旅レポ
2019年から“見るウルル”に。自然や文化を吸収しよう
2019年3月6日 00:00
1987年にユネスコ世界遺産に登録され、毎年多くの観光客が訪れるウルルーカタ・ジュタ国立公園。中央オーストラリアのノーザンテリトリーに位置しており、ブリスベンからは2018年8月に最寄りのエアーズロック空港(コネラン空港)に直行便の運航が始まり、ケアンズやシドニー同様にアクセスがしやすくなった。
真っ赤な赤土が地表を覆い、オーストラリアならではのアウトバックな景色が楽しめ、オーストラリア先住民であるアボリジニ・アナング族の文化を知ることができる。彼らの聖地であるウルル=カタ・ジュタは多くの人々を魅了し、人生一度は訪れたい場所として絶大な人気を誇る。
ウルルーカタ・ジュタ国立公園内は撮影不可な場所も多く、自ら足を運ばないと見ることのできないアートやエリアが目白押しなのだ。
3時起きでサンライズ鑑賞へ出発
地球の荘厳さを砂漠のど真ん中で体感
今回訪れたウルルーカタ・ジュタ国立公園は敷地面積約1326km 2 。ウルルは地上約348m、周囲約9.4kmの世界最大級の一枚岩だ。現在の形、高さになったのは約1億年前とされており、成分は主に砂岩。6~5万年前から大陸で生活してきたとされるアボリジニが守ってきた場所で、1872年に冒険家ウイリアム・ゴスにより発見された。
以降、長らく迫害や差別などを受けてきた先住民の権利が認められ、国立公園の土地が返還されたのが1985年10月26日。現在はピジャンジャラ評議会より国立公園としてオーストラリア政府が99年間の賃貸として借り受ける形で観光客に公開されている。1987年にユネスコ世界自然遺産として登録、1994年にはウルルの周囲に残るアナング族の文化が認められ世界文化遺産に。世界でも少ない複合遺産となった。
なお、2019年10月26日以降は観光客によるウルル登山は禁止され、“見るウルル”になる。
入場にはチケット(大人25ドル、約2262円、1オーストラリアドル=約90円換算/子供12.5ドル、約1131円)の購入が必要。事前にオンラインでの購入が便利だ。連続3日間有効なので、ゆったりパークを巡ることができる。ウルルーカタ・ジュタ国立公園のエントランスで提示し中へと入ろう。
今回参加したのはAAT Kingsが催行する「ウルル サンライズふもとめぐりツアー」(大人199ドル、約1万8008円/子供100ドル、約9049円)。日の出の75分前に出発し、サンライズを眺め、その後ウルルの周囲を巡りながら文化を学ぶツアーだ。
滞在していた「エアーズロックリゾート」の「セイルズ・イン・ザ・デザートホテル」のエントランスより朝4時50分発の大型バスに乗り出発。前日に予約をしていた「ボックスブレックファースト」(30.5ドル、約2760円)を持参し準備も万全だ。水にオレンジと水分補給に十分な飲み物とビスケットやシリアル&ミルク、シリアルバーにりんごなど保存がきくものが入っていた。
バスでサンライズ会場へ向かっていると、真っ暗だった周囲がだんだん明るくなってくる。サンライズ会場の「タリングルニャクンジャク」は「砂丘からの眺望」という名のついた展望台で2009年にオープンしたばかり。安全のために作られた場所で、ウルルの東側を日が照らす姿を眺めることができる。
この日の日の出予想時刻は5時54分。5時30分ごろに会場に到着しスタンバイ。明け方は気温がかなり下がるため防寒着も忘れずに。温かいコーヒー、紅茶にホットチョコレート、そしてチョコチップクッキーのサービスがあり、頬張っているとまもなく日の出の時間に。朝焼けの中、展望台までは歩いて5~7分ほどなのでサクッと移動し日の出を楽しむことにした。
ウルルを見ながら、道をゆっくりと進むと展望台は日の出鑑賞のために集まった多くの利用者で賑わっていた。一番上のエリアは人気だが、1段低い場所やほかの場所でもよく見えるので自分のお気に入りを探してみよう。
太陽が昇り始めると空の色が変化し始めて、幻想的な姿が浮かび上がる。それまで騒がしかった会場も皆が一気に日の出に集中し、静かな空間に。サンライズ会場でぜひ撮影しておきたいのが、遠くに見えるカタ・ジュタとのショット。ウルルとカタ・ジュタが1枚の写真に収められる場所なので、ぜひ撮影を。
サンライズのあとはウルルでの「クニヤウォーク」
ヘビ“クニヤ”の物語が伝わる場所へ
サンライズ鑑賞のあとは、そのまま「タリングルニャクンジャク」からバスでウルルへと移動し「クニヤウォーク」に参加。男女混合の聖地「タピチュ」や先住民の守り神のヘビが卵を産んだ「クニヤピティ」などを車窓から見学した。途中、地層が隆起し90度横になったエリアが見えたが、ここが一番ウルルでも古い地層だとのこと。また、海であったなごりで周辺の井戸は塩気があるため脱塩処理を施していることなど豆知識もガイドの横井久人氏に教えてもらえた。
バスが散策路付近に到着し下車。「Uluru Walking Tracks」をチェックし、約1kmで往復約45分のグレード1の「クニヤウォーク」へと向かった。
この場所には「クニヤ(ニシキヘビ)」と「リル(毒ヘビ)」の伝説があり、甥をリルに殺されたクニヤが復讐をした場所と言われている。最初に到着した場所をよく見ると、ニシキヘビがトグロを巻き周囲を監視、水場を守る姿のような岩が見えるだろう。この岩の下の洞窟内では、先住民による古代のロックアートの鑑賞もでき、実はここが一番アートの数が多い場所とのことだ。ぜひ自分の目でアートを確認してほしい。
また、この物語は「Tjukurpa」(ジュクルパ)と呼ばれるアナング族の社会・宗教・法律などの生きるうえでのすべての基本にも関係しており、日常生活の中の行動規範が示されているという。子供を守ることや大切な水場を守ること。さらに狩りで男性が不在のときは攻撃されたら女性も戦うことなどを意味するとも言われている。
奥へと進むと「ムティジュルの水場」が水をたたえる姿が見えてくる。ムティジュル=ひざまずくの意味。ウルルに降った30%の水が集まる場所と言われており、貴重な水飲み場のため動物たちも集まり絶好の狩り場であったとのこと。泉の左側を見るとハートシェイプの穴を発見。ここは、先ほどのクニヤが甥を殺されそうになった怒りを鎮めるためにダンスを踊った場所と伝わっている。
「クニヤウォーク」のあとは、「カルチャーセンター」でアナング族に関する文化を学ぶことに。「Tjukurpa(ジュクルパ)」や聖地、なぜ一部のみ公開されているのかなどを学ぶことができる。先ほどの「クニヤ」と「リル」の物語についてさらに知ることも。
聖地同様、撮影禁止エリアのためじっくり自分の目で文化を体験してみよう。もちろん日本語でも併記されている。なお、軽食を購入できるストアや伝統的なクラフトやアートを購入するショップ、レストルームも併設。ツアーで訪れると約40分と短いが必ず訪れるべき場所だと言える。
ウルルのふもとを約2km
「マラウォーク」で自然と生活を知る
「クニヤウォーク」と「カルチャーセンター」見学のあとは「マラウォーク」(「マラ」とは、ウサギワラビーのことでマラ族の祖先と考えらえていた動物)に参加。アボリジニ・アナング族の実際の生活とウルル周辺の物語にまつわるエリアを巡った。各ポイントにはボードが立てられ詳細な説明も書いてあるので、見逃さずに読むことをお勧めしたい。
まず訪れたのは「Kulpi Nyiinkaku」。大きな洞窟内にはイチジクの葉やブーメラン、水場などのアートが描かれており、子供たちのための学校のような場所だったと言われている。岩肌にも注目を。砂岩でできている、ウルルならではのかさぶたのような岩肌が近くで観察できる貴重な場所となっているのだ。こちらのアートもぜひ自分の目で見てほしい。
続いては、悪魔・クルパにより岩にされてしまった長老たちがいる洞窟へ。大きく侵食されており、会議室のような印象だ。そのまま進み観光で訪れた人も撮影禁止の「Mala Puta」へ。こちらは女性の聖地とされており、妊娠・出産に関係していたと言われているが、実際のところはアナング族のみが知っているとのことだった。撮影ができない場所については看板がきちんと立っているのと、ガイドが告知してくれるので安心だ。
台所として使われていた「Kulpi Minymaku」では、実際のウルルの岩肌の色をチェック。現在は酸化して赤いが黒みがかった色が本当の色なのだ。岩肌にも触れることができる。
木々のあいだを歩きつつ、ところどころで見られる黒い線の秘密もガイドが教えてくれた。雨が降ると岩からこぼれ出た水が滝のように落ちてくるのだが、その水が流れバクテリアが発生して死んだ跡とのこと。
ウルルで滝を見られるのは本当に稀であり、滝が発生しても雨が上がると30分後には消えてしまう。見られたらとてもラッキーだとか。
そして一番奥の「Kantju Gorge」にも黒い跡がくっきり。この滝は「カンジュ=静かな」という意味で、先ほどの「ムティジュルの水場」同様の水場となっており、狩りで動物の近くために静かにしていたのが、やがて静かに入るようにしましょうという教えだけ残ったと考えられている。
すべてのプログラムが完了し、時刻を確認すると10時30分。バスに戻るとレモングラスの香りがする爽やかなおしぼりと冷たいお茶が手渡されほっと一息。11時にはホテルに到着し、一度休憩に。
オーストラリアの伝統食材を学ぶ
無料アクティビティなど多数用意
朝イチのツアーから戻り部屋でひと休みしたいところだが、無料のアクティビティが気になり足を運んでみた。実は滞在した「エアーズロックリゾート」では伝統文化を宿泊者に紹介する無料のアクティビティを豊富に揃えているのだ。
前日の「ア・ナイト・アット・フィールド・オブ・ライト」で提供されたブッシュ・タッカー(オーストラリアの伝統食材)をもっと知るために「ブッシュフード体験」に参加してみた。
プログラムでは、南オーストラリアの先住民の血を引くスタッフのレオン氏を中心に、リゾート内で見かけるブッシュフードについてを解説。会場は「ウィンジリギャラリー&博物館」にて約45分間行なわれる。解説書とともに実際の葉を観察や、ラストにはワトルシードを使った料理教室も。できあがったクッキーは香ばしくサクサクと食感も楽しい。現代的にアレンジされた伝統食材が味わえるのもプログラムの強みだ。
レオンさんに話を聞いたところ、「ワトルシードはとても伝統的な食べ物の一つです。パンやクッキーの材料として今でもよく使います。地域に根付いた食材ですので、自分たちの伝統を伝えるためにアクティビティで紹介できるのは意味のあること。とても美味しく、その美味しさがさらに文化への興味を掻き立ててくれると考えています。今回紹介した食材のことをさらに知りたい場合は、ガイド付きの無料のガーデンウォークへぜひ参加してください。リゾート内に生える伝統的な植物を一緒に探してみましょう!」と笑顔でアドバイスしてくれた。
さらに「ウィンジリギャラリー&博物館」では、アナング族が生み出したアートの数々を購入することが可能。ドットで美しく描かれた作品からガムナッツを使ったアクセサリー類までたっぷり。どの作品もカラフルでパワーあふれているので、お土産や自分用に手に入れてみては。
もちろん周辺の生態系を学ぶ展示も。ツアーで出会った生物についての復習や予習にもってこいだ。
なお、ホテルまでの道すがらリゾート内唯一のスーパーマーケットへ。宿泊者とともにスタッフ向けでもあるため、価格も良心的。大抵のものは揃っている。また「リゾートショッピングセンター」にはカフェから洋服屋、お土産屋などが集まっているのでふらりと立ち寄るのに最適だ。
36の岩から成るカタ・ジュタへ
岩場を進み、初めての景色と対面
午後は再びAAT Kingsの「カタ・ジュタとウルル サンセットツアー+サザンスカイ・バーベキューディナー」(大人358ドル、約3万2395円/子供180ドル、約1万6288円)に参加。出発は日没の3時間半前ということで、15時20分ごろにホテルからバスに乗りカタ・ジュタへと向かった。「エアーズロックリゾート」からカタ・ジュタは約55km(約50分)。どんどん近付いてくる奇岩群を眺めていると、あっという間に到着するほどの近さだ。
最初に「カタ・ジュタ砂丘展望台」で全体像をチェック。駐車場から1本道を進み、しばらく坂を登り約10分ほど歩いて展望台に到着。遠くにウルルも見える。ランドスケープを解説するボードもあるので、写真撮影後は生える木々や見える場所に関して知識を深めてみてもいいはず。
カタ・ジュタは、ウルル同様にウルルーカタ・ジュタ国立公園内に位置する巨岩群だ。カタ・ジュタとは「たくさんの頭」の意味を持つ。高さ546mでウルルよりも高く、礫岩と呼ばれる大きな岩や石が合わさってできているため、ゴツゴツとした岩肌が特徴だ。現在は36個の巨岩群だが、もともとは1つの岩。風化で中央が削られ今の姿になった。ちなみに、ウルルは砂岩のため、綺麗に周囲から削れ1枚岩のままを保っている。
カタ・ジュタは1872年に冒険家アーネスト・ギリスにより発見され、現在もアナング族の男性の聖地。そのため公開されているのは全体の5分の1ほどで謎の多いエリアだ。今回は「ウォルパ渓谷散策路」に挑戦。グレード3の約2.6kmで約1時間の散策となる。
序盤は周囲に木や草が茂っていたが、数分で崩れた礫岩が周囲を囲み出し地球とは思えないほどの景色に一変する。足元もゴツゴツしており、歩きづらいため気持ちを常に張る必要がある。
15分ほど進み2つの壁に挟まれたエリアで一旦休憩。ガイドの解説によると、壁に開いた大きな穴は岩が崩れた跡とのこと。穴の内部も落ちた岩も赤く酸化しているので、ずいぶん前に落下したものだと説明してくれた。
しばらくすると、先日の雨によりオアシスが目の前に。フォトスポットのためここでの撮影を忘れずに!とのこと。なお、水の中を観察するとおたまじゃくしの姿が。水を感じると孵化し、干上がる前に足が生えるまで成長するそうだ。
足元に気を付けながら再び来た道を戻り、続いては「カタ・ジュタ サンセット会場」を見学。ここでは、ガイドマップなどでよく見ることのできるカタ・ジュタの景色が楽しめる。全体像、内部、美しく写真が撮れるスポットとカタ・ジュタを色々な角度から見ることができた。
サンセットを特等席でドリンク片手に逆さウルルに挑戦!?
「カタ・ジュタとウルル サンセットツアー+サザンスカイ・バーベキューディナー」の後半はウルルでのサンセット鑑賞。この日は18時5分がサンセットだったため30分ほど前から「ウルル サンセット会場」で待機。サンセットが始まるまではツアーに含まれているスパークリングワインとカナッペなどのおつまみを頬張りながらウルルを眺めることに。ドリンクの種類も豊富で、おつまみ類もカナッペに生ハム、チーズにオリーブ、フルーツなど盛りだくさん。トルティーヤにアボカドディップをつけたりと食に集中しているとサンセットタイムに。
サンセットの時間はあっという間。約10分ほどですっかりと日が暮れてしまう。その間にシャッターを切ったり、じっと見つめたりと思い思いに表情を変化させるウルルを堪能しよう。この日は晴れてはいたが、太陽に雲がかかってしまい燃えるような赤のウルルは見えなかったが、空のグラデーションとほんのり赤く染まる姿はしっかりと目に焼き付けることができた。
サンセットのあとは「サザンスカイ・バーベキューディナー」会場へ移動。サンセット会場はバスで3分ほどの目と鼻の先で、午前中に訪れた「カルチャーセンター」の裏手となる。ここではオーストラリア産ワインとともに、オージービーフのステーキ、羊のソーセージ、チキン、海老のにんにく炒め、各種サラダなどを頬張ることができる。デザートにはオーストラリアならではのケーキ「ラミントン」。ふわふわの生地をチョコレートソースとココナッツファインで包んでおり、ストロベリージャムと生クリームもどっさり。食後でもその軽い口当たりでペロリと食べきれた。
この日は若干空に雲がかかっていたが、星空鑑賞も食後に開催。光り輝くカノープスやウルルと同じ酸化鉄の大地を持つ火星に思いを馳せたりと、寒空の下ガイドの解説で夜空を堪能。すべてのプログラムが終了し、ホテルの自室に到着したのは21時過ぎだった。
翌日は、ウルルからブリスベン経由でゴールドコーストへ移動。コネラン空港9時20分発でブリスベン空港12時45分着のジェットスターJQ668便、エアバス A320-200型機の直行便に乗って、塩湖や赤土、そしてウルルーカタ・ジュタ国立公園を眺めながら、ウルルをあとにした。