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NEXCO 3社、高速道路の上下線延べ約960kmに新たな劣化認め、更新事業に約1兆円の概算費用

「高速道路の更新計画(概略)」について合同記者会見

2023年1月31日 実施

NEXCO 3社が「高速道路の更新計画(概略)」について共同記者会見を実施

 NEXCO 3社は1月31日、東京・霞が関の会場で「高速道路の更新計画(概略)」に関する共同記者会見を行なった。登壇したのは、NEXCO東日本 取締役兼執行役員 管理事業本部長の八木茂樹氏と管理事業本部 保全部長の佐久間仁氏、NEXCO中日本 保全企画本部 保全担当部長の合田聡氏、NEXCO西日本 保全サービス事業本部 保全サービス事業部長 加治英希氏の計4名。

 はじめにNEXCO東日本 八木氏が、高速道路の更新事業(リニューアルプロジェクト)の経緯を説明。NEXCOが管理する高速道路約1万km(上下線別延べ約2万km)のうち、およそ3割となる約3000km(上下線別延べ約6000km)が開通後40年以上経過しており、NEXCO 3社では高速道路資産における「長期保全等検討委員会」を2012年11月に設置。

 そして大規模工事や修繕の必要性、その対策について検討を進め、2014年1月に同委員会より提言を受け更新計画を策定した。2015年3月より、約1360km(上下線別延べ約2220km)で更新事業に着手しているという。

東日本高速道路株式会社 取締役兼常務執行役員 管理事業本部長 八木茂樹氏

 この事業化以降、5年に一度の定期点検と変状箇所における点検技術の高度化を踏まえた詳細調査の結果、著しい変状が確認され、新たに更新が必要な箇所が約500km(上下線別延べ約960km)であることが判明した。

 2014年1月の提言時では想定できていなかった劣化事象や劣化の進行が確認されたことから、同委員会において劣化メカニズムの解明や更新の必要性について審議が進められ、これまでの審議内容の中間とりまとめに至ったという。NEXCO 3社はこれを受け、対策として約1兆円の更新事業が必要であると説明した。

 新たに更新事業を要する約500km(上下線別延べ約960km)の対象は、「西湘バイパス」「滄浪橋などのPC(プレストレストコンクリート)橋」「関越自動車道」「土樽地区の舗装」など。

高速道路開通からの経過年数

 NEXCO西日本 保全サービス事業本部 保全サービス事業部長 加治英希氏の解説によれば「1971年に開通したE84 西湘バイパスの滄浪橋は、全長5685mのPC橋。塩害により、特にPC鋼材の充填材の不足箇所では著しく劣化が見られる。調査技術の高度化により、充填材の不足箇所が把握できるようになった」という。

 また「1998年に開通したE2 山陽自動車道の木津地区(三木JCT~神戸西IC間)は、これまでグラウンドアンカーなどによる対策を繰り返しているが、のり面の変状が止まらない状況であり、地下水や降雨の影響により地山の強度低下や地すべりが進行している。今後、高速道路本線上へカルバートを設置し、さらにカルバート上に押え盛土を構築する」など、対象箇所で各対策を講じていく方針を示した。

新たに更新が必要な箇所の例

 これら対策にかかる概算事業費の内訳は、橋梁の桁の架替や充填材の再注入(上下線別延べ約50km)に約2500億円、床版取替(上下線別延べ約30km)に約4500億円、土工・舗装の舗装路盤部の高耐久化(上下線別延べ約870km)に約2400億円、切土区間のボックスカルバート化+押え盛土(2か所)に約200億円、盛土材の置換(上下線別延べ約8km)に約400億円かかり、合計約1兆円となるという。

西日本高速道路株式会社 保全サービス事業本部 保全サービス事業部長 加治英希氏

 なお、「今後も継続して実施していく定期点検や最新技術を用いた詳細調査により、今回の更新計画以外の新たな変状や劣化メカニズムが判明することも想定されるため、更新計画の考え方や対策を見直すことも検討していく必要がある」と八木氏。

 また更新事業は供用中路線での工事となることから、NEXCO 3社は「万全な安全対策とともに、交通規制およびそれに伴い発生する交通渋滞といった社会的影響の最小化が必須」とし、円滑かつ着実に進めるために、技術開発による生産性の向上、コスト縮減の取り組み、体制の強化、人材の確保・育成などに努めたいとした。

東日本高速道路株式会社 管理事業本部 保全部長 佐久間仁氏
中日本高速道路株式会社 保全企画本部 保全担当部長 合田聡氏