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無印良品の宿は「ショールーム」ではなかった。京都・清水「MUJI BASE」で体験した“生活を整える旅”

2026年5月20日 開業
無印良品の宿「MUJI BASE KYOTO kiyomizu」に泊まってみた

 良品計画が5月20日、京都・清水にオープンする新たな宿泊施設「MUJI BASE KYOTO kiyomizu」(京都府京都市東山区清水4-171)。このたび開業に先立って行なわれた、試泊体験付き内覧会に参加してきた。

 普段から無印良品の商品を愛用している記者は、はじめて同社の宿泊施設に泊まるにあたって「ブランドの世界観やアイテムを存分に堪能できる、ショールームのようなホテルだろう」という先入観をもって挑んだものの、その予想はよい意味で裏切られることに。

 この記事では、宿泊者限定ガイドツアーの体験談や、スタッフに伺った「無印良品の宿」ならではのこだわりをお届けしていく。

 なお、客室の仕様や館内サービス、1階に誕生する「小川珈琲」の新店舗については、別記事で紹介する(設備・客室の仕様は開業時に変更となる可能性がある)。

ガイドツアーでは早朝の清水寺と周辺エリアを1時間強かけてゆっくり散歩する

無印良品の「ショールーム」ではなく、自分の生活を見つめ直す場所

 今回泊まったのは、5階建て・全18室のうち、もっとも客室数の多いツインルーム(定員3名)。無印良品の家具やアイテムに囲まれた空間で一晩過ごしたが、実店舗ほどブランドの世界観を押しつけられている感覚はあまりなかった。

 一般的なホテルよりもデスクや洗面台が広く、冷蔵庫や電子レンジ、シンクにカトラリーまでそろっているので、ホテルに泊まるというよりは、いつもと違う環境に仮住まいしているような気分になる。

 滞在中に必要なものが過不足なく配置された空間に身を置くことで、むしろ「自分にとって心地よい住環境とは何か」「日々の暮らしに本当に必要なものは何か」と、ふだんの生活習慣を見つめ直すような時間へと変わっていったのだ。

記者が泊まったツインルーム。無印良品のアイテムを9割弱取り入れているとのこと
ダイニングが広く、料理(食事)と仕事を同時にこなせる
洗面台のまわりにはもっと収納スペースを増やしたいし、同じくらいバスタブが大きい家に住みたいと思った
脚を伸ばして座っても、まだ背中側にかなり余裕がある(記者の身長は166cm)

 もちろんMUJIファンにとっては、客室に備えられたカトラリーやハンガー、選べる香りのアロマディフューザーなどを、実際の生活空間で無印良品のアイテムじっくりと試すことができるのは大きな魅力。

 ただし、4桁の暗証番号を使った入室、時計やテレビがない、スマホ・鍵・指輪といった一時的な貴重品を置くトレー類がないなど、ミニマルすぎることに不便を感じた場面もある。

 それらは裏を返せば、自宅でも必要なものだと気づくきっかけになるともいえるだろう(客室の仕様や設備は、開業時に改善される可能性がある)。

すぐ覚えられる(連泊する)ならカードキーよりも暗証番号のほうが便利
アロマディフューザーはお店で体験するよりも香りがやさしく広がる印象だった
ベッド1台につき、コンセント×2とUSB Type-A/Cが備わっている。自宅の寝床にも、本やマンガを置く小棚を取り入れたい

 試して気に入ったアイテムがあれば、1階の売店や、クルマで15分ほどの場所にある大型店舗「無印良品 京都山科」などで実際に購入することもできる。単なる宿泊体験、旅の休憩ポイントで終わらず、日常の“生活を整えるためのヒント”を持ち帰れるのが、この宿ならではの価値だと感じた。

ふだんの自分の生活に置き換えてみると、コップはこんなにたくさんいらないし、お皿はこれくらい減らしてもでもよいことに気づく
スキンケアは使い切りサイズ。ドライヤーと一緒に洗面台の棚に収納してある
夜のおもてなし「お茶の時間」にもらえるお菓子
気に入ったアイテムは1階の売店で購入できる

定番観光地・清水に出店する理由。なぜ「HOTEL」ではなく「BASE」なのか

 無印良品の宿泊施設は「MUJI HOTEL」「MUJI BASE」「MUJI room」「MUJI Camp」の4ブランドあり、京都清水は「MUJI BASE」ブランド第5弾となる。

 そもそも、なぜ世界有数の観光地である清水に無印良品の宿を作ったのか。無印良品の宿泊滞在事業「MUJI STAY」を担当するソーシャルグッド事業部 「遊」創事業部 部長の廣川剛史氏に話を伺うと、そこには「MUJI HOTEL」ブランドではなく「MUJI BASE」と名付けた理由が隠れていた。

無印良品の宿泊滞在事業「MUJI STAY」ブランド一覧(公式サイトより引用)
株式会社良品計画 ソーシャルグッド事業部 「遊」創事業部 部長 廣川剛史氏(右)、MUJI BASE KYOTO Kiyomizu 支配人 伊藤遼哉氏(左)

 開業のきっかけは、この場所で40年あまり地域に愛されてきた「アメニティーホテル京都」のオーナーから、良品計画へ直接相談が寄せられたこと。

「無印良品は、生活のなかに豊かさを見出したり、長く引き継がれたものを非常に価値があるものとして大切にしているブランドです。京都は長く根付いた生活文化が残っている場所ですので、我々も元々興味を持っていました」と廣川氏は明かす。

 そこで、建物をゼロから建て直すのではなく、町の景色として定着している外観を引き継ぎながら次世代へ残すという選択をした。

アメニティーホテル京都は、修学旅行に引率するバス運転手や添乗員などの受け入れが多く、カプセルホテルのような部屋もあった(写真提供:良品計画)
MUJI BASE KYOTO Kiyomizuでは、外装を活かしつつも、間取りや設備を大幅に変えている

 MUJI BASEのコンセプトについて、廣川氏は「特別な非日常や観光を提供するのではなく、京都に住む方々が普段過ごしているような目線で日常を感じていただく“暮らしの拠点”です」と語る。

 客室は少し広めに設計したうえで、大きめの冷蔵庫や電子レンジ、シンクを備えるなど、連泊して「暮らすように」滞在できる工夫を随所に凝らしているという。

 併せて「観光地での旅行ではなく、地域のゆっくり流れる時間のなかで自分らしく過ごしたいという価値観を持たれている方にも、ぜひいらしていただきたいです」との考えを示した。

「MUJI BASEを拠点に、観光だけでなく京都の日常を感じてほしい」とのこと(写真提供:良品計画)
八坂神社まで徒歩10分、地元スーパーまでは徒歩4分

地元住民の“いつもの朝”に触れる「朝の清水散歩」

 京都が抱えるオーバーツーリズムの課題に対しても、MUJI BASEは「逆転の発想」でアプローチしている。人が集中する日中ではなく、あえて人がいない「朝と夜」の静かな時間にフォーカスし、別の楽しみ方を提案しているのだ。

 その象徴ともいえるのが、宿泊者限定のガイドツアー「早朝の清水参り」(毎日5時40分〜7時ごろ開催予定、参加費1500円)。ガイドを務める浦岡昇一さんは、学生時代に京都在住だった経験から「海外の方に京都の“日常”を伝えたい」との想いを抱き、自ら立候補して長崎から移住してきたという熱意の持ち主だった。

MUJI BASE KYOTO Kiyomizu スタッフ 浦岡昇一さん

 MUJI BASE KYOTO Kiyomizu 支配人の伊藤遼哉氏は、ツアーの狙いについて、次のように語る。

「ツアーで一番見ていただきたいのは、『この地域に住む人がこの清水寺をどのように回っているのか』ということです。我々が何回か行くなかで、朝の時間帯に地元住民の方だけが集まっているコミュニティを見つけたんですね。みなさんで会話をしながらラジオ体操をしていたりとか。我々が観光地として見ていた清水寺に、そこに住む人にとっての日常が流れていて、清水寺があるから集まる理由にもなっている。何か特別なものじゃない清水寺の見え方みたいなものを、参加者の方々に感じ取っていただけるといいのかなと思っています」

 しかし、観光業を専門としていない無印良品が、地元コミュニティに足を踏み入れるのには苦労もあったという。「僕らが入ることによって地元の方々の憩いの場を壊してしまってはいけないという点です。みなさんと一定の距離感を保ちつつ、『ご紹介させていただいてもよいですか』と丁寧な対話を取りながら、リスペクトを持ちながら配慮して組んでいきました」(伊藤支配人)

MUJI BASE KYOTO Kiyomizu 支配人 伊藤遼哉氏(右)、株式会社良品計画 ソーシャルグッド事業部 「遊」創事業部 部長 廣川剛史氏(左)

 各客室には「街歩きボックス」を用意。なかに入っているトートバッグやおやつを持って、実際に早朝の清水寺を巡ってみると、鳥のさえずりが響くほとんど人のいない舞台や、音羽の滝で日々のルーティンとして水を飲む近隣住民に遭遇する。

 超夜型の記者にとって5時起きは苦行だったが、人混みにもまれながら観光名所を消費するのではなく、地元住民の日常にそっとお邪魔させてもらう感覚は、新しい豊かさの発見だった。

街歩きボックス
“京都の日常”にそっとお邪魔させてもらった

夜の路地歩きと地元スーパーでの買い出し

 伊藤支配人は、朝だけでなく、夜の時間の過ごし方にもMUJI BASEならではの提案があると強調する。

「朝のツアーのほかにも、夜の路地をまわる散策マップを提供しています。日中だとどうしても人の背中を見ながら歩いている観光地なんですけど、夜の静かな時間帯だと屋根の上に乗っている鍾馗(しょうき)さんの存在に気づけたり、何気なく置かれている防火バケツが町を守っていたり。

 日中だと分かりにくい暮らしの美意識に気づけるというのは、人がいない時間帯にしかできない体験だと感じています。公共交通機関を使わなくてもこの拠点から歩いて回れる距離に(観光地と住宅地が)あるというのは、朝と夜にうまく地域を回っていただくコンテンツとして考えて作っていきました」

 公式サイトや滞在時に配布される冊子では、朝のガイドツアーのほかにも、「朝の銭湯」「器の金継ぎ」といった京都の“日常の美”を感じる9つの地域体験を紹介している。

京町家を見守る「鍾馗(しょうき)さん」
ローカルスーパー「ハッピー六原」

 なかでもお勧めの体験スポットは、地元民に愛されるローカルスーパー「ハッピー六原」での買い出し。伊藤支配人によると「お惣菜がおいしく、スタッフが親身に相談に乗ってくれる距離感の近さが魅力」とのこと。

 実際に夕方18時ごろに足を運んでみると、路地裏にはアーケードがあり、生鮮食品を扱うスーパーだけでなく昭和の時代にタイムスリップしたようなパン屋や花屋、アパレル用品店も並んでいる。

 諸事情により夕食は外で済ませたが、「今日は何食べよう」と話す学童帰りの親子連れや、本日のお勧め商品を尋ねる常連客など、レトロで温かみのある店内には地域の人々のリアルな生活が垣間見えた。

 非日常のフルコースを贅沢に味わう旅もよいが、朝と夜は地域の美意識に触れ、食事は地元スーパーで買い出しをして部屋でくつろぐ。そんな京都の日常に溶け込み、自分自身の“ふつうの暮らし”を見つめ直すきっかけとして、「MUJI BASE KYOTO kiyomizu」での滞在を検討してみてはいかがだろうか。

MUJI BASE KYOTO kiyomizu

MUJI BASE KYOTO kiyomizuの基本情報

所在地: 京都府京都市東山区清水4-171
アクセス: 京都駅からクルマで約15分、京都市バス 清水道から徒歩2分
チェックイン: 15時~24時、事前セルフチェックインに対応
チェックアウト: 10時、1名あたり+2200円で最大11時まで延長可能
門限: なし
※24時以降はエントランスを施錠するため、入館時はインターホンにて対応
宿泊プラン: 素泊まりのみ、オプションとして朝食(2500円、現地払いのみ)やガイドツアー(1500円)を追加可能
※全館禁煙、5月20日~7月31日はオープン記念料金を設定

最寄りのバス停は「清水道」。京都駅や河原町・祇園四条から市バスでアクセスできる