旅レポ
今しか見られないハワイ島のキラウエア火山を遊覧飛行で
2018年7月20日 16:41
報道などで取り上げられているとおり、2018年5月にハワイ島南部のキラウエア火山で爆発的な噴火が発生し、新たな火口周辺では住宅地に溶岩が流れ込むなど少なくない被害が出ている。現在(2018年7月)もその活動は続いており、噴火口や静かに流れる溶岩に近づいてその迫力を体験するような、以前からあったアクティビティは中断されている状況だ。
ただ、噴火が続いているといっても、被害地域からハワイ島北西部の玄関口であるエリソン・オニヅカ・コナ国際空港やカイルア・コナまでは100km以上、ハワイ島最大の街であるヒロも30km以上離れており、ほとんどの地域では噴火の影響はまったくない。まれに街の上空に噴煙によるものと思われる霞がうっすらかかる程度だ。
ところで、キラウエア火山周辺の観光ができなくなったとはいえ、完全に近づけなくなったわけではない。ハワイ島を1周する遊覧飛行のアクティビティに参加すれば、今まさに活動している噴火口の様子を上空から眺めることが可能だ。大自然の力強さはもちろんのこと、ハワイ島が歴史的に火山とともに生きてきたのだ、ということを肌で実感できるに違いない。
エリアごとにめまぐるしく変わるハワイ島の風景
ハワイ島の遊覧飛行プログラムはいくつかあるが、今回はコナ国際空港発の「Big Island Air」を利用。単発機でハワイ島を時計回りに周遊する。ただし、通常は1周するところ、このときは噴煙の影響があるため南岸沿いを避け、南東にあるキラウエア火山の新しい噴火口を見たあと、島の中央をショートカットして戻るようなルートをとった。ほかにはヘリコプターによる遊覧もあるが、少し窮屈とのこと。比較的スペースに余裕があり、窓ガラスも十分に大きい飛行機はお勧めだ。
離陸すると眼下に見えるのは、古い溶岩流に埋め尽くされた黒々とした地表。地上にいたときも感じるが、内陸から海へ向かって帯状に広がる黒い痕跡を見ると、改めてハワイ島が火山島であることを思い知る。しかしいったん海岸に視線を移せば、そこは白い砂浜やエメラルドグリーンの海。地表の黒と海や空の青というコントラストに息を飲む。
離陸してから北方向にしばらく巡航すると、次第に地表に緑が増えてくる。最初は低木をちらほら目にするくらいだったのが、徐々に小さな森がまばらに見え始め、ポロル渓谷やワイピオ渓谷の周辺ではすっかりジャングルの様相を呈する。ハワイ島北部は近年噴火の影響をそれほど受けていないせいか、カイルア・コナ付近の荒涼とした風景とは打って変わって、緑豊かな自然あふれるエリアになっているようだ。
ハワイ島の東岸を南下していくと見えてくるのが、ハワイ島最大の都市ヒロ。ここまで来てもキラウエア火山の新火口は30kmほど先で、普段と変わらない生活が営まれている雰囲気が感じられる。そして、さらに南下し、ついにキラウエア火山の新しい噴火口がある一帯へ。初めは黒々とした地表、次にあちこちからくすぶるような白い煙が立ち上っている風景が視界に入ってくる。
飛行機は新しく噴出した溶岩地帯の上をまっすぐ飛んで行く。少しして遠くに赤い炎。まさに今活動している、新しい噴火口から湧き上がる溶岩だ。近づくと、ぐらぐらと煮えたぎるように溶岩が湧き出ているのが見え、そこから溶岩流が太い河のようにゆっくり流れている。ただ、上空から眺めてその動きがしっかり分かるほどなので、おそらく実際にはかなりの速度で流れているだろう。
噴火口付近を何度か旋回。ハワイ島のごく一部の地域とはいえ、生きているような溶岩に覆われた様子に大自然の猛威をひしひしと感じながら、ハワイ島の中央部を通って出発地点のコナ空港へ帰還した。2時間弱のフライトは、汗ばむくらいに暑く、揺れもあって快適とは言いがたい。けれど、地域によって風景がめまぐるしく変わるハワイ島の壮大さや多様さを目に焼き付けることができた。