旅レポ
日本海きらきら羽越観光圏で地元食材を使った料理や人気観光地を巡ってきた(その1)
日本海の地魚を使ったお寿司に現地特産のフルーツを堪能
2017年8月11日 00:00
新潟県、山形県、秋田県の3県10市町村にまたがる観光エリア、日本海きらきら羽越観光圏。海、山、川、里の自然と、風土に根ざした文化が織りなす、風光明媚なエリアとなっている。今回、日本海きらきら羽越観光圏推進協議会が実施した、日本海きらきら羽越観光圏の名物料理を堪能しつつ観光地を巡るプレスツアーに参加してきたので、その様子を数回に分けて紹介していきたいと思う。今回は、海の幸を中心とした魅力的な食について紹介する。
人気列車「きらきらうえつ」で、日本海きらきら羽越観光圏へ向かう
今回のツアーは、新潟駅からスタートし、列車で日本海きらきら羽越観光圏へ向かうこととなった。新潟駅から日本海きらきら羽越観光圏方面へと向かうJR羽越本線には特急「いなほ」が運行されており、上越新幹線と組み合わせて首都圏からのアクセスも便利だが、今回は異なる列車を利用した。それは、新潟駅から酒田駅の間で運行されている人気の列車、「きらきらうえつ」だ。
きらきらうえつは、485系特急型電車を改造した4両編成の列車だ。車窓風景を楽しみながらリラックスできる。また、1号車と4号車の運転席側には簡易展望スペースが用意され、日本海側の四季折々の風景を楽しめる。走行中のダイナミックな風景を、まさにかぶりつきで楽しめるので、子供と一緒に乗車する場合にはぜひとも足を運んでみてほしい。
2号車には売店「茶屋」と、テーブルが用意されたボックスシートで軽食やドリンクを楽しめるラウンジスペースが設けられている。売店の茶屋では、沿線の特産品や記念品などとともに、沿線の地酒や地ビール、きらきらうえつの乗務員がアイデアを出して作られた弁当「きらきら弁当」などが販売されている。ラウンジスペースで車窓風景を楽しみながら軽食や地酒をいただくことも可能で、旅気分も大いに盛り上がる。
このほか、車内では車掌が2種類のオリジナルスタンパーを手に、車内を巡回している。乗車券や指定席券にスタンプを押してもらえば、よい旅の記念となるのでお勧めだ。
きらきらうえつは、全席指定の快速列車として、週末を中心に運行されている。乗車には、乗車券のほかに座席指定席券が必要となるが、人気の列車なので事前に予約しておきたい。
今回は、新潟駅からきらきらうえつに乗車し、新潟県村上市の桑川駅で下車。そこから先は車で各地を巡ることとなったが、当日の桑川駅では、村上市商工観光課による出迎えがあった。村上市商工観光課の方々が乗客に地元特産品を配るなどしておもてなし。また、きらきらうえつ出発時には横断幕を掲げて見送った。このお出迎えはきらきらうえつ運行時毎回ではないそうだが、運よく出会えたときには、こちらもよい思い出となりそうだ。
ところで、日本海きらきら羽越観光圏では、鉄道やバスなどの公共交通機関があまり充実していないため、きらきらうえつやいなほなどで日本海きらきら羽越観光圏のターミナル駅に到達した先は、レンタカーで観光地を巡るのがお勧めだ。
実際、今回訪れた観光地も、クルマでなければアクセスが難しい場所が少なくないため、現地では基本的にクルマでの移動を中心に考えてもらいたい。ただし、今回下車した桑川駅にはレンタカーの営業所がない。電車とレンタカーを使って日本海きらきら羽越観光圏を観光する場合には、駅の近くにレンタカーの営業所がある村上駅や鶴岡駅、酒田駅などでの下車が便利だ。
日本海の海の幸を楽しむなら、やはりお寿司がいちばん!
日本海きらきら羽越観光圏は、海、平野、山がひろがり、海の幸から山の幸まで、食材が豊富に揃っているというところが大きな魅力となっている。とはいえ、やはり最大の魅力は、なんといっても日本海の海の幸だろう。今回のツアーでも、さまざまな日本海の海の幸を堪能してきたが、そのなかでも特に印象に残ったのがお寿司だ。
まず、山形県鶴岡市の鼠ヶ関にある寿司店「鮨処 朝日屋」。こちらは、地元鼠ヶ関港で水揚げされた天然の地魚にこだわっていて、近隣はもちろん、山形県の内陸や新潟県からも客が訪れるという、人気の寿司店だ。元は旅館だったという建物を改装した重厚な佇まいや、店内にジャズが流れるというミスマッチが特徴的だが、魅力はなんといっても天然の地魚を使ったお寿司だ。養殖魚を極力使わず、天然の地魚にこだわっているという。また、シャリのお米にも地元産の「つや姫」やコシヒカリを使っているそうで、地産地消へのこだわりもある。
そんな鮨処 朝日屋では、「地魚中心の握り」をいただいた。ネタはその日の仕入れによって変わるそうだが、今回はアラ、マトウダイ、ホウボウ、キジハタ、アジ、バイ貝、紅エビ、カニの8種類で、いずれも地元で水揚げされた地魚ばかり。また、アラ、マトウダイ、ホウボウの3種は塩とレモンでいただく塩握りとなっていた。どのネタも新鮮な魚特有の歯応えのなかに、しっかりとしたコク深い風味が感じられる。もちろんイヤな魚臭さも一切なく、さすが新鮮な日本海の海の幸といった印象だった。特に、3種の塩握りは、魚の味わいがより深く楽しめて、とても印象的な美味しさだった。
このほかに鮨処 朝日屋では、ちらし寿司も人気だという。「弁天ちらし」はシャリの上に地魚を中心とした海の幸が豪快に盛り付けられていて、見た目に鮮やかで、ボリューム満点。それでいてお値段も非常にリーズナブル。これは、わざわざ足を運ぶだけの価値が十分にあると感じた。
鮨処 朝日屋
所在地:山形県鶴岡市鼠ケ関丙151
営業時間:11時30分~24時(月曜定休)
続いて、酒田市内の寿司店「すしまる」。地元の酒田港で水揚げされた地魚にこだわっている寿司店だ。今回は、地魚を中心とした握りを出してもらった。ネタは、ヒラメ、マダイ、ソイ、ノドグロ、メバル、イクラ、フグの昆布締め、甘エビ、アワビ、玉子、スルメイカの11種類。特別に地魚を中心に握ってもらったこともあって、比較的淡泊なネタが中心となったが、こちらも口にした瞬間に新鮮さがストレートに実感できる味わいだった。
また、ちらし寿司の「宝石ちらし」も名物だそうだが、比較的小さく切った地魚やイクラ、玉子などが文字通り宝石のようにちりばめられており、見た目にも非常に豪華だ。
このほか、一品料理もいくつかいただいた。地魚の赤メバルの煮付けや庄内浜産の岩牡蠣、西貝のお汁、地元産だだちゃ豆などで、こちらも絶品だった。なかでも酒田の郷土料理「むきそば」や「黒もずく」は、すしまるを訪れたら必ず注文したい逸品。そばの実をむいて茹で、だし汁で食べるというむきそばは、懐かしさを感じさせる美味しさ。また、もずくとは思えない、シャキシャキとした食感の黒もずくは、今回初めていただいたが、あとを引く味だった。連日、地元客であふれる人気店だそうだが、こちらも酒田を訪れた際にはぜひとも行きたいお店だ。その場合には、気さくで饒舌な店主との会話が楽しめる、カウンター席がお勧めだ。
すしまる
所在地:山形県 酒田市日吉町2-3-8
営業時間:11時30分~13時30分/17時~22時(日曜/祝日は21時閉店、月曜定休)
最後に、異色のお寿司を紹介する。JR鶴岡駅にある「つるおか食文化市場 FOODEVER(フーデェヴァー)」。日本で唯一、ユネスコ食文化創造都市として認定されている鶴岡市から、鶴岡の食や食文化を発信する拠点として、2017年7月1日にオープンしたばかりの複合施設だ。
FOODEVERは、山形県鶴岡市出身の地元有名シェフ、奥田政行シェフと土岐正富総料理長がプロデュースしたレストランや、地元の食材を楽しめるフードコート「鶴岡バル」、鶴岡の地元食材を販売する「つるおか駅前マルシェ」、料理教室などのイベントも開催される文化体験スペース「FOODEVERキッチン」など、食をテーマとしたさまざまな施設を構えている。
また、外国人旅行者にも対応できる観光案内所「鶴岡市観光インフォメーション」もあり、鶴岡を中心とした日本海きらきら羽越観光圏の観光拠点としても活用できるようになっている。
つるおか食文化市場 FOODEVER
所在地:山形県鶴岡市末広町3-1 マリカ東館1階
Webサイト:つるおか食文化市場 FOODEVER
そのFOODEVERのフードコート、鶴岡バルにある、魚バル「il fri sio(イル・フリージオ)」。奥田政行シェフがプロデュースした店だ。地元の魚介類を、オイルと塩で提供するという、イタリアンシェフの奥田シェフらしい、新しい取り組みの魚バルだが、ここで提供されるお寿司も、オイルと塩でいただくという、非常に独特なものとなっている。それも、ネタに合わせて使うオイルや塩を厳選するというこだわりよう。
今回は、イカとタイ、アジの握りをいただいたが、イカにはしょうがオイルと花塩、タイにはバジルオイルと月の雫の塩、そしてアジには茶実オイルと水晶塩という組み合わせ。店には、さまざまな種類のオイルと塩を備え、それぞれの素材に最も合う組み合わせを研究して提供しているという。今回いただいたネタは比較的淡泊な味わいだが、オイルによって深いコクが加わっていた。かといって、オイルの風味が勝っていることもなく、新鮮なネタの風味をグッと引き立てている。そして、それらを塩がいい具合に締めてくれる。ほのかな酸味のシャリとも相性抜群で、これまでに食べたことのない、絶品な味わいの握りだった。
鶴岡という山形県の地方都市で、こんな絶品の握り寿司が味わえるとは、本当に驚きだった。このお寿司を味わうためだけに鶴岡を訪れてもいいと思えるほどで、鶴岡方面に訪れたら、絶対に外せないお店だ。
メロンの産地、鶴岡で心ゆくまでメロンを堪能
海の幸に続いて楽しんだのが、庄内地方特産のメロンだ。メロンといえば、夕張メロンの北海道や、マスクメロンの静岡、国内で1位の生産量を誇る茨城県などが有名だが、実は山形県も生産量が全国4位のメロンの産地だ。
山形県遊佐町から鶴岡市にかけて、約35kmの長さを誇る砂丘「庄内砂丘」が広がっている。その庄内砂丘では、水はけのよさと、鳥海山や月山から流れ出る雪解け水が地下水となり、庄内砂丘付近でも清らかで豊かな水が得られることから、古くは1931年(昭和6年)からメロンの栽培が行なわれているという。現在では、庄内産のメロンを「庄内砂丘メロン」と呼び、全国に出荷している。
現在、最も多く栽培されている品種が「アンデスメロン」で、JA鶴岡では年間約31万ケースを出荷。また、1998年にデビューしたオリジナル品種の「鶴姫メロン」と、赤肉メロン「鶴姫レッドメロン」も人気になっている。そして鶴岡周辺では、普段からよくメロンが食べられているそうで、夏はスイカと並んでメジャーなフルーツとして親しまれているそうだ。筆者は、メロンといえば特別なときに食べる高級フルーツという印象が強く、かなり羨ましく感じてしまう。
今回訪れた「JA鶴岡西郷選果場直売所」では、地元産の完熟メロンを直売している。加えて、毎年、庄内砂丘メロンの食べ放題(制限時間は1時間)を実施している。この食べ放題は2017年は7月1日~31日に実施され、期間は毎年異なっている。1週間前までの予約が必須だが、観光客に非常に人気となっているそうだ。過去には食べ放題の1時間で8玉を平らげた人もいたそうで、メロン好きにはたまらないイベントだ。
今回は、7月28日に訪れたため、運よく食べ放題にありつけたが、これでもかと盛られたメロンの山を見るだけでも幸せになってしまう。もちろん味も、完熟の食べ頃メロンが厳選されていることもあって、言うことなし。今回は、アンデスメロン、鶴姫メロン、鶴姫レッドメロンの3種類が食べられたが、甘くてジューシーなアンデスメロン、アンデスメロンよりも甘みが強くしっかりとした肉質の鶴姫メロン、そして赤肉メロンらしいコク深い甘さの鶴姫レッドメロンと、それぞれの味の違いがじっくり楽しめた。
残念ながら、2017年のメロン食べ放題は終了しており、JA鶴岡西郷選果場直売所でのメロン直売も8月のお盆前後までとなっている。ただ、8月いっぱいは鶴岡周辺で美味しいメロンを楽しめるので、鶴岡周辺を訪れたらぜひ実際に体験してほしい。そして、食べ放題は来年のお楽しみとして、今から計画を立ててみてはいかがだろうか。