【イベントレポート】

【パリ航空ショー2017】ANA塗装のMRJ飛行試験機内部を公開、初飛行で操縦桿を握った安村氏らがパリへフェリー

2017年6月19日~25日(現地時間) 開催

登録記号「JA23MJ」のMRJ飛行試験3号機

 三菱重工業と三菱航空機は、パリ航空ショー2017の会場でMRJの飛行試験3号機「FTA-3」の機内を公開した。既報のとおり、三菱重工業と三菱航空機は今回のパリ航空ショーでANA塗装が施された飛行試験機の3号機を地上展示。開幕前日にはANAホールディングスの篠辺副会長も同席した記者会見が行なわれた。

 今回のパリ航空ショーで展示されている飛行試験機3号機は2016年11月22日に初飛行した機体で、通常はブラックストライプとMRJロゴが描かれたデザイン。今回の展示のために5月にANA塗装をし直した。現在、愛知県のMRJ最終組立工場で地上試験に使われている飛行試験5号機もANA塗装が施されており、一時的ではあるが、2機のANA塗装MRJが存在する状態になっている。

 ペイントはいわゆるトリトンブルーのANA塗装をベースに、前方に「MRJ Mitsubishi Regional Jet」のロゴがあしらわれたもの。MRJのハウスカラーの特徴である、歌舞伎の化粧をモチーフにしたコックピット窓枠の端の“隈取”も通常のANAカラーにはないMRJ独特のデザインだ。なお、今回のペイントはあくまで今回のショーのためのもので、実際の機体に採用されるかは決まっていない。

 機内は飛行試験機ということもあって、配線などもむき出しの状態。旅客機として利用する場合のイメージは、過去にお伝えしている記事の客室モックアップなどを参照してほしい。コックピットは4枚のディスプレイを用いたグラスコックピットで、ジョイスティックなどではなく操縦桿を用いている。

 後方には貨物エリアがある。多くの旅客機は筒状の機体を上下に分割し、上部を客室、下部を貨物エリアとしているが、MRJは貨物エリアを機体後方のみに装備。これにより、上下を分ける床の位置を下げて、客室エリアを広くしている。これもMRJの特徴の一つであり、飛行試験機では壁のない状態でその特徴を見ることができる。旅客機となる際には、貨物室と客室を隔てる部分にギャレーやラバトリーが設置されることになる。

前方ドアのタラップから見たところ
後方ドアのタラップから見たところ
ANA塗装にMRJのロゴ
垂直尾翼
機体後方
各ドア。基本的に乗り降りは写真中央の前方L1ドアから
主翼付け根の着陸灯
主翼の下側にある給油口
主翼端のウィングレット
プラット&ホイットニーの「PW1217G」エンジン
ノーズギアのタイヤ
メインギア。タイヤはいずれもブリヂストン
ノーズギア
メインギア
機体前方のコックピット窓。MRJのハウスカラーの特徴である“隈取”がある
コックピット
機内。前方から見たところ
後方から見たところ
機体尾部の貨物室
この段差から奥が貨物室。つまり、写真下部は本来、ギャレーやラバトリーがあるところになる
貨物室のドアは機体後部にある

 この飛行試験機3号機は、米国ワシントン州のモーゼスレイクにあるグラント・カウンティ国際空港をベースに試験が行なわれており、今回のパリ航空ショーには、カナダのウィニペグ・ジェームス・アームストロング・リチャードソン国際空港、同グースベイ空港、そして大西洋を越えてアイスランドのレイキャビクにあるケプラヴィーク国際空港を経由。レイキャビクからパリまではノンストップで飛行した。

三菱航空機株式会社 チーフテストパイロット 安村佳之氏

 このフェリーフライトを担当したのは3名のパイロットで、うち1名は、2015年11月11日に県営名古屋空港で行なわれたMRJの初飛行で操縦桿を握ったチーフパイロットの安村佳之氏。初飛行後、安村氏は現在、モーゼスレイクでテスト飛行に従事しており、「私自身は300時間とちょっと。MRJ合計では1000時間近く」の飛行時間に達している。現時点での飛行レートは「4機の飛行試験機が3時間ほどの12~13時間ほどがピーク」とのことだが、これは「これからまだ上がっていく」としている。

 初飛行後からの改善点などを尋ねると、「日々いろいろなパイロットが飛んで、いろいろなコメントが出る。数え切れないほどのパイロットコメントをアップデートした」とのことで、基本的な操縦性は変わっていないものの、ハンドリングのアップデートにより飛ばしやすくなっているという。

 ちなみに、現在はアビオニクス(航空電子機器)や、操縦性に関わるスタビリティ&コントビリティのテストが中心になっているとのこと。安村氏の見解としては「飛行レートがだいぶ上がってきている。機体自体も、フラッター試験や加重試験などの外形上の主な試験は終わっていて、もうそれらのトラブルはないと思う。あとは内部の1個1個の機器の完成度が上がっていけば型式証明が取れると思う」とし、2020年納入というスケジュールを守れることに自信をのぞかせた。