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開通から55年、東名 清見寺橋でコッター式継手の新床版に取替。東海道新幹線上空で初の試み

2024年1月15日 公開

床版取替工事が行なわれている東名高速道路の清見寺橋。工事期間中、上り線は夜間通行止めとなる

 NEXCO中日本 東京支社は1月15日、東名高速道路(E1)富士川スマートIC~清水JCT間で行なっている、清見寺(せいけんじ)橋 床版取替工事の現場を報道公開した。

 同工事は高速道路リニューアルプロジェクト(大規模更新・修繕)の一環として行なっているもの。国内の高速道路の供用全長約9000kmのうち、約4割(3700km)が供用から30年以上経過しており、加えて大型車交通の増加や寒冷地での凍結防止剤の使用といった使用環境の悪化などにより経年劣化が進行している。

 これを部分的な補修ではなく、最新の技術的知見および技術基準の適用により、建設当初と同等またはそれ以上の性能や機能を持たせることを目的としている。

 NEXCO中日本管内においては橋梁(床版、桁)約160km、土構造物4977か所、トンネル約35kmが対象となっており、事業費1兆101億円にもおよぶまさに大規模なもの。清見寺橋における床版取替工事もその一環ということになる。

東海道新幹線を横架する清見寺橋で床版取替工事

 工事を担当する富士保全・サービスセンターは、東名 清水IC~沼津IC(44.5km)、新東名 新静岡IC~長泉沼津IC(53.7km)、新東名 清水連絡路 新清水JCT~清水JCT(4.5km)、中部横断道 新清水JCT~富沢IC(20.7km)の3路線、123.4kmを管理している。

中日本高速道路株式会社 東京支社 富士保全・サービスセンター 所長 近藤努氏

 概要説明を行なったNEXCO中日本 東京支社 富士保全・サービスセンター 所長の近藤努氏は、清見寺橋(静岡県清水区)について「東名 富士川SIC~清水JCT間に位置し、複数のトンネルや橋梁が連続し、その一途を構成する構造物」「東海道新幹線を横架する橋」と説明。

 約260m(P1橋脚~P4橋脚間)の橋梁は1968年4月の供用開始から50年以上が経過しており、1日あたりの平均断面交通量は約3.6万台。日常の点検によりこれまでに279か所の損傷が見つかっているという。2023年度は上り線のP1~P2、P3~P4橋脚間の施工を実施し、東海道新幹線直上のP2~P3橋脚間および上り線については順次施工する予定となっている。

 今回の工事に伴い東名高速道路の同区間では夜間通行止めなどの規制を行なう。規制実施期間は2024年1月9日~3月22日の計74日間。1月9日~2月7日は平日昼間に追い越し車線側を規制するとともに、夜間(18時~翌6時)通行止めを実施。これにより既設床版の撤去、仮設鋼床版および新設床版の架設、舗装などを行なう。2月8日からは昼夜連続の車線規制とし、壁高欄の設置などを実施する流れとなる。

 こうした床版取替では「舗装を切ったあとに既設の床版を切断してクレーンで持ち上げて撤去」「新床版をクレーンで設置」「接合部にコンクリート打設をして床版として一体化」「防水をして舗装を掛けて完成」となるのが一般的。

 今回は1回の通行止めが12時間と限られていることから、既設の床版を撤去したあとに仮設の鋼床版を設置して通行止めを解除。翌日に仮設の鋼床版を撤去して新設の床版をするという流れになる。

 新たに設置する新床版は工場製作による12.1×2.43m(長さ×幅)、重さ28.6tのプレキャスト床版で、新技術となるコッター式継手を採用。これは床版側面のC型金物同士をH型金物で連結、ボルトで締め付けたあと、3時間あまりで硬化する速乾性の目地剤を充填することで防水&舗装前の工事が完了するというもの。従来の鉄筋とコンクリート打設による作業を不要とすることで、雨天や降雪などによる工程遅延を抑制できるという。

 交換する床版はP1~P2間で11枚、P3~P4間で19枚、計30枚。1日に既設床版の撤去~仮設鋼床版の設置、仮設鋼床版を新設床版に交換という作業を各2枚ずつ実施していく。

富士保全・サービスセンターの管理区域
施工位置
規制概要
工事概要
東京側から見た工事区間。左側に下り線が見えている
手前側で100tクレーンによる既設床版の撤去~仮設鋼床版の設置、奥では160tクレーンにより仮設鋼床版を新設床版に取り替える作業を行なっている
橋の下には東海道新幹線が走っている
一般的な床版取替工事の流れ
清見寺橋床版取替工事の流れ
左右中央に見える短いガードレールが付いているパーツが鋼床版
工程遅延抑制の工夫
クレーンで吊り上げられるコッター式継手を採用したプレキャスト床版
床版の継手部分
継手を連結するH型金物。鉄道模型で使われるレールの接続部みたいなイメージ
設置が完了し舗装までされている新床版。奥では旧床版の撤去が行なわれている
手前に新床版を設置。コッター式継手の採用でほぼ隙間なく(20mm)接続できる
進捗管理システムを採用
大型ディスプレイで進捗状況がリアルタイムに表示される

 規制期間中の工事区間では2タイプの防護柵が用いられる。1つは壁高欄未設置部分に置かれる「SSS(スリーエス/Speedy、Spike、Sjoint)ガード」。1時間に40m分を設置できるほか一部分だけの設置や撤去が可能と、作業性に優れているのが特徴。もう1つは「バルカンバリア」と呼ばれる作業帯を確保するためのもの。また、車線規制部分では車線を減少させていく「テーパー」部を従来の300mから360mに延長するとともに、規制材を直線的な配置から終端につれて角度がついていく二次曲線的な配置にすることで、規制材との接触事故を抑制する取り組みも実施する。

安全対策
バルカンバリア
SSSガード
交通事故を最小限にする取り組み

 今回の通行止めでは、主な迂回路として新東名が存在することから、大きな渋滞は発生しない見込み。近藤氏は「12時間で7000台ほどの交通量を見込んでいるが清水JCT、新清水JCT、ボトルネックとなる富士宮トンネルにおいても渋滞発生の予測はなく、実際にも発生していない」と説明。同時に新東名での事故に備え、2か所にレッカー車を待機させる措置も執られる。

 並行する一般道については「18時から翌6時、19時から翌7時の通行止めどちらが影響が大きいか検証したところ、後者の方が損失時間が大きい」ことから、前者の時間に設定することで影響を最小限に抑えているとしている。

 また、由比PAおよび富士川SAが利用できなくなることから、休憩施設の混雑対策として大型車用の駐車スペースを拡大。清水PAでは82台から173台に、駿河湾沼津SAでは146台から157台に、さらに新清水IC料金所先に55台駐車可能な臨時駐車場が設けられる。臨時駐車場の利用期間は2月9日(または工事完了)までの18時~翌6時。対象となるのは中型車、大型車、特大車のETC車両で、流出時刻から2時間以内に順方向に再流入した場合に直通利用と同料金になるよう調整する。

 同時に上り線の利用で迂回ルートを走行した場合には、工事区間を直接利用した通行料金より高くならないように調整を行なう。

一般道迂回に伴う料金調整(ETC車限定)

料金調整期間: 2024年1月9日~3月22日
流出IC→再流入IC:
長泉沼津IC(E1A)→沼津IC(E1)
新富士IC(E1A)→富士IC(E1)
※乗継時間は1時間以内

夜間通行止めに伴う乗継調整(ETC車および現金車など)

料金調整期間: 2024年1月9日~2月7日、平日18時~翌6時(または工事規制終了)
流出IC→再流入IC:
静岡IC、日本平久能山SIC、清水IC(E1)/清水いはらIC、新富士IC(E1A)→富士川SIC、富士IC(E1)
※乗継時間は24時間以内

 そのほか、「渋滞減らし隊」キャンペーンとして同社の「わくわくハイウェイ」アプリで事前登録を行なうことで、対象日時に指定のルートを走行すると200円分のPayPayギフトカードがプレゼントされる施策も実施されている。これは「なるべく渋滞するようなところを避けてお通りください」という趣旨で行なっていると説明した。

突発事象への備え
夜間通行止め時の迂回路(高速道路)
夜間通行止め時の迂回路(一般道)
休憩施設の混雑対策
新清水IC出口に臨時駐車場を開設
料金調整
渋滞減らし隊キャンペーン