感心してしまいました。

それぞれ雰囲気が違っていて楽しい!全部の部屋に泊まりたくなります
ベッドルームの感じも部屋ごとにさまざま。バスローブとパジャマは備わっています
洗濯機、キッチン、バスルーム

夕食は庄屋丸八内にある「丸八ダイニング」がお勧め

夜は雪景色のなか、幻想的な雰囲気になる庄屋丸八

「泊食分離」をコンセプトにしている旅籠丸八なので、食事はプラン料金に含まれていません。お部屋にあるキッチンで作ってもいいし、近隣の飲食店に行くのも自由。私はもちろん庄屋丸八の中にある「丸八ダイニング」へ。白い息を吐きながら雪道をザクザク歩く非日常体験も白馬ならでは。雪は周辺の音を吸収してくれるので外は本当に静かでした。屋根から落ちる雪で正面玄関が塞がれてしまうので、冬限定で使われていたという小さな玄関から店内に入ります。これもまた楽しい体験!

それにしても庄屋丸八、立派な建物ですわ~
冬専用の小さな入り口。外国人はきっと大喜び
名物は炉端焼き。新鮮食材が並びます
巻き物がメニューになっていてユニーク! お通しに美味しい茶碗蒸しが出ました

「丸八ダイニング」はおしゃれな居酒屋感覚で利用できるのですが、冬期シーズンはスキー客に大人気のようで、席の予約は必須です。この日も外国人グループなどで大にぎわいで「ここは外国!?」と錯覚するほどでした。白馬は特にオーストラリア人やニュージーランド人に人気があるのだそう。お料理は単品オーダーでもオーケーですが、旅籠丸八の宿泊者専用にコース料理も用意されています(前日までに要予約)。

丸八ダイニング名物「白馬雲海お造り盛り合わせ」。大きな器で美しく盛られて出てくるのであちこちでカメラのシャッター音が
「信州福味鶏のもも一本串」は大きいので半身にしてもらいました
豚バラがたっぷり乗った野菜せいろ蒸しはバーニャソースとポン酢ソースお好みで
デザートにバニラアイス

 インターナショナルな丸八ダイニングでの夕食を堪能したら、お部屋に戻って再びまったりタイム。コーヒーを入れて読書をしたり、ときどきアレクサと話したりと、静かでプライベートな時間を堪能できました。

夜の壱番館。照明の当て方が素敵ですね
音楽とともに静かな古民家リゾートの夜はふけていったのでした

 予約時に有無を選択できる旅籠丸八の朝食(料金別途)は、ホーロー容器に入れられて冷蔵庫の中にセットされているというスタイルになっています。温めたいと思ったらガスやレンジで温めて。誰にも会わずに自分の好きな時間に好きな格好で食べられるので気楽でした。

おにぎり、味噌汁、お漬物、卵焼きなど。朝はこれで十分

 雪景色という非日常のなかで、そこに暮らすような滞在ができた旅籠丸八。翌朝カメラを持って周辺を散歩すると、軽トラで配達に行くおじさん、玄関の雪かきをするお母さんなど、昔から変わらないであろう岩岳新田の人たちの生活がすぐそこにありました。山奥過ぎず、かといってにぎやか過ぎない、ほどほどな里山エリアというのも魅力の一つでしょう。

朝食後に周辺を散歩してみました。集落の後ろに見えるのは岩岳スノーフィールド

 そんな「旅籠丸八」、グループやファミリーで連泊したらきっと楽しい時間が過ごせるはずです。春休みやゴールデンウィークの計画がまだという人は、グリーンシーズンがスタートする白馬での休日を提案してみてはいかがですか?

このソファがお気に入り

ゆきぴゅー

長野生まれの長野育ち。2001年に上京し、デジカメライター兼カメラマンのお弟子さんとして怒涛の日々を送るかたわら、絵日記でポンチ絵を描き始める。独立後はイラストレーターとライターを足して2で割った“イラストライター”として、雑誌やWeb連載のほか、企業広告などのイメージキャラクター制作なども手がける。