旅レポ
「い・ろ・は・す 天然水」が生まれる名水地の一つ、富山県を訪ねる(その2)
1975mの高低差がある黒部アルペンルートで黒部ダムに行く
2017年8月9日 13:14
良質な水に恵まれた富山県。前日はその水を使った「い・ろ・は・す 天然水」が製造されている北陸コカ・コーラの砺波工場を見学させてもらった。
この日(6月6日)は予報どおり天候もよく、晴れ渡っていたので、立山のふもとにある人気の観光地「黒部ダム」を目指すことにした。
水と山と空を楽しめる富山県の人気観光ルート
立山は飛騨山脈(北アルプス)の北部にある立山連峰の主峰で、3000m級である雄山(標高3003m)、大汝山(標高3015m)、富士ノ折立(標高2999m)の3つの峰からなり、富山県と長野県の県境に近い場所に位置する。富山市からは直線距離で約37kmの場所にあり、そこから見える雄大な山並みは街のシンボルになっている。
そのふもとにある黒部ダムは、膨大な月日と資材、人員を動員して完成した日本が誇る巨大な水力発電用のダム。映画やドキュメンタリー番組が制作されていることもあるが、その風光明媚なロケーションから海外より訪れる観光客も多い。
今回は、電車とバス、ロープウェイなどを使って、富山県の立山駅から長野県の扇沢駅まで横断する「黒部アルペンルート」を通ってみた。とにかく乗り継ぎが多く、ハイシーズンになると切符を買うのもままならないとのことなので、筆者は立山駅で扇沢駅まで行ける切符を一括で購入した。これなら降りるたびに次の交通機関の切符を買う必要もなく、並ぶ手間も省けるというものだ。
電鉄富山駅(富山県)から扇沢駅(長野県)までの利用した交通機関
電車:電鉄富山→立山(富山地方鉄道)1200円
ケーブルカー:立山→美女平(立山ケーブルカー)720円
バス:美女平→室堂(立山高原バス)1710円
トロリーバス:室堂→大観峰(立山トンネルトロリーバス)2160円
ロープウェイ:大観峰→黒部平(立山ロープウェイ)1300円
ケーブルカー:黒部平→黒部湖(黒部ケーブルカー)860円
トロリーバス:黒部ダム→扇沢(関電トンネルトロリーバス)1540円
立山駅から美女平駅(標高977m)へ
立山駅から美女平駅まではケーブルカーで一気に500mほど斜面を駆け上がる。1.3kmほどの距離だが、急峻な坂(斜度は最大で29度)を登っていくので、みるみると眼下に景色が流れていくのが爽快で気持ちいい。7分ほどで美女平駅に到着する。
美女平駅から室堂駅(標高2450m)へ
美女平駅から室堂駅までは50分間のバス旅になる。23kmの道のりを右へ左へカーブしながら走っていくのだが、尾根伝いなのでそこかしこで開けた谷やこれから向かう立山連峰が顔を出す。周囲の景色も、ブナ林や杉林といった緑豊かな低山帯から、亜高山帯・高山帯で見られる低木のハイマツ林や湿地帯になるなど、バリエーションに富んでいる。
そして、室堂近くになると巨大な雪の壁が道路に出現し(時期にもよるが高いところで15~20m)、すぐそばを歩ける「雪の大谷ウォーク」(6月22日まで)を楽しむ観光客が目に入ってくる。室堂駅までは周囲にいくつものトレッキングコースがあり、弥陀ヶ原(標高1930m)、天狗平(標高2300m)といった停留所も2カ所ある。
室堂駅から大観峰駅(標高2316m)へ
室堂駅からは下りに。電気で走るトロリーバスで10分ほど、立山連峰の中腹を貫通するトンネルの中を延々と進む。案内ガイドに「観光と登山の拠点としてもっとも賑わいを見せる場所です」と書いてあるとおり、室堂駅のトロリーバス乗り場は着いて早々に乗り込む観光客でごった返していたのには少々驚いた。お盆などのハイシーズンになると1時間30分以上待つというのもうなずける光景を前に、周囲を散策したい気持ちを抑えてバスに乗り込んだ。
大観峰駅から黒部平駅(標高1828m)へ
大観峰駅までたどり着けば、黒部ダムまであと少し。黒部湖に赤沢岳や針ノ木岳といった後立山連峰の雄大な景色が見れる展望台が屋上にあるので、少し寄り道をしてみた。大観峰駅は室堂駅と標高はさほど変わらない2316mと大変高い場所にあるので、屋外に設けられた展望台に出ると辺り一面が白銀の世界。そんな別世界から望む大パノラマは言葉にならない美しさだった。その展望台から見えるロープウェイで、今度は黒部平駅まで約500mの高さを7分で下っていく。
黒部ダムに到着!
8時に富山駅を出発して黒部湖駅に到着したのは11時30分過ぎ。3時間30分かけて、ようやくたどり着いたと思うと感慨もひとしお。ダムに続く道はひんやりとした薄暗いコンクリートのトンネルだが、出口に近付くにつれて差し込む日差しも強くなり、それと同時に期待感も盛り上がる。外に出ると、右(南側)にはエメラルドグリーンの黒部湖、左(北側)にはあまりの高さに川底がはるか遠くに見える、高さ186mのコンクリートの壁。左右でここまで景観の違いがある風景も珍しい。
レストハウスや展望台は堰堤を渡った先の赤沢岳側にある。ちょうどこの日から展望台に続く外階段や放水観覧ステージの安全確認が終わって開放されていたので、ここぞとばかりにさまざま角度から黒部ダムを堪能させてもらった。黒部ダムといえば大迫力の観光放水が有名だが、残念ながら筆者が訪れたときはまだ始まっていなかった。2017年は6月26日から10月15日の間、朝から夕方まで行なわれるそうだ。ちなみに黒部ダムは冬季は閉鎖されるので、2017年は11月30日まで訪れることができる。
黒部ダム駅から扇沢駅(標高1433m)へ
黒部ダム観光が終わったら、展望台近くにある黒部ダム駅からトロリーバスで扇沢駅までの6.1kmを抜けると黒部アルペンルートも終わりだ。こちらのトンネルは黒部ダム建設時に資材を運ぶために作られたもので、まさに黒部ダムができるかできないかの命運を握っていた場所。破砕帯を突破する壮絶なエピソードはあまりにも有名であり、トンネル内にも破砕帯区間を表示する案内板が掲示されていた。
また、通過する後立山連峰は富山県と長野県の県境でもある。そんな歴史やいろいろなことに思いを馳せていると乗車時間の16分もあっという間に過ぎ、緑あふれる扇沢駅に到着する。
扇沢駅からは、JR大糸線に乗るなら信濃大町駅行きの路線バスが出ているのでそれに乗り込む。筆者のように北陸新幹線を利用する場合は、長野駅東口までの特急バスがあるのでそちらを選ぼう。
富山の水を体験する今回の旅、その水が生まれる雄大な山々を肌で感じられてとても満足いくものだった。北陸新幹線ができたことにより、首都圏からは遠い存在だった富山県がとても身近になった点も挙げておきたい。もう一度、じっくりと富山県に訪れてみたいと思わせるだけの感動が胸に残る旅だった。