旅レポ

今しか見られないハワイ島のキラウエア火山を遊覧飛行で

キラウエア火山の噴火

 報道などで取り上げられているとおり、2018年5月にハワイ島南部のキラウエア火山で爆発的な噴火が発生し、新たな火口周辺では住宅地に溶岩が流れ込むなど少なくない被害が出ている。現在(2018年7月)もその活動は続いており、噴火口や静かに流れる溶岩に近づいてその迫力を体験するような、以前からあったアクティビティは中断されている状況だ。

 ただ、噴火が続いているといっても、被害地域からハワイ島北西部の玄関口であるエリソン・オニヅカ・コナ国際空港やカイルア・コナまでは100km以上、ハワイ島最大の街であるヒロも30km以上離れており、ほとんどの地域では噴火の影響はまったくない。まれに街の上空に噴煙によるものと思われる霞がうっすらかかる程度だ。

 ところで、キラウエア火山周辺の観光ができなくなったとはいえ、完全に近づけなくなったわけではない。ハワイ島を1周する遊覧飛行のアクティビティに参加すれば、今まさに活動している噴火口の様子を上空から眺めることが可能だ。大自然の力強さはもちろんのこと、ハワイ島が歴史的に火山とともに生きてきたのだ、ということを肌で実感できるに違いない。

エリアごとにめまぐるしく変わるハワイ島の風景

 ハワイ島の遊覧飛行プログラムはいくつかあるが、今回はコナ国際空港発の「Big Island Air」を利用。単発機でハワイ島を時計回りに周遊する。ただし、通常は1周するところ、このときは噴煙の影響があるため南岸沿いを避け、南東にあるキラウエア火山の新しい噴火口を見たあと、島の中央をショートカットして戻るようなルートをとった。ほかにはヘリコプターによる遊覧もあるが、少し窮屈とのこと。比較的スペースに余裕があり、窓ガラスも十分に大きい飛行機はお勧めだ。

利用したのはコナ国際空港発の「Big Island Air」。Web予約で1人279ドル(約3万969円、1ドル=111円換算)
パイロットがガイドも兼ねる
遊覧飛行に使われたのは10人乗りの単発機。通常はハワイ島を1周するが、現在は噴煙の影響を考慮して南岸沿いを避けるルートをとる。コナ空港から時計回りで南東まで行き、キラウエア火山の新しい噴火口から島中央部を通って戻る

 離陸すると眼下に見えるのは、古い溶岩流に埋め尽くされた黒々とした地表。地上にいたときも感じるが、内陸から海へ向かって帯状に広がる黒い痕跡を見ると、改めてハワイ島が火山島であることを思い知る。しかしいったん海岸に視線を移せば、そこは白い砂浜やエメラルドグリーンの海。地表の黒と海や空の青というコントラストに息を飲む。

離陸直後。地表が100年以上前の噴火で流れた溶岩で埋めつくされている。ハワイ島が火山によってできた島であることを改めて思い知る瞬間だ
溶岩が当時どのように流れたのかも想像できる
このゴルフコースもかつては溶岩が広がる土地だったのだろう
エメラルドブルーの海と地表の無機質な黒との対比が美しい
Hilton Waikoloa Villageの巨大な3つの建物が見える

 離陸してから北方向にしばらく巡航すると、次第に地表に緑が増えてくる。最初は低木をちらほら目にするくらいだったのが、徐々に小さな森がまばらに見え始め、ポロル渓谷やワイピオ渓谷の周辺ではすっかりジャングルの様相を呈する。ハワイ島北部は近年噴火の影響をそれほど受けていないせいか、カイルア・コナ付近の荒涼とした風景とは打って変わって、緑豊かな自然あふれるエリアになっているようだ。

北に行くほど近年の噴火の影響を受けていない地域が多いためか、次第に緑が増えはじめる
ハワイ島の北端にあるポロル渓谷とその周辺。切り取られたような断崖絶壁は地上からも見ることができる
ポロル渓谷とその東にあるワイピオ渓谷との間。崖から何本もの滝が海に注いでいる
台地の上で雨が降っているおかげで水量が増え、滝がよりはっきりと見えたようだ
ワイピオ渓谷
渓谷の奥にも滝が見える
北東部周辺も緑豊かな地域になっている

 ハワイ島の東岸を南下していくと見えてくるのが、ハワイ島最大の都市ヒロ。ここまで来てもキラウエア火山の新火口は30kmほど先で、普段と変わらない生活が営まれている雰囲気が感じられる。そして、さらに南下し、ついにキラウエア火山の新しい噴火口がある一帯へ。初めは黒々とした地表、次にあちこちからくすぶるような白い煙が立ち上っている風景が視界に入ってくる。

ハワイ島最大の都市ヒロ
ヒロ空港もキラウエア火山の新火口から30km以上離れており、まったく影響はない
キラウエア火山が活動する南東部

 飛行機は新しく噴出した溶岩地帯の上をまっすぐ飛んで行く。少しして遠くに赤い炎。まさに今活動している、新しい噴火口から湧き上がる溶岩だ。近づくと、ぐらぐらと煮えたぎるように溶岩が湧き出ているのが見え、そこから溶岩流が太い河のようにゆっくり流れている。ただ、上空から眺めてその動きがしっかり分かるほどなので、おそらく実際にはかなりの速度で流れているだろう。

新しい噴火口を捉えた。噴煙が上空まで達している
勢いよく噴出し、煮えたぎる溶岩がはっきりと見える
噴火口や流れ出た溶岩
溶岩が川のようになって流れている場所も

 噴火口付近を何度か旋回。ハワイ島のごく一部の地域とはいえ、生きているような溶岩に覆われた様子に大自然の猛威をひしひしと感じながら、ハワイ島の中央部を通って出発地点のコナ空港へ帰還した。2時間弱のフライトは、汗ばむくらいに暑く、揺れもあって快適とは言いがたい。けれど、地域によって風景がめまぐるしく変わるハワイ島の壮大さや多様さを目に焼き付けることができた。

溶岩が流れる先は海。海水に潜り込み、水蒸気を盛大に立ちのぼらせている
「キラウエア火山の新しい噴火口と周辺」篇

日沼諭史

1977年北海道生まれ。Web媒体記者、モバイルサイト・アプリ運営、IT系広告代理店などを経て、執筆・編集業を営む。IT、モバイル、オーディオ・ビジュアル分野のほか、二輪・四輪分野などさまざまなジャンルで活動中。どちらかというと癒やしではなく体力を消耗する旅行(仕事)が好み。Footprint Technologies株式会社代表。著書に「できるGoPro スタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)などがある。