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日本旅行業協会、新春会見で課題と展望。髙橋会長「海外旅行の復活なくして業界の復活なし」

2023年1月10日 実施

JATAが新春会見を開いた。写真は一般社団法人日本旅行業協会 会長 髙橋広行氏

 JATA(日本旅行業協会)は1月10日、都内の本部で新春会見を開き、会長の髙橋広行氏が今後の取り組みなどについて説明した。以下、髙橋会長のコメントを抜粋する。

会見詳細

 昨年(2022年)10月の水際制限の緩和と昨今の円安で特に訪日需要が活発になった。国内も県民割・全国旅行支援があり、マーケットは活性化、旅行業界全体は明るい兆しが見え始めたが、まだまだ本格回復までは道半ばと言える。

 昨年のJATAの活動を振り返ると、海外旅行の再開に向けてまずはハワイと韓国に視察団を派遣、会員旅行会社がパッケージ商品の販売を再開、外国人旅行者受け入れの実証実験に協力、といった環境整備に務めてきた。また、県民割・ブロック割では地域経済の活性化の取り組みをしており、ツーリズムEXPOジャパン2022を4年ぶりに東京で開催できた。EXPOは全国47都道府県、世界78か国・地域からの出展があり、4日間で12万4000人が来場、旅行への期待を感じ取ることができた。

 10月11日には観光業が待ち望んだ水際制限の緩和と全国旅行支援の実施があり、11月は国際クルーズのガイドラインを策定・発表、これで空路海路ともに国際交流の再開にこぎ着けた。

 今後の課題について。マーケットに多少明るさが見えるものの、主要旅行会社の取扱額は2019年比の5割程度で、依然として厳しい経営環境が続いている。国内市場は全国旅行支援の開始後、2019年比で8割程度まで回復しているが、施策の効果によるところが大きく、本格的な回復には相当な時間と労力が必要。それまでは全国旅行支援のような需要喚起策がどうしても必要で、本日(1月10日)から再開しているが、来年度(4月)以降も施策内容を見直すなどして、細くてもいいから継続することを国に強く求めていきたい。

 昨年実施分の全国旅行支援の内容を分析すると、安くなっているから行ってみようという新規需要、リピート需要が生まれている。施策がなくなってしまうと、市場にネガティブな影響を与える。この施策は業界を立て直すだけでなく、地域活性化の役割も担っている。

 インバウンドも急速に回復しつつあるが、JNTOの発表では、2022年11月の訪日外国人は約93万人で、2019年同期比で4割程度。回復の足かせは入国に必要なワクチン3回接種または72時間以内の陰性証明と思われ、これはグローバルの基準と合わない。こうした要件は企業の出張や修学旅行、民間の海外旅行、地方空港の国際線にも影響を与えている。そのためにも、国の検討している新型コロナの2類から5類への分類見直しをJATAとしても要請したい。

 アウトバウンドは2019年比で2割程度にとどまっており、足踏みが続いている。円安や海外旅行の高騰もあるが、旅行者のマインドセットが萎縮していると感じる。今後はそれをいかに解きほぐすか。各国の政府環境局や航空会社と連携して、かつての2000万人の海外旅行需要を何としても呼び起こしたい。まずは韓国・台湾・ハワイ、そしてASEAN諸国については国際交流の流れを作り、海外旅行全体の機運上昇を図りたい。海外旅行の復活はJATAの今年の最重要課題であり、海外旅行の復活なくして業界の復活なしと考えている。

 夏休みくらいまでには復活の足がかりを付けたい。さまざまなプロモーションを検討しているが、下期には一定の回復の流れ、2024年にはそれを確かなものにしていきたい。ただ、かつての海外旅行2000万人という数字をいつまでにと明言するのは難しい。

 業界の抱える課題は、人手不足と、中長期的には将来の人材の確保が挙げられる。旅行会社、宿泊施設、輸送機関は急速に回復するマーケットに対応できていない。例えば、空室があっても予約を受け入れられない、バスがあっても運転手がいないという状況にある。新たな人手の受け入れ体制の再構築が喫緊の課題。

 対策は3つあり、事業者が安心して採用を行なえる環境作りをまず行なう。各社はコロナ禍を経て多額の借り入れをしており、見通しがないと採用を再開できない。そのためにも全国旅行支援の継続や新型コロナ5類への見直しを国に要望する。

 2つ目はDX(Digital Transformation)の取り組みで、各社の競争力とは直接関係しない業務を共通化、DXする。これまでは緊急時などの状況把握・対応を旅行会社がそれぞれ手作業で行なっていたが、宿泊業者側がDXすることで情報の一元管理・共有が容易になる。この取り組みはもう動いていて、今年の早い時期に実際に動き出すよう進めている。

 また、将来人材の確保という点では、旅行業が依然として日本の成長産業の中心にあるということをアピールすることで人材の確保に努める。

 世界がコロナ禍3年を経て、価値観の変化、安心安全な付加価値を求めるなど、ツーリズムのありようは変化している。そんななか、旅行者個人では手配できないような体験は旅行会社の本領であり、農泊・日本遺産・ワーケーションなど日本ならではの旅行商品の開発や、JNTOとの連携でアドベンチャーツーリズムの開発に取り組む。

 今年のツーリズムEXPOジャパン2023は大阪。2025年の大阪・関西万博につなげるため、さらに2027年にはワールドマスターズ、2029年ごろにはIRの開業も控えており、その盛り上げのきっかけにしたい。