日本旅行業協会、道東・知床を支援する観光プロモーション。大手8社の旅行商品や旅行券プレゼントなど

JATAが道東エリアの誘客促進のプロモーションを説明

　JATA（日本旅行業協会）は10月27日、定例会見で北海道・道東エリアの誘客促進のプロモーションについて説明した。

　道東は北海道唯一の世界自然遺産「知床」を擁するものの、新型コロナウイルスによる旅行者の減少に加えて、4月23日に発生した遊覧船の沈没事故以降、観光への影響が大きく、周辺経済が打撃を受けているという。

　具体的には、2022年4月～9月の宿泊実績で見ると、北海道全体では2021年比で91％増（2019年比では38％減）となっているところ、知床エリアでは2021年比で45％増に留まっている（2019年比は44％減）。

　10月11日からの水際措置の大幅な緩和で外国人旅行者が戻ってくることも期待される一方、事故から半年が経過しても行方不明者の捜索が続いているため、JATA副会長の小谷野悦光氏は「誘客プロモーションの実施には慎重な配慮が必要と考える一方、知床の観光は存続が危ぶまれる状況にある」と現況を説明した。

　同じく11日からは全国旅行支援（北海道は「HOKKAIDO LOVE!割」）が始まっており、これをきっかけに国内需要を改めて強く喚起するべく、知床送客のプロモーションを実施するに至ったという。

一般社団法人日本旅行業協会 副会長 小谷野悦光氏

　近畿日本ツーリスト、クラブツーリズム、日本旅行、JTB、東武トップツアーズ、HIS、読売旅行、阪急交通社が共同でWebサイトや広告でプロモーションを展開するほか、各社が旅行商品を造成し、誘客を図る。

　また、JATAが行なっている国内旅行需要喚起策の「笑う旅には福来たる」に北海道賞を新設。JATA会員会社で1名あたり1万円以上の旅行商品を購入すると、「次回北海道旅行に使用できる旅行券（2万円分）」を抽選で10名にプレゼントする。対象旅行期間は11月1日～2023年3月31日で、商品の旅行券が利用できる期間は2023年4月1日～12月31日。

北海道経済部 観光振興監 山﨑雅生氏

　会見に同席した北海道経済部 観光振興監の山﨑雅生氏は、「北海道は観光が基幹産業で、道民割やGo To トラベルなどもあったが、中心部の札幌から遠いこともあり、道東は厳しい状況におかれてきた。そのうえで知床での遊覧船沈没事故が起こった。知床では遊覧船オンシーズンの6月～9月で1年分を稼がなければならないが、今年はそれがなくなってしまった」と窮状を述べつつ、知床はアドベンチャートラベル（自然のなかのアクティビティや文化体験を楽しむ旅のこと）にも力を入れており、海外からも最も適した場所の1つと評価を受けていると紹介した。2023年には、「アドベンチャートラベル・ワールドサミット2023」の北海道開催も控えている。

　ただ、アドベンチャートラベルは単なるアウトドアではなく、旅行商品であるため、旅行会社に造成する体力がなくなってしまったり、同行するガイドが経営的に厳しくなってしまったりすれば実施できなくなってしまう。また、アドベンチャートラベルはインバウンドに対応する英語力のある人材が必要など、ガイドの能力も求められる。北海道全体としても、コロナ禍で観光業から離れた人材は多く、外国人労働者に頼ろうにも円安で働きたがらないケースも見られるという。こうした背景からも、今回のプロモーションを通じて道東・知床への誘客が促進されることに期待感を表わした。