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NATM工法とは? レア重機もずらり揃った東海環状道 養老トンネルの工事現場を見てきた
2023年4月28日 14:00
- 2023年4月26日 公開
NEXCO中日本は4月26日、令和8年度(2026年度)の開通を目指して建設中の東海環状自動車道(C3)養老トンネルの工事現場を報道公開した。
東海環状道は愛知県、岐阜県、三重県の3県にまたがる延長約153kmの高規格道路で、関広見ICを境に東側は「東回り」(約76km)、西側が「西回り」(約77km)と呼ばれる。東回りとなる豊田東JCT~関広見IC間は2009年までに土岐JCT以北を暫定2車線としながらも開通しており、現在は西回りの未開通区間(約43km)となる山県IC~大野神戸IC、養老IC~北勢IC(仮称、以下同)~大安ICの建設が進められている。それぞれの開通時期は養老IC~北勢IC間が2026年度、山県IC~大野神戸ICおよび北勢IC~大安IC間は2024年度を見込んでいる。
養老トンネルは養老IC~北勢IC間に位置しており、全長は約4.7km。北側の約2.7km(養老トンネル北工事)を岐阜工事事務所、南側の約2.0km(養老トンネル南工事)を四日市工事事務所が担当する。
今回公開されたのは養老トンネル北工事現場で、暫定開通時に対面通行で本線として使用される「本坑」と、災害時などに利用される「避難抗」の掘削が行なわれている。なお、避難抗は4車線化時に外回り本線として使用される。掘削が開始されたのは前者が2022年9月から、後者は2022年4月からとなっており、現在までにそれぞれおよそ330m、500mほど掘り進んだ状態だという。
中京圏では数々の建設事業が進行中
現場公開に先立ちNEXCO中日本 代表取締役社長CEOの小室俊二氏が中京圏の建設事業を説明。同社では経営方針の1つとして「高速道路の機能強化と幅広くお客様に利用される高速道路空間への進化」を掲げており、新たな高速道路ネットワークの整備をはじめ、現状の高速道路ネットワークの安全信頼性、4車線化や6車線化による渋滞対策などを進めていると説明。
中京圏においても東海環状自動車道をはじめとした対面通行部分の4車線化、新名神高速道路(E1A)の6車線化、渋滞が多発している名神高速道路(E1)一宮JCTや東名高速道路(E1)三好IC付近の車線増設やスマートICの設置といった事業が進行中であるとした。
そのほか、2021年5月の名古屋第二環状自動車道(C2)全線開通にあわせ、「出発地と到着地が同じであれば途中の経路にかかわらず同一料金」とすることで、混雑した都心部を回避してスムーズな走行を可能とするなど、「高速道路ネットワークの拡充と合理的な料金体系の導入により、ますますご利用していただきやすい高速道路ネットワークを構築」しているという。
東海環状道については、「愛知県、岐阜県、三重県の3県にまたがる総延長153kmの高規格幹線道路です。すでに全体の7割110kmが開通しまして、現在残る山県ICから大野神戸IC間19km、それから養老ICと大安ICの間25kmにつきましては国土交通省と共同で事業を推進しておりまして、2026年度の全線開通を目指しております」と紹介。
また、「東海地方は航空機産業、自動車産業などが集中する日本有数のものづくりの地域」であり、すでに開通している東海環状道沿線では多くの企業が進出して新たな雇用が創出されるといった効果にも言及。残る区間の開通により「三重県と岐阜県が直接、高速道路でつながることになります。この開通によりまして、例えば中京圏の交通が分散する物流が効率化される、もしくは観光が活性化されるといった効果」が期待されており、「この東海環状自動車道の1日も早い開通を目指しまして、地域の皆さまのご理解をいただきながら、国土交通省と連携して全力で事業を進めてまいります」と述べた。
NEXCO中日本 名古屋支社 岐阜工事事務所長の藤原由康氏が工事の概略などを説明した。まず養老トンネルについて「岐阜県と三重県の県境にまたがる養老山地をはじめて貫く」トンネルであり、「4700mの長大トンネルになっておりますため、北側と南側の両側から掘削する」と紹介。
現場では本坑と避難抗を並行して掘削しており、本坑は「供用したときに実際に皆さんが通行する道路」であり、避難抗は「対面交通の長大トンネルにおいて本坑に並行して設ける避難のための専用トンネル」だと説明。「本坑と避難抗につきましてはトンネルのなかで避難連絡口でつながっておりまして、火災などがあった場合にはドライバーが避難連絡口を通じて避難抗に回避できる」と述べるとともに、「4車線化する際には、この反対側の車線として使うトンネルになる」と将来の活用方法についても紹介した。
続けて、後段で紹介するNATM工法の説明を交えつつ、安全対策に付いても言及。トンネルの掘削面となる「切羽」を安定させるための対策はもちろん、切羽監視員の配置や作業員への防護服装着、重機には屋根を設けるといった作業者への配慮も。そのほか、トンネルでは避けて通ることができない湧水への対策、自然由来重金属含有土の処理などを適切に行なっていると説明した。
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同トンネルの掘削方法はこの2月に掲載した「東海環状道 柿田トンネルで貫通発破! 4車線化へ向けて外回りの最長1638mが開通へ」でも紹介した「NATM(ナトム:New Austrian Tunnelling Method)」工法と呼ばれるもの。
NATM工法の作業は、
- ホイールジャンボと呼ばれる削孔機械で地山に穴をあけて爆薬を装薬、発破
- トラクターシャベルにより「ズリ」(発破により発生した砂や岩)をダンプトラックに積み込みトンネル外に排出
- トンネルの壁が崩れるのを防ぐために鋼製支保工を設置するとともにコンクリートを吹き付け
- 壁面にロックボルトを打ち込み地山を強化
の順で進行する。一度の工程でおよそ1mほどの掘削が可能で、昼夜を通して作業が行なわれる場合には1日で4工程実施されるという。つまり4mほど進むことができることになるが、北側工事のみに限ってもまだ2400mほど掘削が必要になるため、作業完了までには最短でもあと2年あまりは掛かる計算だ。さらに、
- 型枠を設置して覆工コンクリート(支保工を補完するとともにトンネルの内壁となる部分)を打設
- 状況に応じてトンネル下部に鋼製ストラットを設置しトンネル断面を併合(インバート)
といった作業が行なわれる。こうした作業完了後には舗装や道路設備の整備といった工事を行ないつつ、2026年度の開通を目指すことになる。