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ピーチ、国際線新機材A321LRの内部を公開。“LCC=安いけど狭い”を過去にするゆったりシート!

2022年11月9日 実施

関西空港で公開したピーチのA321LR導入初号機

 ピーチ(Peach Aviation)は11月9日、2021年12月に受領したエアバス A321LR型機(登録記号:JA902P)を公開した。12月27日に開設するピーチ初の中距離国際路線、関西~バンコク線に投入するもので、同社のA321LRの国際線就航は初となる。

 今回公開したA321LRは、ピーチが中距離海外路線の開拓に向けて導入した最新戦略機で、単通路型機としては世界最長となる約7400kmの航続距離を誇る。

 2018年当初の発表では、A321LRの導入で北東アジアへの中距離LCC事業の進出の第一歩にするとしていたが、新型コロナウイルスの影響で、国内線・国際線ともに旅客需要の減少により計画の変更を余儀なくされた。

 現在同社では2機のA321LR(導入初号機JA902P、2号機JA901P)をオペレートしているが、いずれも国内線の運用にとどまっている。しかし今年度に入り、航空旅客需要がコロナ以前の水準に回復しつつある点や、10月以降の新型コロナの水際対策の緩和で海外との往来のハードルが下がったことから、新たに12月より関空~バンコク線を開設。ピーチ初の中距離国際線へ、満を持してA321LRの投入が決まった。

 A321LRは欧エアバスの単通路小型旅客機A320neoをベースに開発したA320ファミリーの最新派生型で、LRはロングレンジ(Long Range)を意味する。A320neoの長胴型A321neoに中央燃料タンクを増設し、単通路型機としては世界最長の約7400kmの航続距離を持つ。

LEAP-1AエンジンのLEAPは「Leading Edge Aviation Propulsion(最先端の航空推進技術)」の頭文字。次世代素材セラミックマトリックス複合材料など、新しい技術や素材が使われている

 ピーチでは従来型A320ceo(Current Engine Option:CFM56型エンジン装備)とA320neo(New Engine Option:CFM LEAP-1AEngine装備)を国内線および近距離国際線で運用。

 新たに導入したA321LRはA320neoと同じCFM International製LEAP-1Aエンジンを搭載している。翼端にはシャークレットと呼ばれる翼端板も装備。CFM56型エンジンを搭載する従来型A320ceoより約20%の燃費向上が見込まれている。A321LRは今年度内にもう1機受領予定で、従来型A320ceoも順次A320neoに切り替えていくとしている。

公開されたA321LRの機内

 ピーチのA321LRは「広い足元で快適な移動を実現する」として、シートピッチにこだわりを持っている。エアバスが用意するオプションプログラム「スペースフレックス」を導入することでA321は最大で236席まで増席することができるが、ピーチでは客席数を218席におさえ、シートピッチに余裕を持たせている。

 代表取締役CEOの森健明氏は「(A321LRの導入に際し)我々はシートピッチにこだわり、あえて218席におさえた。LCCだから狭いということはない。中距離路線だけではなく、機内のシートがよいので競争の激しい路線にはマッチする。需要の高い近距離国際線への投入も考えている」と語った。

大きな特徴の1つ、広いシートピッチ。女性の場合、膝前に拳2つほどの余裕がある
身長180cmほどの男性でも余裕がある。LCCだから狭いはもう古い

 従来型A320ceoのシートピッチは28インチ(約71cm)。ピーチのA321LRではシートピッチを30~32インチ(約76~81cm ※座席の場所による)に広げ、さらにリクライニング機能を持つシート、レカロ BL3710を導入。

 これはフルサービスキャリアと同等レベルのシートピッチとなる。フライト時間の長い中距離路線に導入することを鑑みて、客席の居住性を優先。乗客の快適性を担保している。さらにシートにはUSB Type-Aを装備。自身のタブレット端末などを充電しながら機内エンタテイメントサービスを利用できる。

前のシートの肘掛け下には2口のUSB Type-Aを備える
自身のタブレット端末などをここで充電しながら機内エンタテイメントサービスに接続し、長いフライトも充電を気にすることなく楽しむことができる
従来型A320とA321LRの違いなどを説明するPeach Aviation株式会社 代表取締役CEO 森健明氏

 同社のA321LRは国内航空会社では初めての導入で、昨年の12月19日に関西空港へ到着。コロナ禍による国際線の運休などもあり、2021年12月28日、関西~仙台便で初就航した。以来、国内線で運用してきた。

 12月27日に就航する関西~バンコク線への投入で、A321LRは本来の活躍の場、中距離路線を飛ぶことになる。広くて快適なLCC、ピーチのA321LRは、“安いけど狭いLCC”というイメージを払拭するゲームチェンジャーになるかもしれない。

ピーチ A321LR型機の機内

機体全長はA320ceo/neoと比べてA321LRは約6.9m長い。機内は通路を挟んで3-3の6アブレスト
ボーイング 787の登場から航空機でも一般的になった非常口のピクトグラム。それまでは白地に赤文字などで「EXIT」が一般的だった
オーバーヘッドビンは上開きタイプ
後部のラバトリー。コンパクトにまとめられているが、奥行きがあるためそれほど狭さは感じない
ラバトリー内には大きな姿見も設置されている

ピーチ A321LR型機の機外

2021年12月19日に日本へ到着したピーチのエアバス A321LR導入初号機(JA902P)
従来型エアバスA320ceo
A321LRとA320ceo/neoはPeachのロゴの部分から後ろの白い部分の長さで見分けることができる
A320neo/A321LRに搭載されるCFM International製の高バイパスターボファンエンジン「LEAP-1A」
翼端にはシャークレット(翼端板)を備え、低燃費に寄与する
導入初号機はJA902P。JA901Pは2022年6月に受領。今年度内にもう1機受領する予定
エアバス機はサイドスティックで機体をコントロールするので、コントロールホイールは存在しない
前脚にはタキシー・ライト、テイクオフ・ライト、左右のターンオフ・ライトの計4つのLEDライトを備える
小さなアンテナのようなものは、飛行中に機体に蓄積する静電気や避雷した時に機外に放電するスタティックディスチャージャー